絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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選択は人次第

log-179 目はそらされて

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…盛り上がる、決闘会場。

 人々の目は戦いの場へ移り、周囲はその熱気に包まれる。

 どのような戦いであれ、娯楽に飢えた人々の注目が集まるのは当然のこと。


 だからこそ、人の目の届かなくなった場所で、暗躍する輩も当然発生するが…





【---んー、あれ…かな?】

 大空を羽ばたき、旋回しながら周囲を見渡す中、レイはある一点に目を付ける。

 都市の人々が注目を一か所に集め散る中で、その分火事場泥棒のようにやらかす輩や悪魔の襲撃が来る可能性を考慮して、ジャックの従魔たちは周辺を警戒していたが、その警戒範囲よりさらに外側の動きを彼女は見つけた。


【ふみゅ…伝えよう】

 人の耳には聞こえない、特定の音階。

 可能であれば悪魔にも伝わらないレベルを目指したかったが、微妙な領域にあったようで完全に分離できないのが惜しいところと言うべきか。

 けれども、その相手に気が付かれないように音に指向性を持たせ、彼女はすぐに連絡を送った…







【ん?…ふむ、分かったぜ。あっちか】
【なのなの…こういう時に、壁が邪魔だと思うのなの】

 空から伝わってきた言葉に耳を傾け、すぐに彼女たちは動き出す。

 ただ、こういう時にこの帝都の構造はちょっと面倒なものだ。


 守るために壁で囲われており、この間の色欲騒動で一部破損した箇所も修復が進められている中で、また無茶苦茶をやって破壊するのは不味いだろう。

 一応は周辺の被害を出さないように気を付けつつも…まぁ、それでも大した問題ではない。

 妖精の羽を広げ、雷を纏って勢いよく飛び出し、氷の刃で足場を作り、乗り越えてすぐに現場へ向かう。



【さぁさぁ、マスターの責めの手はゆるまなぁぁイ!そろそろラストスパートをかけるようでス!!】

 その声は決闘場の方にも伝わっており、実況と観客席の双方にいる彼女たちの耳にも入る。

(…なるほど、わかりましタ。ただ、すぐに急行はできないので、こちらはマスターの防衛のほうに当たったほうがいいですネ)
(良いところなのですが…ええ、私の方は動きましょう)

 完全に無くなると、万が一の時が怖い。

 なので、ここには一人を残し、蜘蛛の糸が素早く天へ伸ばされ、その場を離脱してく。

 彼女たちの行動が、周囲の目にすぐには入らず、気が付くまでちょっと時間がかかるだろう。

 だが、その時にはもう移動し終えており、それぞれが敵と対面するとき。


 内側の戦いは間もなく終わりを迎えようとする中、外側の戦いが始まろうとするのであった…


(…あの、出来れば魔道具でこの戦い録画できませんかね?)
(問題ないでス。その手の道具、しっかりと用意済で、後で鑑賞会の用意も出来ておりまス)

…人の耳には聞こえない音で素早く伝え、後の楽しみを心待ちにしながら…





(…でも、こういうのって生で見る方がいいってのもあるけどな)
(うぐぅっ!?悪魔の誘惑が、ここにぃ!!)
(というか、何故普通にこの会話に入るのですカ)
(俺にも聞こえているんだよ。口での実況と実際の声をこうやって分離させるのは難しくはないしなぁ…)
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