追放された付与術士、別の職業に就く

志位斗 茂家波

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追放されました:レーラ

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「…‥‥レーラ。君はもう、このパーティから出て行ってくれないか?」


 そう目の前で告げる男を前に、私、レーラは一瞬何を言っているのかわからず、固まった。
……え?本気で言っているのかしら、この人。

 私達冒険者パーティ『栄えある風』は、冒険者の中ではトップクラスの実力を持つと噂され、最近ではAランクから向上し、いよいよSランクと言うところまで来ていたのだが…‥‥今日、突然この場で私はそう言い渡された。


「えっと、嘘でしょう、ギルディ?本当にそう言っているの?」
「ああ、本当だ。嘘でないし、これはわたしたちで決めたことなんだ」

 そう言う彼の後ろを見てみれば、他の仲間たちもそこにいて、頷いていた。


「ええ、本当よ、彼だけの決定ではないもの」

 ギルディに腕を絡めながら言うのは、魔法使いの少女アルビ。

「そうよそうよ、皆で決めたのよねぇ」

 ニヤニヤと笑うのは、武闘家少女のアンビィ。

「このメンバー内、お前、役立たず」

 単純明快な理由を述べるのは、弓使いのホリケーン。

 

「ああ、仕方がないよレーラ、このメンバーではわたしは剣士として動き、アルビとホリケーンの後方支援、アンビィとの共同前線で戦闘している中で、レーラは『付与術士』……それも、比較的弱い強化しか扱えないからね」

 付与術士、それは対象に対して何らかの効果を付属させ、味方なら強化、敵なら弱体化をさせる役割を持つ者の事だ。

 私は付与術死としてはまだ半人前に近いようで、皆の実力を高めようと強化し、敵を弱めようと弱体化させるのだが‥‥‥いかんせん、効果がいまいちわかりにくい。

 まぁ、付与しない状態で戦闘したことがないし、全ての戦闘に置いて付与をかけつつも危ない事も会ったからね。

 そこで、今回私をパーティから追放して、新しく今度は前衛にタンク…‥‥要は盾となる仲間を勧誘して、バランスをより良くしていくつもりらしい。

 ギルディ……バランスを良くしてすべてに対応しやすいようにしたいという魂胆が見えるわよ。

 まぁ、確かに私の付与魔法では効果が見えにくいというのもあるのだろうけれども‥‥‥見えやすい前衛を置くだけで大丈夫なのかしら?


「そういう訳で、君にはこのパーティから出て行ってもらいたい」

 そう告げられ、渡されるのは金の入った小袋。

 手切れ金と言うか、せめてものお詫びなのだろうけれども…‥‥


「‥‥ええ、わかったわ出て行くわよ。それじゃ、さようなら」

 
 この場には、もう居たくない。

 よく見れば、他の3人もにやっと笑っているし……効果が見えない不信感から追放したギルディとは違って、この3人は明らかに私を邪魔者扱いにして居るところが見えるわね。

 おおかた、ギルディの取り合いでもして、その中で今一つしない私を追い出して一致団結して、丸く収まりつつ水面下で争う気なのでしょうけれども……そんなドロドロとした状態、こちらからお断りね。


 まぁ、関係ないし良いわね。私はもう、このパーティの者ではないし…‥‥帰る気もないもん。
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