スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

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第2章:少年期後編~青年期へ

58話 つぶれそうなのと、つぶされそうなのと

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SIDEエル

 夏休みも無事にというべきかゆったりと終わり、学校が再開し始めた今日この頃、ちょっと両国の事情によってごたごたしまくってやむを得ずに停戦状態のような形になっていたクラスタ皇国戦争に関して、動きがようやく出てきてくれたということが話題に上がっていた。
 出てくる人が多すぎて払うには厳しい予定の報酬の量や、そもそもの兵士の質や招集具合など、グダグダ具合が酷かったゆえにこのまま終わればよかったのだか、何か起きていなければ意味がないということせクラスタ皇国のほうが先に何かしでかそうとしたらしいが…今の時点で、既に大雑把な勝負の付き具合が見えているらしい。

「この国のほうも問題あったけど、相手のクラスタ皇国のほうが問題量多いもんなぁ…しかも、夏が終わったことで、この時期は農作物の収穫期なのもタイミングが悪いよね」
「農作業の大詰めということで、人員はそっちに割きたい人が多いようで、中々国民たちが動かないそうですよ」
「そのうえグダグダしすぎていた戦争ゆえに、かかる費用もばかにならんし、重税が目に見えているから思いっきり反発にあいまくっているらしいという話も聞くのぅ」
「無くなる方が先か、戦争に負けるのが先か、どっちが早い?」
「わからないけど、早く終わりそ~♪」

 放課後に、ハクロたちが宿泊する借家に訪れて夕飯を一緒に食べつつ、その話題で食卓が盛り上がっていた。
 昼の食堂でも生徒たちの間で大体の情報が出ていたが、街中でもそこそこ詳しく出ているらしく、見聞きしたことの正誤性からそこまで間違ってもない様子。
 皆はそんなに噂話好きと言うわけでもないのだが、嫌でも入ってくるようなほどの話ならば、詳しくなってきてしまうだろう。

「うーん、内部分裂で滅亡に賭けそうかも」
「ありそうだけど、普通に敗北もありそうだよね」」
「クラスタ側の負けな方にかけるのぅ」

 なお、不謹慎かもしれないのだが、あまりのグダグダさに面倒なのでいっそ賭けてみようという話が持ち上がっており、公式的な勝敗予測が出てきていたりする。
 現に、どうも今は戦争で無くなるか敗北するかの賭け事があちらこちらでも行われているらしく、勝敗がどうなるのかはさておき、その結末が気になるのは皆同じらしい。

 ちなみに、俺はクラスタ皇国が戦争での敗北に賭けている。
 ハクロは内部分裂で、カトレアはまともな敗北、タマモは悲惨な末路、ミモザは適当になんやかんやで起きて負ける…まぁ、全員クラスタ皇国側が被害を被る形のほうに賭けているようだが、果たしてどうなるのやら。
 
「大穴としては、皇国側の大反撃及び大勝利となっているらしいよね。でも、誰もその可能性に賭けてもないなぁ」
「なんでも、この街の冒険者たちの大半が参戦依頼を受注したようですからね。人数的にもこの国が有利なのもあって、逆転が難しいというのもあるのでしょう」

 士気、人員数などの要素を踏まえて考えても、この国が敗北する可能性は低いとは思う。
 逆転勝利なんて、それこそ天地がひっくり返るとかやばいやつらを引き連れてくるとかしないとできないだろう。
 そもそも、いくつかの兵士たちのほうは先にハクロ達がやらかして潰しているらしいしね…彼女たち以外のもあるらしいが、最初から悲しい結末にしかならなさそうだ。

「一応、わっちらがかつてはいた国じゃがな。幻術とかも使っておったが、もうすでに何もなくなっておるし、どうでもいいレベルでダメになっているとも耳にするのぅ」

 ずぞぞっとお茶を飲みながら、タマモはそうつぶやいた。
 彼女及びその血縁の妖狐化できる獣人たちは、かつてクラスタ皇国に仕えているような形で存在していたが、様々な事情もあって既に離れている。
 少なくともちょっとは過ごしていた国でもあるのだが、まったく情もなにもないそうだ。

「そもそも、段々と傲慢さや欲望が目立ってきておったし、遅かれ早かれ滅亡の時が迫ってきているなぁと思っていたんじゃよな。あっていい国なのかと思うところもあったのじゃし、この機会に一回潰れてもいいじゃろう」

 面倒ごとしかなかったようで、どうなってもいいと話すタマモ。
 思い入れも何もないのであっさりと割り切っているらしく、なすがままになっていけと思うらしい。

 とりあえず、面倒そうな話になってくるのも避けたいので、後はもう他愛ない話に移る。
 そしてだんだん日が暮れてきたので、俺は寮へ戻り、ハクロたちと一旦別れた。



 卒業すれば一緒に過ごせるけれども、今はまだ学生。
 さっさと卒業できるようにするためにも、きちんと留年などが無いように勉強に力を入れないといけないんだよなぁ。泊っていきたいけど、まだまだちょっと厳しいところもある。

 だが、面倒だからと言って学業をおろそかにすると困るのは自分自身。将来的なスローライフのためにも、積み重ねはしっかりとしなければいけない。
 そう思いつつ、その邪魔もされないように今は戦争がさっさと終わればいいなと思うのであった……


――――――――――――
SIDE国王バルドロス=B=ゴルスリア

「ふぅ、今のところ戦況は不利ではないのか」
「はっ、どうやら我が軍よりも、雇った冒険者たちのほうが士気がものすごく高く、破竹の勢いでクラスタ皇国軍を退けまくる快進撃を続けているそうです」

 外が暗くなりつつある中、ゴルスリア王国の王城にて国王バルドロスは、宰相イツウドスンから、現在の戦況報告を聞いていた。
 詳細な戦況報告は欠かせず、万が一のことがあってもすぐに対応できるように用意も必要だと思ってやっていることなのだが…想定以上に快進撃が続いているらしい。
 元々、最初のほうで攻めるのを失敗していたところからうすうす可能性を感じ取っていたが。どうやらクラスタ皇国軍が想定よりも戦力が失われているらしく、ぎゃくにゴルスリア王国側が雇った冒険者たちの士気が高いのもあるようだ。

「報酬は確かにそれなりにはなるのだが、それにしては冒険者のほうの士気が高いな」
「理由ははっきりしているようですが…」
「と言うと?」

 イツウドスンが何やら苦笑したので、バルドロスは説明を求め、聞き終えた後、納得した。

「…うむ、なるほど。つまり戦火が国内に来ないようにしている努力もあるが、その理由が国民のためではなく、以前、見る機会があったあの女性たちに尽くすためか」
「人が動くのは人情、金、欲望などとありますが、今回は欲望のほうに助けられた形でしょう」

 話によれば、以前話をする機会があったエルの従魔やその傍にいた獣人たちが原因らしい。
 彼女達は人間ではないのだが、人並外れた美貌に心をがっちりつかまれたものは多い。
 一応、冒険者登録をしており、ランクが低いゆえに参戦依頼の規定にはかからず、今回は出ていないそうだが、ふと冒険者たちは思った。

 参戦しなくとも、国内に戦火が向かえばひどいことになると。
 下手すれば敵国の軍が攻め込んできて、彼女達がいるところを蹂躙し、慰み者にしてしまう可能性がある。
 手の届かない高嶺の花たちだが、そんな彼女達が苦しむような姿は見たくないと言う思いで、冒険者たちの心は一致団結し、今回の参戦依頼に受注可能な者たちは受注し、できるだけ敵兵たちをこの国から退けるために戦う事を決意したという。
 また、ランクが足りなくともせめて守ることぐらいはできるということで、この戦争時に紛れ込むような工作員たちを探し出して捕縛するなど、自身がやれるだけの範囲を活用しまくって、より安全な国にしているそうだ。

 たった一人の人物に集う女性たち、その彼女達を守るために動いたのだと言うのならば、たとえそれが実ることの無い愛だとしても、守ろうとするその気持ちは美しいものではないだろうか。
 あの手この手で女を手に入れようと画策する輩に比べれば、かなり綺麗な想いで戦っているのだと国王は感嘆する。

「美しき愛か、色欲による動きかもしれぬが、それでも守るための戦いゆえに力を尽くすか…腐ったものもおらず、よかっただろう。この様子であれば、さらに早く終戦を迎えそうだな」
「そうですね、動きから見て、おそらく冬前には終わってしまうでしょう。皇国内の方も、今の時期は農作物の狩り入れ時ですので、できれば集中したいでしょうが人員不足ゆえに国内での不満は貯まり、反乱などが起きることを考えると、長く時間をかけられない…何か逆転の策があるならまだしも、多少良識人が残っていれば、降伏の兆しも見えてくることでしょう」

 その予想は的中しそうなのだが、一つだけ気がかりな事が国王にはあった。

「なぁ、イツウドスンよ」
「なんですか、陛下?」
「今の状態、この国がかなりの優勢だと言うのは目に見ても明らかだ。だが、その優勢になっている原因は、明らかにあの彼女たちだよな?」
「そのようですが?そのおかげで士気も何もかも上がって良いことばかりです」
「ああ、プラス面は良いだろう。だが、そう考えるとこちらの結果に気が付いた相手国が、士気向上、人員募集のために似たような事をやりそうな気がするのだが…いや、相手だけではなく、他国も今後に備えて同じようなことを考えると思わないだろうか」
「…ありえそうですね」

 いつの世も、何かと真似をするような輩もおり、そしてその手段が非合法な事もある。
 そう考えると、嫌な予感もあるだろう。
 今はまだ大丈夫のようだが…今後、対策を練っていく必要もあると考えられた。

「ああ、そう言えば陛下、一ついいでしょうか」
「む?なんだ?」

 嫌な予感を抱きつつも、今後の対策をすぐに考えている中、宰相がふと問いかけてきた。

「今月の王族専用のお小遣いに関して、陛下分の使い道の一部が王妃たちにも秘匿されているようですが、何に使われたのでしょうか。いえ、特に犯罪等の可能性はなく、私的流用が可能な範囲で良いのですが、少々疑問に思いまして…」
「秘密だ」

 イツウドスンの問いかけに対して、国王バルドロスがそっと顔を横に向けたその時であった。

ホーッ ホーッ
「「!?」」

 まだ昼間だと言うのにフクロウの鳴き声が聞こえ、驚いた彼らが振り向くと、窓際にいつぞやかのフクロウがおり、その足には何かが括りつけられていた。

「ま、またあやつからか…わざわざ運ばせずとも、きちんとした便があるのだが…いや、それよりも、今度は一体なんだ?」

 驚きつつ、バルドロスがフクロウの足に括り付けられていた何か、封がされていた手紙を取ると、そのフクロウは飛び去って行った。

「もしや、また何かの不正についてのものでしょうか?」
「わからん」

 首を傾げつつ、封を開けるバルドロス国王。
 そして、イツウドスンも横から目を通して…内容を理解し、呆れた目になった。

「‥‥‥国王陛下、あなたは一体何に無駄遣いしているのですか」
「ま、まて!!無駄ではない!!」
「いや無駄でしょう!!仮にも陛下はこの国の王ですし、後宮だってありますから性欲の発散はできますよね!?それなのにここに書かれているのって、官能小説や絵が付いている漫画本となるものやイラスト付き抱き枕とかに関する詳細な明細じゃないですか!!しかも、その内容や書かれているものが今話題になっていた女性たち…‥‥従魔や獣人の同人誌系統ってなんですか!!」

 国王に対して、思わず宰相イツウドスンは大声でツッコミを入れた。
 その手紙の内容と言うのが…‥‥
―――――――
王様に報告。
移り変わる季節の合間に返答ができておらず、こうして出すのも、
久し振りです。戦争ももう間もなく
終焉を迎えそうで、暇つぶしにちょっと調べると
ちまちまと色々と買い込んでいるようですね。
ずいぶん豪勢に使い込んでいるように
見られましたので
確認してみました☆
くくくくくっと笑えるほどですね。
五十枚も星金貨をつかって
しかもその使い道が、同人誌系統とは
手慣れた感じでやっているようですし
多くあるようですので、詳細をまとめておきます
けらけらと笑いました、ありがとう。
PS気が付くと、おそらくですが背後のほうに…
―――――――

‥‥‥最後の部分の内容や、手紙の書き方がおかしいようにも思えるのだが、これまで国王が買い込んでいた詳細が裏にずらずらと書き連ねられていた。

「なるほど、どうりで秘匿されていたわけですね。ただでさえ、陛下が無駄にまいた子種たちが問題を引き起こし、最近になって見つかった魔道具マジックアイテムで、矯正してまともにする作業をしている最中ですのに、その肝心の陛下がエロ本雑誌等にふけっているのは…下手をすると、王家の威信が落ちますよ?」
「そんなことを言われても、つい、買いたくなったものはしょうがないだろ?」
「星金貨50枚分も無駄に使っている時点でどうかと思いますがね(星金貨=一億円)。むしろそれだけの量が出ていることに驚きましたよ。陛下、一応秘密にしてさしあげますから、早いうちに処分しておいた方が良いですよ?そうでないと王妃様におそらく…ん?」

 国王バルドロスが使い込んだ金の行方について書かれていたその手紙を読み直し、ふとイツウドスンが何かに気が付いた。

「どうしたんだ、イツウドスン?」
「やけにおかしい文章の並べ方だなと思っていたのですが…これ、縦読みで文字ができますよ?」
「え?」

 手紙の内容を改めて見るバルドロス。
 どういうことなのかと思い、よく読みなおし、国王も理解した。

「…気のせいだろうか、頭文字のところだけを取ると確かに読めるのだが、この最後の部分、確認したくないのだが」
「お、う、ひ、し(ゅ)、う、ち、ず、み、か、く、ご、し、て、お、け…‥‥『王妃周知済み、覚悟しておけ』と読めますよね?」
「うん、今お前がわざわざ確認したせいで、背後からものすごい怒気が漂っているように思えるんだが。ちょっとイツウドスン、確認してくれないだろうか?」
「絶対に無理です。国王陛下、ご冥福をお祈りしますから、どうかあなたが振り向かれてはいかがでしょうか」
「いやいやいやちょっと待て、国王の死をお前は望むのか?」
「陛下の女癖の悪さが修正されるならぜひとも」
「ここぞとばかりに、言うなお前。そうだ、一緒にやろうぞそうしようぞ。それこそ一番いい解決策の策だ」
「なんかもう、未来が見えた気がしますが、それで気が済みますのであれば、いっせーので」
「「後ろっと…ああ」」



 同時に振り返った国王バルドロスと宰相イツウドスン。
 お互いに裏切ることもなく見たのだが、そこに見えた光景で声がそろう。

 彼らに何が起きたのかは、この場で語るようなこともないだろう。
 ただ、一つだけ言えることとすれば、臣下はともにあれというか、後日転職届のおすすめの本が王城に届いたことぐらいか…
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