絡みあうのは蜘蛛の糸 ～繋ぎ留められないのは平穏かな？～

選択は人次第

log-187 流れゆく時の中で

―――結果として、あの決闘はなんやかんやでうやむやになった。

　決闘の原因が、ジェルブライド伯爵家にどうも投資を持ち掛けてきた者たちらしく、その詳細を調査したところ実態をつかめず、まるで霞でもつかまされたようにいなくなっていたようだ。

　投資話自体は嘘ではなかったようで、決闘後に振り込みがされたようだが…それでもやらかしたことが大きすぎる。


　というかそもそもの話…

【…グラビティ王国からの留学生へ実力を確かめるような決闘だったのならばともかく、悪魔らしい相手の怪しい取引に巻き込んだ挙句、命の危機に陥れた時点でエルメリア帝国として、国としての沽券に思いっきり真正面から傷をつけているんですよね】
【投資話に乗ってしまった者に関しては罪が生じてな】
【一番ヤバかったのはハクロとルトライトのガチの怒り…ミーたちも人のことが言えなかったけど、従魔の大暴走を引き起こしかねなかったとして相当重い罰が与えられたのなの】
【ふみゅ…一応、子息はまだ情状酌量の余地はあるから、そっちは無事…かな？】

「疑問形なのが怖いな…」


‥‥あの肉の空間から救われて、一週間後。

　ジャックは相当疲弊していたのもあってか、救助されてからかなり長く寝ていたようで、起きたころには色々と処理が終わっていた。

「何にせよ、無事に帰れただけでも良いけど…その肝心の二人、ハクロとルトライトがいないようだけど？」

　帝都内の病院の個室で入院であり、その室内にはカトレアたちがいる状態。

　それなのに、こういう場には真っ先にいるハクロとルトライトの姿が見えないことが気になった。

【その二人なら今、別の場所に行っているなの】
「別の場所？不在なのは珍しいような」
【主殿の疲弊を見て、これはしっかりと回復させないと危ないかもしれないと思ってな…カトレアの薬草でも十分回復できるが、治療薬になるものを求めてでているらしい】
「なるほど」

　それならそれで、問題は無いか。
　いや、治療薬と称してとんでもないゲテモノを持ってくる可能性も否定できなくはないが…まともなものを持ってきてくれることを祈りたい。



　とにもかくにも、入院することになった身だが、肉体の損傷はない模様。
　受けていたのが重度の疲労なので、まだ少し様子見のために入院が必要なようで、追加で２～３日ほどはベッドで寝ていたほうがいいらしい。

「何にせよ、無事に帰ってこられてよかったなぁ…」

　本当に、諦めなくてよかった。
　心の底からそう思い、無事に皆とまた会えたことに喜ぶ。

　でも、ちょっとこの場に不在の彼女たちにも、早く戻ってきてほしいとも思うのであった…






【…まぁ、本当は残しておくと奪い合いが室内で生じたので、外に出てやってほしいと言っただけ…ふみゅっ】
【あの二人、マスター大好き同士なのは変わらないから仲良くしてほしいけれどネ】
【おかげで無駄に蔓とか消耗させられたのなの。ぎっちぎちに無駄肉を搾るようにしてどうにか収まったのはよかったなの】

…この場にいない本当の理由が、伏せられているとは知らずに。