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130 割とそう言う常識もあるらしい
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‥‥‥星々が輝き、月夜の灯りが照らす真夜中。
適正学園の備品室前に、その影はあった。
頑丈に施錠され、鍵が多く施されている備品室の扉。
だがしかし、その鍵も何のそのというように軽く潜り抜け、その影は内部へ入り込む。
そしてその先にあるのは、棚に丁寧に仕分けされた備品の数々であり、それが求めている金属製の備品も数多く並べられていた。
キラキラと眼を輝かせ、狙いの品々に喜びを隠さず、全身でそれは表現する。
そして、金属の品々の一つに目を付け、その場所へ体を動かし、目の前へ着く。
いったん全部を見るようにくるくると回り、備品の上を這いずり回り、そしてすとんっと降り立つ。
目的の品であり、今宵の最初の食事であると認識し、その影が金属製の備品に触れようとした‥‥‥その時であった。
「‥‥‥とった」
「!!」
ぼそりとつぶやかれつつ、確かに聞こえたその声。
直感で素早く避ければ、そこに氷柱が出来上がり、あと数秒遅ければ氷の中に閉じ込められたことを理解させられる。
「ピキピキィ!!」
その現場を見つつ、それを放った相手から逃げ始めるその影。
猛烈な勢いで動きつつ、地面から突如として生え始めた植物群をかいくぐり、上から火球が降ってくることに気が付いて何とかかわしまくる。
「粘着ガトリング、連射デス」
「ピキィィィ!?」
大量のねばねばする物体が打ち出され、狙いを定められているのか正確に直撃しかけ、なんとか己の身体を柔軟に動かし、避けまくる。
通路をを先に進み、カーブを華麗に曲がり、大量の弾幕をかいくぐって扉を次々と突破し、その先へ目指して逃走を図った先に、新手がいた。
逃げるだけ逃げ、先ほどから追って来た者たちとは違うことに気が付くも、同様の目的がある事を悟り、どうしたものかと瞬時に考えこむ。
相手が未知の者であれば、どの様な手段を取るのかが分からない。
けれども、ここでぐずぐずしていれば追いつかれるのが分かっており、かと言って未知の相手をしたくない。
「‥‥‥ピキィー!!」
「っと、攻撃でありんすか」
悩み抜いたうえで選んだのは、全速力での攻撃手段、体当たり。
たかが体当たり、されども体当たり。窮鼠猫を噛むように侮れない威力であり、なおかつそれ自体が放つそれは、通常の生物の体当たりとも異なる技。
だからこそ、この一撃で好転へ転じさせ、逃走できると考えたのだが…‥‥そういう手段は、想定の範囲内にあった。
「まぁ、わっちには意味ないでありんすけどね」
「ピキッ!?」
自慢の素早さであれば避けられないと思っていた攻撃。
だが、目の前の相手はいともたやすく反応し、直ぐに回避してしまった。
これはこれで、逃走する経路が出来たという事で、好都合であったはずが…‥‥その突撃した先には、罠が存在していた。
すぽっ!!
「ピキィィィィィィィーーーーーーー!?」
「…‥‥グゲェ!」
その先にあった、箱の中へ華麗に飛び込んでしまい、脱出を試みたが不可能であった。
「グゲグゲェ!」
「おー、タイミングばっちりでありんすな」
「グゲェ!」
慌てた声を出すそれの傍らで、彼女達はうまくいったことに喜び合い、ハイタッチを交わし合うのであった。
「…‥‥っと、そろそろ良いじゃろうか。この幻術、解除するのじゃ」
その声と共に、先ほどまであったこの部屋…‥‥通路、室内、すべてを含めて消失し、学園の広い運動場がその場に現れる。
そう、先ほどまで逃げていたあの犯人がいた空間は、全て幻の場所。
ディーたちがいたあの場所は、全てゼネが創り出した幻術であり、見事にその犯人は疑うことなくかかり、偽の備品室へ侵入したのである。
「…‥幻術で誘い込み、恐怖で判断数を減らし、単純攻撃を誘って罠にかける作戦…‥‥思いのほか、うまくいったな」
「成功確率87%でしたがうまくいきましたネ」
俺の言葉に対して、ガトリングを仕舞いながらそう答えるノイン。
「儂の幻術が、そもそもその犯人に効くかどうか、相手も分からぬ状態でやって見たからのぅ‥‥‥これが見ぬけるような相手であれば冷静に対応されておったが、うまくいって良かったのぅ」
「地面だからこそ、床を突き抜けるより楽でしたわね」
「火事の心配もなく、火球をぶっ放せたのも面白かったでござるよ」
「氷結、簡易的、ちょっと最初で捕まえたかった」
各々が集合しあい、そう話し合う。
幻の場所だからこそ、何をしようが学園そのものには影響を与えることはないし、ある程度楽に力を振るえる状態にしたからこそ、今回の作戦はうまくいったであろう。
そしてついでに…‥‥
「で、リリス。金属齧りの犯人は、結構奥の方に落ちたな?」
「グゲ!」
びしっと指を立て、成功したことに喜ぶリリス。
彼女の箱の中は滅茶苦茶広く、下手に落ちればそれこそ彼女の助けなしでは出ることができない空間。
ゆえに、まずはそこへ落とし、脱出不可能な状態にして捕らえようと思っていたが…‥‥こうもうまくいくとは面白いものである。
「何にしても、その犯人の姿をようやく見れたけど‥‥‥リリス、出さずに姿を見せられるよな?」
「グゲェ」
俺の問いかけに対して、箱のふたを全開にしつつ、一部をそっと指でつつく。
するとそこの部分だけが変化して、先ほど取り入れた犯人が暴れつつ身動きできない状態になっていることが確認できた。
「ピキィィィ!!」
「手足がないのに、あったらばたつかせようとしているけど…‥‥足場も何もない場所だからこそ、何もできてないな。というか、なにこれ?」
「金属の塊というか、玉のようにも見えるでござるなぁ」
「図書室の『珍モンスター100選:金属ボディ編』によると…‥‥ああ、ありましたネ。該当するのは、これデス」
「ふむふむ‥‥‥『メタリックスライム』かのぅ」
――――――――――――
『メタリックスライム』
金属光沢を持ち、卵のような丸い外見をしたスライムの一種。
構成物質の90%以上が金属だというのに、何故か水銀でもないのに軟体の性質を示しつつ、超高速で動き回り、硬い防御力を誇るとされる。
自然発生・人工生成されるタイプではあるが、討伐するにはその体を貫くだけの武器が必要となり、倒しにくさだけであればスライムの中でもトップクラスであろう。
金属を主食としつつ、同じ個所を食べ続けると体に混ざってしまい、支障をきたすらしいので、まんべんなく異なる金属を摂取しているともされる。
――――――――――――――
金属を食べるモンスターは割と結構いるらしいが、その中でもマイナーな部類のモンスター。
高速で動き、硬いはずなのに柔らかく動け、スライムボディを生かしての隙間をかいくぐる芸当を見せ、なおかつ知能も高めのようであり、それなりにトラップなども見抜けたようだ。
ただ、流石にゼネの仕掛けていた幻術に嵌り、この人海戦術の前には冷静さを失い、間違った選択を行ったことで捕らえられた。
「カッチカチというか、何と言うか…‥‥この軟体を活かして、トラップの檻も抜けて、ドアの隙間からも侵入できていたんだな」
「それにかなり素早かったでありんすな。様子を見て動くにも、この素早さであれば素早く持ち場に戻る事も可能そうでありんす」
「追い詰めたからこそ捕まえることができたでござるが、普通に相手をしたくない機動力でござるよなぁ‥‥‥」
先ほどまでの逃走劇を思い出し、俺たちはその言葉に深く同意する。
今回のように、人海戦術で追い詰めて捕らえることができたのだが、何も策を練らずに挑んでいたら、逃げられていた可能性が大きい。
何しろ素早く動けていたし、全員の攻撃も誘導させる目的があったとはいえ、できるだけ命中するようにもしていたはずなのに、全部回避されていたからな。
そう思えるほど機動力も高く、こちらとしては策の甘さがなかったかどうかのチェックが出来たし‥‥‥まぁ、良いか。
冷静な判断力を失わせるために、ガンガン攻撃したことで全員のストレスも発散できたようだし、この手がこういう類に通用するのであれば、また同じような事例が起きたとしても対処ができることが分かったからな。
「でも、疑問とすればどうやって金属を齧ったんだ?黒い点の目っぽいのはあるけど、口は無いような」
…‥‥金属を食べるらしいが、それにしては目以外に主要な外部器官が見当たらないような気がする。
「どうやら全身が口に近く、齧るよりも吸収するように食すのでしょウ。サイズも小さめですし、同じ個所を食べ続けない特性ゆえに、あのような齧り方をしているようになったのでしょウ」
何にしても、犯人をこうして捕らえたから問題あるまい。
「さてと、後はコイツをグラディたちの元へ連行すればいいか。リリス、逃げないように確保していてくれ」
「グゲェ!」
任せて!というようにぐっと指を立て、自信満々に彼女は返答する。
彼女の出す意思がなければ脱出はできないだろうし、金属を捕食できるスライムとはいえ、何かひっかっける部分も、身動きがとれそうな場所もなければ、文字通り手も足も出ないだろう。
いや、スライムだから手も足もないか‥‥‥‥
「ああ、図鑑によればスライムの中には手も足もあるものもいるそうデス」
「え、いるの?」
「千手スライム、百足スライム…‥‥普通にドラゴンモドキスライムにタコスライム、ヘビィスライム等、スライム系はモンスターの中でも数多くの種類が存在するようデス」
「流石に人型は?」
「いるようデス。まぁ、擬態に近いようですので、近づいたら最後、骨の髄まで溶かされるそうですけどネ」
「何それ怖い」
‥‥‥まぁ、出会うことはないとは思う。というか、損なホラーな類には出合いたくない。
流石にアンデッド版スライムはいないようだが、その種類の多さにちょっと驚愕するのであった。
「しかしのぅ、妙じゃな」
「ゼネ、何がだ?」
「いや、自然発生するし、ダンジョンにも湧く類なのじゃが…‥‥学園にこう何度も出てきた形跡があるのが変じゃなぁっと思ってのぅ」
「どういうこと?」
「金属を食べるだけなら、王城なども近くにあるし、そっちの方も狙っておかしくはないのじゃよ。警備の目もあるじゃろうけど、質も量もあっちが多いはずじゃし‥‥‥‥それなのに、それなりに被害に出ていたことを換算すると何か妙に感じてのぅ‥‥‥知能もちょっと高いような気がするしのぅ…‥‥」
…‥‥いぶかしむように、顎に手を当ててそう語るゼネ。
彼女のその言葉に、俺たちは嫌な予感を覚えるのであった…‥‥
「うう、妹にスライム責めされかけた記憶も思い出したのじゃ‥」
「何そのトラウマになりそうなというか、色々アウトな気がする記憶」
…‥‥うん、思い出さなくていいからな。聞いたらこっちまでトラウマになりそうな予感がする。
適正学園の備品室前に、その影はあった。
頑丈に施錠され、鍵が多く施されている備品室の扉。
だがしかし、その鍵も何のそのというように軽く潜り抜け、その影は内部へ入り込む。
そしてその先にあるのは、棚に丁寧に仕分けされた備品の数々であり、それが求めている金属製の備品も数多く並べられていた。
キラキラと眼を輝かせ、狙いの品々に喜びを隠さず、全身でそれは表現する。
そして、金属の品々の一つに目を付け、その場所へ体を動かし、目の前へ着く。
いったん全部を見るようにくるくると回り、備品の上を這いずり回り、そしてすとんっと降り立つ。
目的の品であり、今宵の最初の食事であると認識し、その影が金属製の備品に触れようとした‥‥‥その時であった。
「‥‥‥とった」
「!!」
ぼそりとつぶやかれつつ、確かに聞こえたその声。
直感で素早く避ければ、そこに氷柱が出来上がり、あと数秒遅ければ氷の中に閉じ込められたことを理解させられる。
「ピキピキィ!!」
その現場を見つつ、それを放った相手から逃げ始めるその影。
猛烈な勢いで動きつつ、地面から突如として生え始めた植物群をかいくぐり、上から火球が降ってくることに気が付いて何とかかわしまくる。
「粘着ガトリング、連射デス」
「ピキィィィ!?」
大量のねばねばする物体が打ち出され、狙いを定められているのか正確に直撃しかけ、なんとか己の身体を柔軟に動かし、避けまくる。
通路をを先に進み、カーブを華麗に曲がり、大量の弾幕をかいくぐって扉を次々と突破し、その先へ目指して逃走を図った先に、新手がいた。
逃げるだけ逃げ、先ほどから追って来た者たちとは違うことに気が付くも、同様の目的がある事を悟り、どうしたものかと瞬時に考えこむ。
相手が未知の者であれば、どの様な手段を取るのかが分からない。
けれども、ここでぐずぐずしていれば追いつかれるのが分かっており、かと言って未知の相手をしたくない。
「‥‥‥ピキィー!!」
「っと、攻撃でありんすか」
悩み抜いたうえで選んだのは、全速力での攻撃手段、体当たり。
たかが体当たり、されども体当たり。窮鼠猫を噛むように侮れない威力であり、なおかつそれ自体が放つそれは、通常の生物の体当たりとも異なる技。
だからこそ、この一撃で好転へ転じさせ、逃走できると考えたのだが…‥‥そういう手段は、想定の範囲内にあった。
「まぁ、わっちには意味ないでありんすけどね」
「ピキッ!?」
自慢の素早さであれば避けられないと思っていた攻撃。
だが、目の前の相手はいともたやすく反応し、直ぐに回避してしまった。
これはこれで、逃走する経路が出来たという事で、好都合であったはずが…‥‥その突撃した先には、罠が存在していた。
すぽっ!!
「ピキィィィィィィィーーーーーーー!?」
「…‥‥グゲェ!」
その先にあった、箱の中へ華麗に飛び込んでしまい、脱出を試みたが不可能であった。
「グゲグゲェ!」
「おー、タイミングばっちりでありんすな」
「グゲェ!」
慌てた声を出すそれの傍らで、彼女達はうまくいったことに喜び合い、ハイタッチを交わし合うのであった。
「…‥‥っと、そろそろ良いじゃろうか。この幻術、解除するのじゃ」
その声と共に、先ほどまであったこの部屋…‥‥通路、室内、すべてを含めて消失し、学園の広い運動場がその場に現れる。
そう、先ほどまで逃げていたあの犯人がいた空間は、全て幻の場所。
ディーたちがいたあの場所は、全てゼネが創り出した幻術であり、見事にその犯人は疑うことなくかかり、偽の備品室へ侵入したのである。
「…‥幻術で誘い込み、恐怖で判断数を減らし、単純攻撃を誘って罠にかける作戦…‥‥思いのほか、うまくいったな」
「成功確率87%でしたがうまくいきましたネ」
俺の言葉に対して、ガトリングを仕舞いながらそう答えるノイン。
「儂の幻術が、そもそもその犯人に効くかどうか、相手も分からぬ状態でやって見たからのぅ‥‥‥これが見ぬけるような相手であれば冷静に対応されておったが、うまくいって良かったのぅ」
「地面だからこそ、床を突き抜けるより楽でしたわね」
「火事の心配もなく、火球をぶっ放せたのも面白かったでござるよ」
「氷結、簡易的、ちょっと最初で捕まえたかった」
各々が集合しあい、そう話し合う。
幻の場所だからこそ、何をしようが学園そのものには影響を与えることはないし、ある程度楽に力を振るえる状態にしたからこそ、今回の作戦はうまくいったであろう。
そしてついでに…‥‥
「で、リリス。金属齧りの犯人は、結構奥の方に落ちたな?」
「グゲ!」
びしっと指を立て、成功したことに喜ぶリリス。
彼女の箱の中は滅茶苦茶広く、下手に落ちればそれこそ彼女の助けなしでは出ることができない空間。
ゆえに、まずはそこへ落とし、脱出不可能な状態にして捕らえようと思っていたが…‥‥こうもうまくいくとは面白いものである。
「何にしても、その犯人の姿をようやく見れたけど‥‥‥リリス、出さずに姿を見せられるよな?」
「グゲェ」
俺の問いかけに対して、箱のふたを全開にしつつ、一部をそっと指でつつく。
するとそこの部分だけが変化して、先ほど取り入れた犯人が暴れつつ身動きできない状態になっていることが確認できた。
「ピキィィィ!!」
「手足がないのに、あったらばたつかせようとしているけど…‥‥足場も何もない場所だからこそ、何もできてないな。というか、なにこれ?」
「金属の塊というか、玉のようにも見えるでござるなぁ」
「図書室の『珍モンスター100選:金属ボディ編』によると…‥‥ああ、ありましたネ。該当するのは、これデス」
「ふむふむ‥‥‥『メタリックスライム』かのぅ」
――――――――――――
『メタリックスライム』
金属光沢を持ち、卵のような丸い外見をしたスライムの一種。
構成物質の90%以上が金属だというのに、何故か水銀でもないのに軟体の性質を示しつつ、超高速で動き回り、硬い防御力を誇るとされる。
自然発生・人工生成されるタイプではあるが、討伐するにはその体を貫くだけの武器が必要となり、倒しにくさだけであればスライムの中でもトップクラスであろう。
金属を主食としつつ、同じ個所を食べ続けると体に混ざってしまい、支障をきたすらしいので、まんべんなく異なる金属を摂取しているともされる。
――――――――――――――
金属を食べるモンスターは割と結構いるらしいが、その中でもマイナーな部類のモンスター。
高速で動き、硬いはずなのに柔らかく動け、スライムボディを生かしての隙間をかいくぐる芸当を見せ、なおかつ知能も高めのようであり、それなりにトラップなども見抜けたようだ。
ただ、流石にゼネの仕掛けていた幻術に嵌り、この人海戦術の前には冷静さを失い、間違った選択を行ったことで捕らえられた。
「カッチカチというか、何と言うか…‥‥この軟体を活かして、トラップの檻も抜けて、ドアの隙間からも侵入できていたんだな」
「それにかなり素早かったでありんすな。様子を見て動くにも、この素早さであれば素早く持ち場に戻る事も可能そうでありんす」
「追い詰めたからこそ捕まえることができたでござるが、普通に相手をしたくない機動力でござるよなぁ‥‥‥」
先ほどまでの逃走劇を思い出し、俺たちはその言葉に深く同意する。
今回のように、人海戦術で追い詰めて捕らえることができたのだが、何も策を練らずに挑んでいたら、逃げられていた可能性が大きい。
何しろ素早く動けていたし、全員の攻撃も誘導させる目的があったとはいえ、できるだけ命中するようにもしていたはずなのに、全部回避されていたからな。
そう思えるほど機動力も高く、こちらとしては策の甘さがなかったかどうかのチェックが出来たし‥‥‥まぁ、良いか。
冷静な判断力を失わせるために、ガンガン攻撃したことで全員のストレスも発散できたようだし、この手がこういう類に通用するのであれば、また同じような事例が起きたとしても対処ができることが分かったからな。
「でも、疑問とすればどうやって金属を齧ったんだ?黒い点の目っぽいのはあるけど、口は無いような」
…‥‥金属を食べるらしいが、それにしては目以外に主要な外部器官が見当たらないような気がする。
「どうやら全身が口に近く、齧るよりも吸収するように食すのでしょウ。サイズも小さめですし、同じ個所を食べ続けない特性ゆえに、あのような齧り方をしているようになったのでしょウ」
何にしても、犯人をこうして捕らえたから問題あるまい。
「さてと、後はコイツをグラディたちの元へ連行すればいいか。リリス、逃げないように確保していてくれ」
「グゲェ!」
任せて!というようにぐっと指を立て、自信満々に彼女は返答する。
彼女の出す意思がなければ脱出はできないだろうし、金属を捕食できるスライムとはいえ、何かひっかっける部分も、身動きがとれそうな場所もなければ、文字通り手も足も出ないだろう。
いや、スライムだから手も足もないか‥‥‥‥
「ああ、図鑑によればスライムの中には手も足もあるものもいるそうデス」
「え、いるの?」
「千手スライム、百足スライム…‥‥普通にドラゴンモドキスライムにタコスライム、ヘビィスライム等、スライム系はモンスターの中でも数多くの種類が存在するようデス」
「流石に人型は?」
「いるようデス。まぁ、擬態に近いようですので、近づいたら最後、骨の髄まで溶かされるそうですけどネ」
「何それ怖い」
‥‥‥まぁ、出会うことはないとは思う。というか、損なホラーな類には出合いたくない。
流石にアンデッド版スライムはいないようだが、その種類の多さにちょっと驚愕するのであった。
「しかしのぅ、妙じゃな」
「ゼネ、何がだ?」
「いや、自然発生するし、ダンジョンにも湧く類なのじゃが…‥‥学園にこう何度も出てきた形跡があるのが変じゃなぁっと思ってのぅ」
「どういうこと?」
「金属を食べるだけなら、王城なども近くにあるし、そっちの方も狙っておかしくはないのじゃよ。警備の目もあるじゃろうけど、質も量もあっちが多いはずじゃし‥‥‥‥それなのに、それなりに被害に出ていたことを換算すると何か妙に感じてのぅ‥‥‥知能もちょっと高いような気がするしのぅ…‥‥」
…‥‥いぶかしむように、顎に手を当ててそう語るゼネ。
彼女のその言葉に、俺たちは嫌な予感を覚えるのであった…‥‥
「うう、妹にスライム責めされかけた記憶も思い出したのじゃ‥」
「何そのトラウマになりそうなというか、色々アウトな気がする記憶」
…‥‥うん、思い出さなくていいからな。聞いたらこっちまでトラウマになりそうな予感がする。
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