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第一章
ライアン、敗れる
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男は得物を振り上げ、勢いよく振り下ろした。
俺は銃を交差させて刃を受け止めると、男の目を睨み、洞察をかけるが・・・・・・洞察が利かない。
いや、使えない。
「・・・・・・っ」
思うように動かない体は、自分のものではなく、他者の体を借りているように不自由だ。
体を擦過していく鋭利な切っ先を銃身で跳ね返しつつ、隙を狙うために炎を身にまとう。
だが、俺の体を守るようにとぐろを巻いていた炎が、小さくなって消えていく。
「嘘だろ、なんで・・・・・・!?」
「得意の炎は不発か? 王族もその程度なんだな」
「く・・・・・・っ」
この一年で体が鈍ったか?
いや、それにしたって洞察や能力が使えないのはおかしい。
原因は分からないが、今の体で能力なしに戦うのは、圧倒的に不利だ。
何とかして、地上へ逃げれば皆がいる。
そこで体勢を立て直してーー。
「戦いの最中に他事を考えるとは、余裕だな!」
一撃一撃が重い剣撃を銃で受け止めていると、男の足が、俺の腹に繰り出されるのが見えた。
俺はとっさに、剣を防ぐ事を放棄し、腹部を抱える。
蹴りは腕で止めることが出来たが、男の剣は俺の胸を貫いた。
気管を損傷したようで、呼吸がうまくできない。
「あ、ぐ・・・・・・っ」
「え・・・・・・っ」
刺した本人が、目に見えて動揺していた。
俺は剣が刺さったまま後ろへ逃げ、床に座り込む。
痛い。胸が焼けるようだ。
逆流してくる血を盛大に吐き出しながら、俺は自分の腹を撫で、微笑んでいた。
「ごめん、ね・・・・・・びっくりしたね」
「なんで・・・・・・」
「俺の、お腹・・・・・・子供がいるんだ」
「そーーそんなの守るために、自分の体を犠牲にしたのか!?」
「子供の方が、大事だから」
この子はまだ、自分では何一つまともに出来ない。
俺が守ってやらないといけない。
「ぐ・・・・・・っ」
「ちっ」
男は俺に駆け寄ると、胸に刺さっていた剣を引き抜き、自分の外套を俺の胸に当てた。
「おい、さっきの変な術を自分に使え!」
そんな事をしなくても、ヴァンパイアなら自然に治る。
治るはずなのに・・・・・・。
「おか、しいな・・・・・・。治りが遅、い・・・・・・」
手のひらを強く握りしめたときに出来た傷も、まだうっすら残っている。
俺の、ヴァンパイアとしての力全てが、弱っているのだと確信した。
自分の胸に手をおいて術式を施すが、せり上がってくる血が邪魔をし、うまく式を唱えられない。
朦朧とする意識の中、なぜか男が焦って止血しようとしているのが見えた。
俺を捕らえに来たはずなのに、どうしてこの男は俺を介抱しているのか。
おかしくて笑いがこみ上げた。
同時に血も口から吹き出し、首を伝う。
このままでは本当に危ないかも知れない。
子供だけでも、なんとか助けたいのに・・・・・・。
「エル、ヴィス・・・・・・」
「おい、眠るな! おい!」
体から血がどんどん抜けていく。
瞼が落ちていく中、男が手のひらを剣で切り、その傷口を俺の口元に近づけた。
「死なれたら困る。飲め」
唇にぽたぽたと滴り落ちてきた甘美な滴を、俺は迷わず飲み下した。
少し体に力が戻り、俺は式を唱える。
すると、傷口がもぞもぞとうごめき、癒着するのを感じた。
「あり、がと」
「敵に向かって礼なんて、変な王族だな」
敵を助けるために血を与える君もじゅうぶんおかしいよ、と言いたかったが、俺の目はすでに暗闇の中に沈んでいた。
俺は銃を交差させて刃を受け止めると、男の目を睨み、洞察をかけるが・・・・・・洞察が利かない。
いや、使えない。
「・・・・・・っ」
思うように動かない体は、自分のものではなく、他者の体を借りているように不自由だ。
体を擦過していく鋭利な切っ先を銃身で跳ね返しつつ、隙を狙うために炎を身にまとう。
だが、俺の体を守るようにとぐろを巻いていた炎が、小さくなって消えていく。
「嘘だろ、なんで・・・・・・!?」
「得意の炎は不発か? 王族もその程度なんだな」
「く・・・・・・っ」
この一年で体が鈍ったか?
いや、それにしたって洞察や能力が使えないのはおかしい。
原因は分からないが、今の体で能力なしに戦うのは、圧倒的に不利だ。
何とかして、地上へ逃げれば皆がいる。
そこで体勢を立て直してーー。
「戦いの最中に他事を考えるとは、余裕だな!」
一撃一撃が重い剣撃を銃で受け止めていると、男の足が、俺の腹に繰り出されるのが見えた。
俺はとっさに、剣を防ぐ事を放棄し、腹部を抱える。
蹴りは腕で止めることが出来たが、男の剣は俺の胸を貫いた。
気管を損傷したようで、呼吸がうまくできない。
「あ、ぐ・・・・・・っ」
「え・・・・・・っ」
刺した本人が、目に見えて動揺していた。
俺は剣が刺さったまま後ろへ逃げ、床に座り込む。
痛い。胸が焼けるようだ。
逆流してくる血を盛大に吐き出しながら、俺は自分の腹を撫で、微笑んでいた。
「ごめん、ね・・・・・・びっくりしたね」
「なんで・・・・・・」
「俺の、お腹・・・・・・子供がいるんだ」
「そーーそんなの守るために、自分の体を犠牲にしたのか!?」
「子供の方が、大事だから」
この子はまだ、自分では何一つまともに出来ない。
俺が守ってやらないといけない。
「ぐ・・・・・・っ」
「ちっ」
男は俺に駆け寄ると、胸に刺さっていた剣を引き抜き、自分の外套を俺の胸に当てた。
「おい、さっきの変な術を自分に使え!」
そんな事をしなくても、ヴァンパイアなら自然に治る。
治るはずなのに・・・・・・。
「おか、しいな・・・・・・。治りが遅、い・・・・・・」
手のひらを強く握りしめたときに出来た傷も、まだうっすら残っている。
俺の、ヴァンパイアとしての力全てが、弱っているのだと確信した。
自分の胸に手をおいて術式を施すが、せり上がってくる血が邪魔をし、うまく式を唱えられない。
朦朧とする意識の中、なぜか男が焦って止血しようとしているのが見えた。
俺を捕らえに来たはずなのに、どうしてこの男は俺を介抱しているのか。
おかしくて笑いがこみ上げた。
同時に血も口から吹き出し、首を伝う。
このままでは本当に危ないかも知れない。
子供だけでも、なんとか助けたいのに・・・・・・。
「エル、ヴィス・・・・・・」
「おい、眠るな! おい!」
体から血がどんどん抜けていく。
瞼が落ちていく中、男が手のひらを剣で切り、その傷口を俺の口元に近づけた。
「死なれたら困る。飲め」
唇にぽたぽたと滴り落ちてきた甘美な滴を、俺は迷わず飲み下した。
少し体に力が戻り、俺は式を唱える。
すると、傷口がもぞもぞとうごめき、癒着するのを感じた。
「あり、がと」
「敵に向かって礼なんて、変な王族だな」
敵を助けるために血を与える君もじゅうぶんおかしいよ、と言いたかったが、俺の目はすでに暗闇の中に沈んでいた。
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