私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
191 / 204
6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人

6-21 巻き込まれ注意報発令中

しおりを挟む
…何の策もなく、ただ全力でぶつかるような真似は避けたい。
 力を得てまずフィーが考えたのは、全力をやれるような状態を保持しつつ、後のことを考えての周囲への影響を極限まで落とす方法である。

 どうすればいいのか?また場所を移すのか? 
 いや、それでは結局、移った先の場所で被害が出るだけであり、何の解決にもならないだろう。

 だがしかし、周囲へ無差別に放たれるようながれきや衝撃波などを、逆に利用することができれば…ある程度の被害を抑えつつ、相手への攻撃に転用できるはずなのだ。

「…だからこそ、ここを今からちょっとだけ特殊な場へ整えさせてもらおうか!!竜魔法『大竜結界』!!」

 オォォォォォォォォっと叫び、周囲全体に咆哮を響かせると、俺たちをあの化け物…竜もどきの魔獣ファヴニールの巨体すら包み込むドーム状の透明な大規模の壁が出現した。

 竜魔法の中でも、周囲の空間に作用して影響を与える特殊な空間を作り出すもので、この中でどれだけ暴れようが、結界が壊れると張る前の状態に戻る特別製のもの。
 しかも、一度発動させれば維持し続ける力を注ぐ必要もなく、中では自由に動けるのだ。

 しいて欠点を述べるのであれば、使う時の使用者の体力に左右されるが…ちょっとばかり肉体の修復後に受けたすさまじいダメージのせいで体力が削れていたので、実はこれで最大のものではない。
 
 けれども、今の状態でもファヴニールを相手にできるほどの体力はある。


「ルルシア、ペルシャ、フィリア!!そのほかこの場にいる魔剣士たちに告ぐ!すぐにこの結界から退去し、万が一に備えてほしい!!これから全力で、こいつとぶつかり合う!!巻き添えになってふっとばされるどころか消滅したくなければ、すぐに出るんだ!!」

 周囲でまだ残っていた者たちにめがけて咆哮を上げると、すぐに理解してくれたのか全員が素早くこの場から退避してくれた。

 フィリアたちのほうも心配そうに見てきたが、大丈夫な様子を見せると反転しこの戦闘領域から離脱する。


 そして残されたのは俺たちとあの巨大な化け物だけで、暴れやすくなった。


【オグォォォォォォォン!!】
「さぁ、こっちにとっても暴れやすくなったし、全力でやりあおうか!!こぶしじゃなくて思いっきり武器を使わせてもらうけどな!!あいさつ代わりにゼナ、改造モードチェンジ!!」
「了解デス!!改造形態変形、まずは『ギガソードクローモード』にスイッチオン!!」

 持っていた大剣が光の粒子となり、手を覆って巨大なかぎづめへと変貌する。
 
 ドラゴンの両手も大きいといえば大きいのだが、さらに巨大かつギザギザと凶悪な爪の刃となっており、空気抵抗すら受けることなくすべてを切り裂く。


「いくぞぉ!!」

 地面に降り立ち、巨大な竜化状態のまま地面を吹き飛ばすほどの勢いで蹴とばし、超高速で一気にとびかかる。

 修復時に多少肉体も大きくなったが、それでも大きさとしては巨大なファヴニールには及ばない。

 けれども、巨体だからこそのよけづらさというのもあり、超高速のかぎづめで次々に切り裂き、自己再生を行う箇所すらも再生が間に合わないほどの速度でダメージを与えていく。

【オグァァァッァァア!?】
「おっと、この程度でひるんだか?まだまだあるんだよ!!『人竜変化』からの改造モード、別形態へチェンジだ!!」
「モード変更、『ミサイルチェーンソード』にスイッチオン!!」

 巨大なかぎづめが消失したが、光の規模は変わらない。

 こちらは竜の力を濃くした人の体へと切り替え、集まった光の粒子とともに顕現した巨大な鎖鎌…いや、鎌ではなくミサイルとなった代物を投げつける。

「改造モードのミサイルが一つだと思うなよ!!『爆裂百裂ミサイルラァァッシュ』!!」

 ぶんぶんっと勢いよく振り回せば、巨大なミサイルが鎖につながったまま遠心力で加速し、ファヴニールの肉体へ直撃して大爆発を起こす。

 けれども、その爆発一つで終わらずにミサイルはすぐに出現し、ぶつかっては爆発、消失しては顕現して再度爆発へと繰り返し、連続でいくつもの巨大な爆発が生じていく。


【オオオオオオオオオオオオグゥ!!】
「っと、さすがにやられてばかりじゃないか」

 爆発の中、根性で耐え抜いたのか巨体を飛び上がらせ、上から押しつぶすように落ちてきた。

 爆発によって多少はダメージは受けるだろうが、人型サイズになった俺もまとめて押しつぶし、亡き者にしようというのだろう。

「だがな、人竜変化って小さくなったんじゃなくて、竜の力を濃く圧縮したんで…残念ながら、思惑通りにいかねぇんだよ!!」

 ズゥウウウンン!!っとすさまじい衝撃が襲ってきたが…このぐらい、今の俺たちには許容範囲。

 人型に収まりつつも中身のドラゴンの力が出ており、巨体を支えきる。
 
 地面のほうが先に砕け散りそうだが、あいにくここは今結界内で、崩壊しても後で元通り。

 だからこそ、せっかく問題なく砕けるのであれば、こっちが砕ききってしまうつもりだ。
「その押しつぶし攻撃、そっくりそのままどころか倍増させてもらうぜ!!ゼナ、改造モードチェンジ!!」
「『カウンターハンドソードモード』へスイッチオン!!」

 巨大な鎖鎌のミサイルが大地に溶け込んだかと思えば、今度は地鳴りとともに巨大な大量の剣でできたこぶしが飛び出し、潰そうとして腹を向けていたファヴニールの無防備などてっぱらに直撃し、真上に吹っ飛ばす。

【オグゲェェェェェェェェ!?】

「ぶっ飛ばされてびっくりしているようだが、これで終わりにしてやる!!ゼナ、『ソードモード』!!」
「了解デス!!」

 こぶしが地面に戻り、俺の右手に集まって最初からできている刃の腕へと切り替わる。

 思い返せばこれが最初にできた魔剣としてのモードだが…だからこそ、魔獣たちとの戦いの元凶となったものを取り込んでいるあの化け物、異界の邪竜の名前を借りて付けたあのファヴニールへのとどめに使うにはふさわしい。

「『完全竜化』、『人竜変化』…主に使える俺自身の変身みたいなものだが、お前には特別にこれを見せてやるよ…まさかの神の力を持っていた青薔薇姫の忘れ形見!!神の力をちょっと受け継いでいるから、堂々と解き放ってやるよ!!神龍構成化…魔剣、真開放一体化、『魔竜神剣』!!」

 右手を突き上げ、剣の刃から発せられる俺の体内から直接引き出して生み出される光を浴び、俺たちは一体化して一つの姿へ切り替わる。

 以前にもゼナの力で一つになったことはあったが、これはそれ以上の代物。


…本来、ゼナの魔剣としての力をフルパワーで使うには、心臓を差しつつ何かを一時的な代償として消失させることで行っていたが、あの声の主によって改造された今、その代償は失われた。

 そしてその代わりというべきか、さらなる力を獲得させてもらうというサービスも受けたのだ。

『魔剣ゼナ、その能力の本当の力は…『可能性の光』を引き出すこと。どのような状況においても、その可能性がありうるのであれば、その力をフルに引き出せるものだったが…あの時一つになれたのは、これもまたその可能性に含まれていたのだろう』

 二人の声が一つになり、フィーとゼナは、その二つが一つになった存在はそう口にする。

 どちらにも見えるし、どちらも併せ持ったような姿になり、天へ刀身の如きこぶしを、星々の光のように輝く剣を持ち、その光の切っ先を向ける。


『さぁ、受けてみよ…竜、神、そして魔剣のすべてを人の可能性に集約した一撃を!!【グランドドラゴンブラスター】!!』

 ごうっと音とともに極太の光の柱が生み出され、上に放り投げられたファヴニールの巨体すら飲み込むよな大きさで、顕現する。

【オグギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】

 断末魔を上げるも、その声は化け物のものしかない。

 その肉体を構成していた別の化け物たち…いや、化け物にされていた人々は声を上げることなく姿を戻し、人へと戻りゆく。


 そう、これはただの攻撃ではなく、神の力を無理やりつかって捻じ曲げた、助からないはずだった者たちを助かる運命へと引きあげた救いの光。

 そして、滅ぶべき悪しきものだけが消失していき…光の柱がすべて消え失せた後に残っていたのは、地面には無数の人しか転がっていなかった。


『そして空中のほうに残されたのは…やっぱり、炉心になっていた、魔獣の元か』

 ぐつぐつと煮えたぎっているような、巨体が失われても大きさを誇る巨大な黒い太陽のようなもの。

 そう、これこそが以前、ゼナにも聞いたことがあった…この世界の理に組み込まれていた、魔獣を生み出す源泉というべきもの。

 どこかの愚か者がこれをこの世界におろし、利用したのだろうが…そのものも失せ、ここに表れている以上、もう逃れることはない。

『…それじゃ、後は頼みますよ。声の人』

 そうつぶやけば、空間がひび割れるような音がして、次の瞬間には黒い球体をさらに上回るような巨大な手が出現し、つかんで引っ張り上げて飲み込んでいく。


 あれが、全ての魔獣の元凶だった代物だが、声の主は俺たちを助ける代わりにあれを残してほしいと言っていたものだ。

 どうして残してほしいのかと思ったが…話を聞けば、食べるのだとか。


 何をどうやってと思うが、俺たちもわからないような高次元の存在の考えることなんてものは知りようがない。

 そう思いつつも、この世界から魔獣を生み出していたものも失われたことを感じつつ…俺たちはかなり滅茶苦茶に力を使った反動で、二つに再び分かれて戻り、崩落する結界の音を聞きながら気を失うのであった……




しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...