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1章 旅立ちと始まり

1-26 どさくさに紛れて、駆除しつつ

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‥‥‥なんとなく感じていた嫌な視線。

 それを出していた冒険者を退場させたが、特に問題になっていない。

 ブラッディボックスとの戦いで他の冒険者たちと協力して戦っているけど、邪魔していた人たちは大した戦力にもなっていなかったし、何やら天井に仕掛けをして大勢を巻き込みかけていたのが酷すぎる。

 相手を倒すためにやったとごまかしていったとしても、この混戦状況では正確に狙えなかっただろうし、やらかして邪魔してくるぐらいならば、退場してもらっていたほうがいい。

 その為、襲ってきたところを狙って返り討ちにしたのだが‥‥‥うん、まぁ流石にぐしゃと潰れる様なところまでは考えていなかったが、結果としていなくってくれてよかったとは思う。

【シュルルルル!!】
【グラァァァァ!!】

 そして戦況の方も、数に押されているのもあるし、そもそも魔物としての格の違いゆえかハクロの方がどんどんブラッディボックスを押しており、もう少しで倒せそうだ。

「ダンジョンコアの破壊の方はどうだー!!」
「まだだー!!硬いし、結構大変だ!!」

 この様子だと、守護者としてここに陣取っているブラッディボックスを倒す方が先になるだろうが、コアの破壊は結構苦戦しているらしい。

 そこそこの人数が砕く作業を行っているのだが、コア自身がやられてたまるかというように自己再生などもやっているようで、完全に砕くには時間がかかる。

 とは言え、このブラッディボックスを倒しきれば後は前線力で相手が出来るので、無駄な抵抗とも言えるだろう。時々守護者にしているブラッディボックスの回復や攻撃力を上げたりするような動きをしているようだが、どう見ても間に合ってもない。

 でも、出来ればもうちょっとスピーディにやりたいなぁ。

「うーん、ハクロ何か良いアイディアないかな?」
【シュル?シュルルルル…シュル!】

 っと、良いアイディアがひらめいたというように、ハクロがポンッと手をうった。

【シュルルル!!】

 糸を出し、それを素早く編み上げるハクロ。

 何か布でも作るのかと思ったが、かなり大きな隙間を開けており、布地ではなく網を作り上げる。


【シュルルル!!】
「皆、ハクロが何かするみたいだから一旦どいてー!!」
「お?」
「なんだなんだ?」

 ブラッディボックスに群がっていた冒険者たちだが、何か動きを察したのかすぐに離れて距離を取る。

 そしてブラッディボックスだけになったところで、ハクロは網を投擲した。

【シュル!!】
【グララァ!?】

 ぶわぁぁっと網が広がり、相手を全部包み込む。

 そのまま捕らえたかと思えば、きゅっと網を下からも通して搾り上げ、生け捕りの様な形にする。

【シュルルル‥‥‥シュルルルルゥ!!】
【グラグラグラ!?】

 ぐぃぃぃっと網と繋がっている糸を引っ張り上げ、ブラッディボックスが宙に浮かぶ。

 網に捕らえたまま、引っ張りつつもハクロは全身を使って回転し始め、ブンブンと勢いよく回し、遠心力を付けて‥‥‥‥



【シュルルルルゥ!!】
ドッゴォォォォォォォォン!!
【グラッベェェェェェェェ!?】

 物凄い勢いでダンジョンコアの方に近寄って、そのままコアに叩きつける。

 コアの方にいた冒険者たちも動きを見て離れていたが、凄まじい威力だったようでコアが一気に砕け始める。

 そして勢いを緩めずに、何度も何度も回転して叩きつける。

ドッゴォォォォン!!バッゴォォォォン!!ゴッゴォォォン!!

「うわぁ‥‥‥さっきまで時間かかっていたのに、見る見る間に砕けていくんだけど」
「なるほど、魔物そのものをブラックジャックにしたのか‥‥‥あの魔物、相当硬度があったし、彼女の糸も強度が強いから、より凶悪な威力になっているのだろう」
「凄まじい、これが国滅ぼしの魔物の力…‥‥というか、石頭の様な強度を持つブラッディボックスの方が硬すぎるだけなのだろうか」

 全員が状況を見つつ、守護者とコアが同時にやられゆく様を見つめるだけになる。

 そして数分後、先ほどまで砕くのに苦労していたコアは今、最後の一片だけになるほどになって‥‥‥



【シュルルルルルルゥ!!】
ドッガァァァァァァァァァン!!
【グラグラァァァァ!?】

『ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!』

「うわっ!?」
「おっと、ダンジョンの断末魔か!!」
「これで完全に、コアが破壊されたという証拠になるぞ!!」

 とどめを刺した瞬間、ダンジョン全体が震える様な甲高い声が響き渡ったが、どうやらこれはダンジョンの断末魔らしい。

 どのダンジョンや迷宮でも共通の断末魔のようで、この悲鳴が聞こえたという事は、この瞬間完全に命を失ったと示すそうだ。


 とは言え、すぐに崩壊するとかはなく、緩く3日ほどかけて壊れていくそうだが…‥‥何にしても、これで依頼達成という形になるだろう。

【グラグラァァ…‥‥】
「あ、でも守護者はまだ生きているな」

 コアの破壊に一役買ってくれた、守護者の立場にあったはずのブラッディボックス。

 そんな魔物は今、ほぼ瀕死の状態になっていた。

「瀕死というか、凄い数のたんこぶが」
【シュルルルゥ】

 コアを破壊したのでもう意味も無いから開放したが、凄まじい数のたんこぶが出来上がっていた。

 宝箱の姿をしている魔物だが、完全に無機物のようなもので出来ているという訳ではないようで、物凄く痛々しい。

「守護者はダンジョンコアが破壊されると、その任を解かれるぞ」
「ただのここに生息する魔物に成り下がるわけだが…‥‥どうする?」

 そんな事を他の冒険者たちに言われたが、どうすると言われてもどうしたものだろうか、この痛々しいたんこぶまみれの箱を。

「んー‥‥‥‥誰か、この魔物に犠牲になったか?」
「なってないな」
「犠牲は無しだ。こいつがポンポン中から色々と武器なども出してきたが、喰った形跡もない。おそらくはここにこっそり挑み、逃げかえったやつの物を溜めていたのだろう」

 誰かを捕食しているような魔物でも無かったようで、かなり硬い魔物だったという以外の評価もない。

 ここまでフルボッコにされたら、もう人を襲うような真似もしないというか‥‥‥うん、滅茶苦茶痛々しい姿になっている相手を、これ以上追い詰めるのは流石に気が引ける。


「それじゃ、ココに放置でいいか。でも、誰かを捕食しようとしたら‥‥‥また同じ目に合わせるよ」
【シュル、シュル、シュル】
【グラグラグラァァァァァァッァア!!】

 ハクロがより正確に、魔物としての言葉で伝えたようで、瀕死だったブラッディボックスは瞬時に起き上り、箱の中から涙の様なものを噴き出しながらその場を猛ダッシュで逃げて行ってしまった。

 凄い早さだったが‥‥‥うん、それだけ今のブラックジャックになる攻撃がトラウマになったのかもしれない。

「そう考えると、ハクロ怖いなぁ‥‥‥」
【シュル!?】

 そんな心外な!!とでも言いたげな顔になるハクロ。

 その顔を見て、その場にいた僕らは思わず吹き出し、笑い声をあげてしまった。




…‥‥何にしても、今回のギルドからの緊急依頼は、全員無事に達成できたようであった。


「あ、それはそうとダンジョンの断末魔を聞いた奴、全員きちんとギルドへ帰るぞ」
「倒れたやつも運ぶが、ダンジョンの断末魔はコア破壊のしっかりした証拠になるからな。10人以上が確実に聴いたと証言しないと、破壊証明にならないぞー」

 なるほど、そんな決まり事もあるのか…‥‥ダンジョン破壊のたびに、ああいった声を聴くのはちょっと嫌だけどね‥‥‥
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