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16 何事も地道なところから

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‥‥‥タンクマンたちが操られていたという可能性があって三日。

 調査を行って見ているのだが、残念ながらまだ見つかっていない。

「むぅ…‥さっさと出てきてほしいのですが、そううまいこと行きまセン」
「まぁ、自ら名乗り出るような阿呆はいないか」

 灰色の青春が決定しても、それはそれで満足しているらしいタンクマンたちのドM精神に戦慄を覚えつつ、調査は難航していることに溜息を吐く。

 そもそもなぜ、ノインのスカート捲りなんぞをやらせたのやら‥‥‥その理由がまず分からない。

 単純な変態であれば、それこそ自ら動いたり、誰かを雇って襲わせればいい話しであり、わざわざタンクマンたちを利用する意味が見つからないのだ。

 まぁ、そもそもの話、ノインに襲い掛かったところで‥‥‥電撃とかあるから、大丈夫か。むしろいたずら目的なだけではなかろうかとも思えてきたんだけど。


 
 何にしても、人を操るような真似は、放置できない問題。

 ゆえに、調べたりもするが‥‥‥いかんせん、俺たちはまだ学園に来て日も浅いし、全生徒の把握などもできてないのだ。

「それに、一口に操ると言っても、案外種類があるもんだなあ…‥‥」

 人を操作する類は一部を除いて禁術の類に指定されているそうだが、その手法は魔法にとどまらない。

 催眠術、暗示、電気操作、サブリミナル効果…‥‥人を操る方法を調べるだけでも、思いのほか数があるのだ。

 しかもこの場合、魔法使い以外の職業でも可能なことが多く、的を絞り込みにくくなる。

「行き詰ったなぁ‥‥‥」

 どうにもできない類であり、一介の学生が調べられる範囲ではない。

 副生徒会長などが上に問い合わせて王族ゆえの権力色々と捜査の協力をお願いしているらしいが、それでも難航しているのだとか。

「いっその事、もう一度事を起こしてくれればわかりやすいんだけどな」
「‥‥‥もう一度‥‥そうです、それですよご主人様!」

 っと、俺のつぶやいた言葉に、はっと何か気が付いたようにノインが声を上げた。

「ん?何か手段でも思いついたのか?」
「ええ、『もう一度』と言う言葉で考えつきまシタ。囮捜査を行えばいいのデス!」

‥‥‥どういう事だ?










…‥‥その答えは、放課後すぐに出た。

 他の学科の生徒たちも授業が終わり、各自自由な放課後を過ごす中、その中にすたすたと歩く影が現れる。

 その姿を見て、驚いたような目をする者もいれば、感心を覚える者もいるようだ。


「‥‥‥いやまぁ、確かに囮捜査と言えばおとり捜査かもしれないけど……何かが間違ってないかこれ」
「間違っていまセン。犯人とて、違うような容姿で現れれば興味を引き、また愚かな手段に出るでしょウ。それを狙って、この服装でおびき寄せるのデス」

 自信満々に力説するノインは、くるっとその場を軽くまわって、柔らかに短くしたスカートをひるがえす。

 そう、彼女の服装は今、既に慣れたメイド服ではなく、他の女性が切るような一般的な洋服を着用しているのだ。

 
 なんというか、新鮮さもあるというか、いかんせん容姿が容姿だけに妙な艶めかしさもあるというか‥‥‥

 メイド服でのスカート捲り以降、直ぐに被害は無かったが、ならばスカートを変えてみて歩き回って見る事にしたノイン。

 これならば、相手も刺激され、また同様の手口を使うはずだというちょっと訳の分からない理論を立てていたが‥‥‥まぁ、その姿自体悪いものでもない。

 しいて言うのであれば、スカートの強調のためにメイド服を脱いで、そっこうで作った私服らしいが、ちょっと丈が短いような気がする。あと、いちいち注目を浴びるために回ると、下よりも上の方が揺れてそれこそそっちの方に狙いが生きそうな気がするのだが‥‥‥別の犯罪者を産まないか?

 
 何にしても、メイド服ではなく普通の洋服でノインが学園内を歩き回って一時間ほどが経過した。

 メイド服以外の姿の彼女の姿は、数日しか経っていないとはいえ、これまで目撃したことがある人たちは皆驚愕していたりした。

 ただ、その中にまだおかしな視線もなかったが‥‥‥ある程度来たところで、急にピンっとノインの特徴的なアホ毛が動いた。

「ン?レーダに感ありデス。怪しげな気配を察知いたしまシタ」
「それ、どうなっているの?」

 ピコンピコンと回り始めたアホ毛に対してツッコミを入れるが、どうやらうまいこと目論見通りに言ったらしい。


「後方より、数名‥‥‥その更に後方に、1名感知‥‥‥おそらくは、この人物で間違いないでしょウ」

 内心、ちょっとばかばかしい囮捜査と思っていたが、思いのほかあっけなく釣れたことにどういえばいいのだろうか。

「「「よっはぁぁぁぁぁ!!」」」

 奇声を上げ、ノインに接近してくる男性生徒数名。

 だが、既に接近を見破られているがゆえに、その動きは読まれていた。

「そいっト」

 しゅんっと何かが投擲され‥‥‥

ごっ!どごっ!!ごごっ!!
「ぎぇい!?」
「ぐげっ!?」
「おぶっ!?」


…‥‥次の瞬間には、何やら重そうな一撃がそれぞれに直撃していた。

 うん、何をしたのかは、同性の立場としては何とも言い難いというか、どこに直撃したというか、同情するしかない。

 そして、あらかじめわかっていた、その奥の方にいた人物を彼女は逃さずに…‥‥

「逃げても無駄デス。自動追尾式アーム発射デス!」

 どしゅんっと音を立てると、彼女の左腕が、肘から先の部分が切り離され、飛翔した。

 じゃらじゃらと鎖のような物を出しつつ、その腕は飛んでいき‥‥‥そして、ターゲットの元へ着だ、


めっごぉぉぉん!!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!」


「‥‥‥なぁ、ノイン。捕まえるだけならまだわかるけど、なんかおかしな音がしなかったか?」
「‥‥‥着弾位置、うっかりミスしまシタ。なんか嫌な感触というか…‥‥ぐしゃっト」

 何をぐしゃっと?え?なんか聞くのがすごい怖い。

 犯人を泳がせて追跡して、後で副会長たちに応援を要請すればよかったのだと気づくのだが、それは後の祭り。

 有言実行はされたというべきか…‥‥同性としては、物凄く同情したくなる状態で、犯人の捕縛に成功したのであった。

 さぁって、何故今回のようなことをやらかしたのかを聞かせてもらう…‥‥その前に、医者の職業学科へ搬送しないといけないんじゃないかこれ?

「今まだやっていたかな?」
「まぁ、やらかした代償としてついただけだと思ってもらいたいデス」

 その代償が凄まじくヤバいのだが?

 何にしても、一刻も早く、犯人を医者の元へ搬送する手間が増えたのであった‥‥‥‥‥
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