白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

文字の大きさ
34 / 59
出会いましょう、新しい世界と共に

第三十話 天へ向かうな

しおりを挟む
…長きにわたるテスト期間が終わり、結果が発表されて無事に補習を逃れた者たちは天に召されたように穏やかに眠りにつき、逆に補習が確定した者たちは地獄へ向かうかのように悶絶したかのような顔で倒れこむという、極端な光景が広がっていた。

「…まぁ、こっちも何とか逃れたから寝たい方だけど…異様な光景過ぎて、寝にくいなぁ」
【かなり極端ですよね、この光景】

 なお、友人のルンバたちに関しては、残念ながら地獄へ向かうことが確定したようで、倒れこんでいる者たちと一緒の場所に埋葬されていた。
 テスト対策の勉強会なども行われており、一緒に参加して挑んだというのに…あと一歩のところで、落下してしまったようである。


 とにもかくにも、天国と地獄の光景は放置しておくとして、あとは夏季休暇までのわずかな間の、気楽な軽めの授業を数日ほど残すだけである。
 終えてしまえば夏季休暇として一か月半ほどの期間が…馬車での帰郷の時間が馬車で一週間ほどと考えると、そこまで長くはないのかもしれないが、十分遊ぶだけの時間は確保されるだろう。

 でも、ただメダルナ村へ帰郷して過ごすだけというのも、物足りない様な気がしなくもない。
 前世のように交通機関が恐ろしく発達しているわけではないので、気楽に海や山へ向かうということはできないが…それでも、長い休みの間にちょっと遊べる場所が欲しいだろう。


「貴族側の学園の生徒だと、帰宅せずに周辺諸国漫遊旅行とかするらしいけれどね。うーん、そこまでの旅費はないし、流石にその規模はやる気も出ないか」

 お金があればそんなことが出来るのだろうが、大規模すぎる旅行というのも何か違うもの。
 平穏な生活の中で、ちょっとだけ刺激的なものが欲しいだけで、奮発しまくるようなものは必要ないが…それでも、ちょっともやっとするかもしれない。

【あ、お金ならありますよ、旦那様】
「え?」
【聖女様のお手伝いや、魔獣としての研究などのお手伝いも行って、地道にお金を蓄えていますからね。狩ってきた獲物から剥ぎまくった素材を売却しても一気に大金が入りますし、不自由はないですよ】
「…稼いでいたのか」
【旦那様のお嫁さんになる以上、一定の財力はあったほうが良さそうですからね!!万が一、旦那様がご病気になられてもお金に糸目をつけず法外な治療費でも対応できるようにしたり、家を買うようなことがあれば旦那様の望む豪邸を購入できるようにと思い、将来を見据えての貯蓄は万全にしているのです!!】

 きらきらと笑顔を輝かせながら、そう告げるハクロ。
 密かに授業に混ざる傍ら、裏では稼いでもいたようで、なんとなく申し訳ない気持ちが沸き上がる。

 でも、稼いだといっても貯蓄に大半を回しているらしく、自由に使うお金はある程度の制限をかけてやりくりをしているらしい。

【いくつかの商会に投資もしていますからね。お店でその商会の属する系列店であれば、割引もされるなど、消費しても問題ないようにもなっています!!】
「すでに投資にも手を出していたのか…」

 インターネットもないのに、株式投資のようなことをやっているハクロ。
 しかも、色々と考えてやっているらしく、少しどこにどれだけのことをしているのか教えてもらったのだが、一つも損しているどころか、返ってくる利益を見るととんでもないものになっている。

 これ、もしも異世界じゃなくて前世の世界と同等のものがあり、投資家として動いたら相当ヤバいことになっていたような…うん、まぁ、そんなことはないとは思いたい。
 あり得そうなので否定しきれないが、そう物事は簡単に動くはずはない…よね?


【とりあえず、これで休暇中でもちょっと豪遊してどこかへ遊びに行けますよ】
「規模がヤバい様な気がするんだよなぁ…うわぁ、長期的な目で見ると、下手すると一貴族家波になるような…流石にそこまでない…のか?」

 自信満々に言われつつ、ならばこの際お言葉に甘えて余計なことを考えないほうが幸せかと思い、思考を切り替えることにする。
 考えても無駄ならば、いっそ別の考えをしたほうが楽だろう。

「そうなると…あ、そうだハクロ。村まで帰郷するのは決めているけど…村からつながる馬車便の一つで、プチ旅行みたいなことやろうか?」

 いくら辺境の地とはいえ、ド田舎であっても多少の交通はある。
 そして辺境だからこそ、他の場所へ向かいやすいというのもあって、いくつか面白そうな場所へ向かう馬車もあるようなのだ。

【プチ旅行…良いですね、旦那様と一緒に行けるなら、どこでも大賛成です!!】

 ハクロも賛成してくれたので、プチ旅行を決定する。
 どこへ向かうかは、より詳細なルートの一覧が確か馬車便用の掲示板が村にあったはずなので、実行は帰郷してからになるけれども、それでも夏季休暇中の楽しみができたのは間違いない。

 地獄のテスト習慣を乗り越えた先にあったのは、天国のような楽しみの日々であった…



「しかし、本当に投資とかだけでここまで稼げるのか…」
【他に、服を作って販売もしていますよ。蜘蛛の魔獣なので…最近学会でアラクネとしての名称が付いた私の糸で作った衣服は、人気があるようですからね】
「そうなの?」
【頑丈で汚れにくく、質感も良いのが口コミで広がったようです。真似できない性質も多いようで…偽物も出回りかけましたが、すぐにバレる程度だったそうで問題もありません】

 へぇ、偽物もねぇ…それが出るほど人気が出ているのは驚かされるな。
 でも、彼女の糸で作った服は確かに着心地が良いし。デザインとかも悪くはないので、万人受けしてもおかしくはないかもしれない。

【ちなみに、旦那様の衣服はさらに特別製で、剣で切りかかれたり殴られたりしても、逆に剣をへし折り、拳を砕くようになっています!!】
「そんなことされる機会、あるのかなぁ…」

…並大抵の鎧よりも丈夫らしいが、そんなものに巻き込まれる機会はないと思いたい。
 いや、誘拐事件の例があるから何とも言えないけど…値段付けたら、相当ヤバそう。

 
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

二本のヤツデの求める物

あんど もあ
ファンタジー
夫の父の病が重篤と聞き、領地から王都の伯爵邸にやって来たナタリーと夫と娘のクリスティナ。クリスティナは屋敷の玄関の両脇に植えられた二本の大きなヤツデが気に入ったようだ。 新たな生活を始めようとするナタリーたちだが、次々と不幸が襲いかかり……。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...