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1章 旅立ちと始まり

1-38 遠足は終わりが肝心、油断しやすいからこそ

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‥‥‥ダンジョンから退出し、ようやくギルドに僕らは辿り着いた。

 5階層までの調査依頼もこなしたし、道中で得た護衛依頼も達成したことで、依頼報酬をまとめて得られて中々良い成果を上げられたと言えるだろう。

「でも、素材の状態としてはちょっと残念なところが多いわよ。もうちょっと綺麗なら高く買い取りやすいけれども、少し安く買うことになるわ」
「あー、それでも良いので、お願いします」
【シュルルゥ、モウチョット、良イ感ジ狙ウ】
【グラグラァ】

 魔物たちを狩って得た素材に関しては、残念ながら低評価が多かったが‥‥‥うん、仕方がない事だろう。

 次はもうちょっと、綺麗に仕留める方法を模索して実践していくしかあるまい。僕らはまだ、冒険者としては経験も浅い方だし、戦闘が物凄く綺麗にできるという訳ではない。



 けれども、ダンジョンに挑んで得ることが出来たせいかとしては上々の出来であり、しばらくは稼がなくても普通に生活できそうなほど稼ぐことはできている。

「でも、やっぱり魔道具も狙いたい…‥‥今回の感じだと、5階層までは可能だったよね」
【楽ダッタ、問題ナカッタ】

 あるフレッドさんたちとはギルドの前で分かれ、僕等は今宿屋の一室に泊っていた。

 魔物も同室OKな宿のようで、彼女達と一緒の部屋であり、くつろぎやすい広さもあるので中々良い宿屋だろう。そこそこ料金も取られるのだが、今回の臨時護衛依頼の報酬で補えるので問題もない。


 それはともかくとして、僕等はちょっとあることに関して話し合っていた。

 自分達の今の腕前や、連携。その他何か起きたとしても、5階層までは特に問題はない。

 さらに現在、ラナの加入や依頼達成数なども相まってCランクになっているのでこここにあるダンジョン、ハルゾランド内に設けられた冒険者の挑戦可能な階数の基準であれば、実は15階層までは挑むことが可能らしい。

 なお、30階層までは存在しているようだが、20階層あたりで急にAランクから挑む様になっており、どうやら急激に魔物の強さが変わるそうだ。


 とにもかくにも、今回は様子見のために潜ったようなものだが、せっかくだからいけるところまで行った方が良いのだろうか。

 それとも、当初の目的として王都までまずは行ってみるということで寄り道に過ぎないダンジョンなので、このまま挑んだという記録だけ残して去るべきか‥‥‥ちょっと迷う。

 強さ自体に問題はないだろう。そもそも、ハクロもラナも強力な魔物だし、Aランクから挑める階層を越えても問題なく先へ進めそうではある。

 しかし、彼女達に対して僕自身の強さが見合うのかと言えば‥‥‥うん、まだまだなところが多いし、慢心をするのも良くはない。強い力にはそれに見合ったものを身に付けろと、昔い爺ちゃんも言っていたが、実体験から来るものだったようで結構説得力があった。

 だからこそ、下手に挑むのも不味いだろう。驕る者は痛い目にあうのは、当然のことだ。

「そう考えると、このままスルーしても良いけど‥‥‥でも、試せるところがあれば試したいし、やれるならやっちゃおうかな?」

 ラナのおかげで収納に関しての問題は解決したが、魔道具は欲しい。

 何かこう、役に立つ様なものでなくても売ることは可能だろうし、せっかくダンジョンがある場所なのだから、挑めるときは可能なところまで進めておきたい。

「‥‥‥なら、10階層を今度は目標にして、終わったら王都へ向かっての旅路を再開しようかな。ハクロ、ラナ、それでいいかな?」
【大丈夫、ジーク、ヤリタイコト、私達反対シナイヨ】
【グラグラ!】

 流石に15階層まで挑むには、時間がかかり過ぎるのもあるし、僕自身の経験が浅いので挑むにはちょっと勇気が足りない。

 けれども、今の実力などを見据えて、ひとまずは10階層を目標にしようと、僕等はそう決定し、明日は挑むための準備を始めようとするのであった…‥‥

「ところで、ここのダンジョン5階層までは毒物多めだけど、6~7階層辺りには超高級食材になるような魔物が極稀に出現するらしいんだよね。これもついでに狙おうか」
【絶対挑ム!!毒無理デハナイケド、美味シイノ、食ベテミタイ!!】
【グラァァァァ!!】

…‥‥やる気、そっちに出していいものなのだろうか。
 







―――――ところで、ジークたちはまだダンジョンに挑む経験が浅いので、あることがダンジョンや迷宮で起こり得る事を知らなかった。

 それは、魔物が生み出されるダンジョンだから可能性としてはあり得るが、それでも弱肉強食な世界ゆえに、ある程度住み心地のいい場所に居続けるからこそ、そんなに起こることはないもの。

 でも、それはあくまでも何事も無かったらの話であり‥‥‥何かきっかけがあることで、引き起こされる可能性を秘めており‥‥‥そして、そのきっかけは起きてしまった。

 ダンジョンの奥深くで、蠢く魔物たち。

 その中でも、とある魔物がそのきっかけを本能的に感じ取り‥‥‥そして、動き出してしまう。

 巡り合う時は、迫りつつあるのであった‥‥‥
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