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少し広がっていく関係性
log-閑話 羽ばたけば薬屋が儲かる
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―――強い力と言うものは、その遺志に関係なく様々な物を巻き添えにすることがある。
巻き添えにされる側としてはたまったものではないのだが、どうしようもないという悲しい心理もありつつも…
「…神獣種、追加か」
「現状でさえも、厄災種及び予備軍がいるというのに、火薬庫にさらなる爆弾を放り込まれたか…」
…重い空気で覆われているのは、エルメリア帝国の…いや、違う。
グラビティ王国との国境沿いに建設された邸の中であり、両国のトップ及びその他重鎮たちが集い話し合っていたのだが、ここに集まった原因となった報告を再度確認しなおした結果、その事実に頭と胃が痛くなっていた。
「はははは…半年ほどの留学を行うことで、悪魔どもの動きもどうにか出てくるかと思ったが…今や、悪魔以上に相当な厄介事を引き寄せるのが見えてきたな」
「既に、人の身では有り余るほどの面子と言うか、戦力と言うべきか」
「下手すりゃ、一国を相手取っても潰せるようなものでもあるが…」
数年ほどおとなしかったと思えば、追加された戦力。
それも、悪魔に対抗できる手段としては強力な神獣種ではあるが、悪魔に向けなくともその名の通り神の獣と呼ばれるような類であればその秘めたる力も強力なもの。
特に、セイレーン…本来であれば魅了を引き起こす歌も、神獣種となれば浄化の力を秘めている可能性があり、その手のものを求める国々からすれば相当に価値があるだろう。
すでに水面下ではより活発な動きを見せる者たちもいるようだが、出来れば馬鹿をやらかしてほしくないものではある。
「まぁ、そもそもその主が厄災種を抱え込んでいる時点で、主を狙おうとしたら色々終わるがな」
「そのついでに、周囲も巻き添えに遭うのが分かる」
「それを抑えるために、より一層その危険性を理解している者たちでどうにか動こうとして」
「「「…結論からしてわかっているものほど、かなりの負担が来るな…」」」
はぁぁぁぁっと重い溜息を吐くものたち。
この場にいる全員はまさに、その負担が来ている人たちであり、国が違うとはいえ同じ苦労で一つになっているのである。
人は一つの大きな敵が出てきたときに、一致団結することができるが…巨大な苦労もまた、同じようにまとめる役目を持つのだろう。
だが、苦労を背負わされる側としてはたまったものではない。
「いや、本当に困ったものだ…悪魔も問題ではあるが、こっちはこっちでなぁ…」
「しかし時期が来れば、王国側へ戻るが…」
「戻る前に、神獣種追加の話はない方が良かった」
「盛大に、教会関係とかそっちの方が出てくるのが目に見える」
苦労の詰め合わせセットの、行き来する光景。
それを想像するだけでも、彼らの胃の悲鳴が上がる。
「「ああ、我々の安息の時間はいずこに…」」
―――ウタニノセテ♪オモイノセテ♪
―――ヒビケ♪アナタノユメノオモイ♪
「…ご機嫌に歌っているね、レイ」
【ふみゅっ♪歌うの、気持ち良い…すっきりするよ】
…どこかで誰かが安寧を求めていたそのころ。
その元凶ともなっていた神獣種…セイレーンのレイは歌を響かせていた。
ハクロ達と同様に、モンスター特有の圧縮言語ではなく人と同じような言葉を話せる彼女だが、その歌声に関してはまた違った感覚を感じさせるだろう。
―――イヤシノネイロ♪ソラニヒビケ♪
―――ミナヲキラメカセ♪
…その感覚は、ある意味正しくはある。
従来のセイレーンであれば、対象を魅了しうる歌。
しかしながら、神獣種となっている彼女の場合、魅了の効果は失われており…その代わりに、聖なる力を聞いた者へ及ぼさせ、浄化させたりあるいは魔を弾く弱い防壁を一定時間張ったりするのだ。
それはすぐには気が付かないものなのだが、確実にその歌が聞こえている場所は一種の浄化された場所となり、悪を寄せ付けない。
穢れなき聖域は、ゆっくりと広がっていくのであった…
【…なぁ、リア。悪魔なら相当、これはきつくはないか?】
「アルミナ隊長こそ、どうだ?これはアンデッドならば効くが…」
【「…いや、本当に聖属性に対して耐性があって良かったな」】
巻き添えにされる側としてはたまったものではないのだが、どうしようもないという悲しい心理もありつつも…
「…神獣種、追加か」
「現状でさえも、厄災種及び予備軍がいるというのに、火薬庫にさらなる爆弾を放り込まれたか…」
…重い空気で覆われているのは、エルメリア帝国の…いや、違う。
グラビティ王国との国境沿いに建設された邸の中であり、両国のトップ及びその他重鎮たちが集い話し合っていたのだが、ここに集まった原因となった報告を再度確認しなおした結果、その事実に頭と胃が痛くなっていた。
「はははは…半年ほどの留学を行うことで、悪魔どもの動きもどうにか出てくるかと思ったが…今や、悪魔以上に相当な厄介事を引き寄せるのが見えてきたな」
「既に、人の身では有り余るほどの面子と言うか、戦力と言うべきか」
「下手すりゃ、一国を相手取っても潰せるようなものでもあるが…」
数年ほどおとなしかったと思えば、追加された戦力。
それも、悪魔に対抗できる手段としては強力な神獣種ではあるが、悪魔に向けなくともその名の通り神の獣と呼ばれるような類であればその秘めたる力も強力なもの。
特に、セイレーン…本来であれば魅了を引き起こす歌も、神獣種となれば浄化の力を秘めている可能性があり、その手のものを求める国々からすれば相当に価値があるだろう。
すでに水面下ではより活発な動きを見せる者たちもいるようだが、出来れば馬鹿をやらかしてほしくないものではある。
「まぁ、そもそもその主が厄災種を抱え込んでいる時点で、主を狙おうとしたら色々終わるがな」
「そのついでに、周囲も巻き添えに遭うのが分かる」
「それを抑えるために、より一層その危険性を理解している者たちでどうにか動こうとして」
「「「…結論からしてわかっているものほど、かなりの負担が来るな…」」」
はぁぁぁぁっと重い溜息を吐くものたち。
この場にいる全員はまさに、その負担が来ている人たちであり、国が違うとはいえ同じ苦労で一つになっているのである。
人は一つの大きな敵が出てきたときに、一致団結することができるが…巨大な苦労もまた、同じようにまとめる役目を持つのだろう。
だが、苦労を背負わされる側としてはたまったものではない。
「いや、本当に困ったものだ…悪魔も問題ではあるが、こっちはこっちでなぁ…」
「しかし時期が来れば、王国側へ戻るが…」
「戻る前に、神獣種追加の話はない方が良かった」
「盛大に、教会関係とかそっちの方が出てくるのが目に見える」
苦労の詰め合わせセットの、行き来する光景。
それを想像するだけでも、彼らの胃の悲鳴が上がる。
「「ああ、我々の安息の時間はいずこに…」」
―――ウタニノセテ♪オモイノセテ♪
―――ヒビケ♪アナタノユメノオモイ♪
「…ご機嫌に歌っているね、レイ」
【ふみゅっ♪歌うの、気持ち良い…すっきりするよ】
…どこかで誰かが安寧を求めていたそのころ。
その元凶ともなっていた神獣種…セイレーンのレイは歌を響かせていた。
ハクロ達と同様に、モンスター特有の圧縮言語ではなく人と同じような言葉を話せる彼女だが、その歌声に関してはまた違った感覚を感じさせるだろう。
―――イヤシノネイロ♪ソラニヒビケ♪
―――ミナヲキラメカセ♪
…その感覚は、ある意味正しくはある。
従来のセイレーンであれば、対象を魅了しうる歌。
しかしながら、神獣種となっている彼女の場合、魅了の効果は失われており…その代わりに、聖なる力を聞いた者へ及ぼさせ、浄化させたりあるいは魔を弾く弱い防壁を一定時間張ったりするのだ。
それはすぐには気が付かないものなのだが、確実にその歌が聞こえている場所は一種の浄化された場所となり、悪を寄せ付けない。
穢れなき聖域は、ゆっくりと広がっていくのであった…
【…なぁ、リア。悪魔なら相当、これはきつくはないか?】
「アルミナ隊長こそ、どうだ?これはアンデッドならば効くが…」
【「…いや、本当に聖属性に対して耐性があって良かったな」】
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