スローライフは、この手で掴み取りたい!! ~でも騒動は、押しかけて来るらしい~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
77 / 106
第2章:少年期後編~青年期へ

72話 とりあえず、責任しっかりと

しおりを挟む
SIDEタマモ

…一夜明け、タマモはギルドに訪れていた。
 本日はランクアップの確認のために来ているのだが、エルは本日授業のため、日中の子の時間にギルドに訪れることはできなかった。
 いや、そもそも昨晩の時間制限ありきの中でそうとやったので無理をさせるわけにもいかないだろ言う満場一致の意見で、彼女が代表として向かうことにしたのだ。

 放課後の時間を待って向かうのもありだが、こういうのは早めに済ました方が良いだろうと思い、やってきたが…正直なところ、昨晩の余韻が肉体にちょっと残っていた。
 動けないことはなかったのだが、そのせいで、色気というか、妖艶さが出ていたので道行く人たちが振り向いたりして、中には彼氏が振り向いたので金的をくらわす彼女の人がいたのは気にしないでおこうと思う。


 とはいえ、何も一人で向かっていたわけではない。

「エルがいないのに、来ちゃっていいのさ?」
「良いんじゃないかのぅ?一応、わっちと組んで登録しておるし、代理でと言うのも可能じゃったはずじゃ」

 歩いているタマモの横を、地上を歩くよりも軽くパタパタと羽ばたいて低空飛行しながら、ハーピーのジェリアが問いかけてきたのでタマモはそう返答した。

 昨晩、ハクロに連れて帰ってギルドに突き出したつもりだったが…あいにく、都合悪く深夜時間の休業日だったようで、できなかったのである。
 そのため、ハクロが家の柱に勝手なことをしないように縛りつけていたらしい。
 冒険者が集うギルドだが、流石に二十四時間対応とまではいかなかったようで、深夜帯に休業時間があったのはあまり知らなかったのもあった。

…まぁ、そもそも真夜中にギルドを利用しようという冒険者自体がほぼいないというのもあるらしい。電気で明かりが二十四時間つくようなエルの元居た世界の現代とは違い、魔道具の明かりなどがあるとはいえ、それでも夜遅くまで営業するメリットがさほどないのもあるだろう。
 緊急事態のクエストなどもあるだろうが…営業しているのも人なので、しっかり休みを取る必要があったと思われる。


 そんなわけで、日が上がってそうそうに突き出そうと思ったが、一晩経って考え、少しだけ変えることにした。
 エルを誘拐してそのままどこかへ行こうとしていたことに関しては、正直タマモたち側からすれば万死に値するだろう。突き出してすぐに討伐対象になったら、躊躇なくやることもできたかもしれない。

 ただ、ハーピーという種族柄…空を飛べるというアドバンテージに関しては逃しにくいと思ったのもある。
 ミモザが空中でも泳げるとは言え、どちらかといえば彼女は水中のほうが専門であり、空中戦が非常に得意というわけではない。エルの将来の目的にスローライフがあるようだが、そういう生活上畑なども耕作すると思われ、作物を狙う鳥などが出てくる可能性もあり…そういった時に対処しやすいような要因がいたほうが、ちょっとは心強いのかもしれない。

 そういうわけで、突き出して討伐になるかならないかの部分はいったん保留にして…そもそも見た目が手が翼以外は少女の姿であり、そのまま放置というのも不味いと思われる。
 かといって野に逃がしたらまた同じようなことをしでかす可能性もあるため…ならば、対応しやすい様にということで、その身を預かろうという結論に至った。

 そのため、だったらどうするべきかということで、この度、彼女をエルの従魔として登録することにしたのである。
 誘拐をやらかしたモンスターをそのまま手元に置くのは正気の沙汰かと疑われそうな気がしなくもないが、やった理由としてはその種族の儀礼のようなもの。
 否定するわけにいかないだろうし、今後ゆっくりと話し合いを進めていけばいいということでその結論に至ることもできたのだが…正直なところ、彼女たちからすればジェリアを従魔として登録して良いのかは複雑な思いもある。

(…まぁ、エルが賛成したなら、わっちらは否定する気もないしのぅ。目も光らせつつ…ふむ、分散できるならそれはそれでありか)

 今すぐにということはないだろう。だが、エルの気質を考えるならば否定することもなく、次第に受け入れていく可能性がある。
 ならばここは、賛同しつつ…夜の営みの方面で、本当は水入らずで行いたい部分も対応しきれない可能性もあるので、ちょっと分散用に保存するのはありなのかもしれない。
 そう考えると、案外悪くはない方法なのかなとタマモは思うのであった。





 そうこうしているうちにギルドに到着し、二人は受付のほうへ向かった。
 このまま普通にランクアップの確認と、ジェリアの従魔登録の手続き…主としてはエルのほうに指定しつつ、いくつかの作業だけで済むはずだったが、そううまくはいかなかった。


「はぁ?なんじゃと、あやつらが逃げた?」
「はい、申し訳ございません…どうやら現在逃走中のようです」

 手続き中、何やら深刻そうな様子で、タマモに気が付いたギルド職員が蒼い顔をしながら、ある報告をしてきた。
 それは、ランクアップ試験時に捕らえた、元王族と思われる愚物の盗賊たちが、何やら行動力は無駄にあったのか、根性で牢から脱獄して逃走したらしいという情報。
 捕獲はしていたはずだが…なんと地面に穴を掘って抜け出したというのだ。

「いや、それ普通にそちらの監視責任ミスじゃろ…」

 呆れるというかなんというか、管理状況が鳴っていない。
 人々が住まう場所近くの罪人を収容する牢で、そんな簡単に抜け出されるのは流石に監視体制が甘すぎるだろうとツッコミを入れたくなる。

 ただ、どうやら話を聞けば、一応あの愚物たちは席が抜かれていたとはいえ、一応は元王子なのも確認されており、そうたやすく罰を与えていいのかという議論が盛り上がってしまったらしい。
 色々と思うところがある者たちもおり、どういう処分を下すべきかと徹底的に討論されてしまい…その隙を狙って抜け出したそうだ。

 そんな理由を聞いても先方のミスであり、確実に賊たちよりもそっちの担当していた人たちの首が飛ぶのが目に見えるだろう。

「しかしのぅ、逃げた場合は、盗賊討伐の依頼は失敗扱いになるかのぅ?」
「いえ、それは大丈夫です。タマモさんと、えっと今いないエルさんのギルドカードに記入いたしますが、『Hランク』から、無事にランクアップを認定。ギルド長も確認し、今回はいったん『Dランク』にランクアップとなります」
「ふむ、盗賊討伐ゆえに、命のやり取りの危険性もあったからCランクになれる可能性もあったと思うのじゃが」
「実力だけを見るならば、もっと上にしたいところもありました。ただ、初回のランク登録時にスキップ申請をしなかったことや、急激なランクの情報が不自然にみられる可能性…それと容姿のほうで少しごたごたがありまして、面倒ごとにならないように、ちょっと抑えたのです」
「む?どういうことなんじゃよ?」

 前者はランクスキップを最初に行わなかったゆえの勉強料みたいなものだからわかるといえば分かるが、後者のほうは何なのか。
 かくかくしかじかと話を聞いたところ…タマモ、ハクロ、カトレア、ミモザ…獣人とモンスター側の容姿が優れているのもあり、目立っている状態。
 そんな中で、急激にランクアップを行えば色仕掛けをしたのではないかという悪意ある噂が流される可能性や、注目度がさらに上がることでより面倒なところから目を付けられる可能性なども考量し、ちょっとだけ抑えられるようにということで決められたらしい。

 そこはギルドがもっとしっかり責任を持って対応してほしいが…残念ながらギルドの責任だけでも厳しい部分もあり、妥協をせざるを得なかったようだ。

「ふむ、まぁ別にいいかのぅ」

 説明を聞いたが、高ランクになることに関しては興味を持っていない。
 もともと他国へも移動しやすくするために冒険者登録をしただけなので、ランクに関してはさほど気にしていないのもあるし、面倒ごとが来る可能性を考慮してくれたというのも偽りがないようなので、理解を示すことはできるだろう。
 この場にいないエルも納得できるだろうし、妥当なところであると判断できたので、特に文句を言うこともなかった。

「それはそうとして、逃げた盗賊たちの行方は依頼扱いというよりも賞金首として扱う事になりました。一度捕縛して人相書きが手早く作られましたので、より確保まで早くなるように、そこそこの値段になっています」

 そう言ってギルド職員が持ってきたのは、逃亡した盗賊たちの人相書きであった。

「生死を問わずと書いておるのぅ」
「半殺しでもいいのさ?」
「いえ、できるだけ生かして捕まえて欲しいところですね。生死を問わずと書いていますが、一応死なれてしまいますと、それはそれで面倒なことになりますので」


 この世界では死体がアンデッド系のモンスターになったりすることがある。
 きちんと処分を行えば問題ないのだが…手順を踏んでも実は、欲望が強かったりするとそれでも根性で蘇ってくる可能性があり、素人の手ではなく専門家のほうに引き渡す必要が出るようだ。
 今回の賊どもも、万が一の可能性を考えると…できれば、生け捕りのほうが色々と手間を省けるので、生きていたほうが都合が良いのである。恨みがある人たちが手を下すためにも生きていたほうが良いという可能性もあるが…そこはまぁ、相手の自業自得な部分もあるだろう。
 ゆえに、死体に関しての処理は適切に行うようにされており、生死を問わずと

 なにはともあれ、盗賊共が逃げたということ以外は特に支障はなく、従魔登録も無事に終了し、ジェリアが加わることになった。
 そのあと、ギルドから出て、タマモたちは帰ることにしたが…賊たちに関して、気にしていた。


「それにしてものぅ、全然反省しておらぬというか、腐っていそうな予感しかしないのぅ」
「不意打ちで捕えられたことに関して、まだ怒っているのさ!見つけたら蹴りを食らわせるのさ!」

 バサバサと翼をはばたかせ、力強いことをいうジェリア。ぐっすり寝て囚われていたようだが、番探しの邪魔をされたようなものでもあったので、賊たちに対して思うとこともあるようだ。
 ハーピーは飛行能力だけではなく、人を軽々とつかんで飛んでみせる脚力もあるので、手加減無しで思いっきり蹴られた場合は逝ってしまう可能性もあるのだが…しぶとい生命力を相手に期待したいところだろう。

「まぁまぁ、どうせそういうやつらほど馬鹿な自爆をするものじゃ。放っておくのがよかろぅ」
「でもでも、許せないのさ!」
「そうかのぅ…あ、そうじゃジェリア。お主飛べるじゃろ?空を飛んで、上空から探すのはどうじゃ?」
「その手があったのさ!」

 タマモのその提案に、ジェリアは目を輝かせて乗ることにした。
 わざわざ相手が逃亡したのであれば、この機会に憂さ晴らしも兼ねて、この手で捕まえさせた方が良いかもしれないと考えたからである。
 とはいえ、馬鹿ほど予想外の事をしてくる可能性があるので、タマモは彼女に自分勝手な行動をしないようにして、見つけたら皆に連絡をするように言い聞かせた。また眠らされて囚われたら意味がないし。今回は本当に偵察だけの任務を行ってもらうのだ。

 よく言い聞かせつつ、飛び立ってから一時間後…無事に、賊発見の一方が届けられたのであった。


「見つけたのさー!!まだ都市の外に出ていなくて、路地裏に潜んでいたのさー!!」
「ふむ、外に逃げたと思わせて、ほとぼりが冷めるまで隠れるつもりだったのじゃろうか?」

 微妙に頭が回るような相手だったかもしれないが、上空からの監視の目までは気にしていなかった模様で、さっそくジェリアが役に立ったようであった……
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...