絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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選択は人次第

log-203 アクハウタレルケレドモ

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―――目を背けていてはいけない問題というのは、案外どこにでも生じるもの。

 一人の少年が覚悟を決めている中で、別の場所でもまた、覚悟する者と言うのは出る。




『…まぁ、その覚悟が価値あるモノかどうかは別だが…少なくとも、契約を守らねば悪魔としての立場はあるまい』
『それもそうか…同情するよ、その悪魔としての性質にな』


…どこかの国の、隠されていた秘密の邸。

 その地下にて、今、常識と憤怒の悪魔ガルストの目の前に、とある悪魔が立っていた。

『…偽りの大悪魔が、同情するか…ははは』
『誰が偽りの大悪魔だ。れっきとした、大悪魔なんだがな』

 軽い笑い声をあげるガルストに対して、そう答えるのは…エルメリア帝国にて教鞭を振るっていた悪魔、ゼリアス。

 
『だって、その司るものは本来…いや、まぁ良いか。ここまで圧倒的な実力差を見せられた以上、疑う余地も無いからね…』

 ガルストは降参するかのように両手を上げようとしたが、ひじから先がない。

 既に失われており、そこからガワが崩壊し始めていた。

『なんにせよ、ここでやられたとしても、こちらを召喚した主の作戦は既に秒読み段階。残り少なくなってしまった時間をフルに生かすために、容赦なく他のリソースへ回す目的で何体かも帰っているし…ここまで来たのは無駄かもなぁ』
『軽口のようで嘲笑うか…見た目以上に、怒っているな?』
『一応は、憤怒をつかさどるからな…最後まで、やれなかったことには怒りをあらわにするよ』

 目の前にこのゼリアスが現れるまでは、まだどうにかなると思っていた。

 逆に言えば、今ここにいる時点で、ガルストの命運は尽きている。


『だが…それでもやりたいことはできた。そして、そちらはこれ以上踏み入れないだろう?』
『…ああ、そうだ』

 このあたりの悪魔は、これで消えるだろう。

 しかし、彼らの主の目的を止めることはできない。

『なんにせよ、これで魔界に戻ればお役御免…出来れば、情状酌量をちょっと図ってくれればいいな』
『無理だ。貴様のその主も、やらかしたそれは違法なもの。いや、人の作り出した法律ではなく、世界そのものの定めに対してのものであり…そうだな、500年ばかりは覚悟しろ』
『悪魔にとって長いのか短いのか…まぁ、いいさ』

 そう言いながら、ガルストのガワは崩壊し、その中身はこの世界から消え失せた。


 けれども、消えたところで彼らが残した脅威は消えることはない。

『…面倒だが、これ以上干渉はできないか…馬鹿な企みを、止められるとすれば…』

 ガルストの消えた後、ゼリアスはふと、その眼を別の場所へ向ける。

 ここではない、遠い別の場所。

 かつての同僚もいた場所を見通しながら、そうつぶやく。


『…さて、どうなるかはわからないが、放置し続けるのも悪いからな。多少は、手助けしておくか』

 



―――世界の危機まで、残り僅か。
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