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第一章
新たなる敵
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「ーー我らが愛し子よ。その声高く天へ捧げ、伸ばした手は希望を掴もう。父母の躯を苗床に、その身は来る来世への羽とならん」
ずっと昔、まだ俺が幼い頃母が歌ってくれた子守歌を口ずさみ、俺は地下にある研究室でペンを走らせていた。
この歌を歌えば、お腹の子は嬉しそうに胎内を転がる。
小さな命がすくすくと育っている事を直に実感できるのは、母胎である俺の特権だった。
繰り返し歌を歌いながら、目の前に並ぶビーカーを注視する。
中には俺の血と、眷属たちから分けてもらった血が入っていた。
眷属たちの血の中に銀を入れると、たちまち血が沸騰するように沸き立ち、蒸発していく。
試しに俺の血を眷属の血に一滴投じ、銀を入れてみる。
一瞬だけ血は静かに波打つだけだったが、五秒と保たずに泡立ち、蒸発していった。
「やっぱり、俺の血を入れるだけじゃ駄目か。ーーなんとかして、皆に銀への耐性をつけてあげたいのに・・・・・・」
銀に耐性のある王族の血を利用して、眷属たちに銀への耐性をつけられないか調べているが、今のところ成果はない。
俺にできるのはこれくらいだし、何としてでも研究を成功させたいのだが、うまくいかない。
「弱点の克服なんて、そう簡単にいかないのは分かってるけどなあ・・・・・・」
王族は太陽も銀も克服できた。眷属たちにも、その恩恵を与えてやりたい。俺たちにできて子供にできないはずはないのだ。
完全な克服は無理でも、銀の侵攻を遅らせる薬でも開発できれば、希望がもてる。
何か方法はないか・・・・・・と考え込んでいると、研究室の扉が軽くノックされ、エルヴィスが入ってきた。
「ライアン、今いいか?」
「大丈夫だよ。どうした?」
「デズモンドに話を聞いてきたから、その報告をしようと思ってね」
そう言うが早いか、エルヴィスは俺の頭を抱き寄せた。
エルヴィスと額を重ね合わせると、脳内に映像が流れ込んでくる。
「新しい能力、早速使うのか」
「使える物は使うべきだろう」
そう。エルヴィスは氷を操る以外に、他者の記憶のコピーや、自分の記憶を他者に見せたりできる能力を新たに得た。
今まで複数の能力を有した王族はおらず、エルヴィス自身驚いていたが、ありがたい能力だった。
まだ完全に能力をコントロールできていないようで、俺の脳内に流れ込んできた映像は断片的だ。
泣き崩れているカトリーヌ。
そこへ、なだれ込んでくる聖騎士団。
彼らは手に銃に似た機器を持っており、それがデズモンドへ向けられた。
片手でかばった左目は無事だったが、右目が潰れる。
デズモンドの受けた焼けるような痛みが、はっきりと伝わってきた。
「これは、もしかして・・・・・・」
「日光を真似た光線だろう。デズモンドは片目だけですんだが、カトリーヌは両目ともやられたそうだ」
間近にあるエルヴィスの目が、怒りで燃え立つのが分かった。
彼の頬を撫でてなだめていると、新たな映像が浮かび上がった。
頭が三つあるーー狼?
「なんだ、これ。三頭犬?」
頭の三つある狼が、何十匹と迫ってくる。
デズモンドはカトリーヌを抱え、結界の境界線がばれないよう必死で逃げる。
聖騎士団をある程度引き離すと、彼は結界の中に飛び込み、息を潜めた。
・・・・・・記憶は、そこまでだった。
エルヴィスが額を離すと、糸で引かれるように顔が前傾する。
一瞬だけ脳がふわりと揺れ、俺は額を抑えた。
「エルヴィス、あの狼はーー」
「マースの仕業なのは明白だ」
「・・・・・・そうだな」
狼を使ったのか、人狼を使ったのかは分からないが、何にせよ犠牲者は大勢でているに違いない。
「新たな敵は三頭犬と、日光照射機か・・・・・・」
人間は驚くべきスピードで、様々な物を作り上げてしまう。
その先にどんな犠牲があろうと、自分たちの勝利のためなら手段を選ばない。
俺たちにはできない芸当だ。
仲間を犠牲にして得た勝利に、何の意味があるんだ。
・・・・・・いいや、俺も仲間の犠牲の上で生かされている。
結局マースと同類なのだ。
「・・・・・・もう、皆を危険に晒せない」
「ライアン?」
「俺も外へ出て戦う。こんな武器に抵抗できるのは、俺たち王族ぐらいだ」
「それはそうだが、お前は大事な子を腹に宿しているんだぞ。戦わせるわけにはいかない」
何回も同じ事を言わせるなと、エルヴィスは顔をしかめる。
分かってる。分かっているのに、歯がゆくてたまらない。
このお腹の子も守りたい。でも、仲間たちも守りたい。
全てを守るなんて、俺にはとうていできないが、この手が届く範囲のものくらい、守れたっていいじゃないか。
「俺だって・・・・・・!」
少し興奮気味に怒鳴ると、エルヴィスの顔がさっと近づいてきた。
ずっと昔、まだ俺が幼い頃母が歌ってくれた子守歌を口ずさみ、俺は地下にある研究室でペンを走らせていた。
この歌を歌えば、お腹の子は嬉しそうに胎内を転がる。
小さな命がすくすくと育っている事を直に実感できるのは、母胎である俺の特権だった。
繰り返し歌を歌いながら、目の前に並ぶビーカーを注視する。
中には俺の血と、眷属たちから分けてもらった血が入っていた。
眷属たちの血の中に銀を入れると、たちまち血が沸騰するように沸き立ち、蒸発していく。
試しに俺の血を眷属の血に一滴投じ、銀を入れてみる。
一瞬だけ血は静かに波打つだけだったが、五秒と保たずに泡立ち、蒸発していった。
「やっぱり、俺の血を入れるだけじゃ駄目か。ーーなんとかして、皆に銀への耐性をつけてあげたいのに・・・・・・」
銀に耐性のある王族の血を利用して、眷属たちに銀への耐性をつけられないか調べているが、今のところ成果はない。
俺にできるのはこれくらいだし、何としてでも研究を成功させたいのだが、うまくいかない。
「弱点の克服なんて、そう簡単にいかないのは分かってるけどなあ・・・・・・」
王族は太陽も銀も克服できた。眷属たちにも、その恩恵を与えてやりたい。俺たちにできて子供にできないはずはないのだ。
完全な克服は無理でも、銀の侵攻を遅らせる薬でも開発できれば、希望がもてる。
何か方法はないか・・・・・・と考え込んでいると、研究室の扉が軽くノックされ、エルヴィスが入ってきた。
「ライアン、今いいか?」
「大丈夫だよ。どうした?」
「デズモンドに話を聞いてきたから、その報告をしようと思ってね」
そう言うが早いか、エルヴィスは俺の頭を抱き寄せた。
エルヴィスと額を重ね合わせると、脳内に映像が流れ込んでくる。
「新しい能力、早速使うのか」
「使える物は使うべきだろう」
そう。エルヴィスは氷を操る以外に、他者の記憶のコピーや、自分の記憶を他者に見せたりできる能力を新たに得た。
今まで複数の能力を有した王族はおらず、エルヴィス自身驚いていたが、ありがたい能力だった。
まだ完全に能力をコントロールできていないようで、俺の脳内に流れ込んできた映像は断片的だ。
泣き崩れているカトリーヌ。
そこへ、なだれ込んでくる聖騎士団。
彼らは手に銃に似た機器を持っており、それがデズモンドへ向けられた。
片手でかばった左目は無事だったが、右目が潰れる。
デズモンドの受けた焼けるような痛みが、はっきりと伝わってきた。
「これは、もしかして・・・・・・」
「日光を真似た光線だろう。デズモンドは片目だけですんだが、カトリーヌは両目ともやられたそうだ」
間近にあるエルヴィスの目が、怒りで燃え立つのが分かった。
彼の頬を撫でてなだめていると、新たな映像が浮かび上がった。
頭が三つあるーー狼?
「なんだ、これ。三頭犬?」
頭の三つある狼が、何十匹と迫ってくる。
デズモンドはカトリーヌを抱え、結界の境界線がばれないよう必死で逃げる。
聖騎士団をある程度引き離すと、彼は結界の中に飛び込み、息を潜めた。
・・・・・・記憶は、そこまでだった。
エルヴィスが額を離すと、糸で引かれるように顔が前傾する。
一瞬だけ脳がふわりと揺れ、俺は額を抑えた。
「エルヴィス、あの狼はーー」
「マースの仕業なのは明白だ」
「・・・・・・そうだな」
狼を使ったのか、人狼を使ったのかは分からないが、何にせよ犠牲者は大勢でているに違いない。
「新たな敵は三頭犬と、日光照射機か・・・・・・」
人間は驚くべきスピードで、様々な物を作り上げてしまう。
その先にどんな犠牲があろうと、自分たちの勝利のためなら手段を選ばない。
俺たちにはできない芸当だ。
仲間を犠牲にして得た勝利に、何の意味があるんだ。
・・・・・・いいや、俺も仲間の犠牲の上で生かされている。
結局マースと同類なのだ。
「・・・・・・もう、皆を危険に晒せない」
「ライアン?」
「俺も外へ出て戦う。こんな武器に抵抗できるのは、俺たち王族ぐらいだ」
「それはそうだが、お前は大事な子を腹に宿しているんだぞ。戦わせるわけにはいかない」
何回も同じ事を言わせるなと、エルヴィスは顔をしかめる。
分かってる。分かっているのに、歯がゆくてたまらない。
このお腹の子も守りたい。でも、仲間たちも守りたい。
全てを守るなんて、俺にはとうていできないが、この手が届く範囲のものくらい、守れたっていいじゃないか。
「俺だって・・・・・・!」
少し興奮気味に怒鳴ると、エルヴィスの顔がさっと近づいてきた。
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