憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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80 釣れぬものはべつのところから

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…‥‥朝食も終え、本日は先に宿題から手を付けることにした。

 夏季休暇とは言え、やはり生徒を休ませるという事はなく、山のように出されている宿題。

 まぁ、一般的な計算系から常識、歴史、言語、あとは各学科ごとで必要な知識を詰め込んだものなど、種類自体は豊富である。

「一般常識系統は、ノインたちの方にも使えるから良いけど…‥‥量が多いなぁ」
「ご主人様、そろそろ休憩なされてはどうでしょうカ」
「そうするよ」

 どさっと置かれている山を処理しつつ、疲れ果ててきたところでノインから飲み物を貰い、ひと息をつく。

 まぁ、流石に一日で全部やってしまえば遊べるかなぁと思ったが‥‥‥現実は甘くなかった。毎日コツコツしないとダメな奴だ、コレ。


 という訳で、一旦今日の勉強は終え、お昼まではまだ時間があるので…‥‥


「釣り道具はこれで良いし‥‥‥母さん、それじゃ行ってくるよ」
「ええ、気を付けてね」

 村の近場にある川で釣りをするために、俺たちは家を出た。








「…‥‥つれないなぁ」
「兄ちゃんもなのー?」

 川に到着し、釣り糸を垂らして30分ほど。

 妹のセラもついてきたので、共に釣りはじめたのだが…‥‥いつもなら数分程度ですぐにかかるのに、なんか今日は釣れ具合が悪い。

「っと、また釣れまシタ」
「蔓だけでも、結構いけますわね」
「ぬぅ、拙者の方はまだでござるな」
「…‥‥落ち着けるのぅ」
「グゲェ、クピゥ…‥‥」

 ノインたちの方を見れば、こちらも釣れ具合はまちまちのようだ。

 ノイン、カトレアは釣れて、ルビーは俺たちと同じようで、ゼネは瞑想するがごとく落ち着きまくって、リリスは箱を閉じて寝ている。

 まぁ、まだまだ始まったばかりだし、慌てる事もないからいいか。

「しかし、ノインとカトレア、お前たちばっかりよく釣れるなぁ。なんかコツでもあったか?」
「いいえ、特にないですわね」
「私の場合は、そもそもこのレーダーで大体の場所を判別できてますからネ。何もない場所を当てることはな、」

ビィン!!
「‥‥‥ン?」

 ピコピコと動かしていたノインのアホ毛が、急にびしっと立った。

「どうした、ノイン?」
「何か今、感知しましタ」

 アホ毛が回り始め、何やら探り始めているらしい。

 と、同時にカトレアたちも何かに気が付いたのか、急に釣りをやめる。

「…‥‥なんか、妙な気配を森の木々が感知いたしましたわ」
「ふむ、あっちの方が騒がしいでござるな」
「嫌な気配が、してきたのじゃ」
「グゲェ…クピィ‥‥‥」

 リリスだけは箱を閉じて熟睡しつつも、皆が警戒態勢を取った。

「兄ちゃん、彼女達どうしたのー?」
「なんか感じ取ったようだけど‥‥‥なーんか、いやな予感がしてきたんだが」

 川の近くの方には森があり、皆がそちらを向く中で‥‥‥


「ゲルッホォォォン!!」
「ブピー!!」

「うわっ!?森から獣たちが飛び出してきた!」
「なんか様子がおかしいの!」

 猪やシカ、その他動物たちが何かから逃げるように飛び出してくる。

 俺たちの横を次々と通過していき、逃げまどうように泣き叫ぶ。


 何かが森で起きて、それで動物たちが逃げまどっているのかと思っていた‥‥‥その時であった。


ズババァン!!
「え?」

 森の木々が急にぶっ飛んで、いや、綺麗な切断面を見せて宙に飛ぶ。

 そしてその飛ばせた何か‥‥‥剣の斬撃のようなものがこちらへ向かってきた。

「ピ‥‥‥グゲェ!!」

 流石に動物たちの逃亡劇の中で目が覚めたのか、リリスが俺たちの前へ飛び出し、自身の箱を閉じてその斬撃を受け止める。

ガッギィィィン!!
「グゲェ!!」
「助かったリリス!!でも‥‥‥一体何が」
「ご主人様、何かが出てきマス!」

 ノインの声に従い、その何かが出てくるのおれたちは見た。

 木々が切り飛ばされ、見開きの良くなった場所から這い出るそれを。


「ギ、ニギャアアアアアアアアア!!」

 咆哮をあげ、大きなかぎづめを振り回し、周囲の木々を切断していく。

 俺たちの方へ、飛んできた斬撃をリリスは華麗に受け止めきる。

 ノインやカトレアたちも各々の攻撃を当てて相殺した。

「な、なんだありゃ!?」

 そこにいたのは、一頭の巨大な虎のようなモンスター。

 だが、この森にそんな凶悪肉食獣とかはいないし、いたとしても精々熊程度のはずだが…‥‥それ以上の大きさを誇っている。

「何なのアレ――――!?」
「『グラウドタイガー』、『ゴールデンタイガー』とか、似たようなモンスターならわかるけど…‥あれ、どう見ても全くの別物だろ!!」

 よく観察すれば、体表がまず違う。

 全体的に細かな血管が浮き出て脈打っており、色合いが物凄く不気味な色合い。

 赤、紫、黒などが入り混じったかのようなおかしな色合いである。

 眼も大きくあり、真っ赤に充血しており、その部分だけを見れば先日のゲイザー以上の不気味さを持っている。

「ン‥‥分析完了。該当モンスターデータはありまセンが、類似データを確認」

 ぐるんぐるんっとアホ毛を回し、警戒態勢のノインがそうつぶやく。

「類似データって?」
「海へ行く前に襲ってきた相手が利用していた、化け物たちと同等の反応デス」
「見る感じ、あれよりも完成度は高そうじゃが‥‥‥」

 その言葉に、俺は思い出す。

 ゲイザー騒動よりも前、馬車で海へ向かう際に襲撃にあった時にでてきた、燃えたら妙な毒ガスのような物を出した化け物たちの事を。

 そう言えばあれば、尋問したら何処かの組織から買い取ったとか言ってたはずだが‥‥‥その詳細までは分からなかったんだった。


 で、今目の前にいる化け物は、どうもその時の奴よりも完成度が高いようで、色々混ざったような色合いはしつつも、一つの個体として目に見えているらしい。

「ニギャアアアアアアアアア!!」

「っと、考えている場合じゃなかった!!」

 ぶおんっと言う音と共に、化け物は大きな爪をこちらへ振り下ろす。

 地面が砕け、同時にその斬撃に沿うようなものが発生し、こちらへ飛ばしてきた。

「相手の詳細不明だし、一旦全員緊急退却!リリス、俺とセラをその中に入れて、後は全員で全速力で運んで逃亡!」
「「「「了解!」」」」
「グゲェ!!」

 任せてというように、びっと指を立て、リリスの箱がグパッと開く。

 そこに俺はセラも一緒に飛び込んで、カトレアの蔓で底まで落ちないようにしつつ、そのまま丸ごと全員で全速力で逃げた。

 流石にすぐに立ち向かえるような相手でもなさそうだし、色々と危ないけどまずは体勢を立て直すのが先決である。


「っと、妨害も忘れずにしておきますわね!」
「そういえばそうじゃな!」

 逃げる前にカトレアが木の根を地面に突き刺し、怪物の足元に大量に生やして動きを阻害。

 ついでにゼネも幻術の魔法をかけ、直ぐには追えないようにした。


「ニャゲギャアアァァァ!!ニャギャアァァァタ ス ケ テ!!」
「‥‥え?」

 箱を抱えてもらい、妨害してもらう中、ふとその声が耳に聞こえたような気がした。

 怪物の声のどこかに、助けを求めるような声が。


 だが、その事を確かめる前に、俺たちは一旦全力でその場を後にするのであった…‥‥


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