私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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2章 吹く風既に、台風の目に

2-13 あっけないものも、茨の道も

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‥‥‥たまに思う。ゼナの全力とは、どういうものなのかと。

 彼女と刃を交えていても、まだ自分の実力では本気を出してもらえていないような気がする。

 いや、出されたら出されたでほぼ確実に今の状態では瞬殺されるのが目に見えているのだが、それでもまず今の彼女がどれだけの実力を持っているのか見てみたい気持ちもあるだろう。

 ゆえに、この状況は好機というか…‥‥


【■■■■■!!】
「‥‥‥魔剣たるもの、主の身を守るのは大事でしょう、主の願いを叶えるのは大切でしょう、主の想いを大成させることも必要でしょウ」

 咆哮を上げて今にも暴れようとするガミガミさんだった者に対して、そう告げながら歩み寄るゼナ。

 ただ、その顔はいつもの冷静な顔よりもさらに冷酷な目をしており、冷気を纏うかのように冷ややかな風が吹き始める。

「けれども、その道を踏み外させてしまうのはいけない事デス。魔剣たるもの、主のために行動するのであれば、その道を正しき道へ導く手助けをしなければならない…‥‥だからこそ、今の呑み込んでいる状態はよろしくない事なのデス」

 ぱきぱきっと音がして何事かと思えば、彼女の周囲に白い粒が発生したかと思えば、綺麗な結晶のようなものへと成長していく。

 大小さまざまだが、それもこれも冷気を纏い、周囲を回転し始める。


「だからこそ私は、ここであなたを止めましょウ。魔剣同士のよしみという事で…‥‥ここで、暴れるのを辞めなサイ」
【■■■■■!!】

 ゼナの言葉に対して、聞く耳も持たないというように肥大化した拳を振り上げて襲い掛かるガミガミさんだった者。

 だがしかし、その拳は彼女に当たる前に‥‥‥


ピキピキピキイッ!!
【■■!?】

 一瞬でその拳が凍り付き、腕全体が大きな氷の塊に覆われて地面と繋がり、動かなくなる。

 何事かと状況が呑み込めないかのように驚く中で、いつの間にかゼナの姿はその拳の先から失せていた。


「‥‥‥粘着の魔剣、粘着弾は燃やすと厄介な気がしまシタ。だからこそ、凍らせる手段が最善と判断したのデス」
【■■■■!!」

 声がした先を見てもそこにはおらず、どうじにガミガミさんだった者の体がその近くから凍り付き始める。

 混乱しつつ攻撃をしようと動くのだが、それはあっけなく氷によって防がれてしまい、あっと言う間に全身を分厚い氷の塊が覆い尽くした。


「安心してくだサイ。凍らせたと言っても、それはあなたの体そのものではなく、飲み込まれて増えた部分だけデス。ですから、これで終わりデス」

 氷塊の前に立ち、ぽんっと彼女が軽く指先で氷をつつけば、あっと言う間に砕け散った。

 脆い氷でもなかったはずなのに、ガラスのように砕け散り、中身が出てくる。

 

「うあ、あ、あ、…‥‥あ?」

 砕け散った氷塊の中から出てきたのは、元の姿になったガミガミさんだろう。

 そしてその手には魔剣が握られているのだが、その刀身にはひびが入っており、ボロボロになっている。


「‥‥‥まさか、魔剣のリスクで生じた代償による呑み込みを、これだけで終わらせるとは…‥‥」

 あっけない幕引きに、驚愕の表情を浮かべながら生徒会長がそう告げるが、同感である。

 先ほどまで明らかにやばそうだった怪物と化しかけていた相手を、彼女は数回ほど動いただけで全てを終わらせてしまったのだから。


「…‥‥というかゼナ、氷の魔剣とも言えるのか?」
「いいえ、違いマス。今回はこれが最善の手だと思ったからこそ、氷を使っただけデス」

 俺の言葉に対して、うめき声を上げてふらつき始めていたガミガミさんへ手刀を食らわせ、倒れ込ませながらゼナが答える。

「ご主人様のために、私は色々とできますからネ。今回は被害を出させないように、さっさと終わらせる手段として氷を使いましたが…‥‥望めば、もっといろいろとできまスヨ。こんな風にネ」
 
 軽く指鳴らした瞬間、ゼナの周囲に浮かんでいた結晶が消えうせ、代わりのものが現れる。

 ぼうっと赤く燃える火の玉に、バチバチと放電する電気の塊、その辺にあった破片をごうっと巻き上げる小さな竜巻‥‥‥様々なものがゼナの手によって生み出され、そして消えていった。


「ですが、この力は今はまだ、私だけしか扱えませんし、出力自体もこれでまだ1~2%も出せないデス。ご主人様が未だに私を扱え切れていない証拠でもあるのが悲しいデス」
「あの氷漬けにする力で、全力でないと?」
「ハイ」
「うわぁ、フィー君自身の強さを測ったのに、その強さよりもさらに強くならないと駄目とか、かなり厳しいね、メイドさん」
「今以上に強くなりたいけど、今の宣言で少し心が折れそうになったかも‥‥‥‥」

 出てきた回答に生徒会長は苦笑いし、俺の方は落ち込まされる。

 たった今、見せつけられた短い時間だけでも、まだまだ自分は弱いと実感させられてしまったからだ。


「‥‥‥でも、逆に言えば俺が今以上に強くなれば、ゼナ、お前が振るった力を扱う事も可能になるってことか?」
「そうですネ。今はまだ、ソードとガトリングのノーマル・・・・でしか扱えていないようですが‥‥‥それでも、ご主人様の実力が上がれば、より上を目指せますネ」
「そうなる確率は?」
「断言しましょウ。ご主人様が努力をし続ける限り…‥‥0になることはないのデス」

 言い換えれば、ここで折れて上を目指さなくなれば何もできないまま終わると同じ。

 けれども、上を目指す心を忘れなければ、より強くなれる事を彼女は断言してくれた。


「その道は茨の道かもしれまセン、メイドたるものご主人様に危ない道を歩ませないようにしたいのですが、魔剣たるもの主の強さの向上には試練が必要であると理解していマス。だからこそ‥‥‥メイド魔剣たるもの、ご主人様のやることに尽くしましょウ。その両立ができるように、生涯をかけてでもデス」


 いつのまにか俺の目の前に立ち、手を取って重ね合わせながら優しい声でゼナは告げる。





‥‥‥ならば、俺も答えよう。彼女という魔剣を手にしているからこそ、より上の強さを目指そうと。

 いや、そもそも高みを目指すよりも魔獣どもを殲滅するだけの力が欲しいのだが‥‥‥突き詰めれば、どちらも同じかもしれない。

「だったらその誓いにかけて、俺も上を目指そうか」
「ええ、どの様な道でも私はメイドとして、魔剣として尽くすまでデス」

 圧倒的な彼女との力量差を実感させられたが、それは逆に俺自身の強さを高めるために、その頂を一瞬だけでも見せてもらったようなものである。

 ゆえに、俺自身もその高みにたどり着けるように、今以上の努力をすることを誓うのであった…‥‥



「あのー、二人だけの世界に浸ってないで、ちょっと事後処理手伝ってくれないかな?」
「あ」
「そう言えば、氷砕きましたけど破片はそのままでシタ」

‥‥‥前途多難という言葉が漂ったが、見て見ぬふりをしたい‥‥‥
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