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「あっ、そういえば雪ちゃん家泊まってみたいな」
「へっ?」
温泉からの帰り道、僕らのテレパシーについて話していると、翼君がふと思い出したようにそう言った。
「ほら、俺雪ちゃん行ったことないし」
「えっ、でも、いつ?」
「うーん、今からとか」
「でも明日から後期始まるよ......?」
「朝一で帰って支度するからさ! しかもこんなことがあったし、一人になるのがちょっと怖くてさ……ダメ?」
僕の目線に合わせて覗き込む翼君。
んー、ずるい。そんなことされたら断るものも断れない。
「分かった、いいよ」
翼君は、よっしゃ! と小さくガッツポーズをした。
「さあどうぞ」
「お邪魔しまーす」
自分の家に誰かが遊びに来るのは初めてだ。
ましてや、その相手が翼君となると、どうしても胸が高鳴ってしまう。
「荷物はそこらへんに置いといていいよ。今、お茶入れるからね」
「お、サンキュー。丁度喉カラカラだったんだ」
テーブルの前にちょこんと座った翼君に、麦茶を入れたコップを差し出す。
「僕下で寝るからさ、翼君はベッド使っていいよ」
来客用の布団などを持ち合わせていなかった僕はそう申し出る。
「えっ、それならベッドで一緒に寝ようぜ」
「でも、狭くない?」
「大丈夫、大丈夫。男二人くらいいけるって」
大丈夫じゃないのは僕の心の方なんだけど。
さっきからドクドクと唸り続ける心臓を服の上から押さえる。
「ん~......分かったよ。一緒に寝よう」
いえーい、と尻尾を振りながら子供っぽく喜ぶ翼君。
反対に、僕は平静を保てるかという不安に駆られていた。
「じゃあ、ちょっと寝る前にトイレ借りていい?」
「うん、いいよ」
翼君がトイレに立った間に、ベッドのシーツや枕を整え、翼君が飲んだコップも片付ける。
それと、念のためにベッドに消臭剤もかけておいた。
特に運動などをしているわけじゃないから、体臭はあまりないと思うんだけど、一応ね。
おまたせ~、と戻ってきた翼君に、そろそろ寝よっか、と声をかける。
先に僕がベッドに入り、夏用のタオルケットをめくって、どうぞ、と招き入れる。
「それじゃ、お邪魔しまーす」
翼君が上ってきて、その重さでベッドが少し沈んだ。
「じゃあ電気消すね」
「おっけー」
手元のリモコンで電気を消し、体をベッドに預けると、そのまま翼君と向き合う形になり、僕は、翼君の胸の中にすっぽりと収まってしまった。
――ち、近い……
翼君の匂いが鼻いっぱいに広がり、まるでマタタビを吸った時のような気分になる。
多分、今僕が世界で一番幸せ者かもしれない。
(雪ちゃん、おやすみ)
そんな不純なことを思っていると、いつの間にかテレパシーを使いこなし始めた翼君から脳内にメッセージが届く。
(おやすみ、翼君。目の前にいるんだから声だせばいいのに……)
(へへっ、この方がなんかワクワクするだろ?)
(ふふっ、確かに)
満月の煌びやかな光が、カーテンの隙間から差し込む夜。
僕は、明日からの生活に不思議と期待を抱いていた。
テレパシーのことも、なぜこんなことが出来るようになったのか。
いつか分かる日が来るのかもしれない。
「へっ?」
温泉からの帰り道、僕らのテレパシーについて話していると、翼君がふと思い出したようにそう言った。
「ほら、俺雪ちゃん行ったことないし」
「えっ、でも、いつ?」
「うーん、今からとか」
「でも明日から後期始まるよ......?」
「朝一で帰って支度するからさ! しかもこんなことがあったし、一人になるのがちょっと怖くてさ……ダメ?」
僕の目線に合わせて覗き込む翼君。
んー、ずるい。そんなことされたら断るものも断れない。
「分かった、いいよ」
翼君は、よっしゃ! と小さくガッツポーズをした。
「さあどうぞ」
「お邪魔しまーす」
自分の家に誰かが遊びに来るのは初めてだ。
ましてや、その相手が翼君となると、どうしても胸が高鳴ってしまう。
「荷物はそこらへんに置いといていいよ。今、お茶入れるからね」
「お、サンキュー。丁度喉カラカラだったんだ」
テーブルの前にちょこんと座った翼君に、麦茶を入れたコップを差し出す。
「僕下で寝るからさ、翼君はベッド使っていいよ」
来客用の布団などを持ち合わせていなかった僕はそう申し出る。
「えっ、それならベッドで一緒に寝ようぜ」
「でも、狭くない?」
「大丈夫、大丈夫。男二人くらいいけるって」
大丈夫じゃないのは僕の心の方なんだけど。
さっきからドクドクと唸り続ける心臓を服の上から押さえる。
「ん~......分かったよ。一緒に寝よう」
いえーい、と尻尾を振りながら子供っぽく喜ぶ翼君。
反対に、僕は平静を保てるかという不安に駆られていた。
「じゃあ、ちょっと寝る前にトイレ借りていい?」
「うん、いいよ」
翼君がトイレに立った間に、ベッドのシーツや枕を整え、翼君が飲んだコップも片付ける。
それと、念のためにベッドに消臭剤もかけておいた。
特に運動などをしているわけじゃないから、体臭はあまりないと思うんだけど、一応ね。
おまたせ~、と戻ってきた翼君に、そろそろ寝よっか、と声をかける。
先に僕がベッドに入り、夏用のタオルケットをめくって、どうぞ、と招き入れる。
「それじゃ、お邪魔しまーす」
翼君が上ってきて、その重さでベッドが少し沈んだ。
「じゃあ電気消すね」
「おっけー」
手元のリモコンで電気を消し、体をベッドに預けると、そのまま翼君と向き合う形になり、僕は、翼君の胸の中にすっぽりと収まってしまった。
――ち、近い……
翼君の匂いが鼻いっぱいに広がり、まるでマタタビを吸った時のような気分になる。
多分、今僕が世界で一番幸せ者かもしれない。
(雪ちゃん、おやすみ)
そんな不純なことを思っていると、いつの間にかテレパシーを使いこなし始めた翼君から脳内にメッセージが届く。
(おやすみ、翼君。目の前にいるんだから声だせばいいのに……)
(へへっ、この方がなんかワクワクするだろ?)
(ふふっ、確かに)
満月の煌びやかな光が、カーテンの隙間から差し込む夜。
僕は、明日からの生活に不思議と期待を抱いていた。
テレパシーのことも、なぜこんなことが出来るようになったのか。
いつか分かる日が来るのかもしれない。
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