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第六章 報い
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ー理不尽には静かに報いをー
丘で、第二段階。
赤褐のガスが管を走る。黄の尾を追い、混じる。〈パチ……パチ〉微かな火花。
「証拠は残さない。これが私の美学です」
ジゴバは鼻歌を口の中で転がす。懐中時計の十を見て、雷管のスイッチをひねる。
轟音とともに、散布車が火の花を吐いた。
炎は赤褐の尾に誘われ、黄の道を奔る。
村は、一息で燃え上がった。
亡骸も、紙も、戸籍も、祈りの跡も、灰になって風に攫われる。
遠くの野営地も、炎の帯が舐める。
大地は、ただ焦げる匂いと、春の匂いを混ぜ合わせる。
丘の裏手、係留索が切られ、観測用の小型飛行船が〈ふわり〉と上がる。
ゴンドラの窓に、満足げなジゴバの笑み――が、映っていた。
「やれやれ、紅茶を」
将校が盆を落とした。
ジゴバの首が、窓枠に斜めに置かれていたのだ。
胴は、立ったまま、まだ両手を背で組んでいた。
空間が、窓の向こうで微かに青くゆらぎ、閉じる。
床にはブロンドの髪が数本。
それは“人形のもの”に見えたが、そこに宿る悲哀は、誰のものでもあった。
飛行船がバランスを崩し、流される。
空は朝で、村は灰で、丘は静かで、そして――。
ガラン、と甲板で何かが転がる音。
歩測する小さな足音。
誰もいないはずのゴンドラに、青い瞳がひとつだけ、ゆっくりと瞬いた。
丘で、第二段階。
赤褐のガスが管を走る。黄の尾を追い、混じる。〈パチ……パチ〉微かな火花。
「証拠は残さない。これが私の美学です」
ジゴバは鼻歌を口の中で転がす。懐中時計の十を見て、雷管のスイッチをひねる。
轟音とともに、散布車が火の花を吐いた。
炎は赤褐の尾に誘われ、黄の道を奔る。
村は、一息で燃え上がった。
亡骸も、紙も、戸籍も、祈りの跡も、灰になって風に攫われる。
遠くの野営地も、炎の帯が舐める。
大地は、ただ焦げる匂いと、春の匂いを混ぜ合わせる。
丘の裏手、係留索が切られ、観測用の小型飛行船が〈ふわり〉と上がる。
ゴンドラの窓に、満足げなジゴバの笑み――が、映っていた。
「やれやれ、紅茶を」
将校が盆を落とした。
ジゴバの首が、窓枠に斜めに置かれていたのだ。
胴は、立ったまま、まだ両手を背で組んでいた。
空間が、窓の向こうで微かに青くゆらぎ、閉じる。
床にはブロンドの髪が数本。
それは“人形のもの”に見えたが、そこに宿る悲哀は、誰のものでもあった。
飛行船がバランスを崩し、流される。
空は朝で、村は灰で、丘は静かで、そして――。
ガラン、と甲板で何かが転がる音。
歩測する小さな足音。
誰もいないはずのゴンドラに、青い瞳がひとつだけ、ゆっくりと瞬いた。
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