拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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寒さ到来面倒事も到来するな

#211 ふるうときもあるのデスdeath

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SIDEシアン

……降り注ぐのは業火のごとく燃えたぎる流星群。

 夜空に映えるのならまだしも、地上に直接落下してくると地獄絵図が産まれていく。

 とはいえ、怒りとは不思議なもので、周りが見えなくなるのではなく、むしろ見えるからこそ敵のみを狙い撃ち、周囲への被害を抑える事もできる。


 魔法で氷の壁を張り、落下時の衝撃波、振動、高温などをその内部へ留め、局所的な地獄を産む。

……けれども、その局所的な内部に敵を置くのをわすれてはならない。

 いや、敵というのではなく…‥‥ハクロを、大事な妻を狙った愚か者だろうか。


「ぐがああああ!!ごのやろぼおおおおおおお!!」
「へぇ、まだ叫べるのか」

 熱波に、衝撃に、圧力に、その他諸々入り混じった攻撃を受けてもなお、その愚か者は潰しきれない。

 もともとを鍛えているか、それともあの手に持つ禍々しい剣による力なのか…‥‥おそらくは、後者。

 ならば、それさえ奪えば消え失せるだろうが、それはダメだ。

 あっさりと逝かれるのも困るし、むしろ地獄を越えた地獄を見せるにはタフな方が良いだろう。



「ぐぎぎぎぎ!!おらあああああああ!!」

 歯を食いしばり、焦点の合わぬ充血した目を開ききり、地面を粉砕するほどの脚力で愚者が間合いを詰めてくる。

 勢いそのものは強く、真正面から繰れば受けきれない可能性もあるだろう。




 まぁ、そんな正々堂々と受けきる気はないが。

「『アクアフォール』」

 さっと手を構え、狙いを定め、魔法を発動させる。

 その瞬間、上空から一気に水が滝のように降り注ぎ、愚か者へ向かって豪快に流れていく。


「ごぼべがぁぁぁぁぁ!?」

 水流の勢いはすさまじく、突っこんできた愚者は流される。

 足を辛うじて水底に漬けても、そこから水によって地面がえぐられ、結局流される。

 ある程度流したところで、十分濡れているから…‥‥

「『ボルトショック』」

バチバチバチィ!!
「びっぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 水を伝って、電撃を思いっきり流してあげた。

 純水だと電流は流れにくいが、そこはしっかりと考えて周囲の土などで汚しています。

「ぐがはばぁぁ‥‥」

 電撃で痺れたのか、愚者の動きが鈍る。

 けれども、あの様子はわざとだと分かってしまう。


「さてと、だいぶ疲れたようだね…‥‥」

 そのわざとらしい演技にのったふりをして、歩み寄る。

 手に構えるは氷のガントレット。

 されども、攻撃しないように見せかけて近づき…‥‥愚者の目が光った。

「ばがめ!!ごごまでぐればよげぎれまい!!」

 ある程度の距離まで近づいたところで、愚者がバッと跳び起き、再び突撃してくる。

 今度は魔法を警戒して、一直線には来ず、反復横跳びのようにジグザグに来たが‥‥‥予想通り。

「はははははは!!ごれでもぐらべぇぇぇぇぇ!!」

 大剣を振りかぶり、勝利を確信したかのように笑っているが正直ウザイ。

 拳で受け止めるのに間に合わないと思っているんだろうけれども…‥‥残念ながら、既に準備済み。

 何のために、この魔力が体に纏っていると思う?




ガギィン!!
「なっづ!?」

 ただの布地のように見えるマントで剣を防いだことで、愚者の表情が驚愕に変わる。

 ひょっとこのような驚愕表情‥‥‥マヌケというか、いら立つ相手のはずなのに少し笑いたい。


 それはともかくとして、今この身に纏っている衣はハクロの糸性だけではない。

 怒りで噴き出た魔力が濃縮し、実体化した黒い衣。

 魔力そのものであり、膨大な量を持っていただけに、その密度も非常に高く、こんな愚者の剣では傷ひとつもつかない。

 それに、魔力で出来た布という事は…‥‥


「こんな芸当もできるようだ」

 そうつぶやき、頭でのイメージが反映され、瞬時にその衣に変化が起こる。

 いまだに大剣を受け止められて呆然としている愚者めがけて、衣の一部が鋭い棘となり、一直線に向かう。

 かろうじてそのことに気が付き、紙一重で交わしたようだが…‥‥さらに棘から棘が出るとは思わなかったようだ。

ザクザク!!
「ぎええええええええええ!?」

 思わぬ位置からの攻撃に、悲鳴を上げる愚者。

 だがしかし、さらに棘から棘が…‥‥察さった場所から細かい棘が伸び、どんどん刺さっていく。


 根性で逃れ、距離を取った愚者。

 だが、今の攻撃で血は流れ、もはや疲労困憊。

 そもそも先ほどまでの隕石モドキでの攻撃などで生き延びていた分、体力も限界に近かっただろうし、今のでずいぶんとやられただろう。


「ぐっが……な、なぜだ!!なぜごのげんをでにいれだおれがごごまでやれられるのだ!!」
「そりゃ、決まっているだろう?」

 何やらぶつぶつとつぶやいたようだが、その答えははっきりと目に見えているだろう。


「お前がその剣とかの力を手に入れて強くなったと勘違いしているんだろうけれども‥‥‥‥所詮はそれに頼るだけの実力が無い弱き者。いや、弱い者と言う言葉すらふさわしくない」

 よく弱者、強者と言う言葉があるが、そんな言葉はこの状況に当てはまらない。

 目の前のこの愚者は、いわゆる力を手に入れてヒャッハー状態になっただけの何も変わらない、大馬鹿野郎。

 ゆえに、相手との実力差すらも見抜けず、ほぼ剣に振り回されるだけの何もない馬鹿者。

「だからこそ、こっちとしては加減が難しいんだよな。人の大事な妻を暴力を振るい、攫った相手をボッコボコにしたいが…‥‥ついうっかり手を抜けば、その瞬間に消し飛ばしてしまうからね」

 ぐわっと再び怒りがこみ上げ、自然と威圧が出てしまう。

 まぁ、手加減しにくい力というのも考え物だが‥‥‥‥この件を後々活かしたいところだな。


「ま、それで終わりか?それなら最後には‥‥‥‥お前が剣で来るのであれば、こちらも剣で答えてやろう」

 衣を変化させ、一振りの何の装飾もない剣を作り上げる。

 剣術なんて、正直からっきしだが、この目の前の愚者にはそれで充分。


「ヴぎぎぎぎぎぎぎ!!ぶざげるなあ”!!あの女はおれのものにじで、おマエもブットバジデやraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

……言葉がだんだんおかしくなってきたのか、最後の方、発音が無茶苦茶になって来たな。

 流石に隕石群で頭をぶつけ過ぎたせいか?いや、剣の力とかに飲み込まれてきたのか?

 違うな、元からか。

「Gaooooooooooooooooooooooooooooo!!」

 もはやただの雄たけびにしか聞こえない咆哮をあげ、全力で突っ込んでくる愚者。

 ならば、先ほどの宣言した通り、剣で答えてやろう。



 振り下ろされる大剣に対して、こちらの剣をぶつける。

 ぶつかり合う音が出るとは思うが‥‥‥‥まぁ、でなかった。

ガッキバキィィィィィン!!
「な”っづ!?」

 相手の剣がこの一撃で折れ、意味をなさないものになってしまう。

 そしてこちらの攻撃は止まらない。

「最後ぐらいは、花を飾って逝ってこい」

 剣を持たぬ片腕を相手に向け、魔法を発動させる。

「じゃあな」

 そう告げると、愚者の体が宙に打ち上げられ‥‥‥‥爆発した。

「gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 大空で花火のように爆発して落下する愚者。

 当然受け止めるものもなく、そのまま地面に激突したが…‥‥まだ息はあるようだ。



 思った以上に生命力がしぶといのだろうが、もはや手を下す価値もない。

「‥‥‥とりあえず、これで良いか」

 ハクロたちへの危害を加えた輩だが、これ以上やる意味もない。

「ワゼ、いるか?」
「ハイ」

 問いかけると、すぐにワゼが横に現れた。

……先ほどまで誰もいなかった場所に瞬時に現れるメイド‥‥‥うん、深く考えないほうが良いか。

「この廃棄物、処分を任せる」
「了解デス」

 とにもかくにも、ひとまずはこれでスッキリしたのか、怒りの感情は消えていた。

 気が付けば身にまとっていた魔力の衣も霧散しており、いつもの状態に戻っている。


 ワゼに処分を任せつつ、僕はハクロの元へ向かうのであった。



――――――――――――――――――――
SIDE遠くから見ていた神獣たち

【‥‥‥アレ、中立で片付く輩であーるか?どう見ても悪レベル、いや、それ以上に無茶苦茶していたであーる】
【あの凶悪なメイドが従うわけだと納得はできたが‥‥‥怖いな】


 戦闘が終わり、ワゼが廃棄物の処分を始めていたころ、騒ぎを聞きつけ、遠方から見ていたシグルドとポチは、互に起きていた惨状に身を震わせた。

【あれは間違いなくというか、今代の魔王確定であーる。‥‥‥‥しかも、歴代で1、2位を争うレベルであーるな…‥‥】
【怒らせたら怖い系、それに当てはまるタイプか】
【そうであーるな。中立ゆえに、自身の親族への危害に対しては殲滅対応となるようであーるが‥‥‥まぁ、アレが悪だったら今頃世界は滅んでいたであーる】

 シャレにならないような未来が想像でき、二体はぞわっと悪寒で震える。

 シアンが立場的に中立の魔王で良かったかもしれないが、アレが悪の魔王だったらこの世が終わっていたかもしれないのだ。


【しかし…‥‥あの汚物であーるが、あの持っていた禍々しい剣……まさかと思うが‥‥‥】
【ん?何か心当たりがあるのか?】
【心当たりというか、何と言うか…‥まぁ、とりあえず実際に出向いて確かめるであーるか】
【どこに?】
【ダンジョンコアであーる。ここの奴が、やらかした感があーる。また同じような事態になった時に、壊滅は困るであーるからな】
【ああ、そうだな】

 何にしても、二度と同じような光景は見たくない。

 今回の件の元凶に心当たりがあるらしいシグルドに、ポチも付いていくのであった。



―――――――――――――――
SIDEワゼ

「さてと、とりあえずこの汚物ですガ…‥‥」

 シアンが去った後、地面に残ったものに対してワゼは考える。

 この戦闘中にやった調査によれば、この汚物の正体はメグライアン王国第1王子シャーグらしい。

 どうも本来はボラーン王国の使節団にいて訪れる予定だったようだが、道中でモンスターの襲撃に遭い、重傷を負ったのでここに湯治に来たらしい。

 だがしかし、この汚物はどうも矯正しそこねた馬鹿者らしく、資金がほとんどない。

 ゆえに、まともな治療を望めなかったのだが、欲望が意外にも強く、持ち前のしぶとさで女湯の覗き見などを行おうとして、フルボッコにも会っていたようなのだ。

「で、この剣が元凶のようなものですが…‥‥まぁ、一種の欲望増加装置ですカ」

 折れた剣を分析し、ワゼはそうつぶやく。

 剣に操られていたとも取れるかもしれないが、どうもこれは元々あった欲望を増加させる効果があったようで、最初から本人の意思にあったものであり、無罪放免とはいかない。

 かと言って、他国の王子という事もあり、下手に処分しても国際問題という面倒くさい事になりかねないだろう。

「まぁ、それはそれで国に任せたらいいでしょウ。…‥‥あと、そこに隠れている人、出てきてくだサイ」

 ぎくっと言う音が物陰から聞こえたような気がするが、気にせずにいると、そこから一人の男が出て来た。

「‥‥‥確か、神聖国の人ですネ。この汚物の回収に来たのでしょうカ?」
「いや、違う」

 その男にワゼは見覚えがあり、そう問いかけると返答が来た。

「こちらの目的は、その折れた剣。預言者がたまには別物を喰ってみたいとかで、この気配を察知したらしいが‥‥‥持って行って大丈夫だろうか?」
「ええ、かまいまセン。できればこの汚物の処理もお願いしたいデス」
「いや、それはいらないそうだ。不十分というか、腐っているけど収穫時期ではないとか…‥‥言えると擦れば、そいつについていた護衛達の元へこっそり引き渡せばいいと思うぞ」
「なるほど、ではそうしマス」

 とりあえず、折れた剣を拾い、その者へワゼは渡す。

 どう使われるのかはわかっているし、この処理方法へのアドバイスをくれたお礼もある。

 何にしても剣を持ったその者はその場を去り、ワゼも愚者を運び始めるのであった‥‥‥
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