絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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選択は人次第

log-181 将を射んとする者はまず馬を射よとはいうが

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…帝都の外に見られた、怪しい影。

 はるか上空から捉えることでその動きを察し、最低限の護衛として一名この場にいないながらも、皆が素早く集い、相手を確認することができたのは良いことだろう。

【…ですが、どこかで見たことがあるなと思ったら…確か、知識と強欲のゲラト…でしたっけ?】
【やけに、ズタボロだが…いや、ガワとやらがもう限界なのか】
『げらげひゃは瑯݆、褵えて筄てくれて光栄だねぇሁ呻しき蟲に凄쌋ぴせたいォンスター~』

 ゲラゲラと笑いつつも、その言葉は支離滅裂であり、うまく聞き取ることができない。

 初めて出会った時に比べて、ゲラトの肉体はだいぶ腐っているかのように崩れ落ちており、いくつか欠損部分を蠢く蟲たちが補っているが、それでもまともに動けていること自体が不思議な状態だった。

『は垦ソは、ચえていてくれて冝䜄蕠ねぇ〱翦しま蟲䁫寄৶〰たい』
【本当に何を言っているのか、よくわからないなの】
【頭の大事な部分までもが、変なことになっているの‥?】

 その話の内容が理解できない。
 何かを口にしているとは思うのだが、言語が完全に何かバグを起こしているかのように滅茶苦茶であり、言いたいことが理解できないのだ。


 それでも、身振り手振りのその様子から、何かを仕掛けようとしているのは明白なもの。

 そのため、いつでもすぐに攻撃をできるようにと、臨戦態勢を取っていた…その時だった。


『youfbcouaouxjgyごyoulooooo!!』
【っ!!急に大きく膨らんだ!?】
【まさか、こういうのは典型的な自爆の構、】

ドッゴォオオオオオオオオオオオンン!!



 突如として大きく膨れ上がり、大爆発を引き起こしたゲラトの身体。

 その異様な姿に危険を感じ取り、素早くハクロが糸の防衛網を張り巡らし、カトレアが気の壁を多く作り上げ、どうにかその爆発に対して、彼女たちは怪我を負わずに済んだ。

【ひぇえ、危ないところでした】
【今の、肝を冷やした…ふみゅ…】
【自爆で、ミーたちを巻き添えにでもする気だったのなの?でも、それにしては不自然な動きだったような】


 中身の蟲たちが周囲に飛び散って寄生したりする二次災害も警戒したが、その様子もない。

 だが、何の意味もなく自爆するとは考えにくい。

 何か他の仕掛けでもしていたのかと、周囲を見渡し…そこでふと、あることに気が付いた。

【ん?…これは、魔法陣の類か?】

 ルトライトが見つけ出したのは、地面に作られた魔法陣のようなもの。
 うっすらと目立ちにくいものになっており、それが自爆したゲラトの肉片とつながっているようだ。

 いや、これは肉だけではなく…

【魔力も…いや、これはまさか!!】
【どうしたの、ルトライト?】
【不味い、奴の自爆はオレたちを傷つけるものじゃない!!この魔法陣を起動させるために、魔力をぶち込むためのモノだ!!】

 魔法に長けたものだからこそ、理解してしまう相手の狙い。

 あの自爆攻撃は特攻でも道連れでもなんでもなく、自爆による暴走した魔力…膨大なエネルギーを利用して、この魔法陣を発動させるもの。

 自分たちの目をここまで引き付けるだけではなく、この目立ちにくいものを仕掛けておくことで、より一層目をそらして気づ付きにくくさせるものだったのだ。

【なのっつ!?じゃぁ、何か発動しているのなの!?】
【読む感じだとこれは…対象を指定した、転移の魔法陣!!何かを長距離移動させるための、一方通行かつ一度きりのみの仕掛けのようだが…】

 あとから他の者たちが利用してくることを防ぐためか、発動後は仕掛けが焼き切れるようになっており、修復はできない模様。

 一体何を、どこへ転移させるのかその中身を知るよりも先に…彼女たちの元へ、全速力で決闘場から吹っ飛んできたファイが、残酷な事実を告げに来るのであった…
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