憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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347 欲望の代償はすさまじい

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…‥‥切り裂き、焼き払い、凍てつかせ、粉砕していく。

 迫りくる大群の中を貫きながら進むうちに、ようやく俺たちはその発生源の間近にまで到達していた。


「とは言え、ここからは空間そのものが不安定であり、法則が少し乱れている反応がありマス」
「そうなのか?」
「そのようじゃな…‥‥まぁ、禁忌をやらかし、失敗したからこそその反動が出たのじゃろう」

 先を見れば、空は完全に真っ暗となっており、先の空間は全体的にどこか淀んでいるような印象を与えてくる。

 怨念、呪い、怨嗟、穢れ‥‥‥‥どう考えても色々と不味そうなものが詰まっているような感じしかしない。

「ついでに、不明な反応を確認しまシタ。発生源の近くにあり、こちらに向かっているようですが‥‥‥どうしますカ?」
「どうしますもなにも、行くしかないだろ」

 ぐるんぐりんとレーダになっているアホ毛を回転させて問いかけてきたノインに対して、俺はそう答える。

 何しろ、何処かの大馬鹿野郎がしでかしたせいで、本当にヤヴァイ状況になっているからな‥‥‥さっさと解決しなければ、下手するとこの世界そのもが消えるかもしれない。

 というか、主に身内ワゼの手で消される可能性もある。あちらはあちらで何でそれが可能なんだというツッコミをしたいが、ノインの姉妹機であるという回答だけで納得できてしまう。




 とにもかくにも先へ足を踏み入れ、周囲を警戒しながらディーたちは先に進んだ。

 地面そのものも変わり果てているのかあやふやな触感をしており、時々ノインお手製の魔道具でバランスをとる必要があった。

 それでも先へ進むと‥‥‥‥人の影が見えて来た。

 その影もこちらへ向かって歩んでいるようで、徐々に姿をはっきりさせてくる。

 あらかじめ、ゼネから禁忌に関しての話を聞いていたので、何が起きているのかは理解できたが、こうして目にすると驚かされるものだ。



「とは言え、やっぱり直接見ると失敗したんだなと思うよ。…‥‥ねぇ、父さん・・、今の具合はどうだい?」
「…‥‥おお、気配を感じていたからなんとなくわかっていたが…‥‥大きくなったなディーよ。ソレと答えるのであれば…‥‥非常に最悪というべきか」


‥‥‥俺の問いかけに対して、目の前の人影が…‥‥幼い時に亡くなったはずの、父さんが答えてくれた。

 その姿は、生前の生きていた時の父そっくりであり、纏う雰囲気も似ていただろう。

 だがしかし、大きく異なるのであれば‥‥‥‥父さんの歩んでいた後ろの方に、無数の崩れた肉体が並んでいたことぐらいか。


「‥‥‥やっぱりのぅ。どこの誰がやったとはいえ、失敗しているようじゃな。肉体を再生しては崩壊し、その繰り返しで進んできたようじゃが…‥‥そもそも、死者に対して現世へ降ろすことぐらいならばできるのじゃが、元から成仏している相手を無理やり生前そのままの状態で復活させる方法‥‥‥反魂の術の一種をしたように見えるが、それがこのありさまか」


 父さんの状態を見て、ゼネはそう口にする。

 簡単に言えば人を蘇生させる方法とも言えばいいのだが、その方法の中でも特に禁忌とされるような術‥‥‥「反魂の術」が行われたのが、この惨状の原因のようであった。


―――――――――――――
『反魂の術』
一種の蘇りの方法ではあるが、禁忌の類。
その術式のために必要なものの難易度も高く、死者を冒涜する類も多く、成功率がかなり低い。
ただ、成功さえすれば生前以上の能力を秘めて復活が可能である。

―――――――――――――

 説明だけ見れば、普通に単純なものだとは思う。

 けれども、その内容を簡単に説明しているだけであり、今回のケースを言っても…‥‥

「代償も非常に多く、更にはその追加するものがとんでもないものほどヤヴァイのじゃが…‥‥この様子じゃと、御前様の父上の蘇りを企んだ奴は、その代償すらもろくに考えずにやらかしたようじゃなぁ」
「ああ、そのようだね…‥‥自分の父の代からも続いていた因縁のような類だったらしいが、そこにさらに欲望を加えていたようだ」

 ゼネの言葉に対して、そう口にする父さん。

 様子を見る限り、こうなった状況に関して詳しい事を知っているようだが‥‥‥‥何処か、悲しく見える。

「父さんは、何故こうなったのかわかっているの?」
「そうとも。生前は言う機会はなかったが…‥‥職業は『大賢者』だったからな」

 職業でも賢者というのはあるらしいが、大賢者は更に特殊な類。

 ありとあらゆる知識に富んでおり、歴史上では一国の発展に貢献するなど、その知識量はかなり凄いようだ。

 そしてその職業であるからこそ、父さんはこの状況がどうやって起きたのか理解しており、説明してくれた。






‥‥‥元々、この惨状を引き起こしたのは、調査で判明していたとある滅びた国の者。

 復興を目標に掲げ、そしてかつての国の力となっていた血を取り込むために、俺たちを狙う中で‥‥‥父さんの遺体にも目を付けた。

 禁忌の術に手を染めようとしていたが、その中でとある企みも思いつく。

 既に死亡した父さんを蘇らせつつ…‥‥胸糞悪くなりそうだが、父さんの数を増やし、その血を出来る限り得られるように色々な策を練っていたそうだ。

 知らぬ兄弟姉妹が増えるような話は聞きたくもないし、力を求めるにしてもそこまで貪欲に求めるような欲望は測りしてないだろう。

 とにもかくにも禁忌の術を利用して、その企みをより楽に進められるようにという事で、実行されたようだが…‥‥結果としては失敗し、その反動として死者の眠るような国と繋がってしまい、そこの亡者が全世界へ溢れ出しかけるという結果になった様だ。

 一応、その亡者たちは現状直接対処する程度しかないが、繋がりさえ断ち切ってしまえばすぐに消えるそうで、騒動は収めようと思えば可能なのだろう。

 だが、その収める方法というのは‥‥‥


「‥‥‥反魂で失敗した者へ再度の死を‥‥‥か」

 父さんは生き返っているように見えるのだが、生き返っているわけではない。

 失敗したからこそ、死者と生者の境目にいるような状態であり、つなぎとめる鎖となってしまっている。

 つまり、この騒動を治めるには父さんの立ち位置を元の死者へ…‥死をもたらさなければいけないのだ。

 しかし、その方法は生半可なものではできない。


 今もこうして、再生と崩壊を繰り返す父を死者にするのは容易な事ではなく、生者にも値するために聖属性の魔法で昇天させるということができない。

 なので、確実に絶命させるには術式そのものを破壊する必要があるのだが‥‥‥‥破壊する方法は一つしかないそうだ。

「‥‥‥失敗した時の、確実にやる方法なのじゃが‥‥‥‥その境目にある者の血縁の直接の手ででなければ、できないのじゃよ」

 つまり、俺の手で直接下さなければいけない方法。

 この世の中で言えば、妹も該当するが…‥‥そんなことはさせられない。

 そして父さんも分かっているのか、俺の方に体を向ける。

「そういうことだ。…‥‥だから、早く楽にさせて欲しい‥‥‥ディー」
「‥‥‥そうさせてもらうために、ここに来たんだよ」

 自分しかできない方法ではあるが、それでも相手は父さん。

 思い出がそこまで多くあるわけでもないのだが‥‥‥‥それでも、父を手にかけろとは、残酷な事だ。



 でも、既に覚悟はしている。

 そうでなくてはここに来ないし、やるのであればできるだけ早く済ませなければいけない。

…‥‥放置していたら抑えようがなくなるし、死者の大群というのは厄介で、下手したら世界が滅亡しかけないからな。あと、世界そのものを消されかねないし…‥‥しっかり、やらないとな。

「こうして会えたのに、また別れるのは悲しいけれど‥‥‥‥直ぐに、終わらせるよ、父さん」
「分かっている。‥‥‥ああ、せめて母さんやセラにも会いたいが、そんな時間は無いだろう?」

 時間はない。長く続けば続くほど、世界が終わりかねないから。

 それに、この状況を招いた馬鹿共のせいではあるが、父さんにはこの惨状を長く見て欲しくはない。

「それじゃ、短い間の再会だったけど‥‥‥‥またね、父さん」

 腕時計を操作し、ノインからもらっている装備品の中で、一番シンプルな加速器を装着する。

 スイッチを入れ、一歩踏み出し‥‥‥‥そして、一瞬で消し飛んだ。




 それと同時に世界中に進撃しかけていた亡者たちが消えうせ、辺りの景色が正常なものへ戻る。

 けれども、この手でやった感触はあり…‥‥悲しみが、溢れ出す。

「さよなら、父さん…‥‥‥」

 遺体も何もなくなり、父が完全に消滅したことを俺は理解させられる。

 そして、この惨状を引き起こした大馬鹿共を根絶するために、悲しみを直ぐに吹っ切らせて、動くのであった‥‥‥
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