私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
47 / 204
2章 吹く風既に、台風の目に

2-36 説明されても、飲み込みにくく

しおりを挟む
‥‥‥人と言うのは、自分の意識が他に向けすぎている時ほど、覚えていないことが多い。
 
 命にかかわるような、本気で不味い状況。

 慌て過ぎて、急いでどうにかしなければと思う状況。

 そして、意識が落ちてから再び浮上するまでの途切れた間‥‥‥


「だから、何があったのかが分からないから、教えてもらったけど…‥‥いや、本当に何がどうなってああなったの?」
「リスク発動して、ご主人様から『人間』が欠落した結果、ああなっただけなのデス」

 室内を暗くして、カタカタと壁に映像を映し出すゼナ。

 彼女の目から直接光線が出て映し出される光景は中々シュールなものを感じさせるが、そんなものよりも映像の中身の方が問題である。


 映し出されていたのは、巨大な大剣を手にした大きなドラゴン。角を生やし、鋭い目を持ち、その身に鎧をまとわせてあの大きな魔獣と対峙して戦闘を行っている光景。

 攻撃を受けつつもびくともせず、相手を消し飛ばすさまはすさまじすぎるというか、こんなことが起きていた事実を受け入れさせてくれないだろう。

「というか、どうやって撮った?あの大剣がゼナなら、こんな三人称視点を撮影するのは無理だと思うんだが」
「実はこれ、他の生徒たちや教師陣が持っていた魔剣たちから受け取った情報デス。所々視点が切り替わるので、見やすいように編集をしていますが、起きた事は本当なのデス」


 さらっと魔剣同士の映像撮影手段を口にしたゼナ。つまりやりようによってはもっと多くの魔剣を介して映像が撮れるらしい。

 そんな事実も驚愕させられるが、映し出されているドラゴンが何なのかと問えば‥‥‥どうやらあれ、俺らしい。

「‥‥‥リスクって、人外どころかドラゴンになることかよ」
「いえ、違いマス。欠落させるのですが、欠落させたのがどうも概念的な意味合いでの『人間』だったようで、それが抜けた結果、ドラゴンになったのデス」
「本当にどういうことだ?」


 話を詳しく聞くと、ゼナの全力を解放するリスクは本来欠落‥‥‥『人間』という概念そのものを無くしてしまう事によって、所有者の持ちうる力全てを大幅に増幅し、人間では耐えられないような力を与えてくれるモノらしい。

 とは言え、そんな大事なものを失えば、そもそもこの世界に存在すること自体が物凄く怪しくなるそうで、下手をすれば幽霊のようになって逝ってしまう可能性があるらしい。
 その副次的なリスクを避けるために、全身を鎧で覆って中身が無くならないようにするはずだったそうだが‥‥‥ここで誤算が生じたようだ。

「どういう訳かご主人様の中身に人間以外のものが…‥‥あの、ドラゴンの因子が眠っていたようで、人間から解き放たれた結果覚醒してしまったようなのデス」

 長い間眠っていたような、封じられていたようなその力が人間の概念の存在が欠落したことによって呼び起こされ、表に出て来た。

 その因子がゼナの力によってさらに増幅されてしまい、肉体の代わりの器の鎧として顕現することはなく、出て来たドラゴンの肉体を構築し、その身に纏う事になったことであの姿になったようである。


「一応、制限時間をかけていたことで解放され、増幅効果が切れたことで崩壊しまシタ。肉体も再構築されたことでボロボロだった部分も修復され、完治されたのですが…‥‥」
「リスクはその時限りにできず、こうやってしっかり代償も払うことになった、か‥‥‥‥その代償がドラゴンの角や羽なのはまだ良いけど、凄い邪魔な代償だな…‥‥」


 今いるのは、王都内の病院に用意された特別室。

 こんなところに何故搬送されたのかと言えば、ドラゴンになったことによる影響の検査やこの身に起きてしまったことを調べるためのようで、起きた騒動の拡散をむやみに広げないように隔離する意味合いもあるらしい。

 無理もないだろう。物語などに出る様なドラゴンになる人間なんて普通はいるはずがない。

 それなのに現れてしまったという事で、世間に話が広がりにくいようにここへ運ばれたようだ。


 そしてついでに言えば、ドラゴン化とも言える現象の代償と言うべきか、肉体にその特徴が残っているようだ。服の下で見えないが鱗があったり、頭の方にはドラゴンの時よりもサイズダウンはしているが立派な角や、背中には竜の翼が生えている。

 しかも翼の方は動かせるようだが、まったく飛ぶことができない無用の長物と化しており、ベッドで横になる際に物凄く邪魔になるだけである。

「映像だと、暴風を起こしていたりするのに、コレだと何もできないってただのいらないものじゃん‥‥‥」
「調べてみたところ、広げることはできても操り切れてないだけのようデス。訓練をすれば、おそらく飛行可能になりますが…‥‥それだと、ソードウイングモードが無駄になるので、複雑な想いを抱かされマス」

 頑張れば飛べるらしいが、結局背中を下にして寝ることは現状できない様子。

 それにこんな中途半端なドラゴン化‥‥‥ちょっと語呂が悪いので竜化と呼ぶが、この状態だと人前に出にくいかもしれない。

 
 一時の危機を逃れるためにリスクを背負ったが、中途半端すぎる代償に嘆くべきかどうするべきなのか、いまいちわからない感情を背負わされる羽目になるのであった。


「というか、何でドラゴンの因子とやらがあるんだよ。それじゃまるで、親にドラゴンが…‥‥いや、そもそも人間とドラゴンの間で子供を成せるのか?」
「…‥‥無理、という可能性はないんだよね」
「生徒会長?」

 っと、少々気になったところに気が付いてつぶやいていると、生徒会長が室内に入って来た。

 その後ろにはラドールや…‥‥えっと‥‥‥


「…‥‥スイマセン、その後ろの人って、誰ですか?」
「ぞなぞな、よくぞ聞いてくれたぞな!!我輩こそ、デュランダル学園生徒会の研究部部長のフォンテーヌぞなぁ!!まぁ、本来なら助手のマリアンヌがいるのだが、今回はちょっと人数が少ないほうが良いという事でいないぞなね」

 シルクハットをかぶり、ぐるぐるメガネをかけ、自信満々に白衣をひらめかせて告げるのは、前々からちょっと見ていた、ゼナに対しての視線を向けていた人である。

 というか、案の定研究部の人だったか‥‥‥ねじが100本は抜けているんじゃないかと言うような人がいるらしいので、あまり近づきたくなかった。

「人からドラゴンに転じさせる、メイドの魔剣!!以前から色々と気になっていたぞなが、今回ようやく多大な請願状が実を結び、説明解説分析を行うための講師として、呼ばれたのだぞなぁぁ!!」

 ハイテンションのようで、そう答える研究部長。

 正直言って、今までのちょっと嘆く空気が吹っ飛ばされたが、混沌を混ぜ込むために呼ばれた人にしか思ない。

「というか、何でラドールも…‥」
「あはは、いやまぁちょっと色々というか、事情があってね。本当はもう一人呼びたいところだったけれども、彼は彼で動いたようだから来れなかったんだよね」

 苦笑する彼だが、少しばかり真剣そうな表情も浮かべていた。

 何があるのかは分からないが、ふざけた案件とかではなさそうだ。

「さてと、一応状況が混沌と化していく前に、しっかりと話をしよう。フィー、この件は特に、君に関して非常に重要なことがあるからな」

 ゼナの手によっていつの間にか椅子が用意され、各自着席する。

「俺に関してですか?ゼナから見せられたドラゴンになる事でしょうカ?」
「それもあるが、もう一つある。…‥‥フィー、君の生まれに関して、父親の方はまず確実に何かのドラゴンなのはあの光景を見て分かるが、母親に関してはっきりわかったことがある」
「母に関して‥‥‥ですか」

 ドラゴンになった話も重要そうだが、それ以上にもっと大切な話だというような雰囲気に、俺は何事かと疑問に思う。

 というか、母親から切り出した時点で父親がドラゴンだというのは確定っぽいのだが、この雰囲気だと母親の方も何かあるのだろうか?

「ああ。色々な調査も積み重ね、証拠も集まったが‥‥‥間違いないだろう。君の母親は、ミルガンド帝国内で青薔薇姫の名を持ち、生ける厄災天災大災害、コホン、当時をする人たちからは今もなお記憶に残るという人物だ」
「さらっと何か、物騒なことを言いかけてないですかね?」
「仕方がないだろう。調べたら知っている人たちが全員で逃げ出そうとしたからな…‥‥」

 告げられた言葉に驚きつつも、言いかけていた言葉にツッコミを入れてしまった。

 しかもかなり遠い目をしているし、話を調べるために何か苦労をしていたのかもしれない。

…‥‥それに青薔薇姫と言えば、前にゼナから話を聞いていた人ではあるが、その人が俺の母親だというのはどういうことなのだろうか?


 色々と疑問に抱きつつも、内容を聞き逃さないように話に集中するのであった‥‥‥
しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...