私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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2章 吹く風既に、台風の目に

2-20 知る人ぞ知り、知らない人は知らない

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「レードン王国からの貴族襲撃を行った盗賊の捕縛代金、か‥‥‥。君、学外で一体何をどうすればこんなことに巻き込まれるんだい?」
「いや、本当に偶然見かけて、助けに行っただけですよ」

 デュランダル学園の生徒会室にて、俺は財務部に所属しているからこそ不審な金の支出を疑われないようにお金に関しての書類を製作する中、生徒会長に先日の一件を報告していた。

 まぁ、そもそも財務部になったのは計算に関する成績が良かったがあるけどな‥‥‥教会で弟や妹たちの世話をする中で、内部の支出を管理する必要があったから、否応なく身に付いたという理由もあったりする。教会の内部の財政状況は油断すると苦しくなるからなぁ。

‥‥‥なお、本格的な計算に関してはゼナの方が圧倒的に上なので、俺の計算間違えが無いように見てもらっていたりする。戦闘でいつか勝ちたいが、頭の出来で勝てる日は来ないかもしれん。

 とにもかくにも、その計算部分も見込まれて財務部になったからこそ、不審な金の支出が無いように今回の入手できるお金に関しての報告をしたのである。


「しかし、レードンだとすると‥‥‥ふむ、今年があの年だったのだろうか?」
「何かあるのでしょうか?」

 どうやら生徒会長には、何を目的としてその貴族が移動していたのか心当たりがあるようだ。

「ミルガンド帝国との、定期条約更新だよ」
「定期条約更新?」
「新入生の授業で、もうやっているけど‥‥‥そこは覚えていないのかな?」
「すいません、俺、歴史の授業はちょっと苦手で…‥‥ゼナは知らないか?」
「確か、王国と帝国内の友好条約更新行事ですネ。各国ごとに友好条約は結ばれていたりしますが、その二ヵ国間では特殊な条件として、数年に一度代表を作り、条約の更新を行うはずデス。何かしらの事件が原因と言われてますが、その真相は流石に機密扱いなのか知られてないようですけれどネ」

 授業内で言っていたことのようだけど‥‥‥んー、俺、歴史の授業は苦手なんだよね。

「では、分かりやすく説明いたしましょうカ。メイドたるもの、ご主人様が勉学で悩まれている部分があるならばその対応を出来るように、しっかり座学関連を学んでおきましたからネ」
「それなら頼むよ」

 苦手な科目も克服しておきたいが、今は取りあえず気になったところから解消したほうが良いだろう。

 そう思い、俺はゼナの解説を聞き始めるのであった…‥‥





―――――――――――――
「‥‥‥ふぅ、今回の条約の更新も無事に済みましたな」
「ああ、これでまた数年間、友好国同士だ」


 ゼナからの解説をフィーが効いている丁度その頃、ミルガンド帝国の貴族家の一室内にて、レードン王国とミルガンド帝国間の友好条約を更新し終え、彼らは安堵の息を吐いて落ち着き合っていた。

 ドルマリア王国を間に挟み位置する両国は、昔は争っていた国々である。

 だがしかし、ドルマリア王国の建国時に間に挟んでの戦争はお互いに面倒だというか、王国がどっちに付くのかという話もあり、友好条約を結んで戦争を終結させたのである。

 また、真実としてはとある事件もあったがゆえに、結ばざるを得なかったというのもあるらしいが‥‥‥その事実に関しては、知っている者が少数に限られるだろう。この場の二人は、知っている少ない者たちでもあるが、今の更新には関係ない話である。


 とは言え、人の疑いと言うのは中々晴れるものでもなく、不安もあって数年に一度こうやって条約を更新し直すことにして、お互いに今もなお敵意はないと示すようになった。

 そして今年はレードン王国からはガルバンゾー侯爵が、ミルガンド帝国からはチックピー伯爵が選ばれ、条約の更新に携わることになったのである。


「しかし、この条約が邪魔だと考える家もあるようでな…‥‥道中、盗賊共を仕掛けてきた輩がいたようだ。幸い、反撃に成功したので全員拷問にかけたが、出てきた家の名を聞くと、まだまだ血の気の多い家は多いようだと認識させられて呆れさせられたぞ」
「戦争と言うのは、勝者がどちらにあるわけでもなく、儲けようとたくらむ輩が引き起こしたいしろものでもあるからな。その企みをする馬鹿が出てくるのはどうしようもないからな」

 争いごとは様々な要因が原因で引き起こされるが、国同士の対立にまで発展した場合、軍備に食料、人員など必要なものが多い。

 だからこそ、それらを用意して人儲けを狙う家も存在して積極的に争いを終わらせないように動くこともあるのだが、条約締結以降はその旨味を無くしてしまった。

 だが、平和になったとしても当時の必要とされるが故の大儲けの機会の味を覚えている愚か者は多いもので、時たま再戦が行われるように願い、この更新を妨害することがあるのだ。

 更新自体は、両国の代表が数年に一度、お互いの国へ訪問して条約を締結し直すのだがその隙を狙って攻撃することで、お互いの責任を擦り付け合わせやすいこともあり、襲撃を仕掛ける手段もそれなりに使われているのだろう。

「そう言うのがあるからこそ、護衛の騎士たちにも裏切りが無いように十分に厳選してきたのだが‥‥‥今回は、結構危かったな。ドルマリア王国の王都周辺は、最近治安の向上を聞いて油断していたのもあるし、しかも、今回の雇われた盗賊団、賞金がかなり高かったなぁ。誰かが盗賊共とつながりを持ち、それを利用してやらせたのだろう」


 残念ながらすべての貴族が清廉潔白というわけもなく、盗賊や山賊に肩入れをすることで他の家の動きを妨害しようとする家もある。
 
 そして今回はその家の一つが更新の妨害を計ったようで、手元の奴らを仕向けて来たようであった。

「まぁ、賞金首の金額から、おそらくはそれなりの家‥‥‥これを元に、盗賊共からも拷問で情報が引き出せ、一気に潰せる算段が付いたのは良い事だがな」
「しかし、聞く限り危なかったようですが…‥‥それでもこうやって無事に更新が出来たところから察するに、どうにかなったようですな」
「そうだな。というのも実はある少年とメイド…‥‥いや、正しくは魔剣らしいが、その者たちの助けによってどうにかなったのだ」
「少年とメイド、魔剣?」
「簡単に言えば、今年度のドルマリア王国の新入生と、メイド服を着こなす動く魔剣が手助けをしてくれたいうことだ」
「‥‥‥すまない。出来れば詳しく話してほしい。聞くだけでは全然わからん」
「安心してほしい、こちらも言っておきながら全然わからん」

 混乱しないように、侯爵は伯爵に詳細な説明を行った。

 と言っても、自分は馬車の中に守られていたので、詳細に関しては騎士たちの方がより詳しいと思い、部屋の外で護衛をしていた騎士たちの中から代表を引っ張って、かくかくしかじかと説明をしてもらう。


「以上、今回の件に関して手助けをしてくれた者たちに関する話です。ご理解できたでしょうか?」
「‥‥‥うん、まぁ、6~8割ぐらいは」

 動くメイドの魔剣だとか、それが様々な形状に変化して自由自在に扱う少年だとか、正直眉唾物にしか思えなくもない。

 だが、実際にあった事で体験している者たちがいる以上、嘘偽りのない出来事だったのだろうということ程度ならば、伯爵は理解した。正直まだ、理解に苦しむ部分も多いが。


「それにしても、ドルマリア王国のか…‥‥今年度の魔剣士で中々強そうなものを引き当てたなぁ」
「我が国の方では、今年はまだまだ成長を期待するほどなんですが‥‥‥そちらはどうでしょうか?」
「ああ、こっちも似たようなものだ。魔剣士の顕現数及びその実力は年ごとに違うとはいえ、今年は例年よりやや下と言うべきだろう」

 魔獣相手に対して必要な魔剣士だが、出来れば強さが欲しい所。

 けれども個人差も非常に大きく、毎年確実に手に入るという訳でもないからこそ、強い魔剣士を得たとされる国をうらやむのはどこでも同じではある。

「ただ、気のせいなら良いのですが…‥‥あの少年の顔立ちが、ちょっとあのお方に似ている気がするのです」
「あのお方?実際にこちらは目で見ていないが、誰にだ?」
「一部の貴族家しか知らない、あの事件・・・・で失われてしまったお方にです」
「‥‥‥あのお方か。失われた、非常に惜しまれる方。何故、当時そうなってしまったのか、今も悔やまれる事件の‥‥‥」

 その言葉に対して、お互いに思うところがあり、重い雰囲気となる。

 情報制限や国からの様々な工作によってその話が広まることはなく、一部は秘密裏に処理をされて真相を知る者が限られている、とある事件。

 下手をすれば国の威信を大きく傷つけかねないというのもあるが‥‥‥それでも自分達が、いや、周囲の誰かが気が付き、行動に移すことさえできれば防げたものだろう。

「‥‥‥だが、あのお方に子がいたか?いや、そもそも見つかってもないから可能性もあるのだが‥‥‥国が放置するのだろうか?」
「そのあたりは分からないだろう。詳しく知ろうにも、誰かが知っていた場合、妨害される可能性もあるからな」
「失われた、帝国の青薔薇姫様…‥‥もしも情報をつかめていたのであれば、とうに誰かが動いていてもおかしくはないはずだしな…‥‥」


 色々と考えさせられることもあるが、国が動いている様子もない事から、おそらくは何の関係もないと彼らは思いたい。

 けれども、やはり気になる事でもあり、迂闊に突っ込めば万が一の場合、面倒なことになりかねない可能性もあるため、話題に出たのは良いのだがそれをどうすればいいのかと悩まされるのであった…‥‥

「そもそも、あのお方が子を成していれば、もっとヤヴァイことになっていてもおかしくはないだろう?」
「ああ、そうかもなぁ。あのお方は本当に、色々と突拍子が無いことをやらかしたというか、下手すると両国間で止めるために協力せざるを得ないからこそ、条約の締結が急がれたというか‥‥‥」
「結果としてはあの事件のせいで、失った代償に得た条約でもありますからな‥‥‥でも、失ってなかった場合、我々の胃が死にませんか?」
「‥‥‥何も言えませんな。ぶっ飛び過ぎるのも、考えものというべきか‥‥‥」


‥‥‥年齢ゆえに毛根が少ない彼らだが、下手するとその事件が無ければ今頃不毛の大地になっていたのかもしれない。
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