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少し広がっていく関係性
log-157 広がる歌と爆散する小物たち
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…セイレーン、神獣種。
本来、通常主であれば魅了の効果を持つ歌は今、聖なる力をもってエルメリア帝国の帝都、その学園の中から徐々に効果を見せていた。
急激な効果はなく、されども魔に属する者であれば効果があるもの。
並大抵の耐性ではいともたやすく貫通する浄化の音色は、風に乗って流れていく…
―――カナデルネイロ♪ユメノウタカタ♪
「…ご機嫌そうに、飛びながら歌っているね」
「自由に飛び回ってますが、すっかり学園の名物になりましたわね」
空からしっかりと、聞こえてくる歌声。
見ればレイが歌を自由に歌っており、きらきらと飛翔している様子が見える。
ミラージュもまた見上げてそうつぶやくが、その言葉は間違っていないだろう。
「大空を飛び交う、神獣種の姿…帝都内では、その話題で持ちきりですわよ」
「そりゃまぁ、空なんて誰も抑える輩がいないだろうしなぁ…」
【空は安全と言えば安全なの。地上とは間違う刺激なの】
地に生えていた花から変化し、同じように大空を羽ばたける妖精の羽根を得たカトレアの言葉にうなずくジャックたち。
確かに空は、安全な方であり、下手に襲撃を仕掛けるような輩もいないだろう。
【ふみゅぅ…?飛びたいなら、一緒に飛ぶ?】
と、考えているとばさりと音を立てて、レイが下りてきた。
どうやら空にいても声が聞こえていたらしい。
「いや、別に良いよ。というか、一緒に飛ぶってどうやって?」
【足で、掴む…一人ぐらいなら、余裕】
鳥のような爪を持つ足を上げ、ぐっと指を器用に立てるレイ。
確かに、その爪であればがっちりと落とさずに飛ぶことはできるだろうが…
【…想像すると、攫われている光景にしかなりませんね】
【主殿の体格だと、子供が攫われる酷い絵面になるのだが】
ハクロやルトが言うように、絵面に問題しかない。
いや、一応は彼女は僕の従魔になっていることに関してはすでに周知の事実になっているようで、事情を知る者であれば問題は無いのだろうが…知らない者からすれば大問題でしかないだろう。
「というか、子供が攫われる絵面って…僕だって多少は、身長が伸びていると」
【…世の中は、残酷なんですよ】
【そればかりは、どうしようもないのなの】
【我が君、こればかりは何とも言えないぜ】
何故全員、顔を背ける。
そう思ってジャックが見るが、ハクロ達は目を背けた。
…自分たちは主が大事だが、この世の中にはどうしようもないことがある。
そして嘘をつくこともできないというか下手というべきか、それゆえにごまかすことしかできない。
何とも言えない空気が漂うのであった…
【…今、ここに務めているで良かったと思う瞬間があったようナ】
「どうしたの、ファイさん?」
【いいえ、何も】
…その頃、帝都のギルドにて、ファイはその場にいなくてよかったとなぜか予感がしていた。
まぁ、個人的なことを言えばマスターの側にいたほうが良いと思う気持ちもなくはないが、いないほうが良いこともあるだろう。
それに、こうやってギルドのほうで働いていれば…
(…悪魔に関して、疑わしい情報も入ってきますからネ)
ジャックの従魔たちの中で、一番情報を手に入れやすい立場。
こういう日々の業務の中で入ってくる情報には、価値があるものが多い。
ギルドに努めた当初は経験値を得る目的があったとはいえ、こうやって長く勤めていれば、情報がかなり重要になってくることが理解できてくる。
特に、怪しい動きなども人は見ていることが多く、断片的な情報であっても正確性が薄かったとしても、確認して価値が出てきたりするのだ。
(実際に、先日の色欲の悪魔騒動から少し経過して、ほとぼりが冷めた頃合いなのか動こうと考えた様子も見えますしネ…とはいえ、レイの加入もあってか、相手はうまくいっていないようですガ)
神獣種の力と言うのは、思った以上に影響を与えているのか、帝国内での悪魔の動きらしいものがかなり鈍いというか、失敗している様子がうかがえる。
あちこちで召喚の術式が広がっているようだが、どれもこれも不発で終わっているようだ。
神獣種であるレイが歌っている影響もあるのかもしれないが…帝国は帝国で、色欲騒動のこともあってかなり厳重に警戒しており、あちこちで対応しているのも功を奏しているのだろう。
それゆえに、悪魔の企みはことごとく失敗している。
ただ、そもそも、あの悪魔たちは…大罪に関係するようなものを呼んで、何をどうする気なのか。
その目的が完全に読めない不気味さがある。
【…知っていそうな悪魔もいますけど、あの人に聞いてもダメでしょうネ】
ルミの元同僚にして、悪魔…ゼリアス。
彼のほうがより悪魔に関しての情報を、悪魔だからこそ持っていそうなものなのだが、そう簡単に手を貸してくれない気もする。
あれもまた、人にやさしくしつつも悪魔であることには変わりはないのだから…
本来、通常主であれば魅了の効果を持つ歌は今、聖なる力をもってエルメリア帝国の帝都、その学園の中から徐々に効果を見せていた。
急激な効果はなく、されども魔に属する者であれば効果があるもの。
並大抵の耐性ではいともたやすく貫通する浄化の音色は、風に乗って流れていく…
―――カナデルネイロ♪ユメノウタカタ♪
「…ご機嫌そうに、飛びながら歌っているね」
「自由に飛び回ってますが、すっかり学園の名物になりましたわね」
空からしっかりと、聞こえてくる歌声。
見ればレイが歌を自由に歌っており、きらきらと飛翔している様子が見える。
ミラージュもまた見上げてそうつぶやくが、その言葉は間違っていないだろう。
「大空を飛び交う、神獣種の姿…帝都内では、その話題で持ちきりですわよ」
「そりゃまぁ、空なんて誰も抑える輩がいないだろうしなぁ…」
【空は安全と言えば安全なの。地上とは間違う刺激なの】
地に生えていた花から変化し、同じように大空を羽ばたける妖精の羽根を得たカトレアの言葉にうなずくジャックたち。
確かに空は、安全な方であり、下手に襲撃を仕掛けるような輩もいないだろう。
【ふみゅぅ…?飛びたいなら、一緒に飛ぶ?】
と、考えているとばさりと音を立てて、レイが下りてきた。
どうやら空にいても声が聞こえていたらしい。
「いや、別に良いよ。というか、一緒に飛ぶってどうやって?」
【足で、掴む…一人ぐらいなら、余裕】
鳥のような爪を持つ足を上げ、ぐっと指を器用に立てるレイ。
確かに、その爪であればがっちりと落とさずに飛ぶことはできるだろうが…
【…想像すると、攫われている光景にしかなりませんね】
【主殿の体格だと、子供が攫われる酷い絵面になるのだが】
ハクロやルトが言うように、絵面に問題しかない。
いや、一応は彼女は僕の従魔になっていることに関してはすでに周知の事実になっているようで、事情を知る者であれば問題は無いのだろうが…知らない者からすれば大問題でしかないだろう。
「というか、子供が攫われる絵面って…僕だって多少は、身長が伸びていると」
【…世の中は、残酷なんですよ】
【そればかりは、どうしようもないのなの】
【我が君、こればかりは何とも言えないぜ】
何故全員、顔を背ける。
そう思ってジャックが見るが、ハクロ達は目を背けた。
…自分たちは主が大事だが、この世の中にはどうしようもないことがある。
そして嘘をつくこともできないというか下手というべきか、それゆえにごまかすことしかできない。
何とも言えない空気が漂うのであった…
【…今、ここに務めているで良かったと思う瞬間があったようナ】
「どうしたの、ファイさん?」
【いいえ、何も】
…その頃、帝都のギルドにて、ファイはその場にいなくてよかったとなぜか予感がしていた。
まぁ、個人的なことを言えばマスターの側にいたほうが良いと思う気持ちもなくはないが、いないほうが良いこともあるだろう。
それに、こうやってギルドのほうで働いていれば…
(…悪魔に関して、疑わしい情報も入ってきますからネ)
ジャックの従魔たちの中で、一番情報を手に入れやすい立場。
こういう日々の業務の中で入ってくる情報には、価値があるものが多い。
ギルドに努めた当初は経験値を得る目的があったとはいえ、こうやって長く勤めていれば、情報がかなり重要になってくることが理解できてくる。
特に、怪しい動きなども人は見ていることが多く、断片的な情報であっても正確性が薄かったとしても、確認して価値が出てきたりするのだ。
(実際に、先日の色欲の悪魔騒動から少し経過して、ほとぼりが冷めた頃合いなのか動こうと考えた様子も見えますしネ…とはいえ、レイの加入もあってか、相手はうまくいっていないようですガ)
神獣種の力と言うのは、思った以上に影響を与えているのか、帝国内での悪魔の動きらしいものがかなり鈍いというか、失敗している様子がうかがえる。
あちこちで召喚の術式が広がっているようだが、どれもこれも不発で終わっているようだ。
神獣種であるレイが歌っている影響もあるのかもしれないが…帝国は帝国で、色欲騒動のこともあってかなり厳重に警戒しており、あちこちで対応しているのも功を奏しているのだろう。
それゆえに、悪魔の企みはことごとく失敗している。
ただ、そもそも、あの悪魔たちは…大罪に関係するようなものを呼んで、何をどうする気なのか。
その目的が完全に読めない不気味さがある。
【…知っていそうな悪魔もいますけど、あの人に聞いてもダメでしょうネ】
ルミの元同僚にして、悪魔…ゼリアス。
彼のほうがより悪魔に関しての情報を、悪魔だからこそ持っていそうなものなのだが、そう簡単に手を貸してくれない気もする。
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