スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

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第2章:少年期後編~青年期へ

66話 たまにはこういう、離れての作業もやるもので

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SIDEエル

…面白い依頼がないかとギルドで探すと、意外と多かった。
 こういうパレードが行われているからこそ、そっちのほうに集ってしまう冒険者がいるのもあって、こなされにくいものも出てくるようだが、普段よりも競争率が低下しているのもあって、面白い依頼が受けやすくもあるらしい。

 そのかいもあって、いくつか依頼を受けて数日ほどでこなした結果…まさかの、ランクアップ試験を受けることが可能な状態になった。
 まぁ、依頼をこなし続ける以上ランクアップはあるだろうと思っていたが、流石に自動更新でなるわけでもなく、ちゃんとそのランクに遭うのか測るために、少々変わったランクアップ試験用ともいえるような依頼を受けることになるらしい。

 内容はどういうものなのか、確認してみると…そこまで難しいものでもないようだ。

――――――――――――
「ランクアップ試験用依頼」
達成した場合:Hランク→EもしくはD、場合によってはCへランクアップ可能。低ランク冒険者の実力詐称などもあるため、確認でき次第一気にランクアップが可能なようになっています。
失敗した場合:現状のまま。ランクアップ試験を再度受けるためには、最低でも10回以上の依頼を受注・達成をお願いいたします。

「依頼内容」
都市近郊にある森の中で、最近盗賊の目撃談が確認されています。
真偽のほどを確かめつつ、情報収集、可能であれば生け捕りや討伐などを行ってください。
※盗賊であれば衛兵などの出番ですので、情報収集で止めても大丈夫です。
戦闘が難しいと思われれば、無理せずに帰還をお願いいたします。受注より3日経過しても音信不通になった場合は、すぐさま捜索が行われます。
―――――――――――


「ふむ、盗賊に関しての情報収集、可能なら討伐の依頼か」
「試験用なら盗賊役程度のものが用意されていると思いたいのじゃが…本物が用意されているようじゃな」

 相手が盗賊の場合、この世界では色々な対応手段が取れる。
 捕縛、殲滅、生け捕り後の奴隷商人への売買などの盗賊の行き先は多岐にわたるようで、一口に盗賊といってもプロでなければ生存率はそこまで高くもないらしい。
 だからこそ、生き残った盗賊にはプロの盗賊と言えるようなものもいるため、情報収集を押しているようだが…冒険者の中には荒事専門というような輩もいるために、討伐なども行っていいことになっているのだとか。

 エルたちの場合は戦闘面で見れば戦闘も行っていいだろうが、命を奪うような行為はまだ避けたいところもある。
 というか、加減しないと多分相手が死に絶える可能性が大きい…魔力が大きすぎたり、仲間の実力が高すぎたりすると、加減のほうで悩むところもあるだろう。

 だが、今回の依頼の場合、殲滅を視野に入れても問題はないようだ。


「事前情報だと、守りが手薄な商会の積み荷を狙って襲撃したり、遠距離から矢で狙ってくるなどを行っているようだし、手加減無しで良いだろう」
「うむ、悪党どもには成敗したほうがいいからのぅ」

 なお、試験なのになんでこんな都合よく盗賊の依頼が出てくるのか疑問に思うところもある。
 確認してみたが…一応、用意されたわけでもなく、偶然出てきているからこそ利用されたような形でもあるようだ。

 通常なら、もっと違うタイプのランクアップ試験も用意されるらしいが、あいにく僕らのほうの実力に関しては、登録時に上のほうで何やら離されていたところもあるらしいからね…ある意味信頼されているからこそこういう形の依頼で出されたようだが、討伐まで行けるかはまだわからないところもある。


「でも、ハクロ達を誘うと大人数になるよなぁ…先に情報収集のほうで達成できるように少数精鋭として俺とタマモで確認しようか」
「それもいいのぅ。二人きりになるのは抜け駆けのような気もするのじゃが…いつでも逃げられるようにする細工はできるからのぅ」

 ハクロ達と一緒に向かうのもありだが、情報収集を重点に置いて考えるのならば、少数精鋭でこっそり探るのが一番いい。
 面子的に目立つのもあるので、数をあえて減らして木々に紛れたほうが安全に探りやすいだろうと判断した。

「けれども、人数によっては危ない場合もあるし、タマモ、念のために幻覚を見せる妖術をいつでもできるようにしてくれ。出くわした途端にぶつけて、逃げやすいようにしたいからね」
「了解なのじゃ!とりあえず、100万の兵士たちが迫ってくるような恐怖の幻術辺りが良いかのぅ」

 それはそれでえげつないような。
 考えたら幻術で惑わせている間に捕縛する方が、戦闘もせずに一番楽なような…ああ、その方針でもいいかな?







 そう思いつつ、万が一に備えてハクロ達がすぐに駆け付けられるように、いったん皆で集まって、緊急用の合図を用意した。
 前世の知識を生かして、発煙筒もどきを作ったのである。
 着火すれば、すぐに上に大量の煙が噴き出して、目くらましと居場所の特定も兼ねたことができる優れもの。

…なんで、前世の知識にそんなものがあるのかって?ブラック企業勤めの時に、同僚が会社で火災騒ぎを起こそうとして、流石に放火するわけにもいかないから偽の煙で上司たちを怯えさせようと独学で作って、その作り方を教えてもらった時があるのだ。
 あの同僚、確かあの後、実際に偽放火をやって見せたが…ブラック企業のほうが上手だったな。火事ならいっそ、見られたら不味い書類を燃やしてしまえと駆け付けまくって、あっけなく発煙筒を使用したことがばれて、同僚の仕事量が倍増したなぁ…




 そんな前世の同僚を憐れみつつ、盗賊の目撃情報があった森へやってきた。
 ここに盗賊たちが入ってきているという目撃情報を、街中で聞き込みして確信を得て、足を運んだわけなのだが…ちょっと、盗賊たちの安否が怪しくなる場所なのが分かってしまった。


「…ハクロ達は森の外のほうで見回ってくれているけど…見つかるかな?タマモ、ここって確か、前にハクロのお兄さんがいたよね?」
「そうじゃよな…でも、流石にこの間旅立ったという話があったし、出会う前に去っていると思いたいのぅ」


 やってきた場所を確認してみたのだが、どうやらハクロの兄がいた森に再度訪れてきてしまったらしい。
 そんなお兄さん…お義兄さんのほうが正しいかもしれないと思うのはさておき、盗賊たちもよくそんな巨大蜘蛛がいる場所へ来たものだと思ってしまう。
 あれから時間も経って既にいないはずだが…

「…なんか、すごい数のモンスターや獣の死骸が転がっているんだけど」

 目の前に広がっているのは、死屍累々というか、激しい争いをして息絶えたかのようなモンスターや獣の死骸だらけの光景であった。

「でも、蜘蛛のモンスターが付けるような傷ではないようじゃな」
「もっとやばいやつがいるとか?」
「いや、そんな気配よりも…こりゃ、お互いに争った感じじゃなぁ」


 ハクロの兄が去った地ではあるが、あのお義兄さんはハクロの兄なことだけあって、かなり強いモンスターだったらしい。
 そんなモンスターの気配を感じ取って、何となく誰もが近寄りがたい場所だったようだが…去ったことで、誰の縄張りでもない場所となった。

 恐ろしいものがいなくなれば、その地を縄張りとして得ようとして、集まってきたモンスターや獣たちが争って、この光景が広がってしまったと予測できるらしい。
 強き者が去った場所に、弱き者たちが争って死骸の山になるとはなぁ。
 しかも、これ下手すればアンデッド化して余計に厄介になりそうな気配すら漂っているだろう。この世界、下手な死体処理を行うと、シャレにならないアンデッドモンスターが誕生することもあるようで、そのあたりの処分方法などは厳しく定められているとも聞く。



 とりあえず換金出来たり色々利用価値があるモンスターの魔石を抜き取りつつ、死骸を一か所に集める。
 自分たちで何もせずに、争いがあった後の残りを狩っているだけだが、取れる時には取った方が良い。

 できるだけ集めて、一気に火葬しやすいようにと、黙々と作業を続けていたその時であった。

「…ん?」
「どうした、タマモ?」
「エル、このモンスターに魔石がないのじゃ。魔石を抜き出そうとしたのじゃが、空っぽじゃ」
「え?あ、本当だ。…よく見ると、ただ争った形跡以外もあるな」

 確認してみると、どうやら誰かが魔石を抜き取ったような形成が確認できた。
 ひどい状態の死骸も多いのだが、手に取って確認してみれば、人の手で切り裂いたような形跡も確認されており、的確に魔石だけを抜き取っているようだ。

「抜き取るにしても、アンデッド化防止の火葬もなし…酷いな」
「えぐれた傷跡からさらにやばいのも出かねないからのぅ。処理が行われぬのは、火をともすことによる煙で、場所の発覚を嫌ったやつでもいるのかのぅ」

 アンデッド化する可能性もあるので、焼き払ったりするのが一般的に求められるそうだが、そんなこともされていない様子。
 この世界にいる人ならば、よっぽどの馬鹿でもない限り対処はするらしいが…こういう風に残している場合、何かしら隠している人の可能性があるだろう。


 となれば、この状況で誰がそのようなことをするのか。
 死骸の処理を怠るという事はそれなりに慌てていたか、もしくは常識しらずか。

 そう考えると…この状況下では、考えられる可能性は一つだけあった。

「「盗賊たちがここにいたな」」

 互いの考えを口に出してあっていることを確認しあう。

 
 もしかすると、盗賊たちがこの場を利用して魔石を収穫し、そしてこっそり後で売りさばこうとしていたのではなかろうか。
 死骸の処理を行っているのも、全部やると大々的な火葬になるだろうし、そうなってしまえば目立って発見される可能性が大きい。
 発見を嫌うのであれば、盗賊が一番可能性が大きいだろう。

 ただ、死骸の放置はアンデッド化の危険性はあるが、適切に解体できたりすれば、それ相応の換金手段にもなりうる。
 その手段を取らないのであれば、ここであえて貯めて…まとまったころ合いに一気に解体作業を考えている輩の可能性も否定できないだろう。

「魔石だけでも、換金率はしれているし、賊の立場なら表立ってやりにくいだろうし」
「ここで貯めて、やれるやつを裏から雇って…やってくる可能性は十分あるのぅ、アンデッド化の危険性があるが、見極められるプロでもいれば話は別じゃ」

 一旦作業を中止し、エルとタマモは適当な近くに茂みに身を潜めた。
 念のためにタマモが妖狐化で幻術を使い、完全にただの茂みですよという風に周囲へ見せかける。




 そう簡単に、すぐにやってくるという可能性は低かったが…どうやら都合よく、向こうはやってきたらしい。

「お、来たようじゃな」

 耳をぴくぴく動かし、タマモがそうつぶやくと同時に足音が近づいてきた。
 さてさて、どんな奴らなのかしっかりと見てから奇襲をかけるとしよう。
 盗賊だからって、襲っている側だけじゃなくて襲われる側も体験してもらわないとね。まぁ、襲われる時点でもう終わっているだろうけどね。

「でも、ただ情報収集、現場確保なだけだと、ここで抜かれただけのモンスターも哀れになるかな…人の都合で、すぐに弔われないのは、ちょっと可哀そうかも」
「そこは人によるじゃろうが…危険性を考えると、放置しぱなっしもダメじゃな。こりゃ、ちょっとお仕置きしたくもなるのじゃ」
「そう都合のいい方法なんて…あ、あったかも」



――――――――――
SIDE盗賊…に堕ちたものたち

「くそったれがぁ!!あと少し金が足りないのかよ!!」

 森の中、先頭を歩きながら、その人物はいら立ちながら叫んでいた。
 手に持ったなまくらになりつつある剣をブンブン振り回し、いら立ちを隠そうとしない姿は子供じみているだろう。
 いや、いい年した大人でもあったのだが、精神的に育ち切らず、愚かな状態でとどまってしまったのだろうか。

「確かになぁ、あとちょっと金があればどうにかなったはずでぶぅ!!」

 そのいらだちに同意するように、もうひとりがうなずいていた。

 彼らの名は、それぞれクデーズ=B=ゴルスリア、タマブゥン=B=ゴルスリア…いや、もうすでに王籍を排除され、ただのクデーズ、タマブゥンとなったもの。
 元々、第20、25王子だった彼らであったが…それぞれ愚かな行いをやらかし、王族から追放されたのである。

 とくにクデーズは本来国外追放であったはずなのだが、それでも根性で色々と汚い手を使いまくり、なんとか国内にとどまっている間に、王籍を排除されてゆく当てを無くしたタマブゥンに出会い、愚か者同士まさかの意気投合をしたのである。
 そして、人から奪うほうが生活が楽になるのではないかという思考へたどり着き、盗賊業へ手を染めたのであった。

 くずから真人間へ矯正する道具も発見されていたが…残念ながら、彼らはすでに手遅れでもあり、魂の根底からダメダメということもあって、見放されてもいた。

 だが、腐っても王族の立場ゆえに得た教育もあるのか、タマブゥンは運動神経などは恐ろしく悪いが、そのあまりにも鈍すぎる動きのせいで弱すぎるように見えて油断する者が多く、その油断している隙に、背後から素早くクデーズが強襲し、何もかも奪い去っていくという息の合った連携ができるようになっていたのだ。
 そしてそんな彼らに追随するようについてきているのは、同じく過去に自らの愚かな行為によって王籍を排除された元王子たちでもあった。


 何の因果というか、本来王子の立場のままであれば王位争いを行っていたもの同士。
 しかし、今では王位を得ることは叶わないので、いっそのこと堕ちるところまで堕ちてしまおうと開き直り、意気投合し、その組み合わせがまさかの効果を生んで盗賊として立派にやっていけるようにはなっていた。
 互いに手を組み、まともに働くならまだしも…王族時代の生活を捨てきれず、毎晩散財し、借金を増やしていくという愚行の極みも一緒にやらかしたが故の末路と言えるだろう。


「しかしまぁ、ここに大量の魔石採取ポイントができたのは良かったな。当分はこれで何とか生活が成り立つはずだ。ぎりぎりを狙えば、素材回収場にもなる」
「普通は都市内には入れないが‥‥‥裏道とかを地道に作り上げたかいもあったでぶぅ」
「それに今日は別の収穫もあったからな!!」

 先ほど運よく手に入れた収穫物を頭に浮かべ、すぐにクデーズは機嫌を直す。
 本日は盗賊業を行っていたのだが、その最中でまさか空から・・・幸運が降ってくるとは、誰が想像できただろうか。

「おい、まだ袋に詰めたままだよな?」
「ああ、まだぐっすりと眠っているままだ。まさかこうも簡単に手に入るとは思っていなかったが」
「ついているというか、幸運だよな」

 クデーズの問いかけに対して、残りがそろって答える。
 一人が担いでいる袋を見て、全員満足げに笑っていた。

「今晩はまだ取れていない魔石を取って、それを売り払い、その袋の中の奴を売って‥‥‥いや、その前に我々だけで楽しんでしまおうかぁ?」
「おお、良いでぶねぇ!!」

 クデーズの浮かべた笑みに対して、タブゥマンは笑って同意し、その他も賛同する。
 その袋の中身についてはもう少し考えるとして、今は魔石を取る方が先だと思い、クデーズたちがその収集ポイントへ足を踏み入れたその時であった。



―――め‥‥。
「ん?おい、お前ら。今何か聞こえなかったか?」
「でぶぅ?さぁ?」
「「聞こえなかったな」」
 
 ふと、何か音が聞こえたクデーズは問いかけたが、タブゥマンたちは聞こえなかったようだ。
 おかしいなと思いつつ、改めてクデーズは耳を澄ませてみた。

―――ごめ~~~~~。
「んん?」

 気のせいではなく、確かに何か音が聞こえる。
 それも、何かのリズムに乗っているような音で、ようやくタブゥマンたちも気が付いたのか、彼らもその謎の音に耳を傾けた。

 ゆっくりと、それでいて童謡のような…いや、なんとなく妙な気配を感じさせるような音。


―――‥‥‥か~ご~め~か~ご~め~♪
「音…これは何かの歌?」


 何かの歌らしいと言うのは分かった。
 だが、その歌の内容は良くわからず、聞いたことがない。
 そして、他にわかる事としては、なんとなく雰囲気に不気味さを感じた。

―――か~ご~のな~か~の~♪
「‥‥な、なんだこの嫌な感じは」
「でぶぅ?…なんか霧が出てきたでぶぅ」


 ふと気が付けば、何か霧のようなものが森の中に立ち込め始め、不気味な歌声のようなものが徐々に大きくなっていく。


―――――うしろの正面だ~~れだ!!
「!?」

 突然背後の方で声が聞こえ、慌てて振り向くクデーズ。
 だが、その後ろの方には誰もおらず、気が付けばもう既に辺りがまともに見えないほどの濃霧と化していた。

「いや、ここまで霧な時点でおかしいだろ!!」
「ど、どう考えてもおかしいだろ、この状況は!!」
「な、何かやばいモンスターでもでたでぶぅ!?」


 不気味な歌が流れつつ、互に確認できない状況にクデーズたちは混乱に陥る。
 もはや手探りでしか動くことができない状況となり…

ざくぅっつ!!
「ぎやぁぁぁ!!」
「な、なんだ!?」

 何かが斬られる音がし、悲鳴が上がった。
 何者かが濃霧に紛れ、斬りつけてきたのかもしれないと思うと、クデーズたちは身構える。

ざしゅぅぅぅ!!
「ぎえぇぇぇぇ!!」
「く、来るならきやがれ!!叩き切ってやらぁぁぁぁ!!」

 大声を上げ、恐怖をなんとか乗り越えようとするクデーズ。

さぶしゅぅぅぅ!!
「でぶぅぅぅぅ!!」

 と、また一人、タブゥマンがやられたようだ。

「…ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 意気込んで怒鳴るも、すぐそばで先ほどまで一緒にいたものがやられた声に精神がやられ、威勢も無くし、完全に戦意喪失したクデーズは恐怖のあまりその場を逃げ始めた。
 ここは森の中であり、障害物も多いので、濃霧の中で動くのは愚策なのだが恐怖から逃れるためにクデーズは駆け抜ける。

 だが、走っても走っても霧が晴れず、むしろ進んでいる気がしなかった。
 次第に疲れがたまり、クデーズはその場に倒れ込むも周囲の濃霧は晴れず、気が付けば何か鋭い刃物のようなものが目の前に迫っていることに気が付き……

「お前が次の後ろの正面だぁぁ!!」
「ぎんやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 絶叫を上げ、クデーズは色々と漏らし、気を失うのであった。



――――――――――――――
SIDEエル

「うわ、なんか急に髪が真っ白になったぞこいつ」
「恐怖のあまり、色を失ったようじゃな」


 タマモが周囲の幻覚を解除し、改めて見渡せば盗賊たち…‥‥それも、エルが見たことがあるやつらも含み、全員が気絶していた。

 恐怖のスパイスになるようにそれとなく濃霧をタマモの妖術で見せていたのだが…まさか、あぶくを吹いているどころか、異臭を放った状態で気絶するとはどれだけ精神的にやられたのだろうか。
 ミモザがいなかったので、幻術の中でも幻聴の方を使ってもらって、リクエストした曲を聞こえるようにさせたのだが‥‥‥効果は抜群過ぎたようであった。これ、歌のプロのミモザだったらより演出できただろうが、凝り過ぎるとこちらも怖くなるかな?

 しかし、思ったより聞いたな「かごめかごめ」の歌。
 斬る要素とか一切ないけど、なんとなく怖さの演出のために混ぜ込んでみたが、相手にとって不気味すぎたようである。
 なお、実際に斬ることはせずに、幻覚と幻聴で丁寧にリアルに選出したのだが、メンタルを徹底的に壊してしまったらしい。

「それにしても、戦闘する前に全員気絶か。どうしようか、これ?」
「持ち運びたくはないし……かと言って放置もできぬのぅ」

 色々と臭すぎる臭いを放つ盗賊たちに対して、エルたちはどうすべきか考える。
 この場で葬り去ってしまうこともできるが…何処かで見たと思えば…‥‥確か廃嫡された王子たちではなかっただろうか。
 となれば、ここで葬るのも何かと面倒な気もするし、できることとすれば…



「第二のカトレアを作らないようにしつつ…木々よ、育て、捕縛の家となれ、『クラフトハウス』」

 簡単な小屋を作る魔法を発動させ、エルは彼らを密封した。
 まずは余りにも臭いが酷すぎたので、いったん隔離させてもらったのである。
 室内に充満して自らの異臭で死なれても困るため、念のために空気穴程度は付けておき、そのまま放置することに決めた。

「とりあえず、ギルドに連絡して、捕縛を頼もうかな……」


 本来であれば、自分たちで運ぶのが筋なのだろうが、やらかしてしまった。
 色々おもらし馬鹿野郎共にはこれ以上関わり合いたくないし、触れたくもない。

 全員ホイホイっと投げ込んで逃げられないようにして、後で連絡して捕縛に向かってもらおうかなと考えている中、ふとあの者たちが持って居た袋が転がっているのにエルは気が付いた。
 幻覚を見せて混乱している間に、手放したのだろう。

「そう言えば、眠っているとか楽しむとか言っていたな。あの中に何が入っているんだ?」
「何かの獣かのぅ?」

 疑問に思いつつ、その袋に近づいてみる。サイズとしては、大体人が入れそうなサイズだが…いや、呼吸音とか聞こえてくるし、本当に人が入っているのではなかろうか。

 どこかで人さらいでもしてきたのかなと思いつつ、中身を出してみれば…そこにいたのは、人ではなかった。

「なんだ、これ?」
「あやつら、何を持ってきたんじゃよ」

 中身を出してみると、そこには少女が眠っていた。
 ただ、人間ではないと言うのを主張するかのように、両腕に当たる部分が大きな翼になっており、両手を合わせて寝ている様子だ。

 どうやら、両腕が翼である少女のようで、絶対にモンスターに違いないけれど、何をどうやってこんな少女があの盗賊たちに捕まったのやら。

 詳しいことを調べるためにも、とりあえず少女を背負ってギルドへ報告しに向かうのであった…


「…わーお、すごい羽根がもっふもふする」
「わっちのしっぽもモフモフじゃぞ」

 タマモ、張り合わなくっていいって。確かにモフモフだけど、これまた違うふわふわな感じが…もしやあいつら、この子を羽毛布団代わりにしようとしたのか?


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