スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

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第1章:幼少期~少年期前編

4話 惨劇の跡の、出会い話

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「‥‥‥う、うぅぅん…」
「あ、目が覚めた?」

 時間がそこそこ経過し、帰らないと不味そうな頃合いになって来たところで、ようやく助けて気絶したままになっていた女性‥‥‥おそらくはアラクネとみられるモンスターの彼女が声を出し、意識を覚醒させたようだ。

 あたりは少し薄暗くなり、夕暮時となって来て、森の中が暗くなってくるのでちょっとした恐怖心と、帰宅が遅くなったら激怒するであろう今世の母の怒りがより恐怖を上回っていたりするのだが、それでもスライムに襲われて気絶していた彼女を、ここに放置したままにしようとは思えなかった。
 
 だからこそ、起きるまで傍で待っていたのだが、ようやく起床となったらしい。
 意識が戻った様子で、少々まだ完全に目が覚めていないのかぼうっとした表情になっているが、それでも何とか意思疎通ができないか試みてみる。

「えっと、大丈夫かな?お姉さん。モンスターのようだけど‥‥」
「ピュ‥‥‥え、ええ、大丈夫…かな?まだ頭がぼうっとしていて、あ、いや、そうだった。私は、あのスライムに襲われ‥‥‥ええ、貴方が助けてくれたのを、覚えているよ」

 はっきりしていなかった意識も、口に出して状況を整理することで、はっきりいと理解したらしい。

 というか、モンスターだけどどうやら普通に人の言葉が通じるようで、内心ほっとする。これで意思疎通不可能なものだったらどうしたものかと悩むところだったけど、人に近い外見を持っているせいか、発音なども近いようだ。

 そのままこちらに顔を向け、目をじっと見られる。
 なんというか、こうやって間近で見られると気恥しいような気もしてくる。
 それに、彼女をよく見れば、蜘蛛の部分を見なければ美しい色白の美人の女性にしか見えないんだよなぁ…‥‥スライムによって色々溶かされて全裸になっていたせいで、直視しづらい状態だったけどね。
 一応、寝ている間にどうにかしようと思って、上着を脱いでかけてあげたんだけど、これはこれでちょっと扇情的なものになったというか、流石に5歳児の上着ではほぼ意味を成していなかった。

「うん、助けてくれて、本当にありがとう。私、もう少しでやられるところだった」

 スライムに物理的にも性的にも捕食されかけたせいか、思い出して少し震えはしたが、それでもはっきりと僕の方に向かってお礼を述べてくる。
 助けて良かったと思う反面に、ぺこりと丁寧なお辞儀をしながらのお礼のせいで、その大きなものがもろにさげられているのを見てしまい、目のやり場に困るのはどうしたものかとも思ってしまう。
 蜘蛛の体があるのに、それ腰回り付近の方からであって、ほぼ人間の女性の身体なんだよなぁ‥もう少しどうにかならないかとツッコミをいれたいところだ。

 何にしても、まずはお互いの身の上やここに至るまでの状況に関して、軽く話し合って見ることにした。

 話が通じてくれるのは嬉しいが、どうやら人間の女性のような姿を得たのはつい最近のことであり、それまでは人間と遭遇して狩られそうになったりして逃げまわったようで、その最中に人の言葉を覚えて来たからこそ、こうやって話すことが出来るらしい。
 それと、モンスターは本能的に自分の種族が何であるのか悟る事が出来るようで、彼女はやはり『アラクネ』というモンスターに該当するようだ。

‥‥‥まぁ、前世の世界のゲームとかにあるようなアラクネと細かい違いがあるかもね。そのあたりの詳細に関しては、後で神父様にでも聞いてみよう。モンスター博士でもないので、詳しい人に聞くのが良いだろう。


 それはともかくとして、身の上話も聞く中で、彼女がこれまでどういう状況で過ごしてきたのか理解することが出来た。どうやら最初こそは大蜘蛛一家というべき様な群れにいたようだが、その群れが壊滅し、それ以来ずっと一人で放浪生活を続けていたらしい。

「大きな蜘蛛のお母さん、優しい兄弟姉妹がいたけど…皆、バラバラになっちゃった。私、それ以来ずっと一人だったの」
「大きなお母さんって、どんな蜘蛛だったの?」
「とにかく大きかった。小さな子蜘蛛だったけど、アラクネとなった今よりももっとずっとずっとずっと、山のように大きなお母さんだったと覚えているの」

 どんなサイズだよその母親蜘蛛。山のようなサイズって、それは蜘蛛であり得るのか?そう言えば、昆虫とかがそのまま巨大化すると自身の重みで潰れるような話も聞いたことがあるような気がしなくもないが、ここは前世と違う異世界だし…いや、でもまずその母蜘蛛を討つようなやつがいるのも相当ヤバい話ではなかろうか‥‥‥うん、深く考えないようにしよう。考えても切りがなさすぎる。

 とにもかくにも、その母蜘蛛とも別れ、兄弟姉妹たちとも別れ、彼女はずっと長い間一人でいたらしい。
 サバイバル生活というか、野生の身として過ごすことはできていたようで、最低限の生活だけは何とかやりきっていたようである。

「でも、今日この森に訪れ、まさかスライムにヤられかけると思わなかった‥‥‥貴方に助けられて本当に感謝なの」

 相当な恐怖を感じ取っていたようだが、助けられたことで恩義を感じているのか、深くお辞儀をし、強い感謝の念が伝わってくる。
 感謝されて悪い気はしないのだが‥‥‥それでも、美しい女性の身であるという事をどうにか自覚してほしい。本当に目の毒になるから少しやめてほしい。今が5歳児の身体で良かったけど、前世の身体だったら色々辛いぞ。

「まぁ、こっちだって偶然聞こえた悲鳴元へ行ってみたら見つけただけで、スライムのコアを叩くだけの簡単な事しかしていないよ。誰かが困っていたら、助けた方が良いって言われているからね。それが、たとえモンスターだとしても、泣いて助けを求めるような女の子ならなおさらさ」
「いえ、簡単な事といっても、あのスライムは私にとって、女にとっては非常に強大な敵でした!そんな敵を倒してくれたのは、どう感謝の言葉を述べてもしきれない!!だからこそ、どうか、そのお礼を返すためにもあなたと共に居させてください!!」

 ぎゅっと手を握りしめ、アラクネの彼女はそう懇願してきた。
‥‥‥どうしよう、なんか感謝されまくって懐かれてしまったようである。鶴の恩返しならぬアラクネの恩返しというべきかもしれない。

「えっと、共にってことはずっと一緒に?」
「はい!私、ずっと貴方に尽くしたい!!望むなら共に学び、働き、運動し、身を守り、何でもする!!だから、どうかお願いします!!」

 今、何でもっていったけど、その見た目で言わない方が良いよ。
 それに、本当に偶然助けただけなんだけど‥‥‥うーん、ここまで頼み込まれると断ることもできないかな。

「‥‥‥うん、よくわかったよ。それなら今後、よろしくね」
「うん!」
「なら、一緒になるなら僕の今住んでいる村に一緒に帰ろうか?‥‥‥というか、何でもしてくれるならまず、その背中に乗せて全速力で家までお願いします」
「早速?」
「だってもう、だいぶ時間がやばそうなんだけど!!このままだとお母さんの怒髪天が!!」

 気が付けばかなり暗くなってきたことに気が付き、色々とヤバくなってきたことがうかがえる。
 遅くなってしまえば心配されるし、母さんが激怒する未来が見えているんだよね。記憶が戻る前に一度やらかして、その時は父さんも一緒で……あの時の激怒は、軽くトラウマものだった。お父さん、地面に埋められていたし‥‥‥

「わかった!!私の背中につかまって!!」

 そう彼女はいうと、ほういっと軽く僕をその蜘蛛の部分の背中に乗せ、村の方へ駆け出した。
 移動方法が周囲の木々を利用して糸を勢いよく出してひっぱり、まるでスパイ〇ーマンのような移動方法をとってかなり早い。

 あ、アラクネで下半身が蜘蛛だから間違っていないか?

「しかも、早い!!」
「全速力を出せば馬にも負けません!!‥‥‥ところで、今さらですが名前は何と言うのでしょうか?」
「あ、そういえば互いに名乗っていなかったね」

 移動しながら、ふとその事を俺たちは思い出した。情報交換したけど、名前に関しても忘れていた。

「僕の名前はエル=アーロス。普通にエルと呼んでほしいな」
「わかりましたエル!!えっと、そういえば私って名前がないかも‥」

 野生のモンスターは通常ほぼ種族名で呼ばれることが多く、個人名なんて持っているものはあまりいないそうだ。
 というか、基本的に一人称で成り立つがゆえに、名前を持たないそうである。

「じゃぁ、全体的に肌白くて綺麗だから雨上がりに蜘蛛の巣についている『露』とか綺麗だし、全体的な『白』さも合わせて、入れ替え呼び方ももじって……『ハクロ』で良いかな?」
「『ハクロ』‥‥‥ええ、その名前、これから私の名前にします!!これからよろしくお願い!!エル!!」
「こちらこそよろしくねハクロ!!」


 とにもかくにも、今は早く村へ帰りたい。
 そう思いながら、僕たちは村へ向けて全速力で進むのであった。


「ところで、エル。一つ良いかな?」
「ん?」
「勢いで来たけど‥‥私の格好、人間から見ると不味いかな?」
「あ」

……移動速度が速いせいで、服も脱げているよ。
 そもそもモンスターを入れて良いのかどうか‥‥‥ここはひとつ、ブラック企業で培ってしまった全力土下座でどうにか事を収めよう。
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