拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波

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幸せを乱されたくないので、徹底したい

#381 彼女がいない日デス

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SIDEシアン

「‥‥‥あれ?ゼロツー、ワゼたちの姿が見えないんだけど知らないか?」
「昨晩、全シスターズト何処カへ向カイマシタガ、詳細不明。現在、私ガゴ主人様ノ対応ヲサセテイタダイテオリマス」

 いつも通りの日常になるかと思った本日、朝からワゼの姿を見なかった。

 それと他のシスターズの姿もなく、いたのはゼロツーだけであったが‥‥‥ほぼ全員向かったって言うけど、どこにだろうか?

「あれだけ多くいたのに、いなくなると何と言うか‥‥‥静かすぎる?」
【それなりに多く稼働して、一緒にいましたもんね】
【あのメイドがいなくなるとは、何かがあったのだろうか?】

 王城内の中庭にて、ハクロと義姉のルルと共に茶を飲みながら、そう語り合う。

「うーん、一斉にいなくなるのはちょっと考えられませんわねぇ…‥‥フィーアもいないですし、大変ですわ」
「あらあら、仕事の山はやっぱりすごいわね~」

 執務室から持ってきたのか、大量の書類を片付けながらそうつぶやくミスティアに彼女の姉のアルティアは微笑みながらそう口にする。

 娘たちもそれぞれ赤子組は各々手に持ちつつ、動ける組はドーラも一緒に面倒を見ている。

 大きくなった体格を生かして滑り台になったり、ブランコを作ったりして、共に遊んでいる様子は微笑ましいのだが‥‥‥やはりこう、物足りない感はあるのだ。

「ワゼが黙って出かけるってことは今までなかった…‥‥わけでもないかな?」

 ちょっと集団で一斉に消えてしまったのは気になるのだが、このような事は今さら始まった事ではない。

 いつも僕らの世話をしつつ、家事の傍らで役に立つ物を作ったりするし、何か意味もなくして消えることはないはずである。

 なので、こうやって全シスターズがいなくなっても不思議という事も特にないが…‥‥


「‥‥‥ゼロツーは残っているんだよなぁ。確かシスターズ‥‥‥には入らないんだっけ」
「ハイ。私ハ試作機デスカラネ」

 ワゼの原型というか、彼女の製作者の手によって生まれた試作品。

 それがゼロツーだし、彼女だけがここに残ってもおかしくはないだろう。試作機という事で、彼女以上の機能がワゼにはあるし…‥‥まぁ、無駄な機能も一緒にそぎ落としているらしいけど、一部がどう見て差があり過ぎるのは何故なのだろうかという部分が気になりもするが。

 とにもかくにも、彼女がいないのは静かすぎるような気がする。

 寂しいというか、何と言うか…‥‥この世界に来て最初に出会った人(?)でもあるし、長い付き合いだったからなぁ。

「集団休暇とかは無いかなぁ…‥‥ああ、でもそう言えば今さら気が付いたんだけど…‥‥」
【どうしたんですか、シアン?】
「…‥‥彼女達って、そもそも休暇を取った時があったっけ?」
【「…‥‥」】

 その言葉に、ハクロもミスティアも顔を合わせて首をひねった。

【うーん、言われてみれば、ワゼさんたちってずっと稼働しているような‥‥‥‥】
「オーバーホールとかで、休む時があるらしいけれども‥‥‥考えて見れば、ほとんど休んでいないような気がしますわねぇ」

 思い返せば、四六時中働いているんだよね…‥‥もしかして、今いないのは世に言うストライキと言うやつなのだろうか?いや、姿見せてないから全然違うか。

「何をしているのかは分からないけど、戻って来るまでどうしようもないからなぁ…‥‥」

 気になりはするのだが、いかんせん探す手段はない。

 ゼロツーの方から通信を入れる事も可能と言えば可能らしいが、現在ちょっと試せないらしい。

 なんでも、通信できない場所らしいが…‥‥洞窟とか、山奥に出も籠っているのだろうか。

「‥‥‥探しに行ってみようかな。何をしているのかは分からないけど、黙って動かれるのは流石にやめて欲しいからね」
【まぁ、結構黙って行動されちゃってますよね】

…‥うん、言われなくても分かっているんだよね。

 彼女の場合、本気で色々黙ってやらかし、事後承諾することが多い。

 命令して止めようにも、なんかやっていたりするし、そこはもう彼女の性分という事で諦めた方が良いだろうし…‥‥

「‥‥あ、そっか、あれが使えるかも?」

 ふと、その黙ってやらかしてこられた数々の事を思い出す中で、探す手段に最適な物が出来たばかりな事を僕は思い出した。

 考えて見れば、それを利用して位置を特定して、向かうことはできるだろう。

「移動手段としては、この衣も使えるし‥‥‥ちょっと探しに行ってくるね」
【ええ、わかりましたよ】

 席を立ち、その使えそうな装置を利用するために、僕は動き出すのであった‥‥‥‥




―――――――――――――――――――
SIDEワゼ

…‥‥世の中には、想定外なことが多い。

 何もかも、計算して結果が出るようなものばかりではなく、それを超える何かがある事も分かってはいる。

 フロンの計算能力でも完全に処理し切れず、何処かで必ず誤差を起こすものもある。

 そして、その代表格として挙げられるのは、人の心でもあり‥‥‥‥



バチィッ!!バシィッ!!

 思考の中に沈んでいた中、自身の出す火花の音で、直ぐに彼女は現実に戻った。

 辺りは洞窟内…‥‥正確には洞窟に見せかけた人工物であり、明かりも照らされてはいるが、あちこち破損して暗くなっている。

 周囲で同じように倒れているのは、何処かが破損ししたシスターズばかりで、全機無事ではない。

「----破損確認。E13回路からG21回路まで断裂、および同様に全回路に損傷確認‥‥‥」

 ギシィっと音を立てつつ、ワゼは火花を散らしながらたちがある。

 そして、目の前のその人物…‥‥いや、人であった何かに向き直る。


「‥‥‥‥」
「‥‥‥何も言わず、暴れるだけ暴れて‥‥‥デスカ」

 振るわれる拳に対して、直ぐに反応してかわすも、自身の動きが鈍く、振るわれた風圧で吹っ飛びかける。

「シ―――――!!」
「セー!!」

 シスターズがそれぞれ合体不完全を惹き越しつつ、それに向かって攻撃を仕掛けるも防がれ、強制解除されて壁に叩きつけられる。


「なるほど…‥‥合体個所の弱いところでスカ‥‥‥」

 ガシャンっと腕を砲撃を打てるように切り替え、砲を撃ちまくるが全てを回避され、投げつけられた岩石で破壊される。

…‥‥彼女達は今、この洞窟モドキの中で戦闘を繰り広げていた。

 全機出動し、合体し、最初から全力で相手にしているのだが、その相手によってことごとくふっ飛ばされる。

 通常であれば、おそらくこの戦力差によって逃走・降伏する相手がいるだろう。

 けれども、今の相手は通常でもなんでもなく、おかしくなっているような存在。

「流石というべきか‥‥‥製作者だけに、体の問題を分かっているようデスネ」


 破損したのか漏れだした特殊循環液をぬぐい、彼女は目の前の相手…‥‥ワゼの製作者であった相手にそう問いかけるが、相手は返答しない。

 普通の人間でもはなく、どうやらもっと別の相手になった‥‥‥父と呼ぶべき相手なのだろうが、もはや父でもないだろう。

 フロンが辛うじて残した腕で分析したところ、どうやら目の前の相手は、ワゼの製作者であって、そうではない不完全な存在…‥‥もとにしたクローンというべき存在。

 オリジナルの行方は不明だが、この地で暴れていたのはそのクローンの不完全体であり、大暴走を引き起こしているようなのだ。

「‥‥‥各地に反応があったのは、誰かが作ろうとした、クローンの部品‥‥‥義体などもあったのは、それらもまたコピーになりうるからですカ…‥‥」

 どこかの誰かが、どうもワゼの親でもある製作者のコピーを製造しようとしていたのが、あの多くの反応があった原因。

 各地で密かに作るための拠点が製造され、様々な手段を用いて製作者を複製しようとして、そのうちの一つが目の前にある失敗作なのだろう。

 だが、それでも複製された存在の不完全な失敗作とはいえ、製作者のような頭脳があるのか、自己改造を施し、その明晰な頭脳と手に入れた驚異の武器の数々は、はるかにワゼの持てる技術を凌駕していたのである。


 ここで生まれ、暴走し、自己改良をして引き籠っていた製作者のクローン。

 見る感じ、そう長くはないはずの設計だったようだが、何者かの意思が宿ったかのように動いており、生きる人形でもなく、れっきとしたただの怪物と化しているようだ。

「‥‥‥それでも、複製品でも、製作者デスカラネ…‥‥殴れる機会があったのは良い事なのデス」

 ちょっと私怨が混じっているが、複製品のまがい物というような存在になっているとはいえ、製作者に近いものな事は間違いない。

 だからこそ、削られた恨みを晴らしつつ、製作者でもあるような相手をどうにか止めたかったのだが‥‥‥作られた存在である以上、作った存在の方が上だったのかもしれない。


 ダダダダダっと、相手が即興で作った機関銃が連射され、シスターズが破壊されていく。

 幸いというべきか、最重要部品などは結構頑丈に作っているので後で直すことも可能だが、このまま放置すればこの地から出て、さらなる災厄をもたらすのが目に見えている。

 そして場合によっては彼女のご主人たちがいるところまで向かい、面倒ごとになるのも分かる。

 だからこそ、今この場で排除したいのだが…‥‥戦力差はあったはずが、今はもう逆転。

 壊れたシスターズの破片すらも、無駄に優秀過ぎる頭脳で再利用し、こちらを破壊していく。

「‥‥‥っつ、魔導砲もデスカ」

 ふぃんふぃんふぃんっと不穏な音が聞こえてきたと思ったら、いつの間にか作られていた兵器の砲口が向けられ、エネルギーが充填されていくのが確認できた。

 避けようにも既にダメージを追いすぎて稼働できず、他のシスターズも倒れ伏し、誰も彼もが動けない状態。

 しかも、分析したところ発生する熱量は非常に高く、重要部品などが耐えられないようだ。

「‥‥‥壊れるのですカ」

 黙って片付けようとしたことが、そもそもの間違いだったのだろうか。

 自分はただ、大事な主のために動き、その害を排除しようとしただけの事。

 その手を煩わせることがないようにしたかっただけだが…‥‥この様子だと、結局煩わせてしまうようだ。

「ハハハ‥‥‥」

 回路がおかしくなったのか、苦笑する声しか出てこない。

 どこかで彼女は全てができるような気がしてもいたのだろうが、結局数を増やそうが、質を高めようが、メイドな事はメイドなのだ。

 その領域を越え過ぎた部分があり、色々と命令違反もしたところもあり‥‥‥その天罰が今、下ろうとしているのだろう。

「‥‥‥いえ、そもそも天罰自体、くだらない話デス」

 先日のロキの件もあるし、悪魔とかもいるし、今さらすぎる話。

 罰ではなく、こうなる運命であったと考える方がよっぽどいい。



 目の前の砲の明かりがどんどん増えていき、もうちょっとで発射される。

 動こうにももはや抵抗もできないし、自爆してでもと思ったが、意味もない事だとわかる。



「--------!!」

 まがい物の製作者モドキの方は、言葉を出せるような状態でもないのか、無言で引き金を引いた。

 その瞬間、その手に持っていた砲が火を噴き、凄まじい熱量が彼女の元へ襲い掛かる。

 地面が融解し、どんどんその明かりが迫ってくる。

 これまでかと思い、ワゼは静かに目を閉じたが‥‥‥‥数秒経っても、その熱量が来なかった。

 いや、違う。直撃したという音もなければ、衝撃もない。

「アレ?」

 自身の死を覚悟したのに、何故なのか疑問に思い、彼女は目を開けた。

 そこにいたのは‥‥‥



「…‥‥何をしでかしてというか、なんでこうなっているんだよ、ワゼ」
「ご、ご主人様!?」

 彼女が仕えている、シアン。

 彼が目の前に立っており、真っ黒な魔力の衣が正面から受け止めていたのだ。

「何故ここに!?」
「忘れたのか?地下の方にある人探しの装置で、見つけたんだよ」

 その言葉に、ワゼははっとした。

 言われてみれば、居場所も知らせていないのにここを探る手段としては、確かにその装置があったことを。

 かなりの距離も時間もかかるのだが…‥‥どうやらシアンは自分なりに全速力で来たらしい。

「というか、反応に関してのものがそのままだったし、行く前に見たら一緒みたいな感じになっていたからね‥‥‥なんとなく妙な予感がして来てみればこれだもん」

 ワゼが先に調べていた、製作者の位置反応。

 ワゼの位置を調べる際に重なっていたらしく、妙な予感がして全速力で来てくれたらしい。

「-----!!」

 シアンに防がれたのを見て、製作者モドキが声にならない咆哮をあげる。

「で、ワゼ。何がどうなってこの状況なのかは後で説明してもらうとして‥‥‥今は単純に、あれが敵かどうか言え!!」

 いつもよりも強い口調。

 勝手に動いたことや、この周囲の悲惨な状況を見て色々と言いたいことがあるようだが、それよりもまずは、相手の情報が欲しいらしい。

 ご主人様の命令に対して、直ぐに答えるべきメイドとしては…‥‥

「は、ハイ!!製作者モドキであり、完全なオリジナルではありまセン!!排除すべき敵デス!!」
「了解っと!」

 ワゼのその言葉を聞き、直ぐにシアンは動き出す。

 纏っていた黒い魔力の衣が増大し、彼の体を覆う。

「さてと、敵である以上、うちのメイドに散々やらかしてくれたようだし…‥‥メイドだけど、家族な事は家族。それを傷つけようとした罪はここで償ってもらおうか!!」

 シアンから発せられるのは、凄まじい怒気。

 ハクロたちへの危害がありそうな時同様の者であり、周囲の空間が力の大きさ故か歪み始める。

 メイドであっても、大事な存在であることは、どうやら変わりなく、相手は盛大にシアンの地雷を踏み抜いてしまったらしい。

 主人を怒らせてしまったことに関して、謝るべきなのかどうかという事を持ったが、それ以上に大事にしてくれていたと感じられた部分に、彼女は密かに心に感動を覚える。

 だが、今はそれどころでもないだろう。

 何しろ相手は、全シスターズを相手にしてボッコボコに返り討ちにしてきたのであり、魔王であるシアンだとしても対応できるのかどうかが分からない。

 ただ、それでもどこか安心できるような気がして、自身の破損が酷く、ワゼの意識は一旦自己保存のためにシャットダウンされて落ちるのであった…‥‥‥




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