ダークナイト・ヴァンパイア ~望まれぬ貴公子~

哀楽

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第一章

エルヴィスの戦い

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 ライアンを一人残し、私は眷属たちとともに地上へ出た。
 雲の晴れた見事な夜空は、普段であればその美しさをゆっくりと堪能できたことだろう。
 だが、今は夜空を愛でている暇はなかった。
 普段は不可視の結界が、奴らの攻撃によって壁面を露わにしていた。
 剣や弾丸が当たるたびに白い電流がほとばしり、耳障りな破裂音が絶えず鳴り響く。
 結界が攻撃されるたび、地下で一人私たちを守っているライアンも苦しんでいると思うと、怒りがふつふつとわき上がってきた。
「ウジ虫どもめ・・・・・・!」
「お気をお鎮め下さい、エルヴィス様」
 黒いサングラスを押し上げながら、デズモンドはそう言った。
 他のヴァンパイアたちも、同じようにサングラスをかけて待機している。
 自然光であればサングラスで充分だが、人工的に作られたあの武器に、このようなおもちゃが通じるかは不明だ。
「お前たちは出来る限り結界から出るな。この中なら攻撃も届かない」
「それではあなたとともに上に上がってきた意味がないでしょう。不本意ですが、私は殿下からあなたを守れと頼まれていますし」
 イザークは深々とため息をついた。
 そういえば、この男は騎士団の旧本部に捕らわれていた時に疑似日光を照射され続けていた。
「イザーク、あの日光照射機はお前の拷問に使われていた者の完成品だと思うか?」
「でしょうね。あの時の疑似日光で目は潰れませんでしたけど、体が動かなくなりました」
「・・・・・・やはり、皆ここから出るな。遠距離武器で敵を叩け」
 犠牲を減らす為にも、私一人が外に出て直接敵を殺すのが望ましい。
 制止する配下たちをよそに、私は結界の外に一歩足を踏み出した。
 すると、結界で隠されていた私の姿が、奴らの目に映ったようだ。
 攻撃していた騎士団は驚いて手を止め、手にしていた武器を私に向けた。
「その程度のおもちゃで、私が殺せないことは知っているだろう?」
 騎士団はわずかに渋面を浮かべる。
 その群が左右に割れ、出来上がった道を見知った顔が悠然と歩いてきた。
 騎士団長マースと、腰巾着のローガン。
 本部を崩壊させた日以来、初の顔合わせだ。
「久しぶりだな、エルヴィス。地下でのネズミ暮らしはどうだ?」
「嫌みな言い方は相変わらずだな、マース。地下はライアンのおかげで快適だよ」
 我が妻の名が出た途端、マースの顔から笑みが消えた。
 妬み、憎しみ、負の感情が全て表へ出たように、彼の表情が見事に崩れる。
 奴が悔しそうな顔をすると、私の心は対照的に穏やかになる。
 ライアンはお前のものではない。
 あの子は生まれたそのときから、永遠に私のものだと決められているのだから。
「我が愛しい妻ーーああ、ライアンのことだが、彼は地下で穏やかに過ごしているんだ。騒ぐつもりなら、お帰り願いたい」
「ここはあの方が過ごすべき場所ではない! あの方は私の・・・・・・我が腕の中にいるべきなのだ!」
 みっともなく口角から泡と怒号を飛ばすマースを見たら、ライアンは悲しむのだろうか。
 あの子の悲しむ顔は、見たくない。
「お前にライアンを渡すつもりはない。帰らないならーー貴様をここで殺す」
「やれるものならやってみろ」
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