転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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2章 学園初等部~

2-23 研究所なだけに、何かとあって

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 健康診断でハクロの能力の高さなどが判明してから数日。

 トラウマなどもあるらしいので刺激しないようにしていたが、今はもうすっかりいつもの彼女になっていた。

「とはいえ、なんかいつもと違うモノを作ってない?」
【キュルルゥ、キュ、新作水着ー!】

 外の気温は日々暑くなっているそうだが、ここは地下にある研究所。

 それに、他にもいろいろな研究用のモンスターを飼育していることもあり、室温は常に一定というか、過ごしやすい状態に保たれている。

 なので、泳いで涼む必要はないのだが、研究所内に水生モンスターの観察室を兼ねた水槽があり、そこで泳げることを知ったので、ハクロは水着を作っているのだ。

「というか、泳いで良いって言うけど、大丈夫ですかね?」
「問題ないのぅ。肉食魚のようなモンスターはここでは飼育しておらず、どちらかと言えば観賞用にできぬか研究してるのを放流しているだけじゃ」

 魚のモンスターはそれなりにいるが、無害な類をここで研究しているらしい。

 発光する様子から観賞用へ向けて改良できないかと試したり、食用向けになるようなものもいないかと色々と研究しているようで、危険なものではないそうだ。

「それにのぅ、ここでの生活をしてもらう代わりに、ある程度そちらの要望を聞くようにしておるし、無理な頼みでもなければ大丈夫じゃよ」



 何にしてもドマドン所長に許可も貰い、やって来たのは研究所の一室、巨大な水槽のある部屋。

 上から覗けるようにしており、地下水を引いているようだけど、透明度がかなり高くて色々な魚が泳いでいるのが目に見える。

「寄生虫の類とかはないし、安全性も保障するらしいけれど‥‥‥魚と泳ぐのは、これはこれで面白そうかも」
【キュルル♪キュル♪】

 いっちに、さんしっと入水前の準備体操をしっかりとしておく。

 プールとはまた違った光景が水中にあるようだし、僕にとってもこれはこれで良い体験になるだろう。

‥‥‥一応、研究所の研究対象が泳ぐ場所だけどね。まぁ、職員の人達もこの水中のモンスターの健康管理のために、泳いで測定しているらしいが。

 陸地に引き上げると負担があるし、水中でやったほうが都合が良いのだとか。

 ちなみに、本日のハクロの水着は学園指定のものではなく、彼女が独自のセンスで作ったパレオタイプの白い水着。水着用の布地は研究所の方で用意してもらったが、つなぎ合わせる糸などは彼女のものである。

 ただし、今までのプール経験なども考慮して普通の水着とは異なる細工をしているようで、自身の蜘蛛の足の方にも、水かきのようなものを付けていた。

【キュルルゥ♪】
「それじゃ、入ろう!」

 運動をし終え、体をほぐしたところで彼女が飛び込み、僕も続けて中に飛び込む。

 研究所の水槽だけに中は広く、潜って泳ぐのであれば中々具合が良い。

 綺麗な魚のようなモンスターも泳ぎ、水質も綺麗で幻想的な光景が広がっていたのだが‥‥‥ハクロの方を見れば、彼女はブクブクと沈んでいた。

 と言っても、溺れているわけではなく重りを付けて潜行しているだけである。

 潜るのはそこまで得意じゃないからこそ、潜水艦のような沈み方を覚えたわけだが‥‥‥ある程度沈んだところで数個ほど切り離し、ちょうどいい深度で体勢を立て直した。

【キュゴボボ‥‥‥キュブゥ♪】

 ぶくぶくと泡を口から出しながらも、泳ぐハクロ。

 初めて泳いだ時は体の構造的に思いっきりくの字に曲がっていたが、泳ぐことをしっかりと学び工夫ができるようになったのか、重しを調整して陸地と変わらないバランスで水中を進めている。

(…‥‥というか、あれでよく進めるなぁ)

 ほぼっと泡を少し洩らしながらも、僕は彼女の泳ぎ方を見てそう思う。

 まぁ、感覚的には馬や犬が泳ぐのに近いのだろうが‥‥バランス的になんとも不思議な泳ぎ方である。潜水艦の潜航状態と同じと言えば良いのか?

 何かこう、ちょうどいい感じに例えれそうなものを思い出したいのだが、生憎前世の記憶の中にそう都合が良い物がすぐ見つからない。

(まぁ、楽しそうならいいのかな?)

 そう思うことにして、僕も彼女の横に付き、一緒に泳ぐことにしたのであった。

 それにしても、普段ふわふわもこもこな蜘蛛の背中部分が、水中だと毛が広がってほっそい海藻に見えるのか、魚のモンスターが寄ってきているんだけど‥‥‥あ、潜り込んだりされて、完全に間違われてないかな、アレ?





【キュブブゥ♪キュルルブゥ♪】
(‥‥‥息が長く続くなぁ)

 泳ぐ中で、流石に長時間息継ぎなしで泳ぐのは無理なので、僕の方は適度に苦しくなったら浮上して息を吸っているのだが‥‥‥何故か、ハクロは一度も息継ぎをせずに、気持ちよさそうに泳いでいた。

 どうなっているのか不思議に思ったので、一旦水中でジェスチャーで伝え、水上にあがってもらってその訳を聞いてみることにした。

「ぷはぁ…‥‥ハクロ、聞いて良いかな?」
【キュルル?】
「なんか僕よりもずっと長く潜行できているけど、何でそんなに息が続くの?」
【キュ?アルス、続カナイ?息、一回デ、十分キュル】
「‥‥‥どういうこと?」

 ハクロに説明してもらったところ、どうやら僕以上に元々長く息は続いているらしい。

 でも、人並み以上な理由としては‥‥‥一つの理由が考えられるそうだ。

【口、腹、デ十分♪】
「あ、そういうことか!」

 考えて見れば、蜘蛛の場合お腹の方に呼吸器官がある。

 なので、蜘蛛のモンスターであるハクロにも当然ありつつ、人間の体のような部分でも、口から空気を取り込める。

 つまり、お腹と口の両方から空気が取り込める分、常人以上に蓄えられるのだろう。

 ちなみに、お腹の方のその呼吸器官は一見わからなかったりする。ひっくり返ってもらっても見当たらず、どうやら物凄く小さな穴が空いている程度のようだ。

 
【キュル‥‥‥デモ、ソッカ、アルスノ息続カナイ‥‥ナラ、イイ案アル♪】
「どういう案?」
【水中、苦シクナッタラ、私、アルスニ空気分ケル!アルス、口移シデキル?】

 水中で口移し‥‥え?それって…‥‥

「いやいや、やらなくていいよハクロ。それをやったらハクロの空気が減るよね?」
【キュルルゥ?空気減ル、デモ、アルス、ト同ジグライ、ナルダケ。大丈夫大丈夫♪】
「大丈夫と言われても、それだと普通にキスになるのだけど‥‥‥」
【キュ?キス、ッテ何?】

‥‥‥あ、これその部分の理解ができてないやつだ。

 無縁だったというか、そもそも蜘蛛の状態だった時は人の口がないというか…‥‥え、これ僕に説明しろと?

「えっと‥‥‥と、とりあえず詳しい事はドマドン所長にでも聞いてみれば良いよ!」
【キュルルゥ‥?キュル】

 気恥しい気持ちもあり、直ぐに説明できるわけでもない。

 なのでここは、子供の僕ではなく大人の所長に投げることにしてそう口にすれば、彼女は素直に頷いてくれるのであった。うん、所長は孫までいるぐらいだし、説明をしてくれるはず。

 下手な知恵を付ける可能性もあるけど、ここはもう投げてしまう方が良いかなぁ…‥‥














…‥‥アルスが説明責任をドマドン所長めがけて全力投球していた丁度その頃、都市アルバニアに向かう集団が存在していた。

 そしてその集団をさらに別の場所から観察している間諜たちの姿もあった。


「‥‥アレが、話にあった盗賊団か」
「規模はそこそこだが‥‥‥ただの烏合の衆ってわけでもなく、統率が取れているようだな」

 遠距離から気づかれないように観察しつつ、間諜たちは盗賊団の動きを目で追う。

「ああ、そのようだ。どうやら頭がまとめているようで、優れたリーダーシップを持って支配しているらしい。力ずくで脅して従わせるのではなく、人望をもってのようで、ただの盗賊よりも手ごわそうだ」

 遠距離から確認しつつ、盗賊団の顔を一人一人諜報たちは記録していく。

 そしてその盗賊団の戦闘にいる人物‥‥‥盗賊たちの頭と思われる者へ目を向けた。

「頭のようだが‥‥‥姿が分かりにくいな。かなりでかいマントで全身を隠しているようだが、それでも姿は視認できるはずなのに、認識しづらい」
「恐らくは、そのマント自体が認識を阻害するような魔道具だろう。認識が阻害されるからこそ正確な容姿は不明だが、むしろ阻害されるゆえに他の者たちよりも目立つと言えば良いか」

 色々とわからないことも多いが、率いる頭の位置は確認できた。

「しかし、何故また都市アルバニアへ向けて進んでいるのか…‥‥研究所があるとは言え、そもそも帝国の都市の一つで、盗賊たちが入れないとは思うのだが」
「それが気になるところだ。大抵の場合は衛兵たちがすぐに動き、取り押さえるが‥‥‥この集団での移動を見る限り、遠くからでも見られてもいいようにしているな。どこかでバレて、事前に対策をして待ち伏せを去れることも考えていいはずなのだが‥‥‥それすらも受け入れているようだ」

 大きな盗賊集団は、その人数で逆に位置がバレやすい。

 位置が分かればどの程度で到達するのかが予想でき、その分人員を回して守ることができる。

 また、エルスタン帝国は長年続いているだけあって、平和ボケするような輩が多少いれども、都市を守る衛兵たちなどの腕前は確かであり、そう簡単に突破できないはずなのだ。

 それなのにどういう訳か、この盗賊団は堂々と姿を見せて突き進んでいる。

 位置情報などもすぐにばれて、待ち伏せて捕縛される可能性があるというのに…‥‥何か、勝算が無ければここまで堂々と出ることはないはずだ。

「モンスター研究所がある分、守りとかも厳重であったはず。それなのにこうも出てくるとは‥‥‥何を考えているのかが、分かりにくくて不気味だな」
「まぁ、一応到達までにまだ時間はかかるし、夜になったら潜入ぐらいはできるはずだ。その際に、情報をどうにか聞き出せればいいのだが‥‥‥」

 間諜という身であるからこそ、やりようによってはそのまま暗殺して何もなかったことにすることはできたりする。

 けれども、その分後片付けなども大変になるし、その場でやれたとしてもこの統率力を見る限り、一旦頭を失えば大勢が一気に勝手に動き出して余計にひどくなるのが目に見えている。

 一網打尽にできるのが一番手っ取り早いが…‥‥あの頭はどうも警戒しているようで、その隙が見えない。

「ひとまずは、今晩も野営をするだろうし‥‥‥その時に、それとなく混ざろう。ただし、頭にバレたら即座に撤退だ」
「ああ、そうしたほうが良い。相手が何を持っているか分からない間は、迂闊に動けないからな」

 もどかしいような気もするが、諜報という身分である以上好き勝手に動きまくれるわけではない。

 なので、ひとまずはどのような目的があるのか探るために、今晩の野営を間諜たちは狙うのであった…‥‥
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