私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-86 見えぬ道でも、何処かで交わる

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‥‥‥深夜という時間帯は、誰もが寝ていることが多い。

 普通ならばそうなのだが、時として夜更かしをしている者たちも存在はしているのだ。

「とは言え、流石に夜通し全員に仕掛けを施すのはきついデスネ」
「ファファファ。寝ずに済む特権を活かせるのだから、良いとは思うファ」

 ホウホウっと夜行性の鳥の声がこだまする中、教会改め特大複合施設と成り果てた場所に、ゼナとフンフは帰宅していた。

 村からかなり離れた場所で、何処かの誰かがものすっごくまどろっこしい方法を取っていたようだが、相手が誰かを利用してきたのであれば、こちらも利用し返すだけだ。

 間に挟まれて行き来させられるどこぞやの国の兵士たちには負担となるだろうが、四肢健康な状態にしているので問題はないだろう。

 しいて言うのであれば、日中に大量の兵士が帰還のために移動する様は目立つので‥‥‥そこはもう、やってしまったのは仕方がないとばかりに丁寧に送り返してあげた巨大な即席大砲でのだから、地上からすぐに確認できる人はいないだろうし、大したことにならないはずである。精々、どこかの軍事国の国境付近で、人の雨あられが降り注ぐ程度なので、目撃者とかがいなければどうにかなるだろう。



 そんな事はさておき、まだまだ人が寝静まる深夜というのもあり気を使って音を立てないように建物内部へ彼女達は入り込む。

 ぐっすり寝ているのであればそんなに気が付かれないだろうが、それでも眠っている人たちの目を覚まさせるようなことは出来るだけ避けた方が良いだろう。

 何よりもここの個室の一つでは、彼女の主もまたぐっすりと寝ているのだから、起こさないようにした方が良いのである。

「まぁ、主ではなく弟子といっていいから気を使う必要ないけど‥‥‥とりあえず、ここでちょっと離れるファ」
「フンフ姉様の部屋って、そちらでしたっケ?」
「別のところ。まぁ、今日はちょっと別件で‥‥‥」

 入ったのは良いのだが、フンフがすぐにその場から離れてしまい、ゼナはぽつんと一人になった。

 本日はもうこれ以上起きている用事はないのでこのまま部屋に戻っても良いのだが‥‥‥


「…‥‥折角ですし、ご主人様の部屋に向かいましょうカ。朝まで待機していましょウ」

 寮とは違って、ここは主であるフィーの故郷の村。

 つまり、女子寮男子寮と別れる必要もなく、何時でも主の側にいることに関して非常に都合の良い場所ともなっているのである。

 なお、ルルシア及びフィリアに関しては、こちらは別室が用意されてそちらに眠っていたりする。

 ルルシアの方は婚約関係にあるとは言え、まだ皇女の身分がしっかりあるので安全性を考え、フィリアの方は寝ぼけて火炎竜になられても困るので、地下の方に造られた巨大な部屋で寝かせていたりするのだ。

 

「さてと、起こさないようにそっと‥‥‥」

 ノブに手をかけ、そっと音を立てずに中に入るゼナ。

 中に入ってみればすやすやと寝ているフィーの顔が確認できるが、生まれ育った場所での睡眠はより安心感を与えているのか、寝相が少しだけ悪くなっており、掛布団がずれていた。

「‥‥‥仕方がないデスネ」

 眠っている主の寝相を正すのも、メイドとしての務めである。

 ぐうぐぅっと熟睡しているようだが、ドラゴンとしての感覚の鋭さもあるだろうし、かけ直すにはさらに細心の注意を払わなければいけないだろう。

 とは言え、そんな事は容易く出来ると言わんばかりにしゅばばっと素早く動き、手に取る。

 そしてそっとかけ直し、寝相も正す。

 ここまでほんの0,001秒ほどの動作だが、悟られることも起こすこともなく出来ただろう。

「ふぅ、さてと後は待機状態にでもなってましょうカ」

 このまま起きていても、今日はもうやるようなことは特にない。

 後日に送り返した国の方で動きがあるだろうが、まだ時間もかかるだろう。

 そう思い、後はただ静かに待機していようと思っていた…‥‥次の瞬間だった。

「!!」

 ビコン!!っと強化された感知機能が働き、彼女は瞬時に飛び上がり天井に張り付く。

 そのすぐ後に腕が伸ばされており、先ほどまでゼナがいた場所を空ぶった。

『あらら、察知できるようになっているのね』
「何者かと思えば、青薔薇姫超危険対象ですカ」
『変な当て字、入ってないかしら?』

 天井から離れ、距離を取って着地するゼナ。

 その視線の先には、いつの間にか実体化してきたらしい青薔薇姫の姿があった。



 ご主人様の母親であり、メイド魔剣として本来は敬うべき相手なのだろう。

 だがしかし、数々の気候やその他青薔薇伝説、遭遇してからの様々な面倒事などに付き合わされたゆえに、盛大に警戒心を上げてしまうのである。

 正直な話し、ゼナにとって苦手なタイプとも言えるだろう。メイド魔剣として何事も想定しつつ、想定外なことも対応できるようにしているのだが、そのさらに斜め上どころか異次元を突っ走ってやってくるような青薔薇姫という存在は、対応しにくいことこの上ないのだ。

 彼女に対応できるような相手がいるのかと思うが、いない方の可能性が非常に高いだろう。


『まぁ、そんな事は別に良いわね』
「貴女が普通にこの場にいること自体、どうなのかと思いますけれどネ。すでにこの世から去った人であるはずなのに、何時まで居続ける気ですカ」

 元が何であれ、既に世から去っているはずなのに、何時まで居続けるのだろうかこの人は。

 通常の人間であれば、もうとっくの前にいなくなって良いのだが‥‥‥残念ながら、その枠から外れに外れまくったような者に対しては逝く期限が決まっていないようなのだ。

「成仏してほしいのに、精神生命体としてのおかしな方向に突き進まれるのはやめてほしいのですガ。あの世への道に迷ったのであれば、知り合いに頼んで冥界行き逝きの列車、手配しましょうカ?」」
『いらないわよ』
「チッ」

 向かわせる手段は、一応持っている。メイドたるもの、主のあの世への道先案内も務めることは嗜みとしてあるのだ。

 まぁ、フィーの場合はまだ若いのでそんなことをするのはまだまだ途方もないほど先なのだろうが‥目の前の青薔薇姫こそ、さっさと逝ってもらった方が良いと思う。

『それはさておき、久し振りに出たのはちょっと理由があるのよね』
「理由、デスカ?」
『ええ。貴女がお姉さんと一緒に今晩、出ていたでしょう。この一件に関して、繋がる事よ』

 既に彼女は今晩の出来事に関して、把握していたらしい。

 普段姿を見せず、フィーに知られないようにその奥深くで眠っているはずなのだが、こういう時に限ってなぜか理解を先にしていることがある。

『正直言って、面倒事だけれどもね‥‥‥』

 カクカクシカジカと話を伺い、内容を聞いてゼナも嫌な顔をする。

 そもそもの話、面倒事の権化と言って良いような人が面倒事というからには、どう考えてもさらにぶっ飛んだものになっている可能性が非常にあったのだが‥‥‥予想が的中したようである。

「…‥‥面倒事ですが、とばっちりでもありますよね、その話」
『ええ、どうしてそんな思考になるのか‥‥‥復讐しか考えられないんじゃなくて、単純にそういう思考になれないからそんな道を選ぶようになったのかしら』

 しかし、どうしようもない事でもあるだろう。

 だからこそ、面倒事厄介事大厄災事の権化のような人であっても、嫌そうな顔になるのは仕方がない事なのかもしれない。

 

 余計に厄介な話しを聞かされてしまい、朝までその対策に関して青薔薇姫と話し合う羽目になるのであった…‥‥


「アレ?もしやフンフ姉様が別の場所に行ったのっテ…」

‥‥‥それと同時に、自身の姉が先に状況を把握していたことも理解したのであった。


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