私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-28 説明するには、まず形から

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‥‥‥ミルガンド帝国の帝都を襲った巨大な魔獣ギガファットマン、およびその体を奪い頭部として活動した大罪人と呼ばれた人物の討伐が終わり、周囲は事後処理に追われていた。

 何しろ、帝国の帝都を堂々と真正面から襲ってきたという訳で、監視体制の再確認や帝都を囲う金属の壁の修復、改良の必要も出てきており、あちこちから人が駆り出されたのである。

 なお、ギガファットマンの身体を奪って活動していた大罪人に関しては、あの一撃で葬り去ったかと思われていたが、どうも魔獣たちを吸収し肥大化していたせいか本体が微妙に助かっており、現在収監されている。
 今後情報を吐き出させるために厳しい拷問が予定されており、その後には処刑が待っているらしいが‥‥‥これまで監視付きとは言えそれでも生き延びてこれた道を、自ら捨ててしまったのだから自業自得でもある。

「そしてついでに、あの邪神だとかそういう類に関して教えてもらいたいが‥‥‥ここでか?」
「ハイ。道具がそろっているので説明しやすいのデス」

 あちこちで歯車が回っており、壁には分からない計測器があちこち並べられており、こぽこぽと怪しい液体を浮かべる容器が置かれている一室。

 一見、どこの怪しい研究室だとツッコミをいれたくなるが‥‥‥驚くべきことに、ここはゼナが遂に完成させた、彼女の寮での自室なのだ。

…‥‥女の子の部屋に招かれるのはちょっと気恥しかったけど、この現実を見ると何も言えなくなる。いやいや、ゼナが特殊なだけで、他は普通だと思いたい。


「一応、説明する内容に関しては他の人に聞かれると面倒事になりかねないので‥‥‥防音も施されているここで、ご主人様だけに説明いたしマス。ご主人様が望むのであれば他の方々にも説明いたしますが、おすすめはいたしまセン」
「ああ、面倒事が来るならば別に良い。だが、説明を聞かないという手もあるが、あの邪神などに関しては知っておかないといけない気がするからな。説明を頼む」
「了解しまシタ」

 そう答えると、ゼナは胸元から何やらボタンが幾つも付いた板を取り出し、ぽちっと押す。

 するとガゴンっと音がしたかと思えば、彼女のすぐ後ろに教室にある黒板と同じものが出現した。

「絵も使って分かりやすく説明いたしましょウ。気分を出すために、姉妹機からいただいた教師用の伊達メガネを装着しましてっと‥‥‥それでは、始めさせていただきマス」
「伊達メガネって、必要ある?」
「気分的なものデス。ああ、でも伊達と言うのは正しくないですネ。これ、横のスイッチを押すと、ビーム出ますからネ」




―――ツッコミどころが追加されたのはさておき、説明が始まった。

 まず、あのメデゥイアルを喰らってみせたあのフードの人物は、ゼナ曰く邪神の類‥‥‥文字通り邪悪な類に属する神の一柱であり、本来であればこの世界に降り立つことがない存在。

 何かしらの儀式で呼び出されることもあるかもしれないが、それでも多くの生贄が必要になるなど呼ばれる前兆ははっきりしており、突然出現なんてことはないのだとか。

 だが、それでもあの場に現れたという事は…‥‥ずっと昔、何者かが呼びだしたままここに居座られている可能性があるという。

「邪神、特にあのフードの者はゲテモノのような魂を食べるのが好きなものとして、認知されていますからネ。もしかすると、大昔に魔獣に関して気が付いたことがある人が、対抗策と呼んだまま放置してしまったのではないかと推測されマス」
「どういうことだ?その話しぶりだと、魔獣自体がまるでそのゲテモノの魂のような言い方だが」
「‥‥‥近いですが、異なりマス。魔獣の生み出す根源がゲテモノのような魂だというのが適切デス」

 ゼナの説明曰く、そもそも魂とはこの世界ではありとあらゆる命ある生物が宿しているものであり、本来であれば触れることも見ることも、常人であればかなわない代物。

 もちろん、例外も当然あるそうだが大抵の場合無色透明無味無臭なものでもあるそうだ。

 だがしかし、ゲテモノのような魂‥‥‥穢れているとか、黒すぎるとか、とにかくひどい状態のものはそうではない。

 倫理を外れる様な、人としてやってはいけないような、様々な酷い事を繰り返してしまうと魂自体が腐っていき、酷い状態に変化してしまうそうだ。

「そうなった場合、死後に問題が発生しマス。通常の魂であれば、この世界だときちんと新しい生命になるために、一度この世界の外に出て綺麗に洗浄や選別作業が行われ、新しい命として生まれ変わったり、力ある魂ならばぶちっと千切れて、新しい魂を生み出したりするのデス」
「じゃあ、酷い魂だと?」
「その作業ができまセン。汚くなりすぎて通常の方法で扱うことができないのデス」

 その為、腐れ切った汚れた魂は別の方向へ引き取られ、扱うものたちが存在するところへ運ばれる。

 詳しく口にしないのは色々と制限がゼナにかかっており、一介の魔剣が説明できないようになっているようだ。

「とりあえず、その手の専門業者の下へ引き取られ、ある魂は地獄が生ぬるいと言えるよな場所でゴリゴリ扱われ、またある魂はもぐもぐと喰われて生まれ変わり自体を二度となくされマス。でも、そんな専門業者たちもいるからこそ、成り立っていたのですガ…‥‥そのシステムは、この世界では一部機能不全になってしまっているのデス」

 原因は不明、いつどのようになったのかはわからないが、集めることができない魂が出現した。

 本来の流れから、まるで何者かによって歪められたかのようにその魂たちは行先を失って彷徨い、自然と世界から出てうろつくもどこにも行けない状態となる。

 そうこうしているうちに、類は友を呼ぶというのか似たような者たちで集まってしまい‥‥‥いつしか、巨大な黒く染まった腐れ団子のような状態になったそうだ。

「そうなると、普通の方法では除去できませんし、色々と問題ごとが起こりマス。何しろ人の欲望というのは死んだ後も生き残っていたりするもので、集まっていたとしてもそこから抜け出すことがあり‥‥‥それは自然と、産まれ先であったこの世界に落ちてくるようになったのデス」
「それが、まさか…‥‥」
「ハイ。行き場を失った、最悪の魂の集合体、その中でも飛び切りの悪意などがしみだして出てくる‥‥‥魔獣は、その出てきた欲望が意志を持ってしまった存在なのデス」

‥‥‥魔獣たちが生きとし生ける者たちを根絶しようと蠢くのは、彼ら自身が産まれた原因が生きていたものたちである恨みがある。

 また、元がその生きている者達の中にいたからこそ、生きていた者たちを取り込むことによって再度ただの欲望や悪意に戻ろうと思う本能が自然と働いており…‥‥その他様々なものが混ざり合った結果、今の魔獣の形になったそうだ。

「もとが形のない存在だからこそ、この世界の形あるものではどうしようもありませんでシタ。その動き続ける根源が存在している限り、消えることも無いのデス」

 けれども、その元凶を消し飛ばしたほうが早そうな話でも、そう簡単にはいかなかった。

 浄化が出来たとしても、その腐れ切った集合体はものすごく分厚い膜で覆われており、そこをぬけて何とかしようとしても途方もない年月がかかるのが目に見えており、そうしている間にも魔獣たちは命あるものを奪っていくだろう。



「そこで、この世界を管理していた神は考えたようデス。魔獣たちの根源とのつながりを断ち切ってしまえば、魔獣は消滅スル。それに、断ち切るついでに少しでもいいから浄化する力を繋がりから利用して根源へ直接送れるようにというシステムを構築したのデス」
「それが、魔剣か」
「ハイ。邪悪なる魔の根源を断ち切り、なおかつその根源へ向けて直接働きかける浄化装置‥‥‥そもそもが、この世界で生まれてしまったものをこの世界の者で確実に葬るために、私達魔剣は作られたのデス」

 まさかの魔剣の成り立ちに、思わず俺は驚いてしまう。

 魔剣でしか魔獣を葬れないようだが、その秘密が立ちきりと浄化を同時に行っているとは思わなかった。

「でも、魔剣にする必要はあったのか?ゼナのように形としてはおかしい魔剣も出ているだろ?」
「‥‥‥そこは作った神に突っ込んでくだサイ。細かい部分までは話せないのもあるのですガ、私も知らないこともあるのデス」

 珍しくはぁぁっと溜息を吐くゼナ。

 彼女でも分からないことはあるようで、魔剣を作った神とやらの思惑まで話せないそうだ。

「何にしても、そんな理由で魔剣が作られたのですガ、魔獣たちの根源が魂だとすれば、それを喰らう輩がいたほうがより効率が良いのではと考えた人がいたのでしょウ。その結果があの邪神を呼んだことにつながると推測されマス」

 けれども、邪神はあくまでも食べる専門であり、根本的な解決には至らなかった。

 呼んだ人の意図が気になるが、邪神をここに降ろしたという事はただでは済まない目に遭っているのは確実でもあるようだ。

「…‥‥幸いというべきか、まだマシな邪神のようですけれどネ。運が悪ければ呼び出した瞬間に世界が滅亡されているので、警戒するまでにはギリギリ至らない…‥‥と思いたいデス」
「うわぁ‥‥‥」

 何にしても邪神に関しては放置し切れないが、今はそんな事よりもメデゥイアルの方で不味い可能性が出ているようだ。

「…‥‥前の時にも、あの腐れ外道な学者は魔獣を精製しようとしてましたが、普通はできないはずなんですよネ。実は根源からちょっと力を抜くぐらいならば方法があるのですガ、人が知ることは不可能なようになっているのデス」
「ということは」
「誰か教えた者がいるのでしょウ。それも、この世界の事情に詳しく、根源の存在も知り得たものが‥‥‥正直、邪神よりも邪悪な輩がいると睨んでいマス」

 できればあの場でメデゥイアルを消し飛ばした後、こっそり抜け出るであろう魂を持ち帰り、しかるべきところへ引き渡して調査する予定もあったらしい。

 だがしかし、あの邪神がさっと現れて食べてしまったことで、その予定がパーになった。

「…‥‥まぁ、腐れ具合からして、廃棄処分後の行先も限られていましたけれどネ。このことに関してはきちんと連絡していましたが…‥‥届かなかったとなると、その行先の方で行動を起こされそうで少々不安なのデス」
「そんなに不味い相手か?」
「ハイ。専門業者と言って良い相手ですガ、魂関連ではほぼ無敵とも言えますからね…‥‥体も色々とある存在でして、私の苦手なものとかになってこられるのはやめてほしいのデス」

 予定したものが届けられなかったので、確実に後でお仕置きみたいなのが待ち受けているようだ。

 それを想像したようで、ぶるっと彼女が体を震わせる。…‥‥恐怖で震わせるって、どんなヤバい奴なのだろうか。



 とにもかくにも、ちょっとした世界の秘密を知ってしまったが、逃げられてしまったのはしょうがない。

 今はとりあえず、メデゥイアルに知恵を与えてしまった黒幕というべき様なものが動くことが無いように祈るしかないそうだ。

「はぁ‥‥‥私としても、仕事が増えたのは正直辛いデス。私はご主人様の魔剣にしてメイドなのに、魔剣もメイドも専門外な自体は対応が大変なのデス」
「そんなにか…‥‥というか、普通こういう部屋を作る作業とかも専門外だと思うんだけど」
「模様替えに関しては、メイドとしての専門なので大丈夫デス。ここを掃除した際に、何やらモノすっごい黒歴史が詰まったまま放置されていたノートも問題なく対応しましたからネ。OB向けの忘れ物置き場に置いたのデス」

…‥‥さらっとどこかの知らない誰かが悲鳴を上げる未来が見えた気がする。

 ひとまず、説明は一旦ここで終わるのであった。


「…‥‥後はもう、事後処理だけかぁ。ドラゴンの姿で対応したのもあるけど、教員とか上の人達だけでどうにかしてほしいよ」
「あ、だからでしょうカ?」
「どうした?」
「室内を改装する資金稼ぎついでに、お薬なども作成できたので販売していたのですガ、先ほど今までにない勢いで完売したのデス。そう考えると、飲ませるだけの原因となった方はただで済まない気がしますけれどネ…‥‥」
「‥‥‥ノーコメントで」

 見てない知らない聞いていない、そしてやっていないなどの知らぬ存ぜぬを貫き通して‥‥‥できるかなぁ?



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