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5章 復讐は我にあり
5-12 鈍感さは、治らない
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「‥‥‥今日も負けたかぁ」
「危ない所でしたが、ご主人様の方が力を使いまくってましたからネ。もう少し配分を考えて動いたほうが良いですヨ」
「考えて、敗北しているんだよ」
はぁっと俺は溜息を吐きつつ、ゼナに言葉を返す。
今日もいつもの模擬戦を行ったが、良いところまで行ってこちらの体力切れになってしまったのだ。
‥‥‥完全竜化、ドラゴンの姿になるのは、実は結構エネルギーを消耗する。
ほんの少しの間ならばまだしも、長時間全力で戦うような事をすると体力が一気に削られていき、姿を保てなくなってしまうのである。
まぁ、一応何度も竜化しているせいなのか体力も竜化時間も向上しており、そうやすやすと切れることはないのだが、ゼナ相手だと全力を出してしまい、結果として解けて敗北してしまう。
もう少し、力の使い方がうまくなりたいが、まだまだ俺自身の研鑽が足りないようだ。
「むぅ、もうちょっとドラゴンの力を使いこなせればいいが、先は長そうだ‥‥‥」
「ご主人様は純正のドラゴンという訳ではなく、人間とのハーフですからネ。自由自在にできるのは、まだかかりそうデス」
時間はかかるが、可能性は0ではない。
ゼナが否定せずに時間がかかるだけという言葉を出しているし、頑張って研鑽を積めば使いこなしきれる日がいつか来るのだろう。
それがどれだけかかるかは分からないが‥‥‥諦めなければ叶うだろう。ゼナに勝利することに関しても‥‥‥いや、そっちはどうかな?疑問に思いたくなるが、頭から不安を振り払って余計な事を考えないようにしていた、その時だった。
「‥‥‥あの、少し時間をもらって良いかしら?」
「ん?」
ふと、何やら後方から声が聞こえたので振り返ってみれば、そこに人が立っていた。
いつの間にと言いたいが、単純に考えていたせいで接近に気が付けなかっただけだろう。というか、この目の前にいる人は‥‥‥
「確か、先日助けた帝国の人でしたっけ?ああ、すみません、こちらの方で情報を先に聞いていました」
「いえ、分かっているので良いですわ。そのあたりの事情も色々というか‥‥話をしましょうか」
(…よし、さりげなく話しかけられましたわね。普通にお礼を言いたいだけでしたのに、何かとずるずると伸びましたけれども、ようやくですわ)
心の中でそうつぶやきつつ、ルルシア皇女は今の状況に安堵の息を吐いていた。
色々と事情があって助けてもらった身ではあるので、その事に関して感謝を述べておきたい。
恩を受けたのであればしっかりと返すようにするという信条で動いていたのだが、ここ数日は全然その機会を得られず、今ようやくなんとか落ち着いたところだったので、これ幸いと思って話しかけたのだ。
まぁ、正直なところ、戦いが凄まじすぎて中々口を挟めなかったというか、いつの間にか観戦側に普通に回っており、村人たちと一緒に賭けに興じ賭ける程楽しんでしまったというのもあるだろう。
とにもかくにも、ようやく話しかけることが出来たので、まずは軽く素性を話しておき、お礼を述べておく。なお、身分に未分に関しては、本来であれば隠しておくべきなのかもしれないが、帝国で聞いていた噂や、この村での事情を話していた際に既に色々と調べられていた点を考えて、隠さずに述べておいた。
「ああ、帝国の姫という立場ですけれども、ここにいる間は気にせずに普通の喋り方で良いですわ。堅苦しいのは何かと苦手ですもの」
「その割に、話し方が上品では?」
「身に染みついて話し方を変えにくいのですわ…‥‥そちらのメイドの方も同じ様なものではないですの?」
「まぁ、気持ちは分かりますネ。とはいえ、私の方は元々魔剣でメイドという立場ですので、特に気にしたことも無いのデス。親戚には物凄く乱暴な言葉遣いをつかえる人もいるようですが、どうやったらできるんかと考えたりもしマス」
「‥‥‥魔剣に、親戚っていますの?」
「いるらしい。ゼナの場合、魔剣だけどどうも姉妹とかがいるようで、そのあたりに深入りしない方が良いとは思うぞ」
‥‥‥フィーという少年の言葉に、どことなく言いようのない重みを感じてしまう。
帝国の方で彼に関しての噂は色々と聞くが、この今の感じからどう考えても兄と同じ苦労人タイプの人のような気がしてならない。
「苦労、していますわね‥‥‥」
「ああ、しているんだ‥‥‥」
同情しつつ、ちょっとばかり場の硬かったような雰囲気がほぐれたような気がしたのであった。
それはともかく、こうして軽く話し合っているうちに、自然と魔剣士としての立場ゆえか、色々と気が合っていた。
「そこでわたくしはその猪の魔獣を相手に、相手の突進を利用してぶった切ってやりましたわね」
「なるほど、そんな手段が‥‥‥そう言えば、熊の魔獣でも似たような手を使ったな。相手の力を利用して投げ飛ばして、空中で身動きが取れない隙にズバッと切り裂いたことはあったぞ」
「おお、その手段もありですわね‥‥‥魔獣を倒すために、こちらが無駄に力を使うことなく、相手の力を利用しての戦法も人によって似つつも違うのがあって面白いですわね」
「確かにな。とは言え、相手の力を利用できないようなタイプは面倒なのも多いんだよなぁ。例えばなぜか空を泳ぐ魚のような魔獣とかだと、水鉄砲を撃ってきてうっとおしかったよ」
「分かりますわねぇ。空に対抗する攻撃手段があっても、なんかこう、相手の方が上回ってやってきたりするとむかつきますものねぇ」
「まったくその通りだよ」
ははははっと笑いあいつつ、ふと気が付けばそこそこ時間が経過していた。
魔剣士で無い方の兄様とはこの話はできないし、魔剣士な方とはそこまで話すことも無い。
それなのに自然と、こうやって話せるのは何と気が楽なことだろうか。
「でもいいですわねぇ、ドラゴンの翼‥‥‥それに聞いた話ですと、そのメイド魔剣の力で飛ぶことも可能なのですわよね?大空を自由自在にゆくのは、面白そうですわねぇ」
「ああ、面白いよ。でも、ただ楽しむだけじゃなくて、魔剣士としての自身を高めるために、使えるものなら使いまくっているともいえるかな。‥‥‥何しろ魔獣は、いや、そういうことを言う人は案外多いかな」
「‥‥‥」
一瞬、表情が変わったのを見たが、何を言わんとしたのかわたくしは理解した。
いえ、帝国の方で調べていた部分もあったので、ある程度の彼の事情も知っているのですが‥‥‥生まれた時の村が、魔獣の手によって襲われて奪われていますものね。
同じような出自になる魔剣士もそれなりに存在しているが、同じような想いを抱く人は多いだろう。
一応、彼の母親が青薔薇姫らしいが、そんな方が魔獣ごときに後れを取るように思わないのだが‥‥‥そこは色々と事情があったのかもしれない。青薔薇姫に関しての話は誇張かと思いたい部分もあるが、それはむしろ思いっきり減らされてのものらしいし、本当に重い話もあるのだろう。
「魔獣を殲滅したい‥‥‥そう告げたい気持ちは、言わなくても分かりますわ」
「‥‥‥そうか」
「ええ、そのような方はそれなりにいますし、奪われるというのはどういうことなのか、わたくしは真の意味で理解していないかもしれないけれども、それでもその心の痛みと言うのは深く理解しようとしてますの。何しろ、そのような目に遭う方々には帝国の民もいて、わたくしはその民の上に立つ皇女という立場…‥だからこそ、民の痛みを知らずして上に立つ価値はないので、しっかり務めていますわ」
王族たるもの、皇族たるもの、為政者である者、上に立つ者、あまたの人々のために働くのであれば、その人たちを理解し、己の立場をしっかりと利用して慈しみ、守らなければならない。
そう学ぶことは多く、そしてその教えに対して真剣に考え、わたくしは民のために動いている。
その動きの中で、心の話も聞くこともあり‥‥‥だからこそ、どういう気持ちなのか分かって来ることもある。
「ふふふ、でも、だからこそ余計に頑張れますもの。それに魔獣が生きとし生けるものたちから、命を、幸せを奪う気であれば、わたくしたち魔剣を持つ魔剣士がしっかりと、全部全滅させればいいのですわ」
そう告げつつ、わたくしは手に持った魔剣リガールドを掲げる。
「そうだな‥‥‥うん、何も考えずに、本当に害になる魔獣たちをただ殲滅するだけで良い。それだけの話だ」
「そうですネ。そしてその殲滅するための力として、私はしっかりとご主人様の魔剣として働きマス」
フィーの言葉に対して、ゼナという魔剣のメイドがそう言葉にする。
互いに持つ魔剣は違えども、最終的なその目標は一緒のようだ。
「なんというか、魔剣士だからこそその目的が同じなのはちょっと面白いですわね。あなたはドラゴンと人の間に立つのに、目線が同じですわ」
「そちらこそ、皇女という立場なのに、他の魔剣士と目が同じだよなぁ‥‥‥何と言うか、生徒会長とも気が合いそうな気がするよ」
「あら、ドルマリア王国の爆撃姫ですわよね?国同士の付き合いで何度か手を合わせたことがありますし、知ってますわ」
「‥‥‥意外だ、いや、そうでもないのか?世間って、狭いな」
「そうですわね」
お互いに同じ知り合いがいたのも気が付き、ちょっと面白くなって笑いあう。
気が付けば結構話し込んでいたようで、夕暮時に近づいていたようだ。
「それではそろそろ、わたくしは臣下のものたちの下へ戻っておきますわ。回復次第、帝国へ帰還しますけれども…‥この出会いに感謝いたしますわ」
「ああ、こちらこそ中々面白い話が出来て楽しかったよ。ありがとうございます、皇女様」
「もう、かたく言わなくても良いですわ。わたくしはルルシア、ここでは姫という立場でもなく、ただの魔剣士・・・・・あなたとも同じですし、気楽に言わせてもらいますわ。完全に回復して、機会があれば手合わせさせてもらいますわ、フィー」
「その時がくれば、お相手しよう。ルルシア」
くすりと笑みを浮かべつつ、今日の話はここで切り上げ、わたくしは臣下がいるところへ足を向ける。
お礼を言うだけだったはずだが、何となく充実した時間を過ごせたように思うのであった…
「…‥‥ご主人様って、もしかして天然ですカ?」
「なんだよゼナ、いきなり」
「いえ、何でもないデス」
「危ない所でしたが、ご主人様の方が力を使いまくってましたからネ。もう少し配分を考えて動いたほうが良いですヨ」
「考えて、敗北しているんだよ」
はぁっと俺は溜息を吐きつつ、ゼナに言葉を返す。
今日もいつもの模擬戦を行ったが、良いところまで行ってこちらの体力切れになってしまったのだ。
‥‥‥完全竜化、ドラゴンの姿になるのは、実は結構エネルギーを消耗する。
ほんの少しの間ならばまだしも、長時間全力で戦うような事をすると体力が一気に削られていき、姿を保てなくなってしまうのである。
まぁ、一応何度も竜化しているせいなのか体力も竜化時間も向上しており、そうやすやすと切れることはないのだが、ゼナ相手だと全力を出してしまい、結果として解けて敗北してしまう。
もう少し、力の使い方がうまくなりたいが、まだまだ俺自身の研鑽が足りないようだ。
「むぅ、もうちょっとドラゴンの力を使いこなせればいいが、先は長そうだ‥‥‥」
「ご主人様は純正のドラゴンという訳ではなく、人間とのハーフですからネ。自由自在にできるのは、まだかかりそうデス」
時間はかかるが、可能性は0ではない。
ゼナが否定せずに時間がかかるだけという言葉を出しているし、頑張って研鑽を積めば使いこなしきれる日がいつか来るのだろう。
それがどれだけかかるかは分からないが‥‥‥諦めなければ叶うだろう。ゼナに勝利することに関しても‥‥‥いや、そっちはどうかな?疑問に思いたくなるが、頭から不安を振り払って余計な事を考えないようにしていた、その時だった。
「‥‥‥あの、少し時間をもらって良いかしら?」
「ん?」
ふと、何やら後方から声が聞こえたので振り返ってみれば、そこに人が立っていた。
いつの間にと言いたいが、単純に考えていたせいで接近に気が付けなかっただけだろう。というか、この目の前にいる人は‥‥‥
「確か、先日助けた帝国の人でしたっけ?ああ、すみません、こちらの方で情報を先に聞いていました」
「いえ、分かっているので良いですわ。そのあたりの事情も色々というか‥‥話をしましょうか」
(…よし、さりげなく話しかけられましたわね。普通にお礼を言いたいだけでしたのに、何かとずるずると伸びましたけれども、ようやくですわ)
心の中でそうつぶやきつつ、ルルシア皇女は今の状況に安堵の息を吐いていた。
色々と事情があって助けてもらった身ではあるので、その事に関して感謝を述べておきたい。
恩を受けたのであればしっかりと返すようにするという信条で動いていたのだが、ここ数日は全然その機会を得られず、今ようやくなんとか落ち着いたところだったので、これ幸いと思って話しかけたのだ。
まぁ、正直なところ、戦いが凄まじすぎて中々口を挟めなかったというか、いつの間にか観戦側に普通に回っており、村人たちと一緒に賭けに興じ賭ける程楽しんでしまったというのもあるだろう。
とにもかくにも、ようやく話しかけることが出来たので、まずは軽く素性を話しておき、お礼を述べておく。なお、身分に未分に関しては、本来であれば隠しておくべきなのかもしれないが、帝国で聞いていた噂や、この村での事情を話していた際に既に色々と調べられていた点を考えて、隠さずに述べておいた。
「ああ、帝国の姫という立場ですけれども、ここにいる間は気にせずに普通の喋り方で良いですわ。堅苦しいのは何かと苦手ですもの」
「その割に、話し方が上品では?」
「身に染みついて話し方を変えにくいのですわ…‥‥そちらのメイドの方も同じ様なものではないですの?」
「まぁ、気持ちは分かりますネ。とはいえ、私の方は元々魔剣でメイドという立場ですので、特に気にしたことも無いのデス。親戚には物凄く乱暴な言葉遣いをつかえる人もいるようですが、どうやったらできるんかと考えたりもしマス」
「‥‥‥魔剣に、親戚っていますの?」
「いるらしい。ゼナの場合、魔剣だけどどうも姉妹とかがいるようで、そのあたりに深入りしない方が良いとは思うぞ」
‥‥‥フィーという少年の言葉に、どことなく言いようのない重みを感じてしまう。
帝国の方で彼に関しての噂は色々と聞くが、この今の感じからどう考えても兄と同じ苦労人タイプの人のような気がしてならない。
「苦労、していますわね‥‥‥」
「ああ、しているんだ‥‥‥」
同情しつつ、ちょっとばかり場の硬かったような雰囲気がほぐれたような気がしたのであった。
それはともかく、こうして軽く話し合っているうちに、自然と魔剣士としての立場ゆえか、色々と気が合っていた。
「そこでわたくしはその猪の魔獣を相手に、相手の突進を利用してぶった切ってやりましたわね」
「なるほど、そんな手段が‥‥‥そう言えば、熊の魔獣でも似たような手を使ったな。相手の力を利用して投げ飛ばして、空中で身動きが取れない隙にズバッと切り裂いたことはあったぞ」
「おお、その手段もありですわね‥‥‥魔獣を倒すために、こちらが無駄に力を使うことなく、相手の力を利用しての戦法も人によって似つつも違うのがあって面白いですわね」
「確かにな。とは言え、相手の力を利用できないようなタイプは面倒なのも多いんだよなぁ。例えばなぜか空を泳ぐ魚のような魔獣とかだと、水鉄砲を撃ってきてうっとおしかったよ」
「分かりますわねぇ。空に対抗する攻撃手段があっても、なんかこう、相手の方が上回ってやってきたりするとむかつきますものねぇ」
「まったくその通りだよ」
ははははっと笑いあいつつ、ふと気が付けばそこそこ時間が経過していた。
魔剣士で無い方の兄様とはこの話はできないし、魔剣士な方とはそこまで話すことも無い。
それなのに自然と、こうやって話せるのは何と気が楽なことだろうか。
「でもいいですわねぇ、ドラゴンの翼‥‥‥それに聞いた話ですと、そのメイド魔剣の力で飛ぶことも可能なのですわよね?大空を自由自在にゆくのは、面白そうですわねぇ」
「ああ、面白いよ。でも、ただ楽しむだけじゃなくて、魔剣士としての自身を高めるために、使えるものなら使いまくっているともいえるかな。‥‥‥何しろ魔獣は、いや、そういうことを言う人は案外多いかな」
「‥‥‥」
一瞬、表情が変わったのを見たが、何を言わんとしたのかわたくしは理解した。
いえ、帝国の方で調べていた部分もあったので、ある程度の彼の事情も知っているのですが‥‥‥生まれた時の村が、魔獣の手によって襲われて奪われていますものね。
同じような出自になる魔剣士もそれなりに存在しているが、同じような想いを抱く人は多いだろう。
一応、彼の母親が青薔薇姫らしいが、そんな方が魔獣ごときに後れを取るように思わないのだが‥‥‥そこは色々と事情があったのかもしれない。青薔薇姫に関しての話は誇張かと思いたい部分もあるが、それはむしろ思いっきり減らされてのものらしいし、本当に重い話もあるのだろう。
「魔獣を殲滅したい‥‥‥そう告げたい気持ちは、言わなくても分かりますわ」
「‥‥‥そうか」
「ええ、そのような方はそれなりにいますし、奪われるというのはどういうことなのか、わたくしは真の意味で理解していないかもしれないけれども、それでもその心の痛みと言うのは深く理解しようとしてますの。何しろ、そのような目に遭う方々には帝国の民もいて、わたくしはその民の上に立つ皇女という立場…‥だからこそ、民の痛みを知らずして上に立つ価値はないので、しっかり務めていますわ」
王族たるもの、皇族たるもの、為政者である者、上に立つ者、あまたの人々のために働くのであれば、その人たちを理解し、己の立場をしっかりと利用して慈しみ、守らなければならない。
そう学ぶことは多く、そしてその教えに対して真剣に考え、わたくしは民のために動いている。
その動きの中で、心の話も聞くこともあり‥‥‥だからこそ、どういう気持ちなのか分かって来ることもある。
「ふふふ、でも、だからこそ余計に頑張れますもの。それに魔獣が生きとし生けるものたちから、命を、幸せを奪う気であれば、わたくしたち魔剣を持つ魔剣士がしっかりと、全部全滅させればいいのですわ」
そう告げつつ、わたくしは手に持った魔剣リガールドを掲げる。
「そうだな‥‥‥うん、何も考えずに、本当に害になる魔獣たちをただ殲滅するだけで良い。それだけの話だ」
「そうですネ。そしてその殲滅するための力として、私はしっかりとご主人様の魔剣として働きマス」
フィーの言葉に対して、ゼナという魔剣のメイドがそう言葉にする。
互いに持つ魔剣は違えども、最終的なその目標は一緒のようだ。
「なんというか、魔剣士だからこそその目的が同じなのはちょっと面白いですわね。あなたはドラゴンと人の間に立つのに、目線が同じですわ」
「そちらこそ、皇女という立場なのに、他の魔剣士と目が同じだよなぁ‥‥‥何と言うか、生徒会長とも気が合いそうな気がするよ」
「あら、ドルマリア王国の爆撃姫ですわよね?国同士の付き合いで何度か手を合わせたことがありますし、知ってますわ」
「‥‥‥意外だ、いや、そうでもないのか?世間って、狭いな」
「そうですわね」
お互いに同じ知り合いがいたのも気が付き、ちょっと面白くなって笑いあう。
気が付けば結構話し込んでいたようで、夕暮時に近づいていたようだ。
「それではそろそろ、わたくしは臣下のものたちの下へ戻っておきますわ。回復次第、帝国へ帰還しますけれども…‥この出会いに感謝いたしますわ」
「ああ、こちらこそ中々面白い話が出来て楽しかったよ。ありがとうございます、皇女様」
「もう、かたく言わなくても良いですわ。わたくしはルルシア、ここでは姫という立場でもなく、ただの魔剣士・・・・・あなたとも同じですし、気楽に言わせてもらいますわ。完全に回復して、機会があれば手合わせさせてもらいますわ、フィー」
「その時がくれば、お相手しよう。ルルシア」
くすりと笑みを浮かべつつ、今日の話はここで切り上げ、わたくしは臣下がいるところへ足を向ける。
お礼を言うだけだったはずだが、何となく充実した時間を過ごせたように思うのであった…
「…‥‥ご主人様って、もしかして天然ですカ?」
「なんだよゼナ、いきなり」
「いえ、何でもないデス」
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