絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
199 / 238
選択は人次第

log-182 まずはぶちゅっと

しおりを挟む
―――最後の水の大剣の一撃。

 これで勝負が決まり、晴れて決闘に勝利した…はずだった。


「…がっ」

 しかし今、ジャックが切りつけたはずの相手はおらず、剣は盛大に空振りし、姿勢を崩させられた。

「どこだ、ここ?」

 目の前にいたはずの相手が消え、聞こえていたはずの決闘の場の声も失われ、いつの間にかいる場所が変わっていた。


 まるで、何者かに別の場所へ転移させられられたような感覚。

 周囲を見れば開けていた決闘場ではなく、ごつごつとしたどこかの洞窟内…

「違う、岩とかじゃなくて…肉?いや、内臓的な…うぇ‥」

 よく見れば、ばくんばくんっと脈を打っており、蠢く生物的な壁や床になっている。

 ゲームでちょっとトラウマになるような、生物の内臓ステージと言ったような造形になっており、足元から脈動が伝わってくる感覚が酷く気持ち悪い。


 一体ここはどこなのか、何かに捕食されているような状態なのか、すぐには理解できない。
 けれども確実に断言できるとすれば、何者かにこの場所へ連れてこさせられたということだ。


 悪魔の手のものかもしれないが、すぐに周囲に何かの気配を感じ取れるわけではない。

 むしろ、生きた血肉のような壁や床のせいでわかりづらい。

「とりあえず…探るしかないか」

 一番手っ取り早いのは、この壁をぶち抜いて突破するようなごり押しなのだろうが、あいにくながら先ほどまで決闘していたことで体力も魔力も少なく、無茶はできない状態。

 ハクロ達もいないのでその力を借りることもできないが…それでも、素っ裸で連れ去られたわけではなく、ローブの中に仕込んである道具で何とかできないか模索することにした。


「とりあえず、何かの胃の中だったりして溶かされる可能性も無きにしも非ずだから…その備えをしておかないとね」
 
 酸攻撃に備えての中和剤、毒ガス対策のマスクにゴーグル…身軽に戦うために重いものが仕込めないので軽いものに限られるが、対策して損は無し。

 まぁ、本当のことを言えば毒を入れた糸玉や、花粉症の症状を引き起こす花粉団子なども用意していたようで、使用時に支障が無いように用意していたというのはあるが…流石に決闘の場で、それをやらかしたら絵面が酷くなるため、秘匿していたりする。

 一応、手元に残していたりするが…いざという時には、これを全力投球するときが来るかもしれない。
 来ないほうが絶対いい。


 ひとまずは、疲れた体を把握して動きを抑えつつ、じっとしていたらそれはそれで不味そうな気配もするため、警戒しながらジャックは動くのであった…


「…でも、ここの光景だけでも相当精神にダメージが来るよぉ…」

…無事に帰還出来たら、絶対にハクロ達に慰めてもらおう。
 そのためにも、絶対に帰らないと…
しおりを挟む
感想 488

あなたにおすすめの小説

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

うるせえ私は聖職者だ!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
ふとしたときに自分が聖女に断罪される悪役であると気がついた主人公は、、、

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...