白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

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出会いましょう、新しい世界と共に

第五話 胃薬は偉大だった

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 人というのは、一度考えたものを何回も考え直して改良したものを行動に移すことはあるが、根本的な部分が変わっていないことがある。
 それが人でないものだとしても、人に近いような思考ができるものであれば、似たようなことになる可能性だってある。

 それゆえに、彼女が考え出した方法とは…

【…ちょっとだけ、結界?というものに穴をあけて、入らせてもらいましょう。それなら一緒に行けますからね】
「それ、ちょっとで済むのかな?いや、まず穴を開けたら駄目でしょ」

 王都へ向かう馬車が村に来る三日前、ハクロは色々と考えてその結論を導き出したようだが、どう考えても無茶としか思えないのでルドはツッコミを入れた。

 確かに、その方法なら彼女が王都へ侵入するのは可能になるだろう。
 だがしかし、結界というのは王族も住まう場所を魔獣の襲撃から守るために張っているものであり、それに少しだけでも穴をあけること自体がどう考えてもやってはいけないようなこととしか思えない。

 それ以前に、そもそも魔獣を弾くような結界に対して、ハクロが穴をあけられるのかと疑問に思いたいが…彼女の話が嘘でなければ、竜すらも屠って見せた実力があるのならばやれそうなことはない。その実力を、やらかしてはいけない方向に全力投球させるのはいかがなものかと思うけど…

「永遠に離れるわけじゃないし、半年ぐらいなんだけど…それでも離れたくないの?}
【当たり前ですよ旦那様!!せっかく長い放浪の旅路の末に、ようやく旦那様に巡り合えたというのに、その出会いを引き離すようなものは嫌なんです!!教育制度を作った国を、滅ぼしても良いぐらいですよ!!】
「物騒で過激すぎる思考に飛んでいるよ!」

 いささか、頭のねじが吹っ飛んでいるような発言だが、それが本当にやれそうな実力を持っているからシャレにならない。黙っていれば知的な感じに見えるのに、中身は振り切ったバーサーカーのごとく…いや、魔獣としてはある意味あっている姿ともいえるのだろうか?
 理性も一応あるバーサーカーという、混ぜたら最悪な代物になっているが。




 何とかなだめつつ、破壊行動を抑え込むも、納得していない様子である。

【破壊も殲滅もダメ…どうすればいいのでしょうか】
「おとなしく、家で待っていてくれても良いと思うんだけど」
【駄目ですよ旦那様!!いえ、家でおとなしく待つ妻という立場も間違ってないでしょうが、それでもまだ一緒にいたくて…あ、そうだ、いっそペット枠とかそういうので入り込めないでしょうか!!私、蜘蛛の魔獣でも獣の字が入るなら獣で、犬や猫と同じようにペット枠の獣として入れば問題ないはずですよ!!旦那様の可愛い雌犬とかそんな感じで!!】
「字面が余計にいかがわしくなるし、ハクロは犬じゃなくて蜘蛛の魔獣でしょ!!」

 発想が斜め上に向かってどうする、ハクロ。
 確かに、魔獣の中にはものすごく危険度が低いのであればペットにする人もいるようで、ペット枠として認められれば、結界を通過できる道具を支給されるらしいって話もあるらしいが…蜘蛛の体もあるし、美女と言って良い人の肉体もある彼女をペット枠に入れるのは、結界の破壊なんかよりも道徳的に無理があり過ぎる。むしろ、やばい趣味の人と見られそうな扱いになる。既に絵面的にアウトな気もするが、そこは気にしないでおこう。
 
 とにもかくにも、諦める様子は全くないハクロ。このまま暴走させれば、何をしでかすのかわからない。
 でも、これ以上自分たちで議論を交わしても平行線をたどりそうなので、ここは思い切って第三者の声などを求めるべきなのかもしれない。
 そう考えると、頼れるのは…

「こういうのは年長者に聞いたほうが、良い知恵を借りられそうなので、伺いました」
「おい、ルドよ、お前の両親はどうした?相談事ならば、まずは親に尋ねるべきだと思うのだが」
「えっと、母は雑草狩りに、父は村の集会所で集まりがあるからと…」
「体よく逃げたなあの二人…!!」

 村長の家に訪問し、直接意見をうかがうことにした。
 メダルナ村の村長ゲハデナならば、村を治めているからこそその腕前をふるうための頭があるはずである。
 なお、両親は別に逃げたわけではないはず。むしろ、ハクロが家で嫁入り修行とかしているせいで気に入ったらしく、外堀をガンガン埋められている。

「以前から村をよくするために、村民の相談をうかがっているとお聞きしていたので…それにのった形です」
「それでも、一介の村長にやれる限度はあるぞ。ましてや、既にすっかり村の一員となっている蜘蛛魔獣ハクロのことなんぞ…領主様がそのことで東奔西走するほど忙しくなっているというのに、さらに押し付けてくるのか…」

 はぁぁぁっと溜息を吐く村長。

 話を聞いてみると、ここ最近ハクロが色々とやって村が豊かになりつつある中で、その発展ぶりをどうにか探ろうとしている者たちがいるらしい。
 ハクロ自身が意気揚々と人を襲うような好戦的な性格ではないとはいえ、魔獣なことは魔獣。
 その力がどのようなものなのか、何を目的としているのか、村の発展ぶりを見たらこれはこれで利用できないかなどの陰謀の種にするためか探る人が多いようで、下手にやらかされて最悪の事態になると不味いので、領主と相談しながらどうにか対応しているようだ。

「なんか、こちらの嫁が申し訳ございません…」
「大丈夫らしいが…そういえばルド、お主もうだいぶ彼女のことを受け入れてきてないか?」
「…人というのは、諦めも肝心ですからね」

…初日こそ、突撃されて驚愕させられてしまったが、いつしか慣れてしまうものである。
 現在進行形で外堀を埋められつつあるし、そもそも蜘蛛部分もあるが美女部分の要素が大きいので、村の男性たちに嫉妬されたりしているからな…そう考えると、今回の村の外に出て王都へ向かうことは良かったかもしれない。
 たまにまだ、彼女の風呂の覗きを目論む輩がいるようだが、そちらは村の女性陣がぼっこぼこにして撃退しているという話もあるが、そこはまぁ特に気にしないでおこう。奥様方から多様なお仕置きを受けている人たちの冥福を祈ることぐらいはするが。二、三名ほど逝きかけたとも聞くけどね。

 とにもかくにもそんなことはどこかへ投げ捨てておいて、今はこっちの問題である。
 このままだとハクロが勢いよく王都へ向かって突撃して、本気で結界をぶち破って大騒ぎにまで発展しかねないのが目に見えるだろう。
 
 彼女、実力があるのは良いけど、その分の理性を割いていないかって思うからなぁ…普段まともなのに、暴走してバーサーカーのような挙動に移そうとするのはシャレにならない。
 あの様子だと案外、僕のように実は前世を持っていて、その前世が人間じゃなくて人知の及ばないような化け物だったと言われても納得してしまいそうである。



「ふむ…一応、方法がないことはない」
「本当ですか!?」
「ああ、実は魔獣の王都持ち込みに関しては手続きもあるのだ」

 話を聞いて考えこみ、ゲハデナ村長はそう口にした。
 
 基本的に人を襲う魔獣も多いが、人と交流を求めるものや、無害なものもいる。
 そんな者たちもまとめて結界の中にある都市へ入れないのは、流石に利益などを考えると無視できないところがあり、過去に議論されたことがあったらしい。

「その結果、貴族であれば事前に連絡を行い、王都で手続きをして大丈夫だと判断されれば、結界があっても入ることが出来るようになるように色々とされるようだ。利益を考えつつ、なるべく暴れないことなども条件にと様々なことが定められているようだが、利用すれば可能だろう」
「なるほど…あ、でも平民の場合は?」
「こちらは直接頼みにくいが、それでも所属する領地を治める貴族へ連絡して、代わりにやってもらう必要があるだろう」

 つまり、領主へお願いして入れるように手続きを行ってもらう必要がある。
 ここの領主となると、コレデナイト領を治めているコレデナイト辺境伯だったか…話を聞くかぎり、何やら苦労しているっぽい人に、さらなる苦労を負わせる可能性も否定できない。


「でも、何もしない結果、ハクロが盛大にやらかして余計に苦労どころかやばいものを背負わせる可能性もあるか」
「そう考えると、どうにか交渉して穏やかに事を進めてもらった方がましなのか…」

…想像すると、交渉しない未来のほうが悲惨なことになりかねない。
 ひとまず、どうにか交渉を村長にお願いして…王都へ向かう一日前には、無事にハクロも一緒に向かって良いことになったのであった。

【良かったですよ!!旦那様と一緒に過ごせるようにしていただいて、ありがとうございます!!】
「お礼なら、辺境伯爵様のほうにしてほしい。今回の件で大急ぎでやったからな」
【お礼、ですか…うーん、あ、そういえば人間ってきらきら光るものに価値を見出していますよね?だったら、昔見つけたこれを献上しましょうか】





「伯爵様、例の魔獣の方より、お礼としてあるものが届きましたぞ」
「なんだ?」
「…10カラット以上と思われる宝石でございます」
「ふむ、結構大きなものだが…うん、まだ許容範囲内だ」
「我が家、お抱えの鑑定士に見せたところ、ピンクダイヤ、アダマンタイト、ミスリル、オリハルコン、ブルーメタル…」

「光の速さで範囲を超えられたのだが!?どれもこれも貴重な貴金属の類!?」
「あ、それといくつかは、領内の鉱山で偶然見つけたという報告も添えられており、もしかすると産出可能で…」
「良いことのはずだが、余計な面倒ごとを抱え込まされた気しかしないのだがぁぁぁぁぁぁl!!」

…後日、コレデナイト領はさらに豊かになったのだが、その豊かになった分が遠方から貴重な胃薬が取り寄せられる分に使われたという話をルドたちが知る由もないのであった。
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