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158 手際よく効率的に
しおりを挟む飛んでいった怪盗ボルセーヌゥをルビーがさらに上空から追跡し、俺たちは目視で可能な限り追いかけ、とある一軒の貴族街の屋敷にたどり着いた。
「暗視ゴーグルモードって便利だな‥‥‥夜でもすごいハッキリと、しかも拡大して見えたから楽じゃん」
「まだ改良の余地はありますが、それでも今回十分役立ちまシタ」
「とにもかくにも、ココだな!」
ぱからぱからっとレイアが牽引していた ノイン御手製試作型リアカーから降り、ルビーが着陸したところで、屋敷内で爆発音が聞こえた。
それとほぼ同時に屋敷の扉が吹っ飛び、凄まじい風圧が来たかと思えば、攫われていたリリスたちが飛び出してきた。
「カトレア、アナスタシア、リリス!!無事か!!」
「マスター!!無事ですわぁぁぁ!!」
「全員、異常ない」
「グゲェェ!!」
だだっと駆け寄って来て、無事を確認しつつ、全員警戒体制へ素早く移行する。
身構え、装備を構え直すと、屋敷の中から影が飛び出してきた。
ぶばばばぁぁぁん!!
「うわっ、すごい鼻息!!」
「でも何か、様子が変デス」
屋敷の屋根を突き破り、どずぅんっと勢いよく着地してきたのは、巨大鼻怪人もとい怪盗ボルセーヌゥ。
だが、どうやら様子がおかしく、鼻息が非常に荒すぎる。
「あー、ちょっと刺激花粉が強すぎたようですわね」
「刺激花粉っていうと、前に作ったあれか」
「ええ、こういう不審者撃退用のでしたが‥‥‥」
これまでの騒動の経験上、何かあったら逃げた方が良い事もあった。
その逃げる時間稼ぎ手段かつ不審者撃退用にと、カトレアが以前から品種改良を重ねていた刺激花粉だが、話を聞けば邸中に開花させまくったらしい。
そして相手は巨大な鼻がある事から、どうも鼻が異常に発達している分その機能もさらに高く、より影響を受けてしまったようだ。
ぶばっしゅわばあぁぁぁん!!
「っと!!風圧ヤバいな!!」
「ですが、乱れまくっているので、最初の物よりは楽そうデス!」
姿を現した時に、騎士たちを吹き飛ばしたすごい鼻息。
だが、今はくしゃみをし過ぎて分散しているせいか、連発する強風が吹き荒れるものの、そこまで脅威とはならないだろう。
「全員、怪盗拘束!!ただし鼻での攻撃手段を考慮して使わせないようにしつつ、行動開始!!」
素早く指示を出し、捕縛を優先することにした。
相手は雇い主がいたらしいが、そちらは既にアナスタシアが凍結させており、あの鼻でか怪人怪盗ボルセーヌゥに限って逃げおおせたらしい。
けれども、あの様子だと鼻の機能をまともに扱えないようで、今のうちに拘束してしまえば何とかなる可能性が高い。
巨大な鼻の怪物と思うが、容姿的には人間に近いので、何か事情がある可能性もあり、捕縛の方を優先する。
「風にも負けず、まずは突撃だ!!」
槍を構え、駆けだすレイア。
ぶんばぁぁぁぁぁぁ!!
強烈な鼻息が吹き荒れるが、駆け抜けるレイアは歯牙にもかけず、かまうことなく槍で風を切り裂き、一気に接近する。
そのまま串刺しにはせずに、槍の先をくるっと回転させ、棒の部分で…‥‥
「どっせえぇい!!」
勢いよく叩きつけ、怪盗の鼻頭に直撃し、まずは軽く体勢を崩させ、直ぐに距離をとる。
何も刺すだけではなく、ああやって叩きつけることができるのも槍の利点だろう。
巨大な鼻な分、バランスも悪いようで、叩きつけられたせいで体が前のめりに倒れかける。
「っと倒れすぎても良くないし、ちょっと固定するかのぅ」
杖をふって、魔法を直撃させ、体勢をいい具合にゼネが調整を行う。
「次は鼻封印デス!!」
「グゲェ!!」
しゅばっと背後に回り込んだリリスとノインが、それぞれ宝石と粘着弾を発射し、前のめりになって無防備になった鼻の穴に直撃させる。
ぶぼぉぉん!!
鼻がつまり、強力な鼻息が内部で爆発したのか、一瞬全身が膨らみ、はじけ飛びかける怪盗。
そのまま破裂されたらグロイ光景になりかねなかったが、何も鼻息の逃げ先は鼻の穴に限らず、耳や鼻に覆われて見えない目や口から出たようで、直ぐにしぼむ。
でも、それは体内への強力なダメージともなるようで、動きがすぐに鈍った。
その隙を、こちらは逃すわけがない。
「人に近いようでありんすし、ツボが滅茶苦茶わかりやすいでありんす!」
「ついでにちょっと手足をゴキッっとするでござるよ!」
鈍くなった隙を狙い、リザが全身を弛緩させるツボを押しまくり、ルビーが強力な腕力で一気に手足の骨を砕いてへし折り、動けなくする。
「あとはゆっくりと拘束するのですわ!!」
「トドメ、今度は逃さない」
地面に倒れ伏したところへ、オーバーキル気味にカトレアとアナスタシアによって蔓と氷で一気に縛られて凍結し、怪盗の捕縛を成功させるのであった‥‥‥‥
「‥‥‥さてと、後は王子たちを待つとして」
怪盗を捕縛し、逃れられないようにきちんと薬を使用して意識を奪い、昏倒させておく。
こういう時に油断して近づいたら不味いので、念入りに拘束を重ね掛けしたところで投与し、暴れられないようにしてしまう。
ここまですれば、後はここに学園の方で王子たちが動き、騎士たちをここへ向かわせるだろう。
ついでに衛兵たちの方も呼んで、ココを調べてもらった方が良い。
「というか、貴族街の屋敷か‥‥‥ここの貴族が、この怪盗の雇い主っぽいんだっけ?」
「そのはずですわね。会話内容もきちんと書き記しましたし、隠し部屋と思わしき場所で氷像になっているはずですわ」
「怪盗逃げた、でもそっちは無理。きちんと瞬間冷凍、解凍まで動かない」
互いの状況について情報交換し、この屋敷の主が怪盗の雇い主‥‥‥騒動の元凶らしい情報を得た。
幸いというべきか、怪盗とは異なり普通の人間のようなので、アナスタシアの氷から逃れてはいないはずらしい。
「グゲグエェ」
「で、後は盗品の疑いのある財宝がそこにたんまりとあるってか…‥‥」
怪盗の手によって奪われた、各貴族の財産。
その財産は売り払われてはおらず、隠し部屋内に保管されているようだ。
…‥‥売るなりしていれば、まだ証拠品も残さなかっただろうに、残しておくとはどういうことか。
まぁ、世の中には収集家とかもいるだろうし、もしかするとその雇い主が盗品の収集家なのかもしれないか。
「こっちの怪盗とのつながりも吐かせられるだろうし…‥‥お先真っ暗だろうなぁ」
屋敷の規模からして、それなりの貴族のようだが、この騒動で没落は決まるだろう。
何しろ被害に遭った貴族家はそれなりに多いし、意味不明な相手と組んで騒動を起こしていたからなぁ…‥‥
なお、念のために調べたところ、ここで雇われている使用人たちなどは見当たらなかったようで、おそらくはその雇い主と怪盗だけの秘密のアジト的な役割があったようである。
「ふむ、にしてもこの怪盗、本当にでかい鼻デス。一体何なのでしょうカ?」
「人間の鼻が異常に発達しただけのようにしか見えないでござるよなぁ」
後は待つだけなので時間がある中、この面子で分析者というか、こういうモノ事に対して解析をするノインとゼネが、捕らえた怪盗について調べていた。
きちんとこちらも拷問されたりするだろうが、その前に気になるといえば気になるので、データを集める気があるらしい。
何しろ、こうやって抵抗できないようにしてゆっくりと見させてもらえば、怪物過ぎる容姿というよりも、人間の鼻が異常発達しただけの者にしか見えないからだ。
まぁ、瞳孔とかがおかしいし、鼻に埋もれた口も大きく裂けていたり、怪物じみているといえばいるのだが…‥何かこう、色々と推測できることはある。
「ちょっと血液を採取しておきましょウ。細胞も取って、細かく調査デス」
「ついでにちょっと魂を引っ込ぬいて、記憶からも調べるのじゃ」
でかい注射器を構えつつ、頭をぐわしっと掴むノインとゼネ。
なんというか、巨漢ともいえる怪盗相手なのだが、何となく恐怖のオーラがあるようで、より大きく見えるのは気のせいだろうか…‥‥うん、意識も奪われているはずなのに、怪盗の体全体が青を通り越して白くなっているのも気のせいだと思いたい。
「血液状態、ちょっと不健康‥‥‥栄養バランスがおかしいというか、各種薬物反応が多いですネ」
「ふむ‥‥‥ほぅほぅ…‥‥なるほどなるほど、これはまた面倒な類じゃな」
短時間とは言え、結果が出たのか互にそう口にする二人。
何やら面倒そうな話の予感しかしないが、ちょうど王子たちが騎士や衛兵たちと共に到着したので、その報告は後にしてもらう。
とにもかくにも、長くなりそうでありつつも、割とあっけなく終わった怪盗騒動の一夜なのであった…
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