ダークナイト・ヴァンパイア ~望まれぬ貴公子~

哀楽

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第一章

ダーク・ナイト

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 ・・・・・・どのくらい時間が経っただろう。
 エルヴィスの絶叫が聞こえたような気がして、俺は目を開けた。
 視界には紺色の夜空が広がり、星が瞬いている。
 肌寒さに体を振るわせると、俺を抱いていた腕が、微かに震えた。
 もしかしてエルヴィスかーーと思って顔を上げると、俺を抱いていたのは、屋敷に急襲したあの男だった。
 また顔や首に火傷を負っている。
 ・・・・・・という事は、再び結界をくぐったのか?
「ここは・・・・・・?」
 どこなのか問おうとすると、周囲の冷気が強くなった。
 同時に、殺気の色も濃くなる。
 あたりの空気をどす黒く染める禍々しい気を追うと、漆黒のオーラを身にまとったエルヴィスがいた。
 いつも優しく細められている目は大きく見開かれ、眼球全体が赤く染まっている。
 エルヴィスが自らの爪で腕の皮膚を裂くと、流れ出た血が体を覆い始めた。
 まるで鎧のように硬質化し、色が黒く変色していく。
 翼がマントのように上へなびいたかと思うと、エルヴィスを包んでいたオーラが弾けるように霧散し、変わり果てた姿の夫が、ただ立っていた。
「エル、ヴィス・・・・・・?」
 氷の長剣を持ち、漆黒の鎧を身にまとった姿は、まさに騎士そのもの。
 甲冑の下からのぞく赤い相貌は、怒りで染まっていた。
「・・・・・・ダークナイト」
 俺を抱えていた男が、小さくそうつぶやく。
 たしかに、夜の国を統べる騎士王ーー暗黒の騎士ダーク・ナイトと呼ぶにふさわしい。
 だが、鎧の隙間からは血が流れ続けており、地面に滴っている。
「だめだ、エルヴィス。体に負担がかかってる!」
 エルヴィスを長くあの姿で居させるのは危険だ。
 詳しくは分からないが、怒りに任せて暴走しているのは間違いない。
 これでは、三百年前のマースの二の舞だ。
「止めないと・・・・・・!」
 男の腕から抜け出そうともがくと、横から伸びてきた別の腕が、俺の体を持ち上げた。
「ご苦労だったね、ルーカス。今夜の任務はあらかた完遂だよ」
「ありがとうございます、団長」
 男に向かって微笑み、俺を強く抱き抱えているのは、紛れもない・・・・・・
「マース・・・・・・っ」
「お久しぶりです、殿下。お迎えが遅くなって大変申し訳ありません。ーーさ、我らが愛の巣へ参りましょう」
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