絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
221 / 238
選択は人次第

log-202 これはいつかやらなければいけないこと

しおりを挟む
…長い間、一緒に過ごしておいて、気が付かないわけではない。

「というか、一番最初のころからハクロの場合、番だと言っていた時点で…わかっていたことなんだけどね」
【でも、そのせいでひどい目に遭ったのなの】
【さよう、主殿も身をしっかり固めてもらわぬと…我らも中々大変だからな】

 真夜中ではあるが、約数名除き行われる会議。

 元凶となった二人は、復活したカトレアが丁寧に別室に連れこんでお仕置きをして、今は音が聞こえてこないが気絶しているのだろう。


「いつまでも目を背けることができないと分かっていても…家族、として過ごす時間が長いのもあって、切り替えにくいってのもあるかも」
【あー…そうかもしれぬな】


 彼女たちが求めているのは、単なる家族としてではない。

 もっと深い部分でのつながりを求めているのはわかるのだが…それゆえに、深入りしにくい部分もであるのだ。

【だけど、ミーとしてはいい加減にくっつけと思うのなの。…嫌いではないのなの?】
「そんなわけないよ!!みんな大好きで…口にして言うと、こっぱずかしい気持ちが出るな」

 大事なのは、間違いない。

 大好きなのは、変わらぬこと。

 血のつながりのあった家族そのものは失われているとはいえ、それでも過ごしてきた彼女たちとの思いは変わりはない。


 だからこそ、その最後の一歩を踏み越えるのが…


【我々との、今までの関係性を破壊しそうで、踏み出しきれぬという事か、主殿】
「…そうだね」


 ごまかすことはできない。

 けれども、今の関係が変わることに対しても、恐れを抱いている部分もある。

「ああもう、なんといえばいいのかな、コレ‥‥もどかしいというか、伝えきれない部分があるのに、どうしようもないって言うのが…」
【まぁ、くどくなるのは仕方がないのなの。心の底から望もうにも、その気持ちをあえて知りたくない部分が、全力で目をそらすためにごまかすものがでてくるのなの】
「ううっ…」

 カトレアの指摘に、耳が痛くなる。

 くどい、しつこい、いつまで逃げているつもりなのか。

 そう告げられているようで情けなくもあり…同時に、腹をくくらなければいけない時が来たとも感じさせられるもの。


「…はぁぁぁっ…分かったよ。ごまかさずに、はっきりと正面から行けばいいか」
【うむ、主殿はそれが一番だと思うぞ】

 こちらだって、思うところがないわけではない。

 無理やりではなく、しっかりと真正面から向き合えば、どうにかなるだろう。

 ひとまずはそれで気持ちをはっきりとさせてから、伝えあえるようにしようとジャックは心に決めたのであった‥‥

【あ、でもやるのなら明日からにしてほしいのなの。今晩は無理なの】
【そういえば、そうか。先ほど覗いたら…アレはな】
「ん?ああ、お仕置きで気絶しているからとか?」



【…ちょ~~~~~~~っとその認識で、良いかなと思うのなの。うん】
「何で真っすぐこっち見て言わないの」
【…まぁ、主殿。世の中には尊厳を守るために見て見ぬふりをする必要もあるということだ】
「いったいハクロとルトライトに何をしたの!?」
【【…そりゃまぁ、こちらも巻き添えに遭ってぼっこぼこにされたので(なの)…】】



…世の中、知らないほうがいいということはかなりあるらしい。


しおりを挟む
感想 488

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

うるせえ私は聖職者だ!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
ふとしたときに自分が聖女に断罪される悪役であると気がついた主人公は、、、

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...