スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

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第1章:幼少期~少年期前編

9話 馬車道中は平穏に?

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SIDEエル
 
 準備も万全にし、国の教育機関へ届ける馬車が村に到着して、エルたちは乗り込んだ。
 既に通っている生徒たちは先に出ており、新しく通う子だけが乗る馬車なのだが、今年度ここから出る子供はどうやらエルだけだったらしい。
 人数が少ないことが分かっているならば、それ相応の小さな馬車が予想されたのだが‥‥‥


「意外にも、結構大きな馬車だね」
「私も乗り込めるのでよかったですけれども、本当はここに他の子供たちも乗車していくんですよね」

 何もその村限定で来るだけじゃなくて、ついでに経由する村々の子供たちもここに乗っていくため、そこそこの大きさで来ることは確定なのだとか。
 ただし今年は、ルート沿いにある村から来るのはそんなにいないらしく、ほとんどがら空きに近い状態のため、ハクロも一緒に搭乗することが出来た。


 馬車が進み始め、目的である教育機関が存在している都市「マストリア」へ向かう。
 ゴルスリア王国の中でも3位ぐらいの規模を誇る都市であり、そこまで数日間かけて進んでいくようで、道中では野宿もあるのだとか。
 いやそこは1、2位辺りにありそうな都市だとは思っていたのだが、どうやら都市が出来た当初の規模としては1位だったそうな。
 だがしかし、年月が経つにつれて各都市が発展したことによって規模が3位に転落したそうだが‥‥‥それでも、かなりの規模らしい。
 王城とかもその都市ではなく、1位の規模の都市にあるそうだけどそこはテンプレ的に同じ都市に欲しかったなぁ。学園都市みたいな感じで欲しかった気もしなくもないが、世の中そうそう都合よく進むこともないのだろう。

 そう思っている間にも、馬車道をガタガタと揺れながら馬車は進む。
 住んでいたハウドリア村があった領地ヘルバリアから、いくつも経由するわけで、野宿となるとそれ相応の危険性もあるのだとは思うが、そこは仕方がない事。
 前世の世界とは違って、しっかり夜盗とかの賊がいるらしいからね。対策として色々な防犯道具が馬車に搭載されているらしいので、いざとなればそれを使うしかないらしい
 そこはもうちょっと、護衛とかも子供たちのために派遣してほしいような気もするが‥ここだけじゃなくて他の場所にも馬車を派遣しており、どうしてもこんな田舎では優先度が落ちてしまうという大人の事情があるようだ。難しいね、防犯体制をしっかり確立したくとも、中々できないんだね。

 まぁ、人数が少ない方が馬車の御者的には楽らしい。

「例年ならば、やらかす子供がでるだべしなぁ。休憩時間に勝手にどこかへ行って遅れてしまうこともあるし、何かとしてしまうこともあるだべさぁ。けれども今年は人数がこうも少ないと、これはこれで負担も減って楽になるべぇ」
「そんなものなんですか?」
「うんうん。子供の突拍子もない行動に、振り回されるの大変なのべ。とはいえ、おらはこの道50年のベテランだべし、人数が多かろうと少なかろうと、確実に送り届けることは約束するべぇ」
「ありがとうございます、御者さん」

 馬車を操縦するのは、子供たちを毎年往復して届けている、この道50年の大ベテランでもあるという、先日80歳を迎えたお爺さん。
 前世から言えば、高齢ドライバーに該当しそうなものなのだが、まだまだ現役でやれるほど活力はあふれているらしく、それだけじゃなくて本当に御者をしても大丈夫なのかという事で義務付けられている確認検査も毎年高い点数を叩き出している猛者なのだとか。
 凄まじいというか、なんというか。頼もしくはあるけれども、そんなベテランならこんな田舎の方に向かう馬車を使わなくても良いような気がするのだが‥‥‥そこは色々と事情があるらしい。

 でも、一応優しい人のようなのでほっとしたよ。
 モンスターでもあるハクロを見ても怖がらずに、握手して笑っていたからな。

「いやばぁ、こんなべっぴんさんも一緒にとは、おめぇスゴイなぁ。おらも、あともうちょっと、40年ほど若ければ、求婚したくなるような方じゃわい」
「ふふふ、でも無理ですよ。私にはエルがいますもの」
「ふぉふぉふぉふぉ、大事にするだべさ。まぁ、そもそもおらには愛する婆さんがいるだべしなぁ。今年は沼の主を今度こそ吊り上げると意気込んで、1週間ほど遠出をするから寂しいけれども、それでも待っていられる愛があるのだべさぁ」

 すさまじさ、お爺さん以上にそのお婆さんの方がありそうな気がする。

「沼の主って?」
「ちょいっと国越えをしていったあたりの沼だべ。ウルトラナマズのナマベェ、キングブラックバンスゥゥのブーさんなどが有名だっただべが、今年は新しい主が出来たようで、意気込んでおったのぅ」
「主というと1体だけのような?複数いませんかね?」
「毎年婆さんが釣り上げ、争ってから新しくついているようだべ」
「凄い人ですね、その御婆さん。私は昔、別の沼に堕ちて巨大な雷魚に喰われかけたことがあるので、ちょっと近寄りたくないですがね‥‥‥」

 何だろう、その過去。それはそれで気になるかも。


 とにもかくにも、こういう馬車の旅というのは、異世界転生物であればお約束のように盗賊などがはいよっさぁっと出現しそうなものだが、ここは田舎の方なので、頻度としてはそこまで多く出てくるものでもないらしい。
 低いだけで出てこないわけではないそうだけれども、獲物の事を考えると、金目の物を持っているのは大抵発達した町や都市からの馬車のようで、そっちを狙う賊の方が多いのだとか。
 来ないほうが平和なんだけど…なんとなく妙に嫌な予感というか、面倒ごとの胸騒ぎがするのはなんでだろうか?




 

 馬車がゴトゴトと揺れて進み、目的に付くまでの、ひとまず暇なので着くまでの道中、村近くの森で切った木から作ったオセロをハクロと楽しんでいた。
 ちなみに、オセロ自体はこの世界にもあったようで、リバーシとか白黒とかパンダ返しとか言われており、古代からあった遊びなのだとか。
 いや、その古代からの遊びって、古代に絶対に転生者いるよね。あとパンダ返しって…あ、もしかして白黒な生物だから、ちょっと名前を取った?それはそれで転生者の気配はするけど、なんでそうなったのかという疑問がある。

 そんな事はさておき、僕は黒色、ハクロは白色で互いに攻め合っていたのだが…何度やっても、決着はすぐについていた。

「よし!!勝った!!」
「ああああ!!また負けましたぁ!!34戦32敗2勝しかできてないですよぉ!!」

 勝ってガッツポーズをとると、ハクロはものすごく悔しがっていた。うん、ハクロ、めっちゃオセロ弱い。頭は悪くはないはずだけど、なんかうっかりしているというか、隙があるよね。
 というか、全面黒で埋まるって、やった自分が言うのもなんだけど、なんでこうなった。
 
「途中まではいい勝負なのに、なんかそこからハクロって一気に弱くなるよね」
「なんででしょうか。こう、勝利を確信できたのに、次の瞬間には負けが決まってしまうなんて…」

 膝を抱え込むように食指を手で抱え込み、蜘蛛部分の足を折り曲げて平べったくなってズーンと落ち込むハクロに対し、慰めるように頭を俺は撫でた。
 体全体をかがめて、落ち込んで頭が下がっているハクロを撫でるぐらいなら、まだ子供な今の身長でも何とか出来る。
 もっと身長が高くなればもうちょっと楽に撫でられるだろうけど、今はこうするしかないだろう。全然フォローし切れないし、こうやって慰めるしかないかなぁ。

「しょうがない。もう一戦しようか」
「そうしましょう!!今度は負けませんよ!!」
  
 再戦をしようと再度片付け、色を変えて勝負を挑もうとした…その時であった。


ぎぃっ!!がくんっ!!
「うわっ!?」
「おっと!?」

 いきなり馬車が急停車し、セットしようとしていたオセロが盤からおちた。
 体勢を崩して倒れかけたが、なんとか持ち直しつつ馬車から顔を出して確認をする。

「何があったんですか!」
「おやまぁ、厄介なことになったべ。あれをみてみるだべさ!」

 さきほどまでは馬車の外で馬たちに指示しつつ、僕等の勝負の様子を見て朗らかに笑っていた御者のお爺さんではあったが、緊迫したかのような様子になっていた。
 そして、お爺さんが指さした方を見ると、遠くの方から土煙を上げて何かが迫ってきているように見えた。

「なんですかあれ?」
「うーん、何かが猛スピードで迫って来ていますね」

 ハクロが俺の頭の上の方に顔を出して一緒に確認する。 
 それと同時に位置の関係上、むにゅんむにゅんっと頭の上に柔らかい彼女の双丘が当たるが、黙っておく。
 気をとりなおして土煙の立つところを改めてみれば、何かが接近していることが確認できた。

 どうやら全体的にこの馬車よりも格段に上の上質そうな馬車が1台と、その背後には何やら変わった生き物に乗っている人たちの影が見える。
 明らかに人相が悪すぎる人たちなのだが、その乗っている生き物とのアンバランス感が凄まじい。

「何、あの巨大ウサギ‥‥‥あ、『ジャンボットラビット』か」

―――――
『ジャンボットラビット』
名前の通り、見た目そのままな巨体を誇るウサギのモンスター。ただし、ウサギをそのまま拡大したようなものではなく、歴戦の猛者のように筋骨隆々としたたくましい肉体と顔つきをしており、一回跳躍するだけで、全速力が馬並みの速さを誇る。
ただし、筋肉が発達しすぎた面もあるせいなのか、普通のウサギの肉としてはいま一つな味を持つ。
また、凶悪な見た目にもかかわらず案外人懐っこい性格をしており、地域によっては馬代わりの移動手段として飼いならすところもあるらしい。
――――――


 その巨大ウサギの背中にいる面々は、どう見たってまっとうな生活を送っているような方々ではなく、悪人のような顔つきをした方々。
 飼いならしたのかもしれないが、見た目的にミスマッチ感があり、カオスじみた状況に見えなくもないだろう。
 というかこれ、さっき感じた嫌な予感が的中したのでは?

「あの特徴的な賊たちは、確か賞金首にかけられている『ウサモン盗賊団』だべさ!あの馬車が誰のかは検討が付かないが、逃げる方向がこっちに来ているようで、巻き込まれるべ!!」

 慌てたような声で御者さんは何とか馬車を後退させ、方向を変えようとする。
 賊たちから逃げている馬車も同様の方向へ逃げようとしているのか、必死になって速度を出しているようだが、賊たちの方が早かったようだ。

ガッシャァァン!!
「ああっ!!」

 こちらに向かって逃げてい馬車の車輪が、ウサモン盗賊団の一人の魔法か何かで破壊されて吹っ飛び、コントロールを失ってそのままこちらに滑って来た。
 そして目の前で止まり、その間にも素早く賊たちは周囲を取り囲んでしまった。

 どうやら。完全に巻き込まれたらしい。逃げるのが遅れて、少々不味い状況になった様だ。

「ちぃ、不味い事になっただべさ!!」

 すぐに襲われても大丈夫なように、外から老体ながらも素早く身を移して馬車の中に素早く逃げ込む御者の爺さん。
 馬車の床板部分の一部を外して賊対策の道具を取り出すが、周囲を囲まれている状況では迂闊にやりにくい様子だ。相手の方の馬車も中から人は出ておらず、動けないようでなすすべがない。


「‥‥‥むぅ、だったら、私が出ましょうか」 
 
 ウサモン盗賊団とやらに囲まれ、状況としては最悪の事態。
 そんな中でも、彼女はすくっと立ち上がり、そう口にした。

「んー、エル。少し暴れてきてもいいでしょうか?」
「え?ハクロ、危なくないかな?」
「大丈夫ですよ。私はこれでもモンスターとして、野生で過ごしていた実績がありますからね。逃げる日々が多かったとはいえ…このぐらいの人間の数なら、大丈夫です」


 僕の問いかけに対して、にこりと笑みを浮かべてそう返答するハクロ。
 
 確かに彼女はモンスターだが、状況としては相手の方が人数が多く、不利な状況だろう。
 だがしかし、そんな状況であっても彼女は負ける気もなさそうであり。その笑みの中にある瞳の奥は、楽しい旅路を邪魔されたことに対しての怒りの火がともったようであった‥‥‥


「大丈夫です、問題ありません!これが終わった後は、再度エルにオセロで挑戦して、そっちでも勝利を収めてみせましょう!!」
「フラグになりそうだから、ちょっとやめて」

‥‥‥中途半端な感じがするフラグ建設だけど、回収しそうだからちょっと怖い
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