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2章 吹く風既に、台風の目に
2-15 風が吹けば桶屋が儲かり、面倒事があれば薬屋が儲かる
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‥‥‥風が吹けば桶屋が儲かると、昔の人は言ったらしい。
「そして面倒事があれば、薬屋が儲かるとも歴史書には記されているのだが…‥‥そうなのかもしれぬな」
「ええ、国王陛下の心労は痛いほど我々も分かります」
「というか、全員なじみの薬屋でよく顔合わせをするようになってますからな」
「う、うむ…‥‥」
ドルマリア王国の王城内議会室にて、微妙な空気が流れた。
それはそれで良いのだろうか、もっと職場の改善をすべきなのかと国王であるザブートンはそう思ってしまう。
けれども、どうしようもないのがこの貴族としての世界であり、真面目に働く者ほど色々と貯まりやすいのである。
そう言った意味では、堂々と汚職をして発散する輩がある意味羨ましい気もしなくはないが、その手の輩は最近減少傾向だったりする。
噂では、色々とあくどい組織とのつながりを持って私腹を肥やしていたはずなのに、その組織が次々に何者かに潰されてしまい、結果として真面目にやらざるを得なくなっている事態になっているらしいが…‥そちらはそちらで、調査中ではある。
「とりあえず気を取り直して本題に入るとして‥‥‥今は我が娘からもたらされた情報を元に調査をしていたが、これは信憑性があるのか?」
「あるかと思われます。いや、我が国の諜報機関は他国に比べると脆弱ですが、それでもこのぐらいで手に入る情報を他の国が入手していない可能性を考えると、現状の放置状態はおかしい気もしますが…‥」
ツッコミどころをどこから探せと言う様な情報にはなったが、それでも放置はできない状態。
けれども、下手に動けばそれこそ面倒な国々が動き出しかねず、かと言って何もしないわけも逝かないだろう。
「そもそも、彼についているメイドもまた謎の多い魔剣だからな…‥‥あれ?これ我々が動かなくとも、やらかす人たちを待てば勝手にメイドが全てを解決していくのでは?」
「いやいや、まさか流石にそんなことはないと思うぞ」
「そうそう、流石に行動力がかなりあって、組織が潰れた原因もこのメイドが狩りつくしていたりとか」
「敵となる者を堂々と消滅させることを最低限にしているとか」
「最新の情報だと様々な魔剣が合わさったような性能を秘めているとか」
「そんなメイド魔剣が勝手に全部を解決するなんて…‥」
「「「「「‥‥‥ありえなくも、ないのか」」」」」
全員、集めていた情報を照らし合わせつつ無いと思って笑い飛ばそうとしたが、0ではない可能性に黙り込む。
いや、こうやって自分達が会議を開いている現状も実は把握しているのではないか、見定めているのではないか、彼女の主へ対してやらかさないかと監視をしているのではないかとすら思えてしまう。
「‥‥‥何でだろうなぁ。今年は厄年なのだろうか」
「この後、皆で胃薬を買いに行くか。国費で購入することになっても、許そう」
「陛下、それは流石に反対する者が…‥‥いるのかな?」
‥‥‥何にしても、面倒事が増えれば薬屋が儲かるという言葉が、ここで作られようとしているのであった。
「‥‥‥であるからして、魔剣の歴史をさかのぼると様々な過ちや学びを我々は得てきただろう」
そんな会議が行われている一方、デュランダル学園でフィーは座学を受けていた。
魔剣士になる者達が集う場とは言え、何も全てを戦闘に注ぐわけではない。
戦闘時にはとっさのひらめきや判断が必要になる場面もあり、だからこそ頭を鍛える目的もあっての座学があるのだが、本日は魔剣についての学びを増やすための授業として歴史が扱われていた。
「そして魔剣の扱いに関しては、各国で魔獣への対抗策として扱われたが‥‥‥それを兵器として、魔獣ではなく対人へ応用しようと試みた国がいたのも当然のことだろう」
「兵器に、ですか?」
「ああ。魔剣の持つ力は魔獣相手に十分だが、人相手にも強すぎる力となる。だからこそ、兵士に魔剣を持つものを集め、戦わせた国もあったのだ」
だがしかし、それは失敗に終わった。
始めこそ、魔剣を用いての戦争は他国との争いにおいて圧倒的な力で優位に持っていける可能性はあった。
だがしかし、 人間同士の争いがある中でも魔獣が発生するのは当然のことであり、魔獣を葬ることが出来る魔剣士が戦争で駆り出されてしまえば…‥‥それを止める手段がなくなる。
さらにどういうわけか、魔剣士を戦争へ狩りだした国ほど魔獣に襲われる頻度が明らかに多くなったのである。
ゆえに、そのまま放置したことによって魔獣による被害が大きくなってしまい、結果として魔剣士を戦争に持ち出す国はなくなってしまった。短期決戦で終わらせようとした国も、長期的に戦略を練った国も、他の国の魔剣士を捕虜として扱い魔獣と戦わせようとした国も‥‥‥何故か、魔剣士を争いごとに呼べばどんどん魔獣を呼び寄せる結果となって、滅亡していった。
「ゆえに今は、魔剣士を戦争の道具として扱う国はないだろう。だが、なぜ魔剣士を戦争へ狩りだせば魔獣の襲撃頻度が上がったのかは、誰にも分らない。もしかすると、魔剣士がいることによって魔獣を抑える役目が自然と出来上がっており、いなくなるからこそそれを狙って襲ってきたとも言われていたり、あるいは神という存在が見ていて、魔剣を正しく扱わぬ者への天罰を落としたとも言われたりと様々な説が多く飛び交っているのだが‥‥‥謎は多いのだ」
魔剣士がいなくなれば魔獣が増え、滅亡していく国々‥‥‥魔剣と魔獣の関係に何かがあるのかと思いたくもなる。
「ところで、魔剣そのものであるゼナならその回答を知らないのか?」
ふと思って、後の方でびしっと立って待機をしていた彼女に問いかけた。
その言葉が聞こえたのか、同じように興味を持っていた人たちがこちらに目を向けたところで…‥‥
「‥‥‥残念ながら、私はその回答を持ち合わせていまセン。魔剣でも、全てを知るという訳ではないのデス」
「そうなのか?」
「ハイ。ご主人様の期待に沿えず申し訳ございませんが、私も知らない事があるのデス」
淡々と、冷静にそう返答するゼナ。
魔剣であっても知らないことは知らないようである。
「そっか。ちょっと残念だけど、無理もないか」
魔剣でメイドで色々詰まっているからこそ、持ちうる知識も当然多いのかと思う事もあったが、彼女と手万能ではないからこそ、解凍できないことがあっても仕方がない事だろう。
まぁ、謎は謎のままの方が考える楽しみはあるだろうし、あっけなく回答を知るのも味気なかったかもなぁ。
そう思いつつ、俺は授業へ意識を戻すのであった‥‥‥‥
「‥‥‥神が見ているの部分に関しては、色々と違うのですけれどネ」
‥‥‥ぽつりと小さく、彼女がつぶやいた言葉は聞こえなかったが。
「そして面倒事があれば、薬屋が儲かるとも歴史書には記されているのだが…‥‥そうなのかもしれぬな」
「ええ、国王陛下の心労は痛いほど我々も分かります」
「というか、全員なじみの薬屋でよく顔合わせをするようになってますからな」
「う、うむ…‥‥」
ドルマリア王国の王城内議会室にて、微妙な空気が流れた。
それはそれで良いのだろうか、もっと職場の改善をすべきなのかと国王であるザブートンはそう思ってしまう。
けれども、どうしようもないのがこの貴族としての世界であり、真面目に働く者ほど色々と貯まりやすいのである。
そう言った意味では、堂々と汚職をして発散する輩がある意味羨ましい気もしなくはないが、その手の輩は最近減少傾向だったりする。
噂では、色々とあくどい組織とのつながりを持って私腹を肥やしていたはずなのに、その組織が次々に何者かに潰されてしまい、結果として真面目にやらざるを得なくなっている事態になっているらしいが…‥そちらはそちらで、調査中ではある。
「とりあえず気を取り直して本題に入るとして‥‥‥今は我が娘からもたらされた情報を元に調査をしていたが、これは信憑性があるのか?」
「あるかと思われます。いや、我が国の諜報機関は他国に比べると脆弱ですが、それでもこのぐらいで手に入る情報を他の国が入手していない可能性を考えると、現状の放置状態はおかしい気もしますが…‥」
ツッコミどころをどこから探せと言う様な情報にはなったが、それでも放置はできない状態。
けれども、下手に動けばそれこそ面倒な国々が動き出しかねず、かと言って何もしないわけも逝かないだろう。
「そもそも、彼についているメイドもまた謎の多い魔剣だからな…‥‥あれ?これ我々が動かなくとも、やらかす人たちを待てば勝手にメイドが全てを解決していくのでは?」
「いやいや、まさか流石にそんなことはないと思うぞ」
「そうそう、流石に行動力がかなりあって、組織が潰れた原因もこのメイドが狩りつくしていたりとか」
「敵となる者を堂々と消滅させることを最低限にしているとか」
「最新の情報だと様々な魔剣が合わさったような性能を秘めているとか」
「そんなメイド魔剣が勝手に全部を解決するなんて…‥」
「「「「「‥‥‥ありえなくも、ないのか」」」」」
全員、集めていた情報を照らし合わせつつ無いと思って笑い飛ばそうとしたが、0ではない可能性に黙り込む。
いや、こうやって自分達が会議を開いている現状も実は把握しているのではないか、見定めているのではないか、彼女の主へ対してやらかさないかと監視をしているのではないかとすら思えてしまう。
「‥‥‥何でだろうなぁ。今年は厄年なのだろうか」
「この後、皆で胃薬を買いに行くか。国費で購入することになっても、許そう」
「陛下、それは流石に反対する者が…‥‥いるのかな?」
‥‥‥何にしても、面倒事が増えれば薬屋が儲かるという言葉が、ここで作られようとしているのであった。
「‥‥‥であるからして、魔剣の歴史をさかのぼると様々な過ちや学びを我々は得てきただろう」
そんな会議が行われている一方、デュランダル学園でフィーは座学を受けていた。
魔剣士になる者達が集う場とは言え、何も全てを戦闘に注ぐわけではない。
戦闘時にはとっさのひらめきや判断が必要になる場面もあり、だからこそ頭を鍛える目的もあっての座学があるのだが、本日は魔剣についての学びを増やすための授業として歴史が扱われていた。
「そして魔剣の扱いに関しては、各国で魔獣への対抗策として扱われたが‥‥‥それを兵器として、魔獣ではなく対人へ応用しようと試みた国がいたのも当然のことだろう」
「兵器に、ですか?」
「ああ。魔剣の持つ力は魔獣相手に十分だが、人相手にも強すぎる力となる。だからこそ、兵士に魔剣を持つものを集め、戦わせた国もあったのだ」
だがしかし、それは失敗に終わった。
始めこそ、魔剣を用いての戦争は他国との争いにおいて圧倒的な力で優位に持っていける可能性はあった。
だがしかし、 人間同士の争いがある中でも魔獣が発生するのは当然のことであり、魔獣を葬ることが出来る魔剣士が戦争で駆り出されてしまえば…‥‥それを止める手段がなくなる。
さらにどういうわけか、魔剣士を戦争へ狩りだした国ほど魔獣に襲われる頻度が明らかに多くなったのである。
ゆえに、そのまま放置したことによって魔獣による被害が大きくなってしまい、結果として魔剣士を戦争に持ち出す国はなくなってしまった。短期決戦で終わらせようとした国も、長期的に戦略を練った国も、他の国の魔剣士を捕虜として扱い魔獣と戦わせようとした国も‥‥‥何故か、魔剣士を争いごとに呼べばどんどん魔獣を呼び寄せる結果となって、滅亡していった。
「ゆえに今は、魔剣士を戦争の道具として扱う国はないだろう。だが、なぜ魔剣士を戦争へ狩りだせば魔獣の襲撃頻度が上がったのかは、誰にも分らない。もしかすると、魔剣士がいることによって魔獣を抑える役目が自然と出来上がっており、いなくなるからこそそれを狙って襲ってきたとも言われていたり、あるいは神という存在が見ていて、魔剣を正しく扱わぬ者への天罰を落としたとも言われたりと様々な説が多く飛び交っているのだが‥‥‥謎は多いのだ」
魔剣士がいなくなれば魔獣が増え、滅亡していく国々‥‥‥魔剣と魔獣の関係に何かがあるのかと思いたくもなる。
「ところで、魔剣そのものであるゼナならその回答を知らないのか?」
ふと思って、後の方でびしっと立って待機をしていた彼女に問いかけた。
その言葉が聞こえたのか、同じように興味を持っていた人たちがこちらに目を向けたところで…‥‥
「‥‥‥残念ながら、私はその回答を持ち合わせていまセン。魔剣でも、全てを知るという訳ではないのデス」
「そうなのか?」
「ハイ。ご主人様の期待に沿えず申し訳ございませんが、私も知らない事があるのデス」
淡々と、冷静にそう返答するゼナ。
魔剣であっても知らないことは知らないようである。
「そっか。ちょっと残念だけど、無理もないか」
魔剣でメイドで色々詰まっているからこそ、持ちうる知識も当然多いのかと思う事もあったが、彼女と手万能ではないからこそ、解凍できないことがあっても仕方がない事だろう。
まぁ、謎は謎のままの方が考える楽しみはあるだろうし、あっけなく回答を知るのも味気なかったかもなぁ。
そう思いつつ、俺は授業へ意識を戻すのであった‥‥‥‥
「‥‥‥神が見ているの部分に関しては、色々と違うのですけれどネ」
‥‥‥ぽつりと小さく、彼女がつぶやいた言葉は聞こえなかったが。
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