ダークナイト・ヴァンパイア ~望まれぬ貴公子~

哀楽

文字の大きさ
9 / 13
第一章

血塗れの花嫁

しおりを挟む
「ベースはオオカミだ。そこに、志願者の首を二つ取り付けただけだよ。正式名称は、ケルベロス」
「・・・・・・ライアンは、敵であるこの者たちを哀れんでいた。こんな姿に変えられ、苦しんでいるに違いないと」
「その点はご心配なく」
 マースが懐から小さなリモコンを取り出し、どこかのボタンを押す。
 すると、手前にいたケルベロスの首にある機械が、高い音で断続的に鳴り始めた。
 ケルベロスは音に怯えて尻尾を股の間に挟んだが、その瞬間、点滅していた機械が爆発し、三つの頭を吹き飛ばした。
 地面にごろりと転がった三つのオオカミの頭のうち、二つが蒸気を上げて形を変えていく。
 完全に蒸気が消えると、オオカミの頭だったものは、白目を剥いて絶命している人間の男の頭へ変わっていた。
「ーーこのように、いつでも殺すことが出来るのだよ」
「下衆が」
 敵に情などくれてやるつもりもないが、たった今首を飛ばされて死んだ者たちは、今からこの下衆の為に戦おうとしていたはず。
 それを、指先一つで簡単に殺した。
 私たちではあり得ないことだ。
 仲間を愛し、仲間のために命を懸けるヴァンパイアには、とうてい出来ない。
「今夜、お前の企むもの全てを終わらせてやる」
 騎士団員や三頭犬に向かっていく眷属たち。
 私に襲いかかろうとしていたローガンを、イザークがくい止めている。
 あの夜果たせなかったマースとの一騎打ちを、今ここで再演してやろう。
「来い、マース」
「言われずとも・・・・・・!」
 人間離れした脚力で地面を蹴ったマースが、瞬時に私の前に迫る。
 銀と氷がぶつかり、耳障りな金属音が一帯に響いた。
 お互いが何度も斬撃を相殺し、隙を見て切り込む。
 しかし、決定的な傷を与えることが出来ず、細かい切り傷が増えるだけだ。
 斬り合いの合間に周囲に目を配ると、人狼やケルベロスを相手に、配下たちが苦戦していた。
 配下たちは、私もしくは眷属であるデズモンドやカトリーヌの牙によってヴァンパイアとなった訳ではない。
 私や眷属の血を飲んでヴァンパイアとなっているため、その分身体能力が劣っている。
 それでも人狼との戦闘力は互角のはずなのに、一匹の人狼につき三人のヴァンパイアが立ち向かっても苦しんでいるのは、戦力格差を思い知らされるようだった。
「この三百年で、ヴァンパイアは弱体化したな。過去、支配していた生き物に苦戦を強いられる気分はどうだ?」
 まるで俺の心を読んだようだった。
 悔しいが、言い返す言葉が見つからない。
 このままではーー。
「・・・・・・っ!? この匂いはーー!」
 私の胸に敗北という言葉が浮かびかけた時、この場に香るはずのない人物の匂いが、ふわりと流れ込んだ。
 マースも嗅ぎ取ったのか、恍惚とした表情を浮かべた。
「嗚呼、嗚呼・・・・・・! 待ちかねましたよ!」
 目の前にマースがいるにも関わらず、私は背後を振り返る。
 そんなはずはない。
 あの子が戦場に出てくるはずが・・・・・・!
「ライアン・・・・・・!?」
 ヴァンパイアしか通れないはずの結界。それを、電流をまとってくぐり抜けてきた黒髪の男の腕に抱えられているのは、力なく空を仰ぐライアンだ。
 胸から腹部までは真っ赤に染まっていて、だらりと垂れ下がった腕からは、今もなお鮮血が滴っている。
「貴様ああああああ!」
 私の中で何かが切れ、生まれて初めて理性が飛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

因習村の生贄の双子を拾って10年、何故か双子に執着されています

ユッキー
BL
因習村の神への生贄だった双子を偶然拾ったルポライターの御影透は、成り行きで双子を引き取る事に。10年後、双子が居た村が土砂崩れで廃村した事から物語が始まる。双子からの信仰と執着の行方は? 主人公×双子兄 双子弟×主人公

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...