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225 考えたら知っている組はほとんどなく

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「ん?手紙?」
「ハイ。ご主人様と面識のある方からの物が届いていまシタ」

 今日も学園の授業に取り組もうとしていたある日の早朝。

 スッキリとした目覚めで朝日を浴び、清々しい気分だなと思っている中で、ゼネがそう報告してきた。

 寮に届く手紙というのは、大抵の場合実家からのことが多い。

 城伯という地位についているゆえか、面倒な貴族関係の手紙などもあったりするが…‥‥

「差出人は‥‥‥あれ、なんかこの手紙やけに押印が豪華なような?」
「これ、ゼオライト帝国からデス」

…‥‥帝国の方で、俺たち宛に手紙を出す人を頭に浮かべると、一人しかいない。

 去年の頃に、帝国内部でクーデターが発生し、それから逃れてきた皇女と関わったことがあったが‥‥‥どうやらこの手紙の差出人は、その皇女、いや、今は女帝フローラからのようだった。

「お?帝国のものというと、確か拙者が主殿に召喚される原因を作った方でござるよな?」
「そう言えばそうなるよな」

 丁度起床し終え、部屋に入って来たルビーがそう口にするが、その通りである。

 色々あったごたごたを解決して、そのお礼としてもらった褒美を活かし、彼女を召喚したんだよなぁ‥‥‥当初の目的はドラゴンを召喚するはずだったのに、ヴイーヴルというドラゴンの仲間に当たる彼女になったけどな。

 間違ってはないけど、これじゃない感があった…‥‥今となってはもうどうでもいい話しか。



 何にしても、その皇女もとい女帝からの手紙というのは珍しい。

 ごたごたも終わらせたが良いが、特に関わる事もなく、疎遠気味ではあったが‥‥‥何かあったのだろうか?

 そう思い、手紙を開封してその内容に目を通すことにした。


「…‥‥なるほど、女帝として忙しい毎日を送っているのは良いけど」
「その中で、何やら面倒事が起きたようですネ」

 クーデター、王国との戦争未遂なども経て、なんやかんやとあって女帝になってしまったフローラ。

 彼女は一応尽力を尽くしまくり、ごたごたした帝国内を平定しつつ、仲が悪かったこの王国とも関係改善に取り組みまくっていたそうだが…‥‥最近、ようやく落ち着いてきたところでとある問題が起きてしまった。

 それが、女帝の相手探しである。

 クーデターの一件によって、彼女以外の血筋が現在ほとんど存在しておらず、まだまだ現役でいることができる年齢とは言え、後継ぎが欲しいと帝国内で声が上がってきたらしい。

 というのも、流石に女帝がこのまま現役であれば問題ないが、不慮の事故などがあれば即血筋が絶えることになりかねないという危機もあるようなのだ。

 まぁ、その中には性懲りもなく帝国の女帝の側に立つ地位を狙う有象無象の輩も多いらしいが‥‥‥彼女としては出来れば恋愛結婚を望むものの、上に立つ者としての立場や責任を理解しており、だからこそできる限り女帝という立場で良い相手を各地で探しまわっていたそうだ。

 そして最近、ようやくとある国の王子を婿に迎える事で解決する予定だったらしい。

 その国とは、この王国とも友好国であるガランドゥ王国の第3王子。

 第1~2王子あたりは確実に王位継承権争いをするので貰うことはできないが、その第3王子は勤勉さが抜き出ており、常に政治の方を考え、より良い体制にしようと尽力を尽くしているそうだ。

 とはいえ、ガランドゥ王国は芸術面を重んじる国であり、政治に力を入れすぎる第3王子はどちらかと言えば疎ましいのだとか。

 もったいないというか、国としてそれで良いのかというツッコミを入れたいが、能力もあるのにいらないというのであれば引き取っておきたい。

 なので、婿として迎えたい書簡を送りつつ、ガランドゥ王国側としても帝国との縁を繋げるのであれば願ったりもない話しなはずなのだが‥‥‥‥

「‥‥‥送ったはずの者たちが帰って来たが、国内の事を覚えていないだと?」
「念のために再編成した暗部を送っても、何故か駄目だったとあるようですわね」


 奇妙な事というか、現在ガランドゥ王国内がどういう訳か探れない状態になっているようだ。

 書簡を送ったのは良いのだがその返答は本来きちんと返されるはずなのに、その返答すらもまともに来ない。

 なにやらおかしいと思って暗部を向かわせて探らせるも、誰も彼も国内の事を覚えていないのだとか。

「まずそんなおかしくなった国に送るのもどうかと思うが‥‥‥情報が入らなくなったのも、本当につい最近か」
「どうやら、調べてみるといつの間にか国内の情報封鎖が起きていたようデス」

 ガランドゥ王国は芸術を求める国だけあって、国内で製造されるものは見事な芸術品が多い。

 ゆえに、他国では高値で取引されることも多く、商人たちがかなり出入りをするはずだが…‥‥情報を集めてみると、どうやらその商人たちもいつしかガランドゥ王国内についての情報を頭の中から消されているようなのだ。

「そんな集団一点記憶喪失みたいなことは普通ないだろ」
「それでもあるようでござるな」
「どういう技術でなしているのか、ちょっと気になりますネ」

 何にしても、このままでは婿入り話もうやむやになってしまう可能性があり、それだとまた面倒なことになるし、ガランドゥ王国内で何かが起きているようで、それを放置することもできない。

 最悪の場合として考えられるのは…‥‥帝国の方でもしっかり認識して排除を試みている仮面の組織が関わっている可能性もあり、どうにかしたいそうだ。

 そこで今回、俺たちへ向けての白羽の矢が立ったようだ。

 でも、一応俺はこの国の国民なので帝国の女帝からのだとしても、言う事を聞いて良いのかというところもあるが…‥‥

「学生という身分も考慮しつつ、国王との話し合いも交える予定…‥‥面倒事でもあり、国に関わる可能性を考えると一人の学生を向かわせるのもどうかという事もあるようだけど…‥‥」
「どうします、ご主人様?」

…‥‥面倒事であるならば、できれば断りたい。

 だがしかし、仮面の組織が関わっているのであれば、これまでの面倒ごとのうっぷん晴らしとかはしたいし…‥‥森林国が目の保養国であれば、ガランドゥ王国は芸術の頂点の国とも言われているから興味が無いわけでもない。

 でも、その国内の記憶が無くなっているというのも気になるし、また変な争いごとが発生して戦争でも起きたら巻き込まれたくないという思いもある。

 となると、受けた方が良いのだろうが‥‥‥‥

「学生という身分を考えて欲しいんだけどなぁ‥‥‥」

 長期間休みたくもないが、それでもある程度の授業を休む羽目になるだろうし、ちょっともったいない。

 かといって、休みの日に受けていない授業分の補習を受けさせられるかもしれないと考えると解せない。

 何にしても、まずはその話し合いに出向いて見たほうが良さそうである事には変わり無さそうであった‥‥‥


「その件で褒美をもらえるのであれば、またドラゴンを召喚できるかもしれない道具を所望されますカ?」
「いや、流石に無いな。だって最近ルンも加わったし、これ以上増やす気もないからな。‥‥‥あと噂が新入生の間で広がって、『美少女限定召喚士』だとか『白いインキュバス』とか言われているのが気になっているからね‥‥‥誰だそんな噂を流した奴は」
「間違っていないようにも感じるのでござるが…‥‥まぁ、拙者が加わる要因になってくれた方のようでござるし、話を聞いてみるだけでも良さそうでござるよ」

‥‥‥あ、褒美にはできればその噂の払拭を願っても良いかもしれん。無茶ぶり感はあるが、出来ないことはないと思いたい。

「いっその事、噂を消し飛ばすような異名をご主人様に与えてくれれ良さそうですけれどネ」

 それはそれで、あとで黒歴史になりそうな気がするのだが気のせいだろうか?
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