拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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良からぬ企みは、なぜこうも生み出されるのか

#332 海を渡り、世界をちょっと見るのデス

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SIDEシアン

 良い知らせに対しては、できれば早めに祝ってあげたい。

 そういう訳で、さっさと準備を済ませ、僕等はディングルア王国へ、ミスティアの姉を祝うために海を渡することになった。


 この世界の海上の移動手段は、主に帆船やらモンスター、魔道具などと幅広く、実はそこまで不自由ってほどでもない。

 なおかつ、今回はきちんと相手の国へ祝い事をするために向かうという連絡をしつつ、移動手段として用意されたのは…‥‥



「‥‥‥航路に支障ないデス。このままいけば、3日程度で辿り着きマス」
「従来の移動方法でも、1週間はかかる距離を半分とは…‥‥相変わらず驚かされますわね」
「でもだいぶ、落ち着いて対応できるようになっているよね」
「…‥‥あれ?もしかして、わたくし慣れてきてしまいましたかね?」

 ゆらゆらと、波に揺られながら移動する船の上で、その事実に唖然とするミスティア。

 うん、まぁ気持ちは分からなくもない。常識外というのは長く振れ続けると、徐々に自分たちも慣れてきてしまい、いつの間にか平然としてしまうのだ。

 それはそれで何か大切なものを無くしたような気がするが…‥‥気にしない方が良いだろう。


「にしても、これ帆船とほぼ変わらない見た目なのに、スピードが明らかにおかしいなぁ‥‥‥後ろの水しぶきとかほとんどないのに…‥‥」
「もともと他国へ出向く用の王家の船でしたが、少々改造させていただきまシタ。機関室は既に試験を終え、安全性を確認した装置を使用してますので、航行の安全を確保できていマス」

‥‥‥この船、元々は海を越えた先にある国々との付き合いもある、ボラーン王国が所持している王家用の帆船。

 だがしかし、いつの間にかワゼの手によって改造が施されており、外装はほとんど弄られていないのだが、中身だけがとんでもないものにされているようである。

 某銀河を行く戦艦か蒸気機関車か?


「ドーラも一緒なら良かったかもしれないけど、無理だったか」
「植物ですし、塩害などもあるのでしょウ。その代わりに、あちらについた際にこれをと言って渡されたものがありマス」
【プチャケェ!】
「‥‥‥何この手のひらサイズドーラ」
「携帯用プチットドーラというものらしいデス。あちらで植えれば、きちんと同じ個体として接することができるそうデス」

 なんというか、ドーラもワゼに似てきたような気がする。

 奴もまた、シスターズみたいに増加する計画でも練っているのだろうか?そのあたりは今度、聞かないといけないな。


「でも、娘たちも海を見てはしゃいでいるからいいか‥‥‥いや、良くないなあれ!!」
【ふみゅふみゅ~!!水面早ーい!】
「みー!風が気持ちいいよ―――!!」
【ヒルド!!糸で水面走行をしないでください!!オルトリンデもマストから手を放さないで、そのまま降りてきてくださーい!!】
「お姉ちゃんが受け止めるから、そこでおとなしくしてにょぉぉぉぉぉ!!」

 ここは既に陸地から離れた海上ゆえに、大海原を見てテンションが上がってしまったらしい。

 いくら安全を確保している船とはいえ、流石に危ない真似を見過ごすわけにはいかず、慌てて娘二人を船上へ連れ戻す羽目になるのであった…‥‥





【‥‥‥ふぅ、ようやく昼寝をしてくれましたよ‥‥‥】
「陸地よりも範囲が狭いのに、余計に疲れたな‥‥‥」

 スヤスヤとハクロの蜘蛛の部分の背中の上に乗って眠る娘たちを見て、僕等はそうつぶやく。

 祝いに向かっているのに、道中で疲労するのもいかがなものか‥‥‥可愛い寝顔だから良いけど、だんだん活発さに磨きがかかって来たなぁ。

「というか、まだ生まれて一年も経ってないのに、なんでこうもパワフルに成長しているのやら‥‥‥」
「人間の赤子ならばこうは無いですが‥‥‥成長、早いですわね」

 うん、早いと言えば早い。

 やっぱり、人外な時点で、成長速度は並外れているのだろうか。

【んー、でもまだ、そこまで成長しているわけでもないですね…‥‥精神的な面での成長の方が、肉体よりも早いのでしょうか】
「大人になったら、それはそれで大変そうな‥‥‥いや、ハクロの例があるからそうでもないか?」

 今でこそ穏やかでのんびりしているハクロだが、彼女の義姉のケンタウロスの彼女いわく、ハクロも幼い時はとんでもなく活発に動き回る子だったらしい。

 どこかで性格が変わったと思われ、同じようなことがこの娘たちに当てはまる可能性はあるだろう。

 まぁ、その時がいつ来るのかは分からないし、来るとも限らないけれど。できれば来て欲しいような、今の活発な可愛さを考えると来て欲しくない様な…‥‥親心としては複雑である。

「お姉ちゃんの立場からすれば、大人しくしてほしいというのもあるにょ…‥」
「ロール、なんか溶けてない?」
「たおれているだけにょ‥‥‥」

 ぐでーっと、既に力なく倒れている、本日のMVPともいえる活躍ぶりを見せたロール。

 ヒルドが船内を駆け巡る際には氷の魔法で道を素早く遮断して制御し、オルトリンデが大空を飛んでいきそうになれば氷のドームを作製する。

 我が家の頼れる長女であり、妹たちのために滅茶苦茶頑張っている。

【ほら、私の背中で寝てくださいよ。貴女も一緒に寝ましょう】
「ん、じゃあおかあしゃん、そうさせてもらうにょ‥‥‥」
「よっと、運んだげるからな」
「おとうしゃん、ありがとう‥‥‥」

 体を持ち、そっとハクロの背中に乗せると、さらにだらーんっと手足を伸ばして自由になるロール。

 相当疲れているようで、ぐったりしている。

「‥‥‥王家の後継関係で、わたくしも速めに子が欲しい所ですが‥‥‥まだやめておいた方が良いのかしら」
「あ、それは問題ないにょ。どれだけ生まれても、お姉ちゃんとしてきちんと務めるにょ」

 その様子を見て、不安そうに口にしたミスティアに、ロールはそう答える。

 ある意味リッパな姉としての姿に、僕等はその成長ぶりに感嘆を覚えるのであった…‥‥

【そう言えば、最近シアンとやっているようですけれども、それはそれで大丈夫ですか?】
「‥‥‥ハクロさん。子供たちも最近自分で出来るようになってますし、貴女も道連れにできますわ」


【ガウガーウ!!】
「どうしたクロ、いきなり吠えて‥‥って!!」

ざっぱぁぁぁぁぁぁぁん!!
【グゲエエエエエエエエエエエエエ!!】

「でっかいイカ、いや、クラーケンが出たぁぁぁぁぁ!?」
「あ、そう言えばモンスター避け装置の電源はゼロツーに頼んでましたが‥‥‥忘れていたようデス」

‥‥‥これ、無事にたどり着けるかなぁ?


――――――――――――――――――――――――――――――
SIDEディングルア王国

‥‥‥海を越えた先にある、ディングルア王国。

 その王城内、厨房‥‥‥正確には王太子妃専用厨房地獄で、ミスティアの姉でもあるアルティア・ザ・ボラーン改めアルティア・ザ・ディングルアは今、鼻歌を歌いながらご機嫌に料理をしていた。

「ふ~んふふ~ん♪」
「‥‥ああ、アルティア。また君は料理に精を出しているのか」
「その通りよ~。今度こそ、貴方にきちんとまともな料理を作ってあげたいと思って、やっているのよね~」
「んー、私としては今の料理の方が、他の普通の料理よりも美味しいからこそ、できればそのままでいて欲しいと思うんだけどなぁ」

 アルティアの背後から現れたのは、この国の王太子モルド・ザ・ディングルア。

 次期国王になるための勉強もしているとはいえ、きちんとアルティアと触れ合う事を忘れずに時間を見つけてはこうしてイチャイチャしているのである。

「そう言えば、さっきも刺客が倒れていたけど、彼に味見させたのかい?」
「え、あれ刺客だったのかしら?名のある料理人で、私のこの料理の腕を治せるかもしれないと、真摯に教えて下さった方なのよね」
「いや、あれは伯母上からの刺客だったようだけど‥‥‥多分、料理で油断している隙を狙ったんだろう。そのためにもまずはそこから近づいて‥‥‥と思ったんだろうなぁ。何で彼女の料理を食べられないのかなぁ?刺客にしても、そのあたりの礼儀はあるでしょ?」

…‥‥もしこの場に彼らの側近がいれば、全力で否定するであろう。

 第1王女でありながらも、最凶の料理の腕には誰もがかなうはずもない。

 だがしかし、何故かこの王太子だけはアルティアの物体Xどころではない代物を平然と食べられるのである。

「味音痴って訳でもないんだけどなぁ。これ結構おいしいのに‥‥‥ずずっと」
「あ、まだ作っている最中なのよ!もぅ!!」
「あははは、ごめんごめん!」

 ぷんすかと怒るアルティアのポコポコ叩く手に、王太子は平然として彼女を抱きしめ、笑いながらそう答える。

 政略的な意味合いもあるこの婚約でもあるが、一応彼らには愛はあり、一見すれば普通の馬鹿ップルにも見えなくはないだろう。
 
 その間にあるのが、先ほどから鍋底を溶解している料理でなければ、甘い空間とも思えたが‥‥‥まぁ、お似合いな二人であった。


「あ、そう言えば妹から連絡があったわよね。懐妊祝いのために、直ぐに来るって」
「時間がかかるはずなのに、比較的早く着くとあったが‥‥‥君の国、過去のこの国の錬金術の発展形があるのかい?」
「いいえ、無いわね。いうのであれば、妹の夫のメイドがとんでもないことぐらいかしら」
「んー、できればうちの錬金術師たちと話さない方が良いかもなぁ‥‥‥。でも、弟が絶対やらかすか、叔母とかが仕掛けてくるか‥‥‥そこはどうしようもないな」

 そうつぶやきつつも、再びアルティアの料理をさっと味見する王太子。



‥‥‥このディングルア王国は、過去には物凄い発展していたという話がある。

 だがしかし、今はそれは失われ、それでも素晴らしい国へ変えようと努力をしている国でもあるのだ。

 けれども、過去のその栄光の記録を忘れられない者たちが、何か蠢いていることを王太子は把握していたが‥‥‥それでもすべてを制御できているわけでもない。

「ああ、君との婚姻が無効になるようなことにはなってほしくないなぁ。確か、妹さんの夫は魔王もしているって話もあるし、流石に馬鹿をやらないとは思うけれども‥‥‥」
「まぁ、その時はその時かしらね。できる限り、私としてもそのあたりもどうにかできるようにしておきますわ」

 既に次期国王としての自覚もあり、国を亡ぼすような真似をする馬鹿がでないようにする王太子に、王太子妃としてアルティアは頷く。

 どちらもしっかり王族としての自覚もあり、理想的な夫婦でもあるだろう。



「うわああああああ!!なんかでたぞぉぉぉぉぉぉ!!」
「ひげぇぇぇぇ!!これ王太子妃さまの料理スライムだぁぁぁぁあ!!」

「‥‥‥あら?いつの間にか、逃げてしまいましたわ」
「いっその事、それを馬鹿者たちにあげれば良いような…‥‥でもなぁ、美味しいのにもったいないからねぇ」

 少々廊下が騒がしくなりつつも、騒ぎを収めるために、剣ではなく完食してやる意気込みで、王太子はフォークとスプーン、切り分ける用のナイフや手に持つための小皿などを装備して、すぐさま向かうのであった‥‥‥





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