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森での生活

#6 初・人との対話デス(ワゼはメイドゴーレムゆえにノーカウント)

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SIDEシアン

 ちょっと眺めているうちに、ワゼはあっという間に盗賊たちを全員撃退した。

 心配していたようなスプラッターな事にはならなくて、安堵の息を吐けたが…‥‥うん、2,3人ほど男としては終わったようにも見えたけど、放置しておこう。赤黒いしみが見えたのも気にしないでおこう。

 
 とにもかくにも、襲われていた馬車は停車しているので、ワゼと共に確認することにした。


 近くによってみると、御者とかは…‥‥あぶくを拭いて気絶している。

 どうも牽引していた馬自身が自ら止まって様子を確認していたようだ。


「中の人も、全員気絶してますネ」
「いやまぁ、無理ないだろうな…‥‥」

 盗賊の撃退光景であれはちょっと男としては辛いと思う‥‥‥僕は遠距離から見ていたとはいえ、こちらは至近距離だしなぁ。


 とにもかくにも、全員が気絶から覚めるまで待ったのであった。











「‥‥‥いや本当に、助かりました。色々と恐怖の光景を見たような気もしますが‥‥‥」
「それは忘れておいた方が良いですよ。うちのメイドがどうもやらかしてすいません」
「いえいえ、あそこで助けてもらわねばこちらが危なかったもので‥‥‥」

 気絶から覚めた馬車の人達と共に、まずは互いの情報交換をする事にした。

「ええっと、わたくしめは各地を渡り歩いております、モルタル商会所属、派遣商人代表のディックと申します」
「なるほど、こちらは森の方で最近暮らし始めましたシアンです。そしてこちらが」
「メイドゴーレム、ワゼでございマス。どうぞお見知りおきヲ」
「あ、はい…‥‥いや本当にさっきのは怖かったんですけど」

……トラウマを植え付けてしまったのか、ワゼから一歩後ずさったディックさん。

 話によれば、どうも彼はモルタル商会という商人たちが作った組織のようなモノの一員らしい。

 商会の中で、各地を渡り歩いて商売をしつつ、珍しい商品を探し求めるための「派遣商人」というくらいにいるそうなのだ。


「今回、わたくしめどもはこの先にあるアイーマ村の産物を輸送し、別の場所でそれらを売ろうとしてたのですが、そこに現れたのあの盗賊たちでございまして……危ないところを、どうも助けてくださり、ありがとうございます」
「いえ、見かけたもので、当然の事ですよ」

 お礼の言葉を聞きつつ、僕らは商人さんから色々と話を聞いた。

 どうやら今いるこの地は、『ボラーン王国』という国の領地の一つであり、今までワゼといた森は『ハルディアの森』と呼ばれる場所らしい。

「ここ最近は平和で、何もなかったのですが…‥‥まぁ、実は今、ちょっとある騒ぎも起きているんですよね」
「というと?」
「どうも10日以上前に、この王国にあったある山が何者かによって消し飛ばされ、世間では魔王が復活したなどの騒ぎになっているんですよ。まぁ、それ以外には被害はありませんので、真偽は不明ですが…‥」

……あ、それ僕です。

 とは、言えなかった。うん、言ったら不味い奴だこれ。黙っておくべきだ。


 とにもかくにも、その事以外にも、助けたお礼として僕らは商人たちから色々と情報を得た。

 此の先には村があるが、どうもワゼが求める様な調味料はないらしい。

「生憎、私どもの馬車にも調味料はございません。ですがこの馬車の行く先、都市ブリジットには市場が開かれており、そこには必要な塩や、はるか東方から輸入されてきたショーユなる物もあるそうなので……これがお礼となるかどうかは不明ですが、よろしければ乗っていきますか?」
「ああ、それならお願いいたします」
「それで良いでショウ。ついでに、また盗賊がでたら私が潰しマス」
「ワゼ、できれば今度はきちんと五体満足にね」
「あの光景を再度見るのはきついので、どうかお願いします」


 ワゼの言葉に僕がくぎを刺すと、商人たちも全員同じ様にお願いした。

 自分がやられたわけじゃないのに、トラウマになっているんだなぁ‥‥‥なんかスイマセン。

 とにもかくにも、ここで会ったのも何かの縁ということで、ありがたくその都市までの道のりに同乗させてもらうことになったのであった‥‥‥‥

「って、そういえば放置している盗賊たちはどうするのですか?」
「彼らは一応、犯罪者ですのでこのまま縛って都市まで連行し、衛兵たちに引き渡すのですよ。そうすれば賞金首であればお金ももらえますし、今回の助けてくれたお礼として、そのお金を全額上げます」

 なるほど、ただでは済まさないのか‥‥‥‥盗賊たちよ、捕まってしまったのが運の尽きだろうな・



―――――――――――――――――――――
SIDE派遣商人代表のディック

……正直なところ、盗賊たちに追われていたところを助けてくれた方には感謝です。

 ですが、流石にあの盗賊の頭などにやったような仕打ちは恐ろしいのですが…‥‥あれはもう、衛兵に引き渡し、後で処分をするでしょうけれども、再起不能に違いありません。

 襲われた側ですが、同情したくなるレベルでした…‥‥。


 とりあえず話を変えまして、この目の前の2人は何かありますね。

 あの森……ハルディアの森は確か、神獣が住み着いている森のはずで、常人ならば入ることもできないような結界があると聞きましたが…‥‥どういうことでしょうか。

 まぁ、迂闊に聞けばあの盗賊たちの二の舞になる事が見えているので、余計な詮索は致しません。

 しかし、あの助けてくれたワゼとか言うメイドゴーレム…‥‥ゴーレムと言えば、大体は大型の四角いモデルが多いのですが、ここまで人間のように見えるのは初めて出会いましたね。

 誰が作ったのか、一緒にいるシアンと言う方が作ったのか、興味をそそられます。

 というよりも、何か商売の良い香りがしますねぇ‥‥‥‥これは友好関係を築いておいた方が良いと、わたくしめの商人としての勘が告げていますね。


 とりあえず、都市ブリジットにて、一旦のお別れになりそうですが、機会があれば友好関係を深めておきましょう。

 とりあえず、そこまでの道中をどうかお願いいたしますかね。



‥‥‥‥でも、後で夢に出たらいやだなぁ。男としては、あれは辛いでしょう。

 あ、次に探す商品は、その防御を高めるものにしましょうか。需要が高くなりそうですし、良い考えかもしれません。




 そう考えつつ、商人ディックは目の前の盗賊を退けたメイドと、その隣のシアンという人物に目を向け、友好関係を築き上げることを目的として定めておくのであった。

……盗賊たちと同じような末路は辿りたくないと言うのが、最もな理由であったが。


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