憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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227 自然に見えるからこその

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‥‥‥ガランドゥ王国は、他国と比べて芸術の分野が著しく発展している。

 彫刻、絵画、音楽…‥‥その他にも細かな装飾を施す技術や、文字の書き方による魅せ方を徹底したものなど、芸術という幅が広くもある。

 ゆえに、その分非常に価値のある芸術なども多く、できるだけ国内に保管するために…‥‥



「--よし!通って大丈夫だ!」
「わかりました」

 門番たちの合図を聞き、ディーたちは馬車を進めて入国した。

 ガランドゥ王国の国境地点には、既に大きな壁がそびえたっており、門を抜けなければ入国できないようにされている。

 他の国々だとまだ緩い所も多いのだが、この国に限っては周囲を巨大な城壁で覆い、更に何重にも芸術品の国外盗難・流出を防ぐためにか、中心部へ向かうほど壁の厚さも増すようだ。

 まだここは国境部分だからこそ壁の厚さは板程度ぐらいだが‥‥‥首都まで行くと、その壁の分厚さは50mぐらい行くらしい。

 そしてさらに、ここへ来た元々の原因とも言うべき現象は…‥‥

「‥‥‥ガスなどの確認はありませんが、微弱な魔法のような反応を感知しまシタ。おそらくは、国全体に特殊な魔道具が作用していると思われマス」
「ここへ来るまでにすれ違った人たちに問いかけても、この国内の様子が分からなかったのは‥‥‥」
「その魔道具の成果と思われマス」

‥‥ガランドゥ王国内の情報が、一切外に漏れだしていない現象。

 各国の諜報や暗部などが入り込めても、出る際には全てを忘れており、国内の状態がつかめないという話ではあったが‥‥‥どうやら、その話は本当のようだ。

「一応聞くけど、俺たちにも作用しているのか?」
「あらかじめ、ガスや特殊な薬品による消去などを考えてましたが…‥‥この手の道具だと、解除条件がまだわかりまセン」

 つまり、このまま普通に国外へ出たら、同じように俺たちもこの国内の状態を忘れてしまう可能性は大きいらしい。

「んー、儂としても魔法の分野であれば何とかできそうな感じはしたのじゃが…‥‥これはちょっと厄介じゃな。人が扱えるような代物でもないし、モンスターでもここまでの作用を及ぼすことをできる者はいないじゃろうな」

 とにもかくにも、他の召喚獣たちの能力をもってしても、そう簡単に抵抗できるわけではなさそうだ。

 まぁ、今すぐ国外へ出てしまう訳でもないし、先に国内の状況をつかむ方が早いと思ったが…‥‥



「‥‥‥何と言うか、芸術の国だけあって、国境部分から既にすごいとしか言いようが無い」
「語彙力が無いのが悔やまれるのニャ‥‥‥‥」

‥‥‥正直言って、ちょっと芸術大国をなめていた。

 なんというべきか、芸術面に関してはそこまでの感性を持っていない自分達でも、素晴らしいと思わず口に出してしまうような景色から始まっていた。

 建造物には装飾が施され、道並みも石畳形式でありつつその一枚一枚に絵が描かれている。

 それらすべてが合わさり、一つの作品のように魅せつつ、更に全体に目を向けるとまるで景色そのものが一つの大きな絵画のような光景になっているのだ。

「なんか、絵の中の国に迷い込んだかのような錯覚を感じさせられるな…‥‥ノイン、これは流石に魔道具によるものとかではないよな?」
「ええ、こちらは単純に、この国の国民が創り出した芸術でしょウ」

 色々と面倒そうな任務とは言え、しょっぱなからこのような芸術を見せてくれる国に来れたのは、ラッキーだったかもしれない。

 しかも耳をすませば、音楽も聞こえてきており、この絵画のような景色により色を与えている。

「恐るべし、芸術の国‥‥‥‥なんかもう、調査とかを放棄して普通に観光を楽しみたくなってしまう‥‥‥」
「でも外に出たら忘れてしまうニャよね?」
「それもそうか」

 忘れたくないような芸術的景色なのに、それを忘れ去らせるとはどういう了見なのか。

 その部分も問いただしたくもあり、気を引き締めて調査に当たる事を、改めて決意させられるのであった。

「ルナティアがいてよかった…‥‥そのツッコミが無かったら、放棄していたかもしれない」
「ツッコミ役じゃないんだけどニャァ‥‥‥」

‥‥‥一応、この面子の中で一番の常識人で、常識の範疇からのツッコミをやってくれているけどね。こういう時に助かるというか、彼女のツッコミ力を見習いたくなるというか‥‥‥‥ツッコミをどうやって鍛えればいいのだろうか?








…‥‥ディーたちが国内に入国し、芸術に目を奪われまくっていた丁度その頃。

 ガランドゥ王国の王城内では、音楽が流れていた。

「いやー、今日も良い音色というべきか、それが楽しめますねぇ」
「-----」

 城内の謁見の間‥‥‥その場にいた人物が問いかけると、国王は言葉も発せずに答える。

 とはいえ、国王の姿そのものは玉座にはいない。

 いや、豪勢に飾られた玉座そのものが不要になっているというべきか‥‥‥それでも、国王としてはその玉座を残すのだろう。


「ああ、それと昨日の手術からまだそう時間も経過しているわけでもないですが、調子は大丈夫ですか?」
「----、----」
「はいはい、良く見えるようになったし、更に遠くまで見て、どこの芸術も見逃さなくなったと…‥‥しかし、音楽を聞く耳や、その他の部分もまだまだ改良の余地がありますねぇ」
「---!」
「あ、でも今すぐには無理ですねぇ。いやまぁ、できればもっともっと国王陛下に尽くしたいのですが、流石に人の体力というものの壁がありますし、そう直ぐには出来ません、もうちょっとしてから、次の段階へ移りますし、今はゆったりと術後の疲れを癒すために、音楽をどうぞぉ」
「--」

 その言葉に対して、納得したのか国王は完全に黙り込む。

 そしてその者は、次の段階へ進める準備を行うために退出し、そのための道具を取ってこようと場内を歩く中‥‥‥ふと気が付いた。

「ん?おやぁ、この音楽は…‥‥」

 耳に聞こえてきたのは、綺麗な歌声。

 けれども、何かが違うことにその者は気がついた。

「‥‥‥まさか」

 そうつぶやき、その者が音の発信源の部屋へ出向いて見れば…‥‥

「っ、逃げられただと!!」

 その部屋は既にもぬけの殻であり、残されているのは厳重にしておいたはずの拘束具のみで、音を発しているのは練習用にという名目で使用されていた蓄音機という道具。

‥‥‥いや、それだけではない。

 よく見れば、その拘束具にはおびただしい血が流れており、ろうそくが倒され、何かが焼けたかのような臭いが漂っていた。

 ろうそくの火だけでは足りぬと感じたのか、衣服の布すらも利用したようであり…‥‥

「血痕を残さないように、傷口すらも徹底的に焼ききったか…‥‥そこまでの覚悟があるのであれば、もっと早くしておくべきだった!!」

 その者は悔しそうな声を上げつつ、直ぐに仲間の方へ連絡した。

 この王城内に、既に入り込んでいる者たちへ向けて、逃げた者を直ぐに追いかけるようにと指示を出す。

 とはいえ、出血量などから見てそう長くは持たないと見つつ、息絶えていたならそれならそれで良いかと直ぐに切り替える。

「まぁ、今更一人が逃げたところで、どうにもならないだろうしぃ…‥‥歌えるだけの小鳥が逃げたところで、何もできないか。どうせ、熟すのを待っていただけだし、取れなければそのスペアもあるからねぇ‥‥‥」


‥‥‥そうつぶやきつつ、後のことは仲間に任せ、その者は国王を変えるための道具を取りに向かうために、直ぐに元の道を歩みだす。

 だがしかし、綻びは既にこの時点で起き始めていたのだが‥‥‥‥その者が知るまでは、まだ時間がかかるのであった。




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