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1章 旅立ちと始まり

1-39 本人たちのあずかり知らぬところで

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…‥‥再びダンジョン内部へやって来て、僕等は今あっさりと5階層を突破した。

 そこまでは良いだろう。一度挑み、歩んできた場所ゆえにスムーズに進みやすく、前よりも短い時間でサクサク進めるのは気持ちが良い。

 だがしかし、ダンジョンというのは何が潜んでいるのか分からないものであり、そのどさくさに紛れて良からぬことを企む輩が、いい隠れ蓑として潜むこともあるという話なら聞いていたのだが‥‥‥


「…‥‥セーフエリアに滅茶苦茶魔物が入りたそうに集って、囲まれまくっているね」
【シュル、ナンカ全員、空腹ジャナクテ、怒ッテイルヨ】
【グラグラァ】
「「「ひぃぃぃぃぃぃ!!助けてくれぇぇぇっ!!」」」

 魔物たちの注意をこれでもかというほど惹きつけているので、安全に何者だったか確認するための時間が取る事が出来て、あのエリアに逃げ込み動けなくなった者たちに関して、調べる時間は出来た。

「えっと、ギルドから発行されている手配書だと‥‥‥ふむ、魔物の卵を違法に売買することもやっている盗賊団のご一行だね」
【ダカラカナ?子供奪ワレテ、皆激怒シテイルヨ】

 どうやらダンジョンに出現する魔物たちから、彼らは卵を奪ったらしい。

 魔物繁殖方法は色々とあるようだが、あれはメタルゥアントの群れのようで、卵で増殖する蟻のような鋼鉄の身体を持つ蟻の魔物であり、シャレにならないほどの量が多く集っていた。

 一匹のアントからは大量の金属が素材としてはぎ取れるが成虫はそこそこ強いので、産まれたてのまだ弱い時を狙おうとしていたようだが、大失敗して親やその仲間たちの怒りを買ってしまったのだろう。一族総出で確実に潰すと言わんばかりの暴れようである。

「‥‥‥あれはもう、駄目だね。僕等にも救いようがないよ」
【見捨テルノ?】
「そうするしかないよ。全部救えるわけじゃないし、彼らは自らその道を選んでしまったからね」
【グラグラァ】

 人道的に見れば助けるべきなのかもしれないが、あの盗賊たちの犯罪履歴を見るとその他色々と救いようのない事を引き起こしているようで、まだ逃げ切れた件があっても巻き添えで被害に遭った村や町があるらしい。

 ゆえに、下される刑罰はかなりの重罪になっているようだが‥‥‥

「助けてくれぇぇぇぇ!!」
「最後が蟻に喰われるなんてそんなのありかぁぁぁあ!!」
「せめてギロチンや縛り首で、人らしく逝かせてくれぇぇ!!」

 泣き叫び、僕等に気が付いて助けを乞うようだが、正直助ける気は起きない。

 罪状も色々のっているのだが、森育ちでそんなに人の中で過ごしてきたわけじゃない僕が見てもダメだろと言えるようなものばかりだ。

‥‥‥いや、そんなに重罪ならどうして管理されているダンジョンにこうも潜り込めているのかというツッコミもあるが、魔物の卵を狙って動く集団だからこそ、ダンジョンに隠れて潜り込むすべがあるのだろう。

 だが、今回は盛大に運が悪かったようで、人生の終わりが近づいてきているようすである。

「そう言えば、この蟻たちって壁まで歩けたっけ?」
【ンー、床ダケミタイダヨ】
「なら、彼らの邪魔しないように、壁伝いで気が付かれないように進むか」
【ウン】

 ハクロの背中に乗せてもらい、ラナの方は落ちないようにしっかり糸で固定して背負われ、僕等は壁に張り付いてそのまま素通りをさせてもらう。

 助けてもらえないことが分かったのか、巻き添えにしてやろうと相手が攻撃を仕掛けてくるが、距離があるので楽に回避できている。

 まぁ、セーフエリアにいるから生き延びられるだろうが‥‥‥精神的に持つのかなぁ。大量の魔物が目の前にいる光景ってきつい気がするよ。

 そう思いつつも、非情かもしれないけれどもこれも運命かと思って、僕等は彼らを後にするのであった‥‥‥
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