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森での生活

#5 今度こそ行ってみるのデス

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SIDEシアン

……昨日は、フェンリル夫婦の謝罪によって持ち込まれた食料などの整理によって、一日が潰れてしまった。

 まぁ、それは置いておいて、今日こそは森から出てみようとシアンは思った。


「森から出て、人のいる所見つけて、最終的には調味料の確保ができればいいんだけど‥‥‥お金とかあるかな?」
「現在所在地のデータは不明。とりあえず、まずは人のいる場所を探すことを考え、稼ぐ方は後で良いデス」

 何にせよ、とりあえずはこの世界の情報なども知っておきたいし、のんびり過ごしたくとも調味料などの関係を考えると、ある程度の人脈も作っておきたいので、外を求めて歩き続けた。

 一応、あてがないわけではない。

 以前、山をふっ飛ばした方向は…‥‥いや、あれはなかったことにしたので無しだ。

 それじゃないとして、取れる手段としては、ワゼのもつ機能‥‥‥指定範囲内の生命反応を探る機能があるので、これで人っぽい反応を見つけたらそれを頼りに行くという方法があるのだ。

 その為現在、ワゼがその機能をフルに発動させ…‥‥ようやく見つけたらしい。

「ふむ、ご主人様。人々が集まっているらしい地域を確認。その場所へ向かいますカ?」
「ああ、頼むよ」

 ワゼの捉えた反応によれば、規模的には二十数人程のそこそこの村と予測できるらしい。

 まあ、森の側にあるようだし、都市などがある可能性は低かったが、村でもそれなりに良いだろう。





 歩いているうちに森を抜け出し、平原に出た。

 見れば、一部に道のようになっている場所…‥‥獣道とはちょっと違うような、それなりに人が通った道のような物を見つけた。

「ここを辿ればいいかな?」
「ええ、そのようデス。距離にして約2キロと推測」

 あまり遠い道のりでもなさそうだし、そのまま僕らは歩いた。

 手入れは微妙にされていない感じもするが、歩きやすいからいいだろう。

「ふむ、この道をたどるのであれば、あのフェンリル(夫)を呼んで乗せてもらってある程度の輸送もできそうデス…‥‥こき使えますネ」
 
 何かさらっとワゼが言ったが、聞かなかったことにしたい…‥‥フェンリル(夫)、とりあえずがんばれ。





 何にせよ、数分ほど歩いたところで、ふとワゼが止まった。

「ン?」
「どうした、ワゼ?」
「‥‥振動感知、馬車が接近しているようですが…‥‥妙デス」

 ワゼはそう言うと、進行方向に目を向けた。

 妙って何がだと思いつつ、見てみれば、向こう側に土煙のような物が上がっていた。


「‥‥‥ねぇ、ワゼ。僕の見間違えじゃなければいいんだけれどさ、アレって馬車かな?」
「エエ」
「で、その後方から何か追いかけてきているように見えるけれども、人相が怖ろしく悪い集団たちじゃないかな?」
「ハイ。おそらくは盗賊があの馬車を負いかけ、現在こちらに両者とも接近中かト。迎撃いたしますカ?」

 人相で盗賊と決めるのはどうかともうが、まぁ状況的にどう見ても盗賊のようだし……こちらに向かって来られても、どう考えても巻き添えにされる未来しか見えない。

 ならば、被害を抑えられる方が良いか。

「それじゃ、ワゼ。迎撃できるのならお願い。でも、できるだけ相手を生かしてあげてね?」

 流石に血を見たくないからなぁ…‥‥森の中でも蹂躙していたけれども、相手が人のようであればちょっと手加減してほしいところである。

「了解いたしましタ。では、これより迎撃いたしマス」

 そう言うと、ワゼはダッと馬車と盗賊たちの元へ駆けだした。

……あ、「生かして」と言ったけれど、「瀕死にしないで」とか「手足の欠損無いように」とか言わなかったな。

 まさかとは思うけれど、流石に腕をもいだりして戦闘力を奪ったり、徹底的に瀕死にさせるとかはないよね?…‥‥いや、どうだろうなぁ…‥‥これはもう、ワゼに任せるしかあるまい。

 なんとなく僕は、命令の仕方を何か間違えたような気がしたが、とりあえずは見守ることにしたのであった。

 合掌の用意でもしておくべきか…‥‥


―――――――――――――――――――
SIDEワゼ

……走り抜け、自身の機能の一部を解放する。

 ご主人様の命令によると、「迎撃」と「生存」を望んでいるようだが、相手の状態まではこちらの自己判断に任せるという所であろうか。

 何にせよ、このまま進めばこちらにも迷惑をかけまくる未来があるのならば、ご主人様への負担を減らすためにも、ここで徹底的に迎撃しなければならない。



 ワゼはそう考えながら、腕を変形させ、スタンガンのような状態にした。


「おう!?なんだあの物体は!!」
「上玉の女のようだぜぇ!!珍妙な衣服を着ているが、なかなかよさげだぜェェ!」

 どうやら盗賊たちが気が付いたようだが、その言葉にワゼは不快感を覚える。

 メイドゴーレムゆえに、人間とは異なるのだが…‥‥それでも、嫌なものは嫌だと感じるのだ。

 

 なんというか、人で言う所のいやらしい目を見て、ワゼはここで生かすことは生かすのだが、手を抜くことをやめた。

「流石に不快デス。ご主人様の命の元、戦闘不能にさせてあげマス」
「ああん?何を言って、

バチィッツ!!
「げぶりびあぁ!?」
「なんだぁ!?」

 盗賊の一人が怪訝な顔をしたところで、ワゼは狙いを定めて手から小さな電気の塊を放ち、命中させた。

 喰らった盗賊の一人は痺れ、その場に倒れる。


「な、なんだこのお、」
バチバチィッツ!!

「や、野郎共こいつから、」
バリバリ!!

「ひ、に、にげ、」
バチバチバチッツ!!

「この野郎!!よくも」
メッゴォォォン!!
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 電撃を放つ合間に、適当に腕が立ちそうな相手にはジャンプして急所に蹴りを食らわせ、次々にワゼは盗賊たちを無力化させていった。

 逃げようとした者には、森で作ったロープを服から取り出して絡みつかせ、逃亡を阻止。

 仲間の仇として攻撃してこようとした輩には電撃と蹴り。

 そして、盗賊たちの頭と思わしき人物には…‥‥

「や、野郎共をよくもやってくれ、」
「とりあえず、黙るのデス」

ドンッ!!
グシャァ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあl!!」

……メイドゴーレムとしての機能の一つ、対暴漢用男殺し弾を発射し、盗賊の頭らしき人物はその場に崩れ落ちる。

 後に残った馬車の方は停車し、ワゼの方を見てあっけに取られていたのであった‥‥‥‥

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