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移り変わる季節と、変わる環境
log-089 闘争の心
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…グラビティ王国にある学園は、平民用の物と貴族用の物が存在している。
かなり前は両者混同でやっていたこともあったらしいが、様々な問題が複雑に絡み合い、その結果として別れ合い、今の形態になったと言われている。
それゆえに、そう簡単に交じり合うことが無いのだが…それでも交流が少々なければ、何かと不便なこともあるため、完全に断たれたわけではないのだ。
「その一つとして、この時期には貴族・平民双方のグラビティ学園で行う『大闘争会』があるのだが…今年度は、竜種騒動での被害もあったため、少しばかり規模が小さくなる。会場は両学園の間に位置する地下に設けられた…『ベクトラン闘技場』だ」
「あれ?先生、それってなんで地下にあるんですか?普段見ないので、わからないのですが」
「いざという時の大規模災害に備えて、建国時に作られた避難所でもある。まぁ、実のところ国が起こる前から存在していたのではないか、もっと別の何かがあったのではないかと言う話もあるが、それは今も謎のままでな…特に問題も無く使用できるからこそ、そこで大闘争会の会場にもなったのだ」
秋風のような寒い風が吹き始めた今日この頃、学園の授業を受ける中で告げられた大闘争会…前世で言うところの運動会のような物の開催が決まったということが生徒たちに告げられた。
本来であればそこまで混ざり合うことのない、貴族用と平民用、それぞれに分けられたグラビティ学園。
その両学園の交流を兼ねたものとして立ち上げられた行事であり、結構盛り上がるものなのだそうだ。
なお、地下にある利点として、大雨などを除けば特に天候に左右されにくく、開催日時をずらすようなことが無いというのもあるらしい。…貴族用と平民用では学園のカリキュラムや時間帯が少し異なるところがあるからこそ、その調整を少し楽にできるのが良いという理由も存在しているそうだ。
「それって、ハクロさんたちが参加できたりしますか?」
いくつかの質問が飛び交う中で、生徒の一人が出したその疑問に、他の者たちも耳を傾ける。
モンスターである彼女たちならば、競技に参加したらかなり強そうではあるのだが…
「残念ながら、従魔の参加は不可だ。応援席での待機となる」
「そんなー、いたら絶対に、貴族学園のやつらに圧勝できるかと思ったのに」
「一応理由としては、かなり昔の話のほうでやらかした例があってな。貴族側の方だが、金の力でモンスターを無理やり連れて来て…それがギガスマタンゴということで無茶苦茶な混乱が生じ、結果として従魔の参戦はできなくなったとのことだ」
何をやっているのだろうか、過去にやらかした人。
そのとばっちりで参加できなくなるというのもなんだが…でも、確かに人以上の力を持つ彼女たちが参戦して圧勝となるのも、何か面白味は無い気もするだろう。
そう考えるとそこまで悪くはなく、ここからは参加する種目に関しての話が行われるのであった。
「…と言うわけで、ハクロ達の参戦ができないけど、その代わりに応援なら良いってことだから、しっかり見ていてよ」
【わかってますよ。ふふふ、愛しい番の活躍する様はばっちりこの目で見ますからね!!参加したかった思いもありましたが…まぁ我慢しましょう】
寮室に戻り、ハクロに話して他の皆にも伝えるようにお願いする。
家を得てから全員がここにそろわずに、交代しながら来ており、本日はハクロの番が来ていたようである。
【んー、でも地下にある闘技場ですか…避難所になっているとはいえ、そんなものがあったのは驚きですね】
「確かに、驚くよね。普段、見ることが無い場所だし…ああ、でも避難経路のマップとかではそれらしいものはあったかも?」
避難所として活用されているせいか、実は緊急避難時の経路の一つに地下への階段へ続くものがあった。
シェルターのような物があるのかなと思っていたが、まさかそんなものがあったのは驚くのも無理はない。
【でも、どうやって地下にそのような施設を作ったのでしょうか?上にたくさん建物があるのに、潰れないのでしょうか?】
「先生の話だと、凄く頑丈にできていて、そもそも安全の保障が無ければ避難所にもしないらしいけれども…言われてみると、確かに不思議だよね」
この世界の技術力で、地下に建築物を創ることができたのだろうか。
魔法やマジックアイテムなども存在するため、ありえなくもない話だが、本当はどういう目的で作ったのか気になるところではある。
とにもかくにも、今は大闘争会へ向けて準備を進めるのであった…
「しっかり、内容が書かれたしおりも配布されていたよ。ほら、結構な数の競技があるみたい」
【へえ、大玉逃走に玉入れ、リレーに借り物競争、綱引きに剣舞踏‥‥色々とありますね】
「競技の進行や解説を行う人の説明も…って、あれぇ!?ここに思いっきりファイの名前があるんだけど!?」
【解説役でちゃっかり入ってませんか!?】
…一瞬、同姓同名の間違いかなと思ったが、しっかりスライムと書かれている…何やっているの、彼女。
かなり前は両者混同でやっていたこともあったらしいが、様々な問題が複雑に絡み合い、その結果として別れ合い、今の形態になったと言われている。
それゆえに、そう簡単に交じり合うことが無いのだが…それでも交流が少々なければ、何かと不便なこともあるため、完全に断たれたわけではないのだ。
「その一つとして、この時期には貴族・平民双方のグラビティ学園で行う『大闘争会』があるのだが…今年度は、竜種騒動での被害もあったため、少しばかり規模が小さくなる。会場は両学園の間に位置する地下に設けられた…『ベクトラン闘技場』だ」
「あれ?先生、それってなんで地下にあるんですか?普段見ないので、わからないのですが」
「いざという時の大規模災害に備えて、建国時に作られた避難所でもある。まぁ、実のところ国が起こる前から存在していたのではないか、もっと別の何かがあったのではないかと言う話もあるが、それは今も謎のままでな…特に問題も無く使用できるからこそ、そこで大闘争会の会場にもなったのだ」
秋風のような寒い風が吹き始めた今日この頃、学園の授業を受ける中で告げられた大闘争会…前世で言うところの運動会のような物の開催が決まったということが生徒たちに告げられた。
本来であればそこまで混ざり合うことのない、貴族用と平民用、それぞれに分けられたグラビティ学園。
その両学園の交流を兼ねたものとして立ち上げられた行事であり、結構盛り上がるものなのだそうだ。
なお、地下にある利点として、大雨などを除けば特に天候に左右されにくく、開催日時をずらすようなことが無いというのもあるらしい。…貴族用と平民用では学園のカリキュラムや時間帯が少し異なるところがあるからこそ、その調整を少し楽にできるのが良いという理由も存在しているそうだ。
「それって、ハクロさんたちが参加できたりしますか?」
いくつかの質問が飛び交う中で、生徒の一人が出したその疑問に、他の者たちも耳を傾ける。
モンスターである彼女たちならば、競技に参加したらかなり強そうではあるのだが…
「残念ながら、従魔の参加は不可だ。応援席での待機となる」
「そんなー、いたら絶対に、貴族学園のやつらに圧勝できるかと思ったのに」
「一応理由としては、かなり昔の話のほうでやらかした例があってな。貴族側の方だが、金の力でモンスターを無理やり連れて来て…それがギガスマタンゴということで無茶苦茶な混乱が生じ、結果として従魔の参戦はできなくなったとのことだ」
何をやっているのだろうか、過去にやらかした人。
そのとばっちりで参加できなくなるというのもなんだが…でも、確かに人以上の力を持つ彼女たちが参戦して圧勝となるのも、何か面白味は無い気もするだろう。
そう考えるとそこまで悪くはなく、ここからは参加する種目に関しての話が行われるのであった。
「…と言うわけで、ハクロ達の参戦ができないけど、その代わりに応援なら良いってことだから、しっかり見ていてよ」
【わかってますよ。ふふふ、愛しい番の活躍する様はばっちりこの目で見ますからね!!参加したかった思いもありましたが…まぁ我慢しましょう】
寮室に戻り、ハクロに話して他の皆にも伝えるようにお願いする。
家を得てから全員がここにそろわずに、交代しながら来ており、本日はハクロの番が来ていたようである。
【んー、でも地下にある闘技場ですか…避難所になっているとはいえ、そんなものがあったのは驚きですね】
「確かに、驚くよね。普段、見ることが無い場所だし…ああ、でも避難経路のマップとかではそれらしいものはあったかも?」
避難所として活用されているせいか、実は緊急避難時の経路の一つに地下への階段へ続くものがあった。
シェルターのような物があるのかなと思っていたが、まさかそんなものがあったのは驚くのも無理はない。
【でも、どうやって地下にそのような施設を作ったのでしょうか?上にたくさん建物があるのに、潰れないのでしょうか?】
「先生の話だと、凄く頑丈にできていて、そもそも安全の保障が無ければ避難所にもしないらしいけれども…言われてみると、確かに不思議だよね」
この世界の技術力で、地下に建築物を創ることができたのだろうか。
魔法やマジックアイテムなども存在するため、ありえなくもない話だが、本当はどういう目的で作ったのか気になるところではある。
とにもかくにも、今は大闘争会へ向けて準備を進めるのであった…
「しっかり、内容が書かれたしおりも配布されていたよ。ほら、結構な数の競技があるみたい」
【へえ、大玉逃走に玉入れ、リレーに借り物競争、綱引きに剣舞踏‥‥色々とありますね】
「競技の進行や解説を行う人の説明も…って、あれぇ!?ここに思いっきりファイの名前があるんだけど!?」
【解説役でちゃっかり入ってませんか!?】
…一瞬、同姓同名の間違いかなと思ったが、しっかりスライムと書かれている…何やっているの、彼女。
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