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森での生活
#4 何をしていたのデス
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SIDEシアン
「…‥‥何があったし」
今、目の前の光景を見て、僕が言えるのはその一言であった。
今日はワゼが調理のための材料が足りないし、この際森を出て人を探して、そこで入手できないかという案を出されたので、一緒に探してみることにしたのだが…‥‥玄関を出てすぐのところに、山積みにされた果物の山と、熊や鹿、猪のような獣たちの山があった。
そしてその近くには、一匹の綺麗な白い狼のような…大きさが3メートルほどの大きなものであったが、その狼の前足に頭を潰され、地面にめり込んでいる毛が無くなった狼のような物がそこにいたのであった。
【‥‥‥すまないねぇ、驚かせてしまって】
「あ、いえ、どうも」
と、白い狼のような獣が語り掛けてきたので僕は慌ててそう返答した。
というか、「語り掛けてきた」?え、話せるのか?
「あ、一昨日の夜のフェンリルデスネ?」
ワゼが後ろから出て来て、毛がない狼の方をみて、そうつぶやく。
ちょっと待て、今なんと?フェンリルって‥‥‥なんかどこかの神話で聞く怪物じゃなかったかな?
とりあえず、状況を把握するためにいったん事情をシアンはワゼとそのフェンリルとかいうものと聞くのであった。
「‥‥‥なるほど、夜中に襲撃をかけてきたのは、そちらの毛のないフェンリルさんですか」
【ええ、あたしの旦那なんだけど、神獣と言われるようなあたしたちの中では少々傲慢なところがあってね、日頃どう懲らしめた物かと考えていたのよ。でもね、一昨日の夜にどこかへ飛び出していったと思ったら、数時間後にはつるっつるで・・・・・ぷぷぷぷ、ダメね、笑いが抑えれれないわね】
あまりにもおかしく思えたのか、白いフェンリルがばしんばしんと前足を振るって笑い声をあげる。
そしてその足元で、叩かれてたんこぶが急増中の毛無しの夫らしいフェンリル…‥‥家庭内の力関係が良く分かった。
というか、話しによればどうも一昨日の晩、そのフェンリルが襲いに来たそうなのだ。
そして見事にワゼが返り討ちにして、毛を剃られてしまったらしい。
で、その情けない姿になったほうは住みかに帰ったが‥‥‥そこで、その白いフェンリルの奥さんにがみがみと説教され、お詫びとしてこの森の幸を可能な限り集めてくれたらしい。
「でもワゼ、何でその事を説明してくれなかったんだ?」
「ご主人様の手を煩わせたくなかったのと、対処可能なほどの弱さだったからデス」
そうワゼが言い切ると、奥さんに踏まれている毛無しのフェンリルがびくっと体を震わせた。
…‥‥フェンリルって、どうやら神獣と呼ばれる類のもので、相当強い怪物としても知れ渡っているらしいが‥‥‥そんなのを弱いと言い切るワゼってどうなのだろうか。
とにもかくにも、そういう訳で、お詫びの品を今日持ってきてくれたらしい。
【ふがいないというか、情けなさすぎる旦那で済まなかったねぇお嬢さんと、その主とやら。これらはすべてあたしたちが集めた食料だから、せめてものお詫びとして受け取ってほしいよ】
「ああ、それならば受け折りますが…‥‥その旦那さん、そろそろ解放してあげたらどうすかね?」
【いや、まだ色々とあるから、そればかりはダメだねぇ。一度あたしたちの祖父の元へ連れ帰って、鍛え直してもらうから、この状態も一種の罰なんだよ】
…‥‥そう言いながら、ずんっと音を立てて旦那フェンリルを踏みつける奥さんフェンリル。
すごい家庭内の力関係を見たような気がしたのであった‥‥‥‥なんだろう、襲撃されたらしいけれども、見ているこっちの方がものすごく哀れに思えてくるんだけど。
とりあえず、今日はこのお詫びの品を受け取って、保存したりする作業のために森から出てみることをいったん中断したのであった。
「あ、毛皮は返しましょうか?」
【いや、別に良いのさ。つるつるになった旦那をそのまま祖父たちの元へ連行して、その情けない姿を思いっきり公開するからね。ほら、行くよあんた!!】
ガブゥッツ!!
【ギャアァァァァァァァァァァ!!】
首根っこを噛みつかれ、引きずられるフェンリルの旦那は、悲鳴を上げるのであった…‥‥合掌。
――――――――――――――――――――
SIDEワゼ
……フェンリル夫婦の謝罪とお詫びの品整理のために、今日は森の外へ出られなかったワゼ。
一応、シアンのために食料確保ができたのはうれしいが、ちょっと残念にも思えた。
だが、それに見合った収穫もあった。
「こき使えるのであれば、いろいろとできますネ」
引きずりながら去っていったフェンリル(妻)いわく、祖父たちの元で鍛え直した後は、いつでも呼び出して旦那の方をこき使っていいという許可を貰えたのである。
フェンリルの協力があれば、森の探索範囲も広がるし、色々とできることが増えるので、ワゼは楽しみにその計画を練るのであった。
「…‥‥何があったし」
今、目の前の光景を見て、僕が言えるのはその一言であった。
今日はワゼが調理のための材料が足りないし、この際森を出て人を探して、そこで入手できないかという案を出されたので、一緒に探してみることにしたのだが…‥‥玄関を出てすぐのところに、山積みにされた果物の山と、熊や鹿、猪のような獣たちの山があった。
そしてその近くには、一匹の綺麗な白い狼のような…大きさが3メートルほどの大きなものであったが、その狼の前足に頭を潰され、地面にめり込んでいる毛が無くなった狼のような物がそこにいたのであった。
【‥‥‥すまないねぇ、驚かせてしまって】
「あ、いえ、どうも」
と、白い狼のような獣が語り掛けてきたので僕は慌ててそう返答した。
というか、「語り掛けてきた」?え、話せるのか?
「あ、一昨日の夜のフェンリルデスネ?」
ワゼが後ろから出て来て、毛がない狼の方をみて、そうつぶやく。
ちょっと待て、今なんと?フェンリルって‥‥‥なんかどこかの神話で聞く怪物じゃなかったかな?
とりあえず、状況を把握するためにいったん事情をシアンはワゼとそのフェンリルとかいうものと聞くのであった。
「‥‥‥なるほど、夜中に襲撃をかけてきたのは、そちらの毛のないフェンリルさんですか」
【ええ、あたしの旦那なんだけど、神獣と言われるようなあたしたちの中では少々傲慢なところがあってね、日頃どう懲らしめた物かと考えていたのよ。でもね、一昨日の夜にどこかへ飛び出していったと思ったら、数時間後にはつるっつるで・・・・・ぷぷぷぷ、ダメね、笑いが抑えれれないわね】
あまりにもおかしく思えたのか、白いフェンリルがばしんばしんと前足を振るって笑い声をあげる。
そしてその足元で、叩かれてたんこぶが急増中の毛無しの夫らしいフェンリル…‥‥家庭内の力関係が良く分かった。
というか、話しによればどうも一昨日の晩、そのフェンリルが襲いに来たそうなのだ。
そして見事にワゼが返り討ちにして、毛を剃られてしまったらしい。
で、その情けない姿になったほうは住みかに帰ったが‥‥‥そこで、その白いフェンリルの奥さんにがみがみと説教され、お詫びとしてこの森の幸を可能な限り集めてくれたらしい。
「でもワゼ、何でその事を説明してくれなかったんだ?」
「ご主人様の手を煩わせたくなかったのと、対処可能なほどの弱さだったからデス」
そうワゼが言い切ると、奥さんに踏まれている毛無しのフェンリルがびくっと体を震わせた。
…‥‥フェンリルって、どうやら神獣と呼ばれる類のもので、相当強い怪物としても知れ渡っているらしいが‥‥‥そんなのを弱いと言い切るワゼってどうなのだろうか。
とにもかくにも、そういう訳で、お詫びの品を今日持ってきてくれたらしい。
【ふがいないというか、情けなさすぎる旦那で済まなかったねぇお嬢さんと、その主とやら。これらはすべてあたしたちが集めた食料だから、せめてものお詫びとして受け取ってほしいよ】
「ああ、それならば受け折りますが…‥‥その旦那さん、そろそろ解放してあげたらどうすかね?」
【いや、まだ色々とあるから、そればかりはダメだねぇ。一度あたしたちの祖父の元へ連れ帰って、鍛え直してもらうから、この状態も一種の罰なんだよ】
…‥‥そう言いながら、ずんっと音を立てて旦那フェンリルを踏みつける奥さんフェンリル。
すごい家庭内の力関係を見たような気がしたのであった‥‥‥‥なんだろう、襲撃されたらしいけれども、見ているこっちの方がものすごく哀れに思えてくるんだけど。
とりあえず、今日はこのお詫びの品を受け取って、保存したりする作業のために森から出てみることをいったん中断したのであった。
「あ、毛皮は返しましょうか?」
【いや、別に良いのさ。つるつるになった旦那をそのまま祖父たちの元へ連行して、その情けない姿を思いっきり公開するからね。ほら、行くよあんた!!】
ガブゥッツ!!
【ギャアァァァァァァァァァァ!!】
首根っこを噛みつかれ、引きずられるフェンリルの旦那は、悲鳴を上げるのであった…‥‥合掌。
――――――――――――――――――――
SIDEワゼ
……フェンリル夫婦の謝罪とお詫びの品整理のために、今日は森の外へ出られなかったワゼ。
一応、シアンのために食料確保ができたのはうれしいが、ちょっと残念にも思えた。
だが、それに見合った収穫もあった。
「こき使えるのであれば、いろいろとできますネ」
引きずりながら去っていったフェンリル(妻)いわく、祖父たちの元で鍛え直した後は、いつでも呼び出して旦那の方をこき使っていいという許可を貰えたのである。
フェンリルの協力があれば、森の探索範囲も広がるし、色々とできることが増えるので、ワゼは楽しみにその計画を練るのであった。
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