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第五章 青い瞳のエンチャンター
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ー艶やかなフランス人形、まさか生きてはいないよねー
意識を丘から引き戻し、地下の扉に手をかける。
扉を押し開いた瞬間、〈どっ〉と黄が雪崩れ込んだ。
床近くに溜まったそれは、子どもの胸まで一息に届く。
間に合わない。
叫びは喉で固まる。
孤独の年輪が一気にきしみ、胸の奥のなにかが〈ズブ〉と沈んだ。
――守りたい。
その想いが、言葉にならないまま口を開かせる。
〈ぽとり〉
心が床石に落ちたように感じた。
次の瞬間、地の底で古い鼓動が目を覚ます。
幾人もの声が重なる。呪詛にも祈りにも似た、古い合唱。
《ドルイドの盟約、ここに結ぶ》
《汝、エンチャンターとして再び息を得よ》
《悠久を、背負え》
黄が頭を覆い、世界が甘くなる。
皮膚に斑が咲き、指先が崩れて砂になる。
エインセルは、静かに散った。
沈黙。時計の針が、初めて音を失う。
……笑い声が、のちに生まれた。
〈ケラッ……ケラララ〉
人形たちが、口のない顔で笑っている――気がした。
青い瞳のフランス人形が、〈むく〉と立ち上がる。
端正なドレスの裾が床を離れ、ふわりと浮く。
彼女は舞うように階段へ向かった。
二階へ続く踊り場。
メアリーが身を投げかけていた。ジョセフが手を掴む。
「行くな、メアリー!」
だがジョセフの指も震える。
(一緒に、行くべきではないか。あの子をひとりで行かせるのか)
その迷いの隙間に、メアリーの体が傾く。
……止まった。
背丈の半分しかないフランス人形が、細い腕でメアリーを支えていた。
ドレスのレースに埃が降る。人形は振り向いて、社交界の礼をまねる。
小さな指が空に円を描く。そこに、青が開く。
〈青の間〉――異次元の小さな客間。
ジョセフとメアリーは、そこで初めて安堵の涙をこぼした。なぜ受け入れられるのか、わからないままに。
彼らが振り返ると、人形の青い瞳は、確かにエインセルの瞳だった。
呼びかける前に、小さな手のひらがふわりと閉じる。
〈青の間〉は静かに閉じ、二人を包み消えた。
二階には、フランス人形だけが残った。
しかし、そのガラスの瞳は――ひどく、人のものだった。
意識を丘から引き戻し、地下の扉に手をかける。
扉を押し開いた瞬間、〈どっ〉と黄が雪崩れ込んだ。
床近くに溜まったそれは、子どもの胸まで一息に届く。
間に合わない。
叫びは喉で固まる。
孤独の年輪が一気にきしみ、胸の奥のなにかが〈ズブ〉と沈んだ。
――守りたい。
その想いが、言葉にならないまま口を開かせる。
〈ぽとり〉
心が床石に落ちたように感じた。
次の瞬間、地の底で古い鼓動が目を覚ます。
幾人もの声が重なる。呪詛にも祈りにも似た、古い合唱。
《ドルイドの盟約、ここに結ぶ》
《汝、エンチャンターとして再び息を得よ》
《悠久を、背負え》
黄が頭を覆い、世界が甘くなる。
皮膚に斑が咲き、指先が崩れて砂になる。
エインセルは、静かに散った。
沈黙。時計の針が、初めて音を失う。
……笑い声が、のちに生まれた。
〈ケラッ……ケラララ〉
人形たちが、口のない顔で笑っている――気がした。
青い瞳のフランス人形が、〈むく〉と立ち上がる。
端正なドレスの裾が床を離れ、ふわりと浮く。
彼女は舞うように階段へ向かった。
二階へ続く踊り場。
メアリーが身を投げかけていた。ジョセフが手を掴む。
「行くな、メアリー!」
だがジョセフの指も震える。
(一緒に、行くべきではないか。あの子をひとりで行かせるのか)
その迷いの隙間に、メアリーの体が傾く。
……止まった。
背丈の半分しかないフランス人形が、細い腕でメアリーを支えていた。
ドレスのレースに埃が降る。人形は振り向いて、社交界の礼をまねる。
小さな指が空に円を描く。そこに、青が開く。
〈青の間〉――異次元の小さな客間。
ジョセフとメアリーは、そこで初めて安堵の涙をこぼした。なぜ受け入れられるのか、わからないままに。
彼らが振り返ると、人形の青い瞳は、確かにエインセルの瞳だった。
呼びかける前に、小さな手のひらがふわりと閉じる。
〈青の間〉は静かに閉じ、二人を包み消えた。
二階には、フランス人形だけが残った。
しかし、そのガラスの瞳は――ひどく、人のものだった。
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